箱の中の疑似恋愛：ラースとその彼女(2008)

Lars and the Real Girl (2007)

等身大の”LOVE DOOL”を彼女として連れ歩く内気な青年。人間は一人では生きられない、誰もが「誰か」を必要としている・・・それが人形でも。コメディーなんだけどコメディーの枠に留まらない映画です。

小さな町に住む温厚な青年ラース（ライアン・ゴスリング）は、ある日彼の兄と兄嫁に、人形を「彼女」だと紹介します。人形を人間と信じきっているラースを診た町の女医は、彼の行動に出来るだけ合わせて生活するよう回りの人々に告げるのですが、ラースの奇妙な行動にはきっかけがあったのでした。


ラース役のライアン・ゴスリング。ラースと一体化してます。


主役はこのビアンカでしょう。

なんだか若い頃のジョン・クリーズみたいな、ぬぼーっとしたいかにも温厚そうな大男、ラース。少々内気で、女性と関わるのが苦手な、オタクっぽいラースが彼女にしたのは、ビアンカという人形です。いわゆるダッチワイフって呼ばれていたヤツですよね。ぽかんと口を開けた。ラースが人形を手に入れるまではお約束で、ラースが兄と兄嫁に人形を紹介するところ「来た来た来た～！」って笑いました！しかし、物語はそれからの展開が意外というか、思っても見なかった奥の深さで、生きる事って人と関わる事、私たちは一人では生きられない生き物なんだなあと考えさせられます。癒しとか再生とか、そういう言葉は嫌いなので使いたくないのですが、繊細な心を持つ彼にとってビアンカは彼の心の鏡であり、外の世界との媒体であり、ビアンカの存在は彼が変わるため、一歩を踏み出すためには必要不可欠な通過儀式だったのでしょう。
ラース役のライアン・ゴスリングが、うひゃーっていうほどはまり役。それも演技力か。どう見ても脇役みたいな雰囲気なんですけどラースと一体化してます。有る意味、怖いくらいです。兄嫁役のエミリー・モーティマーは、なにも賞を貰ってない様ですけど、貰っておかしくないくらい素晴らしいですね。薄幸顔なんですけど、いつも精一杯生きてる普通の女って感じ。あと女医さんのパトリシア・クラークソン。この人は知らないけど、非常に存在感があります。ラースの同僚のフィギュアおたく、この人絶対見覚え有るんだけど、名前が判りません！おっとビアンカの名演技も忘れてはいけませんねぇ。


こんな彼女を連れてこられて、どうして良いか判らないご家族。

人形一つで笑いと涙（ええ、泣きましたとも）を取ったこの映画、地味でイケメンもでなけりゃ美女も出ない、低予算な映画なんでしょうけれど、こういう映画を見ると本当に映画を好きになります。