The Cove(2009)
第82回アカデミー賞「ドキュメンタリー部門」を受賞した、毎年9月に行われる和歌山県のイルカ漁を追うドキュメンタリー「ザ・コーヴ」。イルカ保護活動家、冒険家、特殊撮影のプロらが結集、500万ドルという資金で機材を調達し、イルカ漁の実態を突き止め公表するまでがスリリングに展開するエンターテイメントとして非常に優れた第一級のドキュメンタリー。日本に対して批判的な内容であることから、各地で抗議運動が起こり、日本での上映はいまだ危うい状況である。
優れたドキュメンタリーと言ったが内容に100%賛同しているわけではない。ドキュメンタリーに「エンターテイメント性」は必要ないが、この映画はかなり面白いだけに簡単にこの映画のすべてが真実であると思い込みやすい可能性が指摘されている。つまり普段ドキュメンタリーを見ない層も楽しく見られる=ドキュメンタリーの内容を素直に信じてしまう可能性があるってこと。イルカを守るために文字通り命を賭ける元イルカ調教師VS可愛いイルカを惨殺し食べる野蛮な日本人。捕鯨を続けるために多額の税金で見方になる国を作る日本はとんでもなく嫌な国。事実の上に見事に張り巡らされた製作者の意図は、いともたやすく見る者の感情を監督の望む方向へ誘導するだろう。だからといってこの映画を見もせず批判するべきではない。
彼らがいいたいことには以下の3つ。
1. 野生動物を残虐な方法で殺すことへの批判
2. イルカの肉には基準値をはるかに超える水銀が含まれることへの警告
3. この事実をほとんどに日本人は知らないで、鯨肉と偽っているイルカの肉が流通している
ここで「西洋人だって牛を食べてるだろう」「散弾銃で撃たれる鹿はどうなる」的な感情論を持ち出しても意味が無い。感情に訴えやすいイルカという題材をセンチメンタルに料理したルイ・シホヨス監督のビジネス感覚も鼻につく。しかし批判覚悟で個人的な意見を言わせてもらえば、日本人は動物の権利にまったく無関心な国民だと思う。動物の痛みも理解できない人が他人の痛みを思いやる心を持てるのか?それはマイノリティーへの無関心や差別とも密接に繋がっていると思う。イルカを殺すな、肉を食べるなと言いたいのではなく、少なくともその方法や、必要性を議論すべき。
映画の最後にイルカ漁のシーンが出る。同じ日本人として見るに耐えない辛いシーンである。それは映画の最後に出てくる水産省の方がイルカ漁のビデオを見せられた時の反応がすべてを物語る。あのシーンが一番ドキュメンタリーとして秀でているシーンだろう。彼は漁の方法を尋ねられ「漁師たちはイルカの脊髄を一突きしますから」と笑顔で答える。「ではそれ以外の方法で殺すことは残酷であるとのお考えですか」とインタビュアーは聞き、漁のビデオを見せる。彼は無言で動画を見るが、無表情の中にかすかに現れる隠しきれない怒りと悲しみの感情、あれはどんな演技でもない。ただし、彼の表情の変化が「この動画が流出したら大変だぞ、こいつらどこで撮ったんだ」的な怒りだったかもしれないってこともありえる・・・
この映画をどう評価するとしても多くの人に見てほしいし、見たことによってこの問題を考えるきっかけになればそれで十分。優れたドキュメンタリーは問題提起をする物であり、監督の意見を押し付けることはするべきではない。
※私はiTunesで見ましたが、youtubeやニコ動に上がっているそうです。
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クジラ戦争に救世主は現れるのか:「なんちゃって調査捕鯨」のすすめ
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優れたドキュメンタリーと言ったが内容に100%賛同しているわけではない。ドキュメンタリーに「エンターテイメント性」は必要ないが、この映画はかなり面白いだけに簡単にこの映画のすべてが真実であると思い込みやすい可能性が指摘されている。つまり普段ドキュメンタリーを見ない層も楽しく見られる=ドキュメンタリーの内容を素直に信じてしまう可能性があるってこと。イルカを守るために文字通り命を賭ける元イルカ調教師VS可愛いイルカを惨殺し食べる野蛮な日本人。捕鯨を続けるために多額の税金で見方になる国を作る日本はとんでもなく嫌な国。事実の上に見事に張り巡らされた製作者の意図は、いともたやすく見る者の感情を監督の望む方向へ誘導するだろう。だからといってこの映画を見もせず批判するべきではない。
彼らがいいたいことには以下の3つ。
1. 野生動物を残虐な方法で殺すことへの批判
2. イルカの肉には基準値をはるかに超える水銀が含まれることへの警告
3. この事実をほとんどに日本人は知らないで、鯨肉と偽っているイルカの肉が流通している
ここで「西洋人だって牛を食べてるだろう」「散弾銃で撃たれる鹿はどうなる」的な感情論を持ち出しても意味が無い。感情に訴えやすいイルカという題材をセンチメンタルに料理したルイ・シホヨス監督のビジネス感覚も鼻につく。しかし批判覚悟で個人的な意見を言わせてもらえば、日本人は動物の権利にまったく無関心な国民だと思う。動物の痛みも理解できない人が他人の痛みを思いやる心を持てるのか?それはマイノリティーへの無関心や差別とも密接に繋がっていると思う。イルカを殺すな、肉を食べるなと言いたいのではなく、少なくともその方法や、必要性を議論すべき。
映画の最後にイルカ漁のシーンが出る。同じ日本人として見るに耐えない辛いシーンである。それは映画の最後に出てくる水産省の方がイルカ漁のビデオを見せられた時の反応がすべてを物語る。あのシーンが一番ドキュメンタリーとして秀でているシーンだろう。彼は漁の方法を尋ねられ「漁師たちはイルカの脊髄を一突きしますから」と笑顔で答える。「ではそれ以外の方法で殺すことは残酷であるとのお考えですか」とインタビュアーは聞き、漁のビデオを見せる。彼は無言で動画を見るが、無表情の中にかすかに現れる隠しきれない怒りと悲しみの感情、あれはどんな演技でもない。ただし、彼の表情の変化が「この動画が流出したら大変だぞ、こいつらどこで撮ったんだ」的な怒りだったかもしれないってこともありえる・・・
この映画をどう評価するとしても多くの人に見てほしいし、見たことによってこの問題を考えるきっかけになればそれで十分。優れたドキュメンタリーは問題提起をする物であり、監督の意見を押し付けることはするべきではない。
※私はiTunesで見ましたが、youtubeやニコ動に上がっているそうです。
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何でも見る人によってとらえ方って違ってくるものだと思うんです。
ワタシはまだこの作品を見てはいないんですが、見ていないのに既に「日本の食文化を冒涜する、ひどい作品」って刷り込まれていますよ。
見せてから判断させろっ!!ての!!
広告費をバンバンかけてTVで「めっちゃ感動しました」ってCM流すアレに似てるな・・・
やっぱりマスコミ怖いなぁ・・・
今日の新聞に7月3日から公開するって書いてありました。
名古屋は無いけど、大阪、京都はありました。
でも日本仕様として、注意書きをいれたり(「騙された」とか「こういう意味でいったんじゃない」とか入るらしい)顔隠したりしてるんですって。
ドキュメンタリーとしては本当に面白いと思いますよ。
日本人としてはかなりムカつきます。
動物への「虐待」を告発という観点から見たら、かなりあっぱれな映画に見えます。
とにかく見てから議論せえええええ!!!
って思います。
まぁ、撮影時に盗撮と近いものがあるようですから、別の出来以外も問題があるようですね。
ドキュメンタリーで注意書きを入れたりするのもなんだかなとは思いますけど。
冷静に見れる日本人も多いと思うので。
見てから判断したいって思ってる人はおおいでしょうし。
盗撮も問題なんですが、見てるこっちは「面白い」んですよね。
もちろん撮られた方はそんなこと思いませんし、倫理的に問題があるのですけれど。