ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

希望という名のデッド・エンド:善き人のためのソナタ(2007)

2009-09-21 12:30:56 | 映画:ミニシアター系
Das Leben der Anderen(2006)

東ドイツの体制監視下の元で起きたある悲劇。地味でもなければ派手でもない、芸術的でもなければアクションも無い。しかし見終わった後確信できるのは、この映画は心に刺さった刺の様にいつまでも説明の出来ない痛みを私に与えるだろうという事。第79回アカデミー賞外国語映画賞。

80年代の東ベルリン、尋問や盗聴に秀でた優秀な局員ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)と女優クリスタ(マルティナ・ゲデック)の監視を命じられます。日夜盗聴を続ける大尉は、次第に彼らの置かれた状況に同情していき、彼らが体制に反する活動をしている事を知った大尉はある行動を起こします。

趣味は仕事、冴えない中年男のヴィースラー大尉が仕事とはいえドライマンとクリスタの劇を見、音楽を聴き、次第に芸術に目覚めていく。悪化していく状況で、彼なりに2人を救おうとする大尉の取った行動は、自分の局員としての地位を危うくするものでした。しかし彼が救いたかったクリスタは、「女優を続けられるなら何でもする」と国家保安省に哀願した時すでに運命は決まっていた・・・女優を続ける希望と引き換えに彼女が得たものは、出口の無い袋小路。



ヴィースラー大尉役のウルリッヒ・ミューエは始終物静かで大人しい、冴えない男を演じるのですが、その地味な風貌と押さえた演技がこの映画の要。ミューエは東ドイツの俳優で、実際に国家保安省の監視下に置かれた過去があるそうです。この映画の翌年にガンで亡くなっています。

映画の最後、大尉の姿を見る時、感じるのは悲しみ?哀れみ?単純な感動ではなく複雑に入り交じった感情は一言で言い表せません。その絶妙な余韻のエンディングに「これだからヨーロッパ映画は凄い」と思わせる映画。

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2 コメント

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号泣。。。 (ラルフ)
2009-10-01 20:25:35
この映画、今までで一番泣いた映画でした。
それもラストのあの本屋さんのシーンで一瞬の間に
涙がどばぁーーーっと!
確かに、何の涙なのかわかりませんね~
凄いですよねー、ドイツ映画。
この記事書いた時に頂いたコメントで知った情報なんですが、
このミューエさんは「青い棘」のあの超可愛いアンナ・マリア・ミューエちゃんのお父さんなんですねw
TBさせていただきます!できるかな?
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豪球・・ (ptd)
2009-10-02 20:01:37
ラルフさんが
一番泣いた映画ですか!
私はこの映画でも泣いたけど、もっと泣いたのは
「海を飛ぶ夢」か「Into The Wild」ですね。
1リットルくらい泣いたと思います!

でもこの映画、悲しくて泣けるんじゃないんですよね。
「それ泣け!」みたいないかにも泣ける映画ではないのに、泣けましたね。
人生の重さというか・・・登場人物たちの思いを考えると泣けるんです。ただの映画なのに。
ドイツ映画恐るべし!です。

あの子のお父さんなんですね、
ラルフさんのところのコメにもありました!

TBうけとりました!
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