ORGANIC STONE

私達は地球を構成する生命を持った石に過ぎないのですから。

女王陛下は超合金製:ザ・クイーン(2006)

2007-05-15 20:33:17 | 映画:ミニシアター系
The Queen(2006)

英国ファンならずとも見ておきたいドラマ。ドキュメンタリータッチで、プリンセス・ダイアナの事故死した日からの一週間の、ヘレン・ミレン演ずる女王陛下とブレア首相(マイケル・シーン)の心理的&政治的駆け引きを追います。登場人物のひとりひとりの心の動きや思惑を散りばめながら、ダイアナ妃の葬儀までの表に出ない歴史の大きな流れを無駄なくしかも飽きさせることなく、判りやすくそして面白く見せてくれます。登場人物皆実在、あの歴史的大事件の映画化、しかも一国のロイヤルファミリーのどろどろした内情がどんどん出てきて、いいのかこんなことを映画化して?って日本人である私はヒジョーに心配してしまいますが、そこは「開かれた王室」ですから・・「俺こんなこと言ってない」「私こんなこといってない」って苦情はでないのかな?

←バッキンガム宮殿前のDiに手向けられた花束を見る女王陛下(ヘレン・ミレン)。

この映画は決してアンチ英国王室ではないにしろ、100%賛美したり、ましてや彼らを神格化したりしません。それどころか人間としての彼らの姿を面白可笑しく見せます。フィリップ卿(ジェームス・クロムウェル)なんてほんとに嫌味なじじいって感じです。また、一国の女王とはどうあるべきかを考えさせられる映画でもあります。王室のメンバーは王族である前に一人の人間である、しかしこの映画では女王は一人の人間であるより「女王」であることを常に心がけている鉄の女。同じ人間でありながら、生まれついての素質に関わらず「個人」ではなく「一国の女王」として生きることの、想像を絶するプレッシャー。

ご存知の方もいると思いますが、この映画で描かれた様に、ダイアナの死に関して女王は最初沈黙を貫きました。この映画で説明される様に、「ダイアナは王室を離れているので一般人であり、公私混同はするべきではない」との考えだったのでしょう。しかし、人々に愛された「People's Princess」であり、未来の英国王の母親である彼女の悲劇的な死に対して、王室はいっさい関わるべきではないとの彼女の考えは、理論的には正しいとしても、一般市民「Common People」には受け入れがたいものでした。その判断は正しくても、少なくとも声明くらいは即、出すべきだったのかな、と私は思います。しかし女王たるもの、どんな状況下においても信念を貫かねばならない。声明一つ出さず、姿も見せず、バッキンガム宮殿にも帰ってこない、国葬の予定も皆無。感情的になってマスコミも元嫁VS姑の醜い確執や女王の冷酷さの現れだ、とか非難する。世間の憤りが高まるにつれ、何とか世論を落ち着かせ、王室への悪印象を和らげようと、ブレア首相が女王に働きかけます。このブレア首相と奥さんクレアのやり取りがまた赤裸々で。

←お葬式で。涙一つ流しませんね~後ろは日本製?クイーン・マザー(シルビア・シムズ)。

この映画のハイライトはダイアナの葬儀ではなく、ダイアナの死後初めて宮殿に姿をあらわした彼女と、花を持った少女の一コマ。泣けました。また、女王の声明発表シーンはヘレン・ミレンの底力発揮で、この迫力は一見の価値あり。良く真似てます。

「クイーン・マザー」と呼ばれる、お婆ちゃん皇太后(シルビア・シムズ。どこかで見たなあこのお婆ちゃん・・・)がいい味出してます。元気で病気知らずなため冗談で「皇太后は日本製に違いない」と噂される彼女、ダイアナ妃の葬儀をウエストミンスター(だったと思うんだけど?間違ってたらごめん)で行いたいと聞いて一言「そこは私の葬儀をするはずのところでしょ!」そこはそれ、説得されて「リハーサルってことならいいわ」と納得しちゃうところ、歴戦のツワモノだけあって、やはりただのお婆ちゃんではない。

←犬と一緒におさんぽですか。

これが日本の皇室関連で同じような映画、作れますか?無理ですねぇ。この映画の内容が何処まで事実か私たちには知る由も無い訳でありますが、個人攻撃、文句、愚痴、裏駆け引きと、「いいのかこんなこと言わせて・・・」の赤裸々さ。英国人にとってある程度既成事実化していることばかりのようですが(例:女王が皇太子の愛人カミラを好いていなかったこととか)、実在のしかも現役の、しかもああいう方たちにあんなことを言わせるその勇気と大胆さとご本人たちの心の広さ。この映画何が凄いって、そこです・・・・!がに股気味でのしのし歩く威厳たっぷりのヘレン・ミレンの女王、女王本人も見たらしいですが、どう思ったんだか知りたい・・・

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2 コメント

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いまさらジロー。 (髭ダルマLOVE)
2008-04-03 02:48:08
どうも。
おしさしぶりです~。
タイトルウケました(爆)

お得意のいまさらジローですが、やっと観ましたよ~。いろんな意味でスゴイ作品でしたね。
どきどきです。

でもこの思い切りの良さは是非日本も見習ったてしいですねえ(え?無理?)

とにかく、ヘレン・ミレンの気合をビンビン感じる1作でした~。
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合金だから (ptd)
2008-04-03 18:52:26
髭ダルマLOVEさま

お久しぶりです~
お元気ですか。

>いろんな意味でスゴイ作品でしたね。
はい、「いいのかこんなこと言わせて~」の世界でした。
びっくりですよね。

>思い切りの良さは是非日本も見習ったてしいですねえ(え?無理?)
そうですよね日本じゃ無理!むりむり!
でも本当に作ったらかなり凄そうですねぇ。

ではでは。
返信する

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