The Philippines 1870-1935−004

ディーン・ウースターの帝国主義支持メッセージ

20 世紀初頭、アメリカは米西戦争後のパリ条約で定められた通り、スペインからキューバ、グアム、プエルトリコ、フィリピンの領土を獲得しました。アメリカ政府、学者、エリート層、そして一般大衆の間で、アメリカは新たに獲得したフィリピンをどう扱うべきかという疑問が生じました。

この議論に影響力のあった貢献者の一人は、ディーン・コナント・ウースターであった。彼はミシガン大学との強いつながりだけでなく、フィリピンへの広範囲にわたる旅行と直接の経験でも有名であった。ウースターは1884年から1889年までミシガン大学に通い、その間、ジョセフ・ビール・スティアのフィリピン探検隊に参加した。彼は動物学の学位を取得して卒業し、後にミシガン大学の助教授として働いた。フィリピン探検隊に関わったことから、ウースターはその国について最も知識のある人物の一人とみなされ、彼の著作や演説は、アメリカ一般大衆のその地域に対する認識を形作るのに貢献した。彼がミシガン大学の卒業生であったことと彼の家族からの寄付のおかげで、ベントレー歴史図書館にはウースター、彼のメモ、出版された作品に関する膨大なコレクションが保管されている。

 

ディーン・ウースターは、その名声と地位を利用して帝国主義支持のメッセージを広めた。1899年11月15日、彼はシカゴのセントラル・ミュージックホールでハミルトン・クラブに演説した。ハミルトン・クラブは設立されて間もないが、共和党の社交クラブおよび会合の場として既によく知られていた。会員は、クラブが提供するアメニティを楽しむだけでなく、政治問題について話し合うために集まった。政治的会合の場として、ハミルトン・クラブは選挙や政治問題に影響力を持つようになり、特に共和党全国大会がシカゴで開催されたときはその影響力が強かった。ウースターが1899年11月に演説を行ったとき、全国大統領選挙まで1年も残されていなかった。彼は、フィリピンにおける帝国主義という主題とそれに対する彼の考えが共和党員の支持を得るだろうと分かっていた。

ウースターのハミルトン クラブでの演説は、フィリピン共和国 (1899 年のスペインとのフィリピン戦争後に宣言) の正当性を否定し、アメリカの指導者の肯定的な影響を強調し、フィリピン人とアメリカ人の間の敵意の事実を軽減することに焦点を当てていました。彼の演説は、フィリピン諸島全体でアメリカとフィリピンの革命家の間で進行中の残忍な戦争を背景に行われました。

まず、ウースターは、フィリピン共和国の初代大統領エミリオ・アギナルドは、フィリピン駐留米軍の指揮官デューイ提督から独立を約束されていなかったと主張した。ウースターは、アギナルドがウィリアム・マッキンリー米大統領に宛てた手紙を引用したが、そこにはフィリピン独立に関するアメリカの約束は何も書かれていなかった。ウースターによると、アギナルドは、フィリピン独立を認めると約束したアメリカ人はいないと主張した。ウースターは、アメリカの不誠実さを批判する記録を塗り替えようとした。

 

ウースターのもう一つの主張は、特に反帝国主義の批判に応えて、フィリピンはスペイン統治下でさらに悪い状況にあり、アギナルドや他のタガログの指導者が権力を握っていたとしても同じような道をたどっていただろうというものだった。ウースターは、1897年のフィリピン革命後、アギナルドはスペイン政府から多額の金銭と恩赦を受け取り、それと引き換えに革命政府は香港に追放されたと指摘した。アギナルドはこの金額を自分の個人口座に入金した。ウースターは、アギナルドの利己的で不誠実な行為を、「正当な」政府、つまり米国の行為と対比した。アギナルドを腐敗した人物として描くことで、ウースターはフィリピンの指導者たちは自分たちの利益しか考えておらず、したがって自国民を統治する能力が欠けていることを示そうとした。

 

同時に、ウースターはマニラ陥落前にフィリピン人がアメリカの同盟国であったことを証明しようとした。例えば、アメリカ軍はスペインの勢力を追い出し破壊する上でアギナルド軍よりもはるかに多くのことを成し遂げ、アメリカはフィリピン人の主権獲得を支援しようとしただけだと主張した。ウースターの同盟の主張はせいぜい根拠が薄いもので、アメリカ軍とフィリピン軍の間に真の協力関係は一度もなかった。その後ウースターは矛盾し、マニラ陥落後、いわゆるフィリピンの「反乱分子」がアメリカに対してより敵対的になり、フィリピンの状況は悪化したと述べた。この敵対関係の一例として、アメリカの哨兵がフィリピン人を殺害したことがあり、報復が起こり、さらに多くのフィリピン人が死亡した。

 

ウースターによれば、アメリカは戦争を宣言するつもりはなかった。フィリピン・アメリカ戦争は、フィリピン人の自治を支援するというアメリカの善意を誤解したことによる不幸な結果に過ぎなかった。彼のメッセージは、フィリピン人とアメリカ人の間の紛争の責任をフィリピン人に繰り返し押し付けた。共和党支持者の聴衆には、この演説は好評だったかもしれない。ウースターは、アメリカの暴力、搾取、傲慢さを消し去り、アメリカの文明化の使命と自己重要感を誇張するような方法でアメリカ帝国主義をパッケージ化した。ウースターの主張を信じたアメリカ人にとって、フィリピンにおけるアメリカの帝国主義は、アメリカの人道主義と善意の延長だった。

 

党派政治とフィリピンの報道

1912年の米国大統領選挙に向けて、民主党候補のウッドロウ・ウィルソンはフィリピン独立を公約に掲げて選挙運動を行った。彼の立場は、島々に対する米国の責任を放棄するという民主党の目標と一致していたが、共和党は経済発展を促進するためにフィリピンに対する米国の支配を維持しようとしていた。ウィルソンが共和党現職のタフトに勝利した後、フィリピン独立の問題はメディアで再び注目を集めた。

 

1912 年の選挙後、ミシガン大学の植民地官僚であったディーン・コナント・ウースターは、第一次フィリピン問題に関連する新聞記事を大量に収集しました。ウースターの切り抜きが収められたスクラップブックをめくると、フィリピンの新聞から翻訳された社説が、党派政治とフィリピンの報道機関との深いつながりを一貫して示しています。

ケーブルニュース・アメリカン

ウースターのコレクションは、20世紀初頭のフィリピンの英語圏の有力新聞であったケーブルニュース・アメリカンの切り抜きが大部分を占めている。ケーブルニュースとして1902年に裕福なアメリカ人イスラエル・パトナムによって創刊されたこの新聞は、米国が島々を獲得した後、フィリピンの経済発展を促進することを目指した。米西戦争での兵役後、パトナムは米国に戻って大規模な編集スタッフを雇用し、最先端の印刷機を購入してマニラに持ち帰った。パトナムは後に経費の問題でケーブルニュースを放棄したが、その仕事は出版物を借り受けた新しいアメリカ人編集者のもとで続けられた。フィリピンで他のアメリカ人が経営する新聞が廃業に追い込まれると、ケーブルニュースは1908年に別の出版物と合併し、島で存続する数少ないアメリカ人報道機関の一つとなった。ケーブルニュース・アメリカンである。この出版物は、フィリピンと独立の問題に関して本質的に帝国主義的な論調を維持していたが、同時にアメリカ人の読者（マニラに集中していた）にフィリピンの報道機関の間で流布されている見解を提示しようともしていた。「フィリピン報道」という定期コラムで、ケーブルニュース・アメリカンはさまざまなフィリピンの新聞の感情をとらえ、最も一貫してフィリピンの報道機関であるエル・イデアルからの翻訳された社説を転載していた。

 

フィリピンの報道：ケーブルニュース・アメリカン紙のエル・イデアル

フィリピンの新聞は当初（アメリカ式の自由な報道の導入のおかげで）開花したが、多くの新興出版物は失敗し、政治的同盟のおかげで勢いを得たフィリピンの新聞はほんの一握りだった。エル・イデアルはそのような出版物の一つで、1907年の創刊以来、ナシオナリスト党と公式に提携していた。実際、ナシオナリスト党のリーダーでフィリピンの将来の大統領であるセルジオ・オスメニャがこの新聞を創刊した。

1912年のフィリピン選挙後、ナシオナリスタ党はフィリピンの自治権拡大を掲げてフィリピン議会を支配し続けた。さらに、この選挙はフィリピン独立を公約に掲げた民主党のウッドロウ・ウィルソンの1912年米国大統領選挙と同時期だった。

実際、もう一人のナシオナリスタの重要幹部であるマヌエル・ケソンは1912年の民主党全国大会にフィリピン代表として参加し、この大会でフィリピン独立の目標が民主党の綱領に正式に盛り込まれた。このように、共和党はフィリピン独立への道を妨害していると頻繁に批判されたが、ウィルソンの1912年の大統領選挙での勝利はフィリピン人に自治権への新たな希望を与えた。

ケソンは1912年の民主党の勝利後もワシントンに留まり、ナシオナリストの独立目標を代表しながら、新しい民主党政権内で関係を構築した。ケソンがワシントンで民主党議員と協力し、フィリピン独立のための法案を作成する一方で、エル・イデアルは島内でウィルソンと民主党の世論を広めようとした。

 

党派政治とフィリピンの報道

エル・イデアルは、タフト大統領から民主党のウィルソン大統領への政権移行がフィリピンの米国公職者に波及する中、共和党の役人をターゲットにした。共和党のタフト前大統領をターゲットにした積極的なメディアキャンペーンで、エル・イデアルは「タフト氏の滑稽な役割には、前任の大統領としての本当に哀れなところがある」と叫んだ。エル・イデアルは同様に、ケーブルニュース・アメリカン紙にも登場し、新大統領とその政党について非現実的に楽観的な描写をした。

ウィルソン大統領のエネルギーと民主的な立法者の誠実さのおかげで、巨大なタコの手は縛られ、古い支配者（つまり旧共和党政権）の弱さのおかげで繁栄した総督や有力者たちは抑えられるだろう。

数週間後にケーブルニュース・アメリカン紙に掲載された別の記事では、エル・イデアル紙は前共和党政権をより明確に標的にしている。

「フィリピン人はアメリカ人を嫌っているわけではない。過去に広まっていた誤解は、共和党の近視眼的な政策によるものだった」。

エル・イデアル紙はさらに、米国に対するフィリピン人の世論は新民主党政権のおかげで改善し続けていると繰り返し、新たに民主党が支配する議会に対し、ウィルソン大統領と協力してフィリピン独立のための法律を制定するよう呼びかけている。このように、フィリピン問題を一貫して党派的レトリックと絡めることで、エル・イデアル紙は政党政治がフィリピン報道機関に深く影響していることを例示している。

エル・イデアル紙も同様に、フィリピンで起きているより地域的な問題に関する社説に党派的な枠組みを適用した。これらの出版物の中で、エル・イデアル紙は頻繁にディーン・ウースター氏を、島内における共和党の帝国主義的アジェンダの象徴として取り上げた。より具体的には、フィリピンの継続的な経済的搾取という共和党の目標は、フィリピン人は自治が不可能であるというアメリカの認識に依存していた。この目的のために、ウースター氏は島の住民に関する様々な民族学的報告書を執筆し、フィリピン人の性格を誤解し、人間性を奪おうとした。モロ州の非キリスト教徒の住民を誤解しようとするウースター氏の具体的な試みは、彼の帝国主義的アジェンダの好例であり、さらにエル・イデアル紙からの反発を招いた。

エル・イデアル紙は、この件に関する社説で、「後期[共和]政権下では、非キリスト教徒のフィリピン人と文明の恩恵を享受する同胞との間に溝を生じさせる傾向のある法律が可決された」とし、「ウースターが書いた物語の真実を調査する時が来た」と述べている。その物語では、非キリスト教徒のフィリピン人はキリスト教徒と和解できないとされている。より具体的には、エル・イデアル紙は、モロ地域におけるアメリカの行政官と非キリスト教徒グループとの間の継続的な敵対関係を取り上げ、現地住民は単に「彼らの支配者」、主にウースターの失策に反応しているだけだと説明している。

エル・イデアル紙は、このコラムを米国の党派性に特徴的な言及で締めくくり、「我々は新しい[ウィルソン]政権によってもたらされた最も重要な是正と正当化の時期にある」と主張している。ケーブルニュース・アメリカン紙の読者を考慮すると、エル・イデアル紙は、フィリピン人の敵意は島内の米国民に向けられたものではなく、むしろ旧共和党政権に向けられたものだという見解を繰り返し主張した可能性が高い。

しかし、ウースター紙の報道とエル・イデアル紙の社説の中心にあるモロ族の声は、ウースター紙とエル・イデアル紙が、これらの非キリスト教徒グループを、フィリピン独立に関するそれぞれの目標を推進する物語の中に閉じ込めようとしているため、無視されている。この意味で、アーカイブ内でフィリピン人の声が明らかになる稀なケースでさえ、フィリピンの報道機関を巻き込む党派心は、島の先住民や非エリート層の住民の声を覆い隠している。

それでも、フィリピンの報道機関が発表した内容が政治的配慮に基づいていたにもかかわらず、エル・イデアルの社説は、アメリカのフィリピン問題の扱いに対するフィリピン人の不満を表明する手段として機能した。さらに、フィリピンの出版物が翻訳され、ケーブルニュース・アメリカン紙に転載されたため、エル・イデアルなどの新聞は、フィリピン人を自治に不適格とするウースターのメディアキャンペーンに対抗することができた。これは、モロ州の扱いとその地域の非キリスト教徒の住民の特徴づけについて、ウースターを標的としたエル・イデアルの攻撃に最も顕著に表れている。したがって、ケーブルニュース・アメリカン紙に掲載することで、エル・イデアルはフィリピンの独立を阻止しようとする帝国主義勢力を標的にし、同時に島内のアメリカ人読者に民主党の同盟国を宣伝することができたのである。ケーブルニュース・アメリカン紙は、定期コラム「フィリピン報道」にエル・イデアル紙の翻訳社説を掲載することで、フィリピンの自治の可能性がウィルソン大統領時代に高まった中で、ナシオナリスト党などのフィリピン政党との関係と客観性の両方を維持することができた。より広い意味では、ケーブルニュース・アメリカン紙とフィリピン報道のこの交差点は、フィリピンの新聞、それらを所有する政治的に活動的なフィリピン人、そしてワシントンDCのそれぞれの党派同盟者を巻き込んだ複雑で共生的な関係についての洞察を提供している。