PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

第9回北海道精神科リハビリテーション研究会

2009年10月25日 01時55分39秒 | 精神保健福祉情報
今日は、北海道に行っていました。

札幌で、第9回北海道精神科リハビリテーション研究会に参加させてもらいました♪

同研究会の主催ですが、日本精神神経科診療所協会や北海道精神科病院協会等が共催しています。
医師や看護、PSWやOT、心理、当事者、家族、行政と色々な人々が参加していました。

でも、北海道で精神障害者の地域支援の事業所を結構長くやっている人に話したら、この会の存在を知りませんでした。
北海道が広いこともあるでしょうけど、やはり病院と地域の間には壁があって、情報の流通を阻害しているのでしょうか?
医療と福祉は、認識や方法において、かけ離れていて、なかなか一緒にはやれないのでしょうか?
フロアから「地域からの病院の孤立」について質問がありましたが、顔がわかる関係がどれだけ組めるかが鍵になります。

とりわけ、長期在院患者の地域移行の問題は、病院と地域の連携なしには成り立ちません。
「地域移行」のゴールは「退院」ではなく「地域定着」ですし、更にその先のより豊かな生活ですし。
「出して終わり」の退院促進や、「出されて丸投げ」の地域支援では、うまくいくはずもありません。
事業要綱で「退院後1ヶ月で支援打ち切り」という県は、やはり出すことしか考えていないのではと思ってしまいます。

シンポジストの尾形多佳士さん(平松病院PSW)の報告「退院促進の取り組みとこれからの課題について」は、とてもよくまとまった実践報告でした。
札幌市で7月から始まったばかりの事業の概要、取り組み事例、経過、キーポイントから、課題、展望まで、実に見事な整理がなされていました。
こういう地に足の着いたクリアで若いPSWの話しを聞くと、この国の精神保健福祉に希望が持てますね。

同じくシンポジストの能登正勝さん(NPO全国精神障がい者地域精神障がい者生活支援センター理事長)にお会いできたのも、今回の成果です。
DPIでも活躍されていますが、当事者として地域住民や商店街とコミュニティを形成し、道行政に働きかけて障がい者条例を策定していく組織力には感服しました。
もう繰り返したくないご自身の入院体験が、その原動力になっていることを穏やかに語り、とても説得力がありました。

僕は「退院促進・地域移行・定着支援のリハビリテーション」と題して、お話しさせて頂きました。
あり方検討会の報告書、退院促進モデル病棟の実践、地域移行支援のプログラム評価、ピアサポーターの機能、リカバリー概念…等のことです。
ちょっと盛りだくさん過ぎて、散漫になってしまった感もあります。
パワポ資料を行きの飛行機の中でも作っていたのですが、やっぱり余裕をもって整理しないと、ダメですね。
事前に送ったはずの抄録も着いてなかったり、印刷した配布資料もないままで、事務局や皆さんに迷惑をかけてしまいました。
それでも、フロアから色々な質問や意見も出て、僕が伝えたいことはきちんと受け止めてもらえたと思います。



昨日は、北海道で話すパワポ資料をまとめていて徹夜明けのまま、大阪に行っていました。
こちらは、地域移行に関わる事業所の訪問調査です。
今、全国各地で取り組まれている退院促進事業(地域移行支援特別対策事業)は、大阪からスタートしました。

安田会系の大和川病院の中で行われていた、日常的な入院患者への虐待暴行、弁護士の面会も認めない密室空間。
1993年、その内実が明らかとなり、著しい人権蹂躙問題が発覚した時、大阪の人たちは自分たちの問題として受け止めました。
長期にわたって精神病院に収容され、放置されているのは、重大な人権侵害にあたると考えたのです。
それが2000年に社会的入院解消研究事業として結実し「地域から迎えに行く」大阪府方式を生み出し、その成果を踏まえて国の退院促進事業が2003年にスタートしました。
そういった意味では、大阪は、今日に至る地域移行支援のパイオニアと言えます。

大阪独自の復帰協(精神障害者社会復帰協会)と、保健所の精神保健福祉相談員と、この事業を受けた地域事業所と、三位一体?の取り組みがなされています。
それでもやはり、ここでも病院と地域の連携が大きなネックになっているようです。
すでに9年目を迎えている大阪ですら、未だにこの事業との連携が全くない病院も多くあるようですし。
自分の病院で退院させられない、複雑困難事例をこの事業に丸投げしてくる病院もあるようです。

各県ごとの取り組み方や成果を詳細に調べられれば、プログラム評価研究につながるのでしょうが、残念ながらそこまでのデータはありません。
やはりコツコツと地域の事業所を回って、それぞれの取り組みや課題をお聞きしてデータを集めるしかなさそうです。
各現場の営為と声を、きちんと拾い集めることからしか、現場に立脚した調査研究はできませんしね。



この記事は携帯からの投稿です。
もうすぐ自宅に着きます。
羽田空港が一時滑走路閉鎖になっていたので、えらい遅くなってしまいました。
日帰り出張が続くと、やはり疲労が蓄積してきて、昨日の新幹線も、今日の飛行機も、帰りは前後不覚の爆睡状態でした。
北海道の皆さんと、懇親会にも参加して、ゆっくり話したかったのに果たせなかったのが残念です。

それでは、おやすみなさい。