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預言者伝3

2010年07月20日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم
10.ヒラー洞窟:
  預言者(平安と祝福あれ)の年齢が40歳に近付くと、彼は一人で過ごすことを何よりも好むようになりました。周りの人々と、彼の間にある物事に対する理解の違いという溝がどんどん大きくなっていたからです。預言者(平安と祝福あれ)は水と食べ物を持ち、ヌール山にあるヒラー洞窟に行き、数日間過ごしました。そこに貧者が現われれば、食事を提供したりしました。また自分のいる環境や世界の様子、驚異的なパワーの裏にあるものなどについて考えたり、イブラーヒームの純正な崇拝方法に倣った祈りで、洞窟での時間を過ごしました。預言者(平安と祝福あれ)は、人々が信奉している多神信仰に安堵することはできませんでしたが、かといって満足できる明瞭な道しるべを手にしているわけでもありませんでした。召命前の預言者(平安と祝福あれ)がヒラー洞窟に向かって歩くと、通り過ぎる際に石と木が必ず、「アッラーの使徒よ、あなたに平安あれ!」と言うので、預言者(平安と祝福あれ)が(誰かに呼ばれたかと)右左を確認し振り向いても、そこには石と木以外何もないのでした。このことに関する次のハディースがムスリム正伝集に収録されています:ジャービル・ビン・サムラは、アッラーの使徒が次のように語ったとして伝えている。
私は啓示を受ける前にマッカで私に挨拶をしていた石をよく知っている。
今もなおそれをよく知っている。
  このようにアッラーは、ムハンマド(平安と祝福あれ)が重大な任務を背負えるよう、使徒として召命する3年前から彼を一人で過ごさせ給うたのです。それは、将来、世界を変え、歴史を塗り替えるための準備期間だったといえるでしょう。

11.預言者(平安と祝福あれ)召命:
  預言者(平安と祝福あれ)の年齢が満40歳になると、約束された召命の日が近づいてきます。40歳という年齢は、成熟していることを指し、使徒たちはこの年齢で召命を受けるとも言われます。そしてこの頃から預言者(平安と祝福あれ)に、預言者になる者に現われる現象が起こり始めます。それこそが、「正夢」です。彼(平安と祝福あれ)が夢を見ると、夜明けの薄光を見るように、夢に見たことが起きるのでした。この状態は6カ月続きました。実は「正夢」は、46ある預言者性の一つなのです。
  そして、ついに大天使ジブリール(平安あれ)を介したクルアーンの第一の啓示が、ラマダーン月21日の夜(西暦610年8月10日)、ムハンマド(平安と祝福あれ)が陰暦でちょうど40歳6カ月12日の時に起きます。太陽暦だとおよそ39歳3カ月12日です。啓示はヒラー洞窟にムハンマド(平安と祝福あれ)が籠っている時、彼が覚醒状態にある時に、天使に「読め」と言われることで始まりました。ムハンマド(平安と祝福あれ)は文盲でしたので「読めません」と答えます。続きは、預言者(平安と祝福あれ)の妻アーイシャ(御満悦あれ)の伝えるハディース(ムスリム伝承)から詳細を見ていきましょう:
  「アッラーのみ使いに下された最初の啓示は、睡眠中に正しく現われたものであった。
彼はその時、夜明けの薄光のように現われたその啓示を見たのです。
その時以来、彼は独居を好まれ、ヒラー山の洞窟にこもってタハンヌス(一神教信心)の行に没頭されました。
この行は何日も続くため、家族の下に戻るまでの必要な食糧を準備せねばなりません。
それが尽きると妻ハディージャの処に帰り、同じように、また数日分の食糧を準備なさったのでした。
こうした状況で彼がヒラー山の洞窟にこもっていた或る日、彼に啓示が下されたのです。
その時、彼の処に天使が現われ、こう命じたのです。
「読みなさい!」
これに対し彼は「私は文字が読めません」と答えたのです。
(み使いはこれに続けて以下のようにお話しになった)
「すると天使は私をとらえ、やっと耐え得るほどきつく押えつけこう言われた。
『読みなさい!』
『私は文字が読めません』と答えると天使は、また再び私をとらえ、更に耐え難いほどきつく私を押えつけになり、そうして、『読みなさい!』と繰り返し言われたのです。
これに対し、私は『文字が読めません』と同じ答えを述べたのです。
すると天使は私をつかみ、三度目もきつく押えつけになった後、私を放し次の聖句をお唱えになったのです。
「読め。
創造なされる御方、あなたの主の御名において。
一凝血から、人間を創られた。
読め。
あなたの主は、最高の尊貴であられ、筆によって書くことを教えられた御方、人間に未知なることを教えられた御方である。」(クルアーン第96章1-4節)

(次回は預言者(平安と祝福あれ)の初めての啓示に対する反応とハディージャ(御満悦あれ)の慰めや引き続き起こる啓示について。インシャーアッラー。)

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P115~116
      ②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P41~42)