
ここから、陽(あかり)の容姿が変わる。未完成の原稿では、もっと表情が幼い。見た目は別人、声だけが同じ。
変化は19才。第一子の妊娠中に起こる。髪は一瞬で黒く、次は目の色。ゆっくりと肌の色と骨格まで変化していく。
髪が黒くなった時、陽は頭をかきむしって泣く。あり得ない事が起きているショックで泣いていると周りの者は思いますが、理由は全然違う事。
陽の苦難の7年の始まり。25才は、ようやくそれが終わる歳。
翔は、子供の頃からキンパツの従姉妹が好きで、強行手段とも言える手で結婚するが、黒髪になって性格が変わってしまった陽に自分の苛立ちをぶつける様になる。
「お前は別人じゃないのか。金髪の陽は庭に埋めたんだろう。」などと言う。
勉強ができない、字もろくに読めないことも、あげつらってバカ呼ばわりが普通。
いつも泣くのを我慢している表情を陽がする。翔が苛立つ。苛立ちはエスカレートして行き彼の攻撃性は増して行く。
陽は、泣くのを我慢する。これは癖のようなもので、涙が出ても唇を噛み締めて肩を振るわせ涙は見せない。
第一子で長男の光は、こういう両親の元で育つ。小さな身体で父親に噛み付いたりして抗議をする。でも、就学前の力無い幼児なので勝てない。
別棟に住む祖父に相談することになる。
祖父とは言っても本当は両親の叔父。若い。翔をボコって祖父も母屋で寝起きするようになる。
25才の陽は、泣くのを我慢している表情をしなくなる。38才までそれは続く。
光の翔への憎しみは心の奥底に隠してある。17才の時「殺すって言ったの忘れた?」と翔に凄む。
第二子、海斗は複雑な想いを抱えて、明るい子供を演じ続ける。
祖父は、この甥と姪の結婚に大きく絡んでいる。こんな酷いことになるとはと自分を責めて翔と陽の両方に離婚をした方がいいと話したりもするが、翔が拒否をする。
田中家本家の血筋の夫婦。
祖父である叔父と翔のやり取りは、お互いの「護り珠」を相手に向けながらの攻撃態勢。
陽は、同じ血脈の者でも無力で泣くのを我慢するのがせいぜい。
「護り珠」
最初の設定からある。神道では珠は使いません。田中家は500年続く古い神社の家。本家の血筋の者は、生後7日にかけられる。
男は右手、女は左手。
物語序盤と「リンとキキ」から始まる最後の方で、かなり話に絡んでくる。