どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」9

2023-03-26 08:24:00 | 日記
セキの一人息子の名前はアオイと言った。人間として生まれ高天原の女王によって召し上げられ高天原で暮らしていた。妻になった女王は「重い気の病」で赤界の辺境の地で夫婦だけで療養していたが突然消えたという。「気の病」の最終段階は「気」が崩れて崩壊してしまう。「無」に戻るのだ。
不老不死の「在る者」の唯一の死の形なのはワタリ達も知っていた。

赤男は「たった1人の運命のお相手」と別れれば、その後は永遠の孤独が待っている。
「。。。それは泣いても仕方ない。」とワタリは思った。

毎朝、無愛想なリラに付き添われた王妃エリが執務室にやってくる。アオイが執務室でボロボロ涙を溢している。
同じような日々が続いて500年が過ぎた。

突然、セキが大声を上げながら執務室に入ってきた。
「来た!来れたわ!最後の5人目!」セキは1人の赤男の腕を掴んでいた。「自力で赤界に近づいてくるまで、召し上げできなかった。優秀なのに高天原が邪魔をしたのだ!待つしかなかった。長かったの。」


新入りは「名前はカケルと言います。ご指導よろしくお願いします。」と言った。礼儀正しい男に見えた。召し上げ者で仕事をしたことがないので最初は3皇子が教えた。正直言って余分な仕事が増えたので3皇子は面倒臭かった。しかし、このカケルは1度質問したことは2度と尋ねてこない。休憩時間も休みの日も本を読んでいた。

1年が過ぎた頃、セキが「仕事の仕方を少し変える」と言い出した。「ワタリは王宮の営繕、都の整備、デザイン。ハジリは諸国との外交、サクリは国の財政、カケルは法の精査をして整えよ。リョウは情報の収集を加えて全部を統括して、王の我に報告する。補佐官は他国の大臣並みの仕事をするのだ。だからと言って特権階級ではない。そこを履き違えたら補佐官から下ろす。我とロウを含めたこの7人で赤界を動かすのだ。各々がリョウのように部下を持つのだ。部下の選定に入れ。お前達は1人1人が「お頭」になるんだよ。」

3皇子は驚いてしまった。奴隷のようだった私たちが?赤界に来て良かったと涙ぐんだ。

同じ頃、カケルが王妃の女官長リラと恋人同士になってしまった。赤界に来て2年も経っていないのに。ワタリ達は相変わらず女友達もできない。リョウは女に興味がない。部下のガラの悪い赤男達とつるんでいる。
カケルは見目が良くて女に慣れている気がする。女の方から話しかけてくる。カケルの方が軽くあしらっている感じがする。秘訣を知りたい。せめて女友達が欲しい。

ワタリ、ハジリ、サクリは週末の退勤時、カケルを捕獲して取り囲んだ。

10に続く。。。

「亜遊の手紙」8

2023-03-25 09:35:00 | 日記
朝の出勤前にワタリは自分の部屋に置いた製図台の前で「幸せです。」と呟く。

60余あった神界の国々が半分になったあの日から、移民を受け入れた国は混乱を極めた。ワタリ達も長い間、その後始末に追われた。もちろんロウは、他国に行きっぱなしで元3皇子も他国に派遣された。ワタリは出張まですることになるとは。。。と自分の運命が赤国にきた日から大きく変わったのをしみじみ感じた。

最も多くの移民を受け入れた「高天原」は相変わらずセキに何も言ってこなかった。
事前にセキは移民を受け入れるよう文書を送っていたが、返事がなかったのは「了承」だと解釈した。

その頃、高天原の総女官長、穂月は突然現れた「大人数の他国の者達」に慌てていた。それがキッカケとなり、女王アマテラスがセキからの書簡を未開封のまま隠していたことを知った。一部屋が未開封の赤い手紙で一杯になっていた。
穂月は、アマテラスの父イザナギに「姫が赤王に大変な御無礼をなさってしまった。」と手紙で知らせた。

イザナギは人間が住む下界の国土を造った神「国産みの神」だ。彼は心に大きな傷を負い事実上の引退をしていた。だが、娘がした無礼極まりない行いを放っておくこともできず、献上物を携え赤国に出向きセキに詫びて「娘の秘密」を明かした。

そして、廃国の後始末が終わると神界全体に新しい常識が生まれた。「王の器を持つ者が王になる」ということだ。生まれた順番も性別も生母も関係なく一番優秀な働き者が王になるようになった。

それから、長い長い平穏な時が始まり流れていった。

赤国は「赤界」と呼ばれるようになった。他国の者からは「赤い気の渦」にしか見えず、王は「赤い鬼」だと恐れられた。
赤い鬼は毎日「王妃とのブランチ」が楽しみで、寒いギャグを飛ばすのが大好きなジジイ。王の補佐官とロウだけがセキの本性を知っていた。

「ハネムーンに行く」とセキとエリが言い出した。
「ハネムーン?今更?結婚してどんだけ時間が経ったと思ってるんですか?それに、他国には行かないって言ってたじゃないですか?赤界の王は神秘的なイメージで姿は晒さないとか仰っていたではありませんか?」と元3皇子が言うとセキは「下界に行くの。下界は世界が違うからいいんだよ。50年くらい行ってくるね。その間はロウが王様。」と言い返し、さっさとエリと居なくなってしまった。

ロウが王の代理を務めた50年は、寒いギャグもなく執務室は更に硬い職場になってしまった。

50年は「在る者」にとって長い時間ではない。セキとエリは直ぐ帰ってきた。

日常が帰ってきた。朝、10時半になるとエリが女官に付き添われて執務室に入ってくる。執務室の裏手にプライベートガーデンがあった。セキとエリのブランチの時間が始まる。「王妃の女官」は2年ごとに替わる。その女官の顔を見るのが3皇子の細やかな楽しみだった。

ところが、王妃が突然に女官長職を設け、同じ女官が毎日付き添うようになってしまった。
女官長が、また地味な容姿で愛想ない赤女で会釈もしない。名前はリラ。西の神界の者と聞いていたから期待していた3皇子はガッカリな毎日になってしまった。

それとは別に黙って執務室に乱入してくる赤男が現れた。信じられない長い髪で色が王妃とそっくりだった。
その男はセキの前でいつも泣いている。小さな声で話すので内容は分からない。ずっと泣いているのでセキが手を引いて他の部屋に連れて行く。

「あのぅ、あの長い髪の赤男は、どなたですか?官服も着用しておりませんし髪も縛らず、黙って執務室に入ってくるなど理解できません。」とワタリが言うとセキは、うんざりした顔をして言った。
「我とエリの一人息子!」
「え〜っ!」3皇子は驚いて大声を出してしまった。
「ハネムーンは、あの子を人間として産むための仕事?だった。高天原の親父が赤男が欲しいって言うから。。。我らも子供に興味があったからね。途中で育児放棄もいいところで、あんな泣き虫になっちゃった。女房が消えたって言って泣いてるのよ。」

「赤男の愛の定員は1人」
この重さに3皇子は初めて気がついた。









今後の予定

2023-03-24 08:50:00 | 日記

「亜遊の手紙」は終わるまでブログにUPするつもり。ただ、絵のサイズが大きくなっているので描くのに時間がかかる。昨日は一日中、机に張り付いていたが完成していない。
8は明日。これで半分かな。最終的には15まではあると思う。

世話している病人も時々出勤するようになった。後、1ヶ月でお世話も終わり。

その後は、真面目にマンガの原稿に戻る。
「締め切りがないと描けない」のが分かったので、また投稿生活に戻る。
アナログ原稿をデータ化してクリスタを使って加工。ネットの世界に行く。。。ってか、「葵の花」はページ数が出版社の投稿規定に入るので、アナログ原稿を送ることも出来る。描いてから考える。

その他、旅行の予定が今年後半は多い。
四国に1週間。別にダイヤモンドプリンセスでクルーズ。更に韓国にも行くかも。韓国は2度目。

ただ、体調が不安定なので「入院」という旅行になるかもな。

「亜遊の手紙」7

2023-03-23 09:00:00 | 日記
亜遊は期日の日に、やっと最後まで残っていた臣下を馬車に乗せ送り出した。
1人になった広間で「王族の仕事」をやり遂げたと清々しい気分がした。

そこに言った通り赤い馬に乗ったリョウが亜遊の下にやって来た。「さぁ、亜遊さま。貴方も行きましょう。貴方は7歳で正妃という名の奴隷になった。だから7歳からやり直しです。記憶は失いません。貴方の新しい国は“自由の国“にしました。そこには7歳より大きくなれない姫がいるのです。お友達になってあげてください。」
「あのぅ、兄の国は?」
「存続です。兄上は父上を政略て玉座から引き摺り下ろして王になり改革が始まっていましたので。」
「あのぅ、弥川の皇の尊をご存知ですか?」
「さぁ、聞いたこともない名前ですね」とリョウが答えると亜遊はやっぱり食べられちゃったんだと思った。その身は子供に戻っていた。
亜遊は、このセキオトコに一つお願いをした。「髪が肩までしか伸びないようにしてください。」
もう2度と髪を結って簪をささねばならない生活はしたくないと思っていたから。

広大な草原に亜遊を下ろすとリョウは去っていった。
亜遊は草に寝転んで空を見上げていた。優しい風が吹いていた。外に出たのは本当に本当に久しぶりだった。同じくらいの青い髪の女の子が1人で走ってきた。草の上に寝転がっている亜遊を見て、その子は驚いたが直ぐに「名前は?」と尋ねてきた。
「アユウ」
「どこから来たの?」
「分からない」
青い髪の女の子は自己紹介をしてきた。「私は桃花。7歳。ずっとずっと7歳。同じくらいのお友達が欲しかったの。お友達になってくれる?」

これが、亜遊と主、桃花姫の出会いだった。この時、亜遊と桃花は「見た目は子供、心は大人」という同じ境遇にいた。亜遊は王宮の女官見習いになり桃花の親友になる。亜遊の姿が大人になっても2人の友情は変わることなく、亜遊は桃花の側仕えとして寄り添い続ける。


その半月後、赤王宮の大広間に廃国の王と王族が集められていた。全員が縛られ鎮座させられて。その数は数百。
補佐官達は名簿を見ながら廃国の王族の名前を確認していた。王、それに一緒になって己の快楽を貪っていた妃や正妃、重臣である王族達。。。「弥川の皇の尊!」と呼ぶ声がした。ワタリは、そちらの方を向いた。兄王は「我は其方の兄じゃ!赤王に慈悲を進言しろ!」と大声で喚いた。
ワタリは無表情に言葉を返した。「私はセキ様の補佐官、ワタリでございます。」それだけ言うと仕事を続けた。
リョウと3皇子は確認が終了するとセキとロウがいる広間の上座に戻った。

セキは昔の浮浪者姿。尚且つ全身を火で覆い顔が見えないようにしていた。

「なぜ、我がこうしたか解るか?分からぬであろう。解っていたら其方達はここにいない。我は世界の始まりの王。第一世代の王。全てを見てきた。世界を創った我ら第一世代は、よう働いた。そして、余分な怠け者や浪費家や色に溺れるものまで生み出してしまった。我らは人間ではない。神と呼ばれる『在る者』なのだ。それさえも忘れるとは。其方らの父や祖父には話をつけてある。だから、我は罰を下す。なんのことはない。元の只の『気』に戻るだけだ。その後は、その本性に見合ったものになるだろう。

王の器でない者は王であってはならぬ!これは我の信念だ!」

セキは叫ぶと両手から炎の渦を起こした。一瞬のことだった。後にはセキとロウ、補佐官4人しかいなかった。

8に続く。。。


「亜遊の手紙」6

2023-03-22 08:48:00 | 日記
2ヶ月後、廃国される国々にセキからの文書が届いた。リョウが赤い馬で駆け回り各国の王宮に勅命書を弓で打ちつけた。

赤界の王からの勅命である

其国は1ヶ月後に廃国し国は消滅することとする。
王は直ちに自国の民を指定した国に移民させること。
王族については厳罰に処するがゆえ沙汰を待つこと。
一才の嘆願は受け付けることはない。

抵抗して民を盾にして王宮に立て籠った王も少なくはなかった。そういう国々にはセキ自身が「炎の塊」となり出向いて王を処分した。それを見た側近達は慌てて移民を開始した。。。罰せられるのは王族のみなのだから。

亜遊の国にも勅命書が打ちつけられた。それを読んだ夫である王は勅命書を床に放り投げて信じなかった。より深酒をするようになり相変わらず妃たちと乱痴気騒ぎをしていた。
他の廃国の王数名がセキの天罰で火に焼かれたとの情報が入ると臣下達が言うことを聞かなくなった。
「どうするのです!」と王に詰め寄った。それでも王は気を失うまで酒を飲んで臣下達の話を無視した。

「なすべきことをせよ」兄の言葉の意味がやっとわかったと亜遊は思った。
亜遊は立ち上がった。王が放り投げた勅命書を声を出して読み上げた。


そして、臣下達に「我の側に参れ!」と叫んだ。
亜遊は地図を広げて、この国の民の行き先を確認し、組み分けをし、国中の馬車を供出するように命令を下した。
「すぐに出発させよ。期日までにやり切らねばならぬ。宮仕は、こういう時に動くのが務めなのだ。我も宮仕じゃ!」
期日まで10日しかなかった。
亜遊の声を初めて聞いた宮仕達は彼女が「王妃ではなく女王」だと思った。臣下達は亜遊の命令で動き出した。

酔い潰れていた王がフラフラと立ち上がって亜遊の胸ぐらを掴むと「貴様は王妃のくせに何をした?!これは間違いに決まっておる!」と怒鳴りながら亜遊を殴ろうとした。その腕を赤い矢が貫いた。「ギャッ!」と言って王は亜遊から手を離した。
広間の入り口に弓を構えたリョウがいた。

「セキオトコ。。。」と亜遊はつぶやくと「期日に間に合わせますゆえ民草が全員新しき国に旅立つまで暫しお待ちください。」と伏礼をした。リョウは「やめなさい。あなたは、この国の王族ではない。」と言った。「期日まで後10日。それまで邪魔をしそうな者達を先に捕縛して赤界に連行します。最後の日に、また参ります。」
10数名の赤男が広間に入ってくると、王も妃達も重臣だった王の係累数十名も縛り上げ全員広間から出ていった。

7に続く。。。