セキの一人息子の名前はアオイと言った。人間として生まれ高天原の女王によって召し上げられ高天原で暮らしていた。妻になった女王は「重い気の病」で赤界の辺境の地で夫婦だけで療養していたが突然消えたという。「気の病」の最終段階は「気」が崩れて崩壊してしまう。「無」に戻るのだ。
新入りは「名前はカケルと言います。ご指導よろしくお願いします。」と言った。礼儀正しい男に見えた。召し上げ者で仕事をしたことがないので最初は3皇子が教えた。正直言って余分な仕事が増えたので3皇子は面倒臭かった。しかし、このカケルは1度質問したことは2度と尋ねてこない。休憩時間も休みの日も本を読んでいた。
不老不死の「在る者」の唯一の死の形なのはワタリ達も知っていた。
赤男は「たった1人の運命のお相手」と別れれば、その後は永遠の孤独が待っている。
「。。。それは泣いても仕方ない。」とワタリは思った。
毎朝、無愛想なリラに付き添われた王妃エリが執務室にやってくる。アオイが執務室でボロボロ涙を溢している。
同じような日々が続いて500年が過ぎた。
突然、セキが大声を上げながら執務室に入ってきた。
「来た!来れたわ!最後の5人目!」セキは1人の赤男の腕を掴んでいた。「自力で赤界に近づいてくるまで、召し上げできなかった。優秀なのに高天原が邪魔をしたのだ!待つしかなかった。長かったの。」
新入りは「名前はカケルと言います。ご指導よろしくお願いします。」と言った。礼儀正しい男に見えた。召し上げ者で仕事をしたことがないので最初は3皇子が教えた。正直言って余分な仕事が増えたので3皇子は面倒臭かった。しかし、このカケルは1度質問したことは2度と尋ねてこない。休憩時間も休みの日も本を読んでいた。
1年が過ぎた頃、セキが「仕事の仕方を少し変える」と言い出した。「ワタリは王宮の営繕、都の整備、デザイン。ハジリは諸国との外交、サクリは国の財政、カケルは法の精査をして整えよ。リョウは情報の収集を加えて全部を統括して、王の我に報告する。補佐官は他国の大臣並みの仕事をするのだ。だからと言って特権階級ではない。そこを履き違えたら補佐官から下ろす。我とロウを含めたこの7人で赤界を動かすのだ。各々がリョウのように部下を持つのだ。部下の選定に入れ。お前達は1人1人が「お頭」になるんだよ。」
3皇子は驚いてしまった。奴隷のようだった私たちが?赤界に来て良かったと涙ぐんだ。
同じ頃、カケルが王妃の女官長リラと恋人同士になってしまった。赤界に来て2年も経っていないのに。ワタリ達は相変わらず女友達もできない。リョウは女に興味がない。部下のガラの悪い赤男達とつるんでいる。
カケルは見目が良くて女に慣れている気がする。女の方から話しかけてくる。カケルの方が軽くあしらっている感じがする。秘訣を知りたい。せめて女友達が欲しい。
ワタリ、ハジリ、サクリは週末の退勤時、カケルを捕獲して取り囲んだ。
10に続く。。。