どシリアスなマヌケの日常

毎日毎日、ストーリー漫画を描き、残りは妄想.,いや構想の日々の日記。

「亜遊の手紙」3

2023-03-15 00:53:00 | 日記
「お前が自由になれたことを祝福する。
我も奴隷の王族なのは同じなのだ。
羨ましいことだ。
お前の行く道に幸多かれと祈っている。
亜遊」

王である兄の正妃、亜遊からの手紙。。。母以外に自分のことを考えてくれる方がいたのだと思うとワタリは有難くて涙が出た。
ワタリが亜遊を見たのは2度だけだった。最初は「兄と亜遊の結婚式」。2度目は「赤国から使者が来た時」。。。この2度だけ。
1度目は花嫁が自分と同じ歳の7歳と聞いてビックリした。子供だった兄嫁は顔を真っ赤にしてふくれっ面をしていた。
2度目で最後は王である兄の隣で大人になった亜遊を見た。一言も話さず無表情で人形みたいだった。。。




ワタリは、その日生国から持ってきた荷物を全部捨てた。
「赤国の王の補佐官ワタリ」としてあり続けることに決めた。

王の寒いジョークに反射的に笑うことができるようになった頃、15年のお役目下がりをしていたロウが戻ってきた。王とロウは大きな声で話していた。聞こえていても自分の仕事をするのが私達の役目だとワタリも他の2人も思っていたので無視していた。その後、2人は部屋から出ていった。

その翌日から、セキの様子がおかしくなった。
王様らしい格好をして、ロウと同じような西洋の服を着ている。そして、椅子にきちんと座っている。いつもなら、くだらないことを言ってくるのに殆ど黙っている。
次の日も。そのまた次の日も。。。4日目、今度は、顔を手で覆って「うふふ。。」と時々笑う。足をドタバタしたり顔を赤くして。。。ワタリ達は気持ちが悪くて仕方なかった。
そこに怒り狂ったロウが執務室に入ってきた。「セキ様!話が違うじゃないですか!私の娘はお客様として王宮に住まわせるとおっしゃったはずでは?!」
「だって仕方ない。。。両想いになっちゃったら、そうなっちゃうでしょ?ロウもそうだったでしょ?」とセキが子供の言い訳のように目線を逸らして言ったものだからロウの怒りに油を注いでしまった。
「西の神界では、結婚式を挙げるまでベッドをともにしたりは致しません!娘も娘だ。なんでこんなジジイと!娘をここに呼んでください!」
「ロウの愛娘を横取りしたことは悪いと思ってる。でも、エリは私の運命の1人なのだ。今まで女に心を動かされることがなかったのは、エリが生まれてくるのを待っていたのだと思っている。」セキは神妙な態度に変わった。
そこにロウの娘、エリが部屋に入ってきた。まだ少女だった。金色が混じってる少し変わった赤毛だった。
ロウは娘に尋ねた。「エリは、まだ14歳。こんなジジイのお嫁さんでいいの?」
エリは、父親の方を見て答えた。「王様の中身はお子様ですから私と釣り合います。」
「そうだよね。見た目は大して離れてないから。」とセキも言った。
ロウも渋々「仕方ない」と諦めた。玉の輿であるのには変わりなかったからである。

エリが18歳の時に正式な式をあげた。それまで、王妃としてふさわしい女性になるため勉強したいと言ったのはエリだった。
ワタリ達3人は「自分の運命のお相手」を探していた。その女性は、ずっと先にいるのかもしれないとセキを見て思った。


その頃、亜遊は生国で政変があったことを知った。
亜遊の兄が父である王を玉座から引き摺り下ろして自分が王になった。
父は酷い浪費家で見栄っ張りだった。そして、兄はケチンボだったが亜遊を可愛がってくれた。
亜遊は「お人形」のように只黙って座っている毎日が嫌で嫌でたまらなかった。そこで兄に「帰りたい」と手紙を書いた。子供の頃から亜遊の世話をしてくれている自分のたった1人の女官に手紙を生国に届けてもらうように送り出した。
兄王からの返事を届けにきたのは見知らぬ女官だった。そして、その者は兄からの手紙を亜遊に渡すと国に帰ってしまった。
亜遊は、1人ぼっちになってしまったのだ。
兄からの手紙には「亜遊は其処のものになって何年経つ?私は私の国を立て直す。自分のなすべきことは何か考えよ」とだけ書いてあった。
「なすべき何か」そんなもの亜遊には分からなかった。
女官が1人もいなくなったので夫は、綺麗な着物を亜遊に着せるだけが役目の女を毎朝亜遊の部屋に寄越した。

綺麗な着物を着て「王妃のふりをした人形」「座っているのがお仕事」。
相変わらず、王は仕事もせず大笑いして酔っ払って美女達をそばに置いていた。

4に続く。。。



「亜遊の手紙」2

2023-03-13 16:01:00 | 日記
生国を出たワタリと母は、迎えに来た赤国の使者と共にハジリ、サクリの国にも寄った。ハジリもサクリも母を連れていた。

赤王宮に着くと執務室に案内された。そこは広い部屋だったが、部屋中が書類の山で6人が身を寄せ合わなければならないほどだった。気がつくとセキ国までワタリ達を連れてきた使者ロウが居ない。

ドアがいきなり開いた。
赤い長い髪を藁縄で結んだガタイの大きい男が入ってきた。
目も赤くワタリは怖い感じがした。その男の格好は一言で言うと「浮浪者」。赤い人間の野良着のような前打ち合わせの服をこれもまた藁縄を帯にして膝から下は足がむきだしで裸足だった。

男は言った。
「我が赤国の王、セキである。ご覧の通りこの国は人材不足でな。お前達に手伝ってもらいたい。よろしく頼む。今まではロウと2人でここの仕事をしていたのだ。それなのにロウは妻が妊娠中で役目下がりをしている。ロウはお前達のスカウトだけやってくれた。我が1人でこれだけの仕事を捌くのは無理だと判断したのだ。其方達の名前は流石は皇子、クソ面倒臭い長い名前なので我が命名する。お前はワタリ。」
指を指されワタリはびっくりした。王は続ける「お前はハジリで、最後のお前はサクリ。」

王は話し続ける。
「この赤王宮は、宮仕が約1000人。王宮自体が「公務員の街」だ。女子も全員宮仕だ。王宮内に官舎がある。母上達にも働いて貰う。ワタリの母はガーデンの管理。庭師だ。ハジリの母は少し勉強をしてもらう。その上で小学校教師。サクリの母は、食堂の厨房勤務だ。母上達の得意なことで考えたが、合わないと思ったら職場の上司に相談しろ。そして6人皆が自立するのだ。ワタリ、ハジリ、サクリは「王の補佐官」だ。この部屋に溜まりに溜まった仕事を我と一緒に片付けるのだ。今日は以上だ。官舎へ行って部屋を造れ。」

ワタリは王の言っている意味が分からなかった。「部屋を作るとは?」
セキが部屋の壁にかかっている大きな鏡を指差した。「6人とも自分の姿を見てみよ」
みんなで書類を避けて鏡の前に立つと全員の髪と目が赤くなっていた。
セキが大声で「お前達は今日から赤国の宮仕、赤族になったのだ。赤族は強い神力を持つ。自分好みの部屋を作るくらいは平気でできる。」と言った。

ワタリは自分の部屋に行って驚いた。四角い箱だった。何もない只の立方体の空間。これをどうやって?と思いながら、生国での暮らしを思い出した。外に出たくても出てはダメで窓から空を見ていた。。。すると立方体に窓ができた。そうか、考えるんだ。。。物体そのものを無から具現化するのには集中力が要ったが、大した時間もかからずに生活に必要なものを揃えられた。母の部屋の様子を見に行った。母もお姫様のような可愛い部屋を作り上げていた。

次の日から、皇子3人の地獄が始まった。3人の得意分野は違っていて、ワタリは物を作ることやデザイン。ハジリは神界の歴史や国々の繋がり、サクリは数字に強かった。王が予めそれぞれに向いた仕事に分けてくれたが、溜まりに溜まった仕事は終わりがないように思えた。
セキは「我はお前達が気の病になって何もできなくなることは望んでいない。定時になったら帰れ。残業禁止。休みもとるのだ。六日働いたら必ず休みを1日取るのだ。これらはルールだ。この王宮の。」
そう言いながら、セキ自身は早出残業休みなしだった。

3人は優秀だった。半年も経つと書類の山が無くなり「今日の仕事だけ」になった。
その頃からセキの様子がおかしくなった。自分の大きな椅子に寝そべって寒いジョークを飛ばしてくるようになった。
見かねたワタリが「御加減でも悪いのでは?」とセキに尋ねると「王様なんか、つまんない仕事よ。やりたいことでも自分はやっちゃいけないの。命令だけ。。。毎日の「つまんない」をどうしようかと思ってジョークを考える。ロウは笑ってくれなかったの。命令できないの。ロウは共同経営者みたいなもんだから。お前ら3人は笑うんだよ。わかった?」と言い始めた。

「赤鬼」どころか、赤い変なジジイ!。。。ワタリ達3人は呆れてしまった。

同じ頃、ワタリの母が「好きな人ができたから結婚する」と言った。お相手はガーデンの管理責任者だった。
ワタリは、自分の母の「初恋」を心から祝福した。
結婚式で赤族の特性について知った。「1人に恋心を抱けば、永遠に他の人に恋することがない。運命のお相手は一人きり。赤族の夫婦は幸せになる。全てを分かち合う“気の交わり“をする」
結婚の証は「赤い石の耳飾り。男は右。女は左。2人で1人の証」

母が家族用の官舎に移った。ワタリは、気分を変えて部屋の模様替えをしようと思った。
生国から持ってきたものを全部捨てようと。。。
靴の中から石が転がり落ちた。
ああ、国を出た日に石を投げられて紙に包まっていたから、なんだろうと思って手提げに入れたんだ。。。紙ごと。
紙は?。。。靴の先に詰まっていた。
広げてみたら。。。手紙だった。それを読んでワタリは泣き始めた。

3に続く










「亜遊の手紙」1

2023-03-12 20:03:00 | 日記
赤国の王セキの側近ワタリは、60余ある東の神界の国の中の小さな国の皇子だった。28番目の皇子で母親は元人間の召し上げ者。ワタリの父の気まぐれでワタリの母が1週間、王の伽のお相手をした結果に生まれた。

次の王になった長兄は、生まれが高貴な兄弟しか顧みることがなく、ワタリは女官の母親と母子家庭のように王宮の小部屋から出る自由もなく勉強だけしていた。

亜遊は隣国の第3皇女。わずか7歳で大人のワタリの長兄である王の正妃として嫁ぐ。
王は血筋にもこだわるが美女が大好き。地味な容姿で子供の亜遊には全く興味がなかった。おまけに第3皇女の亜遊の母は恐らく側女か何かだろうと思い込んでしまった。亜遊もまた「綺麗な着物を着て王の隣に座っているのがお仕事」の奴隷のような扱いを受けるようになる。一年、十年、数十年。。。

「ワタリ」は本当の名前ではない。王族は「クソ面倒臭い長い名前」だと言う合理主義者のセキに付けられた名前である。

セキの国、赤国は「赤界」と呼ばれる謎の国。60余の国々をまとめ秩序を保つ役割の国だった。
セキは理想の国づくりに拘り、赤国の国づくりは遅れていた。優秀でクソ真面目で働き者の直属の部下を探していた。
そして「直ぐに使える他国の末席の皇子達」で自分の周りを固めようと思い立ち、60余りある他国へ内通者を放つ。
そこで目をつけたのが、ワタリ、ハジリ、サクリの3人であった。

赤国から使者がやってきて、ワタリの兄王に「弟君を赤国で召し抱えたい。」という申し入れをする。
赤国の王は「赤い鬼」だという噂が流れていた。
兄王は「赤鬼が弥川を寄越せと言っておる。食わせてやろうぞ!」と酔っ払って妃たちと大笑いをしている。

「何がそんなに可笑しいのか」亜遊は隣に座って黙って考えていた。あの子は頭が良くて、王は心ある重臣から「弟君にお役目をお与えなさりませ。弟君はとても優秀でお役に立ちますぞ。」とまで言われている。
それでも王は「汚れた血の者は宮中には入れぬ!」と耳を貸さない。

きっと、あの子は鬼の国に行くだろう。食べられた方が今よりはいい。
亜遊は、同じ年の義弟が少し羨ましかった。
「お別れに励ましのお手紙を書こう。どうやったら渡せるだろう。」
亜遊は考えた末、生国からついて来た唯1人の女官に手紙を渡してもらうように頼む。

ワタリが母親と国を出る日、彼は1人の女官から石を投げつけられる。紙で包んだ石。背中に当たったその石をワタリは拾って、そのまま手持ち袋に入れて忘れてしまう。
女官から「うまく行った」と聞いた亜遊は、いつ読んでくれるかなぁ。鬼のお腹の中に入る前だといいのだけれど。。。と思う。


これは、赤国が国として出来上がっていく過程の話。
無駄と怠け者が大嫌いなセキの合理性を追求した本格的な国づくりの始まり。

赤国の秩序が整った瞬間から、60余の国々の中で「あるだけで無駄な国と、その王と王族」に対してのセキの大改革が始まります。
亜遊は綺麗な着物を着たお人形でいることを強いられ、長い時を過ごします。話してはならないと夫に命令されていたからです。でも、王の隣に座っていろいろな話を聞いています。王はと言えば、公式な場にまで6人いる妃を連れ歩き身体を触ってるような夫です。妃達も贅沢三昧。妃はみんな美人で亜遊を馬鹿にします。

人形の亜遊は頭の中で生国の思い出を手繰り座ったままであり続けます。
「あの子に書いた手紙は読んでもらえたのかな。もう、あの子は食べられちゃったかな。」と心配もしています。

亜遊7歳。着物と簪が重くてぶーたれている。




恋愛ものは。。。

2023-03-10 20:06:00 | 日記


フランコ ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」を私は観ていなかったんです。
シェイクスピアのあまりにも有名な戯曲の映画。何度も映画化されていてデカプリオがロミオを演じたのもありますが。。。この幼いロミオとジュリエットが最高です。恋におちる瞬間の熱い気持ちが伝わってくる。

恋愛ものの名作は、必ずバッドエンドが多い。
私は「風と共に去りぬ」が大好きで30回は観ているのですが、あれもすれ違い別れるバッドエンド。でも、テーマは違うところにあるので恋愛だけがハッピーエンドになっていない映画だと思っています。若い頃は、スカーレットが好きでしたが、年齢を重ねるにつれメラニーが大好きになりました。

今は、介護中で絵はあまり描いていません。
んで、ストーリーを考えています。珍しく恋愛もの。で、脳が「恋愛脳」化しています。

「クソ真面目な地味なオジサンとクソ真面目な地味なおばさんの恋愛もの。」
地味なオジサンは、アオイの父の部下。父の部下(子分と呼んでいる)は5人。ワタリ、サクリ、ハジリ、カケル、リョウです。子分達は自分のことを「鬼の手下」と自己紹介します。

ワタリ、サクリ、ハジリはブサメン。カケルとリョウはイケメン。
このブサメンのワタリの恋の話。
お相手も美女ではなく同い年のオバサン。

鬼の手下5人の中で唯一の既婚者カケルが、「好きになっちゃうんだ。そしたら取りに行く。」ワタリ達が「何を?」と尋ねると「相手の心に決まってる。」とカケルは答えます。絶望的にモテないワタリ、サクリ、ハジリにはさっぱり分からないのです。

実は絶望的にモテないと思い込んでいますが、そうじゃない3人。地味で真面目で仕事ができる彼らはエリート中のエリート。だから、密かに憧れられたりしています。何気に近づいてくる女性も少なくないのですが、その好意が分からないし自分も誰も好きにならない。。。

ワタリの恋のお相手は、元義姉。兄の妻だった人。
不器用な恋愛経験ゼロのオジサンが頑張ります。

タイトルは「亜遊の手紙」
漫画はね、主人公はハッピーエンドに決まってる。

これは巨大な物語「Crystal  ball」の枝の一本。


通院に付き添い

2023-03-02 20:38:00 | 日記


大動脈解離の友達の世話で絵が描けなくなって結構な日にちが経った。

その間に、笑福亭笑瓶さんが亡くなった。大動脈解離。私の友達と笑福亭笑瓶さんは同い年。そして、1回目の乖離を起こしたのも同じなら2回目も。。。ほぼ同時期。

私の友達は生きている。
笑福亭笑瓶さんは亡くなった。

3回目は無いね。と友達は言う。私もそうだねと答える。

病院の付き添いで、今私は東京にいる。