観光庁によると今年の訪日外国人観光客数が過去最高になる見通しだという。その一方で、訪韓外国人観光客数は減少が著しい。それも中東呼吸器症候群(MERS)の影響だけではないらしい。旅行した後に韓国の印象が一様に悪くなるというのだ。「タクシーは寄り道する」「客引きがひどい」…。上客だった中国人観光客からは「二度と来たくない」とまで言われる始末。中国のオンライン旅行会社によると、仲秋節と国慶節(10月1日)の大型連休中、中国人の海外旅行の目的地は日本が韓国を抜いてトップになった。
MERSの余波だと言い訳をする話ではない
韓国紙、中央日報(電子版)は8月、韓国観光知識情報システムの統計をもとに、韓国に入国した外国人観光客数がMERS騒動の打撃を受けて大きく減少したと報じた。今年1~7月までの訪韓外国人観光客は730万5000人で昨年同期(798万人)よりも8・5%減少。特に、7月に韓国を訪れた外国人観光客は昨年同期比53・5%減の62万9737人を記録したとしている。
しかし、同紙は9月になって、訪韓外国人観光客激減を「MERSの余波だと言い訳をする話ではない」と主張し始めた。中国最大のオンライン旅行会社「シートリップ」を通した仲秋節と国慶節の連休期間の予約状況で、中国人の海外旅行の目的地として日本が韓国を抜いて1位になったからでもある。都市別にみても、ソウルは香港や東京、バンコクに押され4位に下がっていた。
さらにいえば、シートリップによると、MERS騒動が起きる前のメーデーの連休時も中国人の海外旅行予約で日本が韓国を上回っていたという。そして中央日報は、中国での韓国へのビザ申請件数が今年の正月連休を境に昨年よりも下降し始めていたとも指摘している。つまり、外国人、とくに中国人の“韓国離れ”は今に始まったことではないのである。
韓国には「二度と来たくない」
朝鮮日報や中央日報(いずれも電子版)など韓国メディアは9月、訪韓外国人のうち中国人観光客の減少の背景を探る興味深いデータとして、韓国文化観光研究院の調査を紹介した。中国人観光客といえば、日本のみならず韓国でも“爆買い”に象徴される上客だ。昨年1年間の訪韓中国人は全訪韓外国人の43・1%を占めた。しかし、同院の調査によると、韓国を訪れた16カ国の外国人観光客のうち中国人観光客の満足度は14位、再訪問(リピート)の意思も同じく14位にとどまっていた。
朝鮮日報によれば、韓国旅行を終えて帰国する際に「二度と来たくない」と考える中国人観光客が増えているのだという。
では何が韓国に対してマイナスなイメージを抱かせたのだろうか。
同紙が、ソウルの中心市街地・明洞(ミョンドン)で20代の中国人女性に韓国観光で不便なことを質問したところ、「タクシーに乗ると目的地にまっすぐ行くのではなく、あちこちに寄っていく」「店員や従業員に無理やり手を引っ張られて店に連れて行かれたことがある」などの不満を語ったという。
もちろん、韓国のすべてのタクシー運転手、店員たちがこうした行動を取っているわけではないだろう。ただし、この女性が質問にあった「不便」なことではなく、「不満」を訴えたことは留意すべきである。
「韓国の飲食店とホテルはまあまあ」のレベル?
北京からソウルまでは飛行機で2時間、東京までは4時間の距離。大阪ならさらに近い。初めての海外旅行は韓国、次に行くのは日本というのが、旅慣れしてきた中国人のトレンドらしい。習近平政権の「反日」路線とは裏腹に、最近では日本の文化に関心を持つ若者も増えている。日本文化をさまざまなテーマ、角度で掘り下げている雑誌「知日」も人気だという。
中央日報は9月、初めて訪日した中国人観光客の日本の印象を紹介している。「秩序正しく清潔なことはもちろん、人々まで親切だった。どこの飲食店に入っても清潔で誠意にあふれていたし、ホテルも安い場所だったがすっきりしていて便利だった。率直に言って(以前に旅行した)韓国では飲食店とホテルはまあまあだった」
訪韓外国人観光客数の減少の背景を見れば、中国国民の間に“嫌韓”ムードが漂い始めているのは明らかである。経済が減速している韓国にとって、日本同様に「観光立国」で景気回復を目指すならば、イメージ戦略も重要だ。(2015年10月7日掲載)
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