オリックス、セレッソ、エヴェッサ集結で新たなスポーツ拠点に
招致に敗れた平成20年(2008年)大阪五輪の「負の遺産」がプロスポーツ界の力で生まれ変わろうとしている。サッカーJリーグのセレッソ大阪、バスケットボールTKbjリーグの大阪エヴェッサに加え、プロ野球のオリックス・バファローズも29年から、大阪湾に浮かぶ「舞洲」(大阪市此花区)に本拠地を移転する。思惑はさまざまだが、約220ヘクタールの人工島に3つのプロ球団が集まるのは、日本でも例がない。合同ファンクラブの設立など、コラボレーションに前向きな球団もあり、新たなスポーツ拠点として注目を集めそうだ。
期待される相乗効果
オリックスは昨年12月、約1万人収容の舞洲野球場(舞洲ベースボールスタジアム)と北西の用地をあわせた約10・5ヘクタールを今年4月から50年間の契約で大阪市から借り受け、新たな活動拠点にすると発表した。野球場を2軍の試合で使うほか、約30億円をかけてサブ球場や室内練習場、選手寮などを整備する。「(ホームスタジアムの)京セラドーム大阪から車で15分くらいと近い。1、2軍が近いところで活動できる方が効率も良くなる」(瀬戸山隆三球団本部長)というのが移転の理由だ。
だが、オリックス移転のメリットは球団内にとどまらない。隣接する舞洲球技場と周辺用地は24年にセレッソ大阪が借り上げ、天然芝の練習グラウンドやクラブハウスを整備済み。舞洲体育館(府民共済スーパーアリーナ)も昨年4月から大阪エヴェッサの運営会社が10年間の賃貸契約を結んでいる。その“相乗効果”が期待できるからだ。
1億円の賃貸料収入
そもそも、これらの施設は大阪市が2年に策定した「舞洲スポーツアイランド構想」に基づいて整備された。野球場と体育館は8年に建設。だが、13年の国際オリンピック委員会総会で大阪市の五輪招致が落選。その後は新規施設の建設などは見送られてきた。
野球場は高校野球の大阪府予選などの会場として使われ、体育館もコンサートやイベント会場として活用されてきたが、大阪市が24年にまとめた「健康・スポーツ産業分野での舞洲活用方策」によると、主要施設の利用者数は年間約60万人で、平日を中心に稼働率の低さが問題視されていた。さらに、指定管理業務代行料として年間2億円以上かかる経費も課題だった。
そこで、大阪市は土地や施設を民間に貸し出し、スポーツアイランドを再生する施策に転換。既存の施設を活用できるメリットなどにプロ球団が目を付け、相次いで名乗りを上げた。大阪市の試算では、3球団に土地や施設を貸し出すことで年間約1億円の賃貸料収入も見込めるという。
島のブランド価値向上
“ご近所づきあい”が深まれば、新たなにぎわいも創出できる。オリックスは移転発表後、既にセレッソ大阪と大阪エヴェッサにあいさつ回りを実施。それぞれのスポンサーなどの関係もあり、具体的なコラボレーションの案は固まっていないが、大阪エヴェッサの佐伯敬次代表は「オリックスの本拠地移転で、島全体のブランド価値が一気に引き上がる」とした上で「実現可能かは別にして、例えばファンクラブも3クラブ共通にしてみるのはどうか」と思いを語る。
セレッソ大阪の玉田稔社長も「活動拠点が隣接しているということで、いろいろなことが考えられる。新人教育や引退後のセカンドキャリアの面で連係できるかもしれない」と話した。
課題はアクセスの悪さ。大阪市中心部には近いものの、鉄道が通っておらず、公共交通機関は島外からバスを利用しなければならない。大阪市の担当者は「3球団が一緒になってバス便を増やす要望などを行っていただければ…。アクセスが向上すれば、舞洲全体の活性化につながる。われわれも積極的に情報提供などを行っていきたい」と期待を寄せている。
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