大阪市天王寺区の天王寺動物園に、数奇な運命をたどった「奇跡の動物」がいる。ニワトリの「まさひろ君」。もともと園内の肉食動物に食べられる運命から生き延びた強運の持ち主で、まさひろ君目当てに“出待ち”の来園者が現れるほどの人気ぶり。「会えたら幸せになれる」と話題を呼んでいる。(吉国在)
まさひろ君は11カ月のオス。現在、鳥類を飼育する「鳥の楽園」で飼われている。夕方ごろ、園内を散歩するのが日課。飼育員の背中を追ってチョコチョコと歩き回る愛らしい姿に、来園した子供たちが競って抱っこするなど、来園者の人気者になっている。
しかし、もともとはタヌキやアライグマに餌として与えられるヒヨコとして、昨年7月に業者から入荷された「生き餌」だった。
たまたま同じ時期に人工孵化(ふか)したマガモのひながいたのが「幸運」の始まりだったという。
飼育員の河合芳寛さん(40)によると、子ガモは1羽だと人を怖がって餌を食べようとしないが、ヒヨコを一緒にすると、まねをして餌を食べるようになる。ヒヨコだったまさひろ君は子ガモの「先生役」になり、動物たちの餌となる難を逃れた。
最大の危機が訪れたのは昨年9月ごろ。鳥の楽園に出没するイタチを捕獲するため、3日間、「ネズミ捕り」の「おとり餌」になったことがあった。しかし、その間、イタチが現れることはなく、九死に一生を得ることになった。
通常、若鶏へと成長する過程で大型の肉食獣に餌として与えられるが、「偶然、申し出がなかった」。この強運ぶりが話題となり、10月下旬、飼育員2人の名前から1字ずつ取ってまさひろ君と名付け、餌にすることをやめた。
河合さんは「生き餌だったヒヨコを飼い始めるのは初めての経験。一般的に雄鳥は気性が荒く、人にあまりなつかないのだが、抱っこされてもおとなしくしているニワトリは珍しい」と目を細める。
携帯電話のカメラでまさひろ君を撮影していた大阪市中央区のアルバイトの女性(47)は「会えると幸せになれるという噂を聞いていた。今日はラッキー」とほほえんだ。
家族で動物園を訪れ、まさひろ君を抱っこした京都府木津川市の永冨優奈ちゃん(3)は「フワフワしていて、かわいかった」と笑顔をみせた。
牧慎一郎園長は、人気の理由について「最近はニワトリを飼う学校が少なくなりつつあり、動物と直に触れ合える体験が珍しがられているのかもしれない。ありふれた動物でも人気者になれるというのは新たな発見だった」と話した。
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