By PhotoGraphus
近年では宇宙開発関連の民間企業が乱立し、新婚カップルによる501日間の火星旅行なども計画されているように、宇宙という存在は一昔前よりもかなり身近なものになってきています。そんな状況だからこそ気になるのが、「宇宙の無重力状態でセックスするとどうなるのか?」という疑問です。この問いかけに科学ジャーナリストのアラン・ボイル氏が答えています。
宇宙環境でセックスすることは、長い間うわさや推測の中で語られるだけのものでしたが、数十年前にある作家が「NASAが宇宙でのシャトルミッションで、性行為に関する研究を行った」と主張したことを皮切りに、多くの人々が関心を抱くようになりました。2006年に開催された宇宙フロンティア財団主催のNewSpaceというイベントの中では、小説家のヴァナ・ボンタ氏が「宇宙でのセックスは、生き延びることを考えるなら良いアイデアではない」と語ったように、多くの人々が注目している話題です。
長らく識者や宇宙愛好家の間で話題になってきた「宇宙でのセックス」ですが、科学ジャーナリストのボイル氏は宇宙でのセックスには大まかに分けると4つの問題が生じると考えています。
1つ目の問題というのは、宇宙でのセックスは地球で行うよりも「暑く、濡れるであろう」というもの。無重力では自然対流が生じないため、体から放出された熱がなかなか体周辺から離れてくれません。加えて、人間は微重力下では通常時よりも多く発汗することが明らかになっているため、宇宙空間でのセックス時には性行為により体内から多くの水分が放出されることになるだろう、と予測されています。
By Paula Valença
2つ目の問題は、セックスを行うのが「無重力環境」であるという点。宇宙の無重力下では慣性の法則により、押されたものはどこまでも飛んで行きます。なので、お互いが激しく体をぶつけ合うのは非常に困難です。そんな問題を解決するため、ボンタ氏は「2suit」という名前の宇宙服を考案します。この宇宙服はファスナーやマジックテープを使って2suit同士を固定するというものです。ボンタ氏は2suitを着用して無重力体験フライトで自身の夫にキスするという実験を行ったのですが、キスだけでも相当な苦戦を強いられたそうです。
アメリカのTVチャンネルであるHistory Channelで「2suit」が特集された際の映像が以下のもの。ムービーの1分50秒辺りを見ると2suitがどんな服かわかり、実際に無重力下で2suitを着用してのキスにチャレンジする様子は4分8秒辺りで見られます。
sex in space - YouTube
3つ目の問題は「ペニスのサイズが小さくなること」です。無重力下では下方向にかかる力(重力)がなくなるため、人間の下半身にたまっていた体液が胸部や頭部に移動します。これにより顔がむくんだり尿の量が増えるそうです。それと同時に起きるのが、ペニスの縮小だそうで、ボンタ氏は「無重力を体験したことがある人は、自分の男性器がわずかに縮小していることに気づくだろう」と語っています。
By Jesse! S?
そして4つ目の問題が「宇宙酔い」と呼ばれる無重力空間で起きる乗り物酔いのような症状です。
By Beth Scupham
また、NASAの科学者であるジム・ローガン氏は「宇宙で行われるセックスは、あなたを少ししらけさせるかもしれません。なぜなら、あなたが考えるよりも宇宙でのセックスは汚いものだからです。また、全ての動作に反対向きの力が作用するので、熟練の映画監督のもと適切に演技指導されるかのように、決められた動きをそれぞれが全うする必要があります。そうでなければ、無重力下ではジタバタもがくだけになってしまうでしょう」と語っています。
ここまではセックスを行うまでの問題点に着目していましたが、実際のところはセックスした後の問題の方が重大です。ロシアで行われたネズミを使った動物研究では、無重力下では胎児の骨格形成が13~17%で停止しました。他にも、無重力空間では胎児の免疫機能が危険にさらされる可能性も示唆されています。これらの問題について、ローガン氏は「これらの事実は人間の太陽系進出に重大な意味を持ってくるでしょう」とコメント。
また、広島大学の研究では、宇宙の無重力下では胚の発育が阻害される可能性があることが発見されています
この問題に対する解決方法はシンプルに「重力を人工的に作り出すこと」です。それではどれだけの重力があれば宇宙でのセックスに問題が生じなくなるのでしょうか。これについてはローガン氏は「重力は薬物治療とみなして下さい。私たちは服用量を知らず、副作用も理解していません」と語ります。
宇宙空間でセックスすることは母体にとっても子どもにとっても危険である、とする研究結果もあります。
宇宙空間でのセックスは生死にかかわるほど危険であることが判明 - GIGAZINE
・関連記事
宇宙生まれの「スペース・ベビー」へと一歩近づく受精細胞の成長実験に中国の実験衛星が成功 - GIGAZINE
無重力状態の宇宙に行くと人間の体にはこんな変化が起こる - GIGAZINE
セックスについて知られざる14の真実 - GIGAZINE
長期の宇宙滞在ミッションが引き起こす謎の病「VIIP」 - GIGAZINE
人類のセックスを進化させてきた歴史的な6つの発明とは - GIGAZINE