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読書のよもやま(2023.01.02)

2023-01-02 | 雑文
「司馬遷」武田泰淳(中公文庫)

中国は漢代の行政官であり、貴重な歴史書と
して今も残る「史記」の著者である司馬遷に
ついての本。

1943年に刊行され、数度の再版があるよ
うで、今回読んだのは2022年に出たもの。

本書の著者についても、司馬遷についてもま
ったく詳しくなく、書店でぱらぱらしてそれ
ほど難しくなさそうだったので購入。

人物の一生を追うのではなく、「史記」がど
ういうつくり、内容かを解説し、そこから司
馬遷という人物の像を追う。

「司馬遷は生き恥さらした男である。」とい
う読み手をぐっと引き込むはじまり。

中国古典をテーマにしているが、文体はくせ
がなく読みやすく、最後まで切れのよい文章
が続く。

史記を著すにあたって影響した人生の重要な
できごとについて説明した後、史記の構成や
意図を内容を解説しながら進める。

そしてそこから司馬遷がどういう人物であっ
たかに迫るから、どちらかといえば、史記の
解説が厚いともいえる。

司馬遷の人物と意図のわかる箇所を中心にか
なりピンポイントで解説をするため、史記に
ついてとても詳しくなれるわけではない。

しかし、史記をまったく知らない自分のよう
な人でも、史記とはどういうものかを知るこ
とができる。

順番に一つ一つを丁寧に解説していくと読み
手も息が切れてしまうし、そういう意味でも、
入門ものとしてよかった。

著者の二十代後半の作品らしく、最後三分の
一はやや構成のブレと悪い意味での淡々さが
見えるが、思想と表現力に学ばされる。

戦争や職業における武田泰淳の人生観などの
解説もあるが、「司馬遷」と「史記」の入門
として読むのであれば、意識しなくてもよく。

自分のような中国古典ド素人は読み進めるの
に少し時間がかかるが、若いころはこういう
系を今よりは積極的に読んでいた。

そうした懐かしさもあり、2023年は古典
に学ぶように、自己の原点回帰の年にしよう
かとも考えながら。

分厚い古典や解説は読めないが、司馬遷や史
記がどういう人、ものかちょっと知りたい気
持ちもあるという方に、おススメ。