午前0時45分、ダイキが帰っていった。
ブログには、三重高受験にはウチの全員が臨む!と謳ったものの、俺の勘違い。
ダイキと真梨子は受けていない。
やっかいなのはさつきだ。
今日は三重高の受験ゆえに朝早くに起床のはずがこの時刻。
そのさつき、午前1時頃にやっと腰を上げる。
帰りに戸木のオークワで豆腐をカって塾に戻る。
隣の高校生の部屋に明かりがついている。
瞭(津高1年)だ・・・時刻は午前2時。
言葉が足りない。
ここ最近のウチの生徒にほぼ共通している因子。
瞭が舞の数学の授業を降りるにあたって俺に相談に来ている。
それならばと、俺から舞にも言っておくからオマエからも言えよと・・・。
しかし舞には得心のいくプレゼンにはならなかったようだ。
あれから2か月、今度は祐と慎也の無断欠席。
舞の怒ること、怒ること。
「今日のこともそうやけど、これからどうしたいかってこともはっきり言ってほしい。それなのに一切連絡もない」
舞の怒りが俺の酔いを加速度的に進ませたのは2日前、中3の送り出しの日だ。
あの時、俺の頭に去来したもの・・・曜子と佳央理。
何ら連絡もなく塾に来なくなった二人。
佳央理は高校に入ってからも塾を続けるものの死に体・・・高校の授業になんとか付いていこうとするだけの受身の勉強。
それが去年の夏の終わりに少しばかりの感動・・・「いい大学に行きたい」
一挙に受験体制に移行!と思いきや、冬あたりには瞑想、いや迷走?
結局は今年になって姿を見ていない。
曜子にしても高校進学時には塾を辞めたはずが、高2の夏から塾に姿を見せては改心した風情。
曜子の器用さに加え、出戻りであるという緊張感。
こりゃ一挙に伸びるはずという俺の確信、見事に当てがはずれる。
秋の頃には姿もなく、いつしか元の木阿弥。
たぶん、塾は辞めたんだろう。
しかし、何の挨拶もない。
連絡すらない。
中学3年間をウチの塾で過ごしているはずなのに。
ちったあ俺の思考に晒されているはずなのに。
一切の挨拶、説明、連絡すらない。
そして俺は今という時間を噛み締めている。
俺の無力さを噛み締めている。
3年間の信頼関係なんて薄っぺらなもんだと・・・。
どうすれば、ここまで人の感情を無視できるのか。
どうすれば、ここまで人の感情を逆撫でできるのか。
しかし彼女たちはそれをいとも自然にできるのだ。
育ち方?環境?・・・分からない。
しかし、それは見事なほどに自然体。
俺達はこんな時代に生きている。
塾にかかわる者に言えること・・・裏切られることだけが人生だ。
昼過ぎに奥さんと二人、遠山病院へ。
俺が入っていった時のオフクロの声と後から奥さんが入ってきた時の声とでは明らかに違う。
俺には弱々しい声で、奥さんには艶のある声を投げかけた。
無理をしている・・・しんどいんだろうな。
これから検査があるとか。
その検査の結果次第では明日あたりから重湯を飲めるかもしれない。
結果がどう出るにしろ、今度退院したら家の中にある自分の持ち物を整理するとか。
「最低必要の物以外は捨てるつもりよ。昔に買った服で一度も着てないものが数着あるから、あなた貰ってくださいね」
奥さんがぎこちなく頷く。
俺は・・・俺は返す言葉が見当たらず立ちすくんでいる。
数日前、6期生の前田(早稲田大学院)からポストカード。
身内だけで結婚式を行ったとか・・・。
おめでとう、本当に奇特な女性を捕まえた。
頼むから、そのツキを***や***や***にくれよ。
心すさぶ日々が続く。
たまにはこんな心沸き立つ知らせがあってもバチは当たるまい。
明日は鈴鹿高校入試。
試合会場はメッセ・ウイング、ダイキのデビュー戦である。