昨年は夫の発病と葬儀で2回訪米した次男は、今回は慶事で来加した。アリゾナ・メサで妻の親族の結婚披露宴があるためだが、ついでに南アリゾナのツーソンへ足を伸ばして伯父夫婦へ挨拶に伺いたいと言うので、長男と二人で訪う。次男の義理弟がアメリカ人と結婚し、アメリカでの披露宴を開く。スェーデンからは義理両親も出席するのだが、次男の妻は再び大学へ戻り、今度は教師となるため勉強しており、小学校での実習に入り、我が子7歳と4歳を置いていけないとのことである。それで次男が来米となった。披露宴は今週末でそれまで次男は長男と共に我が家で過ごす。
思いがけない小さなヴァケイションになり、ちょうど母親の様子を見に、そして姉妹兄弟、甥たちに会いたいとのこと。私?私は死ぬまで死なないし、大丈夫よ、と言った。
朝の新鮮な搾りたてのオレンジジュースを振る舞おうと、末娘の夫(別名:婿殿)は、土曜日の朝早く、家庭果樹園のネイブルオレンジを沢山収穫してくれた。赤ちゃんの頭ほどの大きさのオレンジがゴロゴロあって、今年もかなりなってくれた。
大きな物は、グレイプフルーツの隣にこの木々はあり、グレイプフルーツの花粉が混入したのか、こんな大きくなったのかもしれない。生食でもジュースでも甘くて美味しい。婿殿によれば、まだまだなっていて、マンダリン(日本みかん、サツマ)も全て取り切っていないと言う。このオレンジの半分以上は婿殿の実家に持って行ってもらった。彼の母親は、レモンは色々な方からいただくが、ネーブルオレンジはなかなかない、と以前ぼやいていたので、お渡しすることにした。夫の丹精してきた果樹がどなたかに喜んでいただけたら、本望である。
私は、カレーライスに餃子にチキンの唐揚げ(我が家ではチビチキンと呼ぶ)に、と極々庶民的な「ご馳走」を、と心づもりしていたが、再会してまず次男は、「おかあさん、コスコに買い物に行ってくるから。」と言う。自分が夕食を作るから、と言う。
下のような父親のエプロンをつけた「あですがた」で次男は手慣れた手つきでエンジェルヘアパスタを茹で、ソースはクリーム仕立てで、アーティチョーク、庭で取れたマイヤーズレモン、少々のガーリックなどで作った。おまけにライムチーズケーキもあっという間に全て手作りし、ついでにメキシカンソルサも。彼のソルサは沢山トマトを玉ねぎと共に湯通しし、それをフードプロセッサーにかけ、セラントロやハラピニョを生のまま入れて撹拌して作る。これは家族には大ヒット。
こんなところ、まるで夫のよう。最後に後片付けも皿洗いも全てこなし、ますます彼の父親のようである。レセピを見ながらでなく、手順はすべて覚えている。長男も三男も次男と同様で、夫はこうしたことを妻や家族にしなさいと、言っていたことは一度もない。せっせと家事をする夫の背を見て、息子たちは学んだに違いない。あの父親の息子たちだなあと思うことしきり。
一方長男は手伝いはいらないからと言う次男に炊事は任せ、1500ピースのジグソーパズルをほとんど一人ここへくる度仕上げていき、とうとう完成させた。最後のシンデレラのドレスの裾の穴の一つは、一人娘にそのピースをはめさせる栄誉を与えて、そんなところはやはり父親にそっくり。完成写真を撮り、すぐほぐして、今度は1000ピースの次男の手土産のコペンハーゲンのパズルである。長女と二人で早速取り掛かり始めた。
長女が焼いてくれたサワドゥブレッドをディナーに添えて、みなで食事をしながら、なんでも次男はヘルシンキで売られている一つUS$8のオニギリで梅干しに目覚めたそうで、大好きになり、おかあさん、作って、と言った。OK,これで母の面目がたつ!
それに胡麻のサラダドレッシングも大好きになったと言う。彼の妻はほとんどなんでも日本の物は大好きだが、そのドレッシングだけは好まないと言う。わかった、次男用に明日仕入れてこよう。
思いがけず、次男の成長(?)ぶりを目にできて、親は嬉しかった。そして兄弟姉妹お互いに思いやり、心から家族を大切に思ってくれていることをしっかり感じ、感謝している。これは夫や私がなによりも子供たちに願ってきたことである。
末娘の末息子がちょっとでも機嫌が芳しくなくなると、まずは兄たちが姉妹よりも先に手を伸ばす。そんなところも夫に酷似している。これも父親の背を見てきた子供たちだからだろうか。「私は、だから大丈夫よ、あなたに再会する時まで頑張れます。」と見えない夫にそっと言った。