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大好きなアーテイスト、グレッグ・オールセンがデザインしたネイティヴティ・セット
日本で合衆国感謝祭翌日の金曜日が、ブラック・フライデーとして知られるばかりでなく、アメリカのごとく、クリスマスショッピングの皮切りのセールを目的とした日になっていると聞く。そこに商魂のたくましさを感じるが、日本人に文化的な意味を問うても無駄なことである。その商業主義、消費主義のブラックフライデーに対抗するようにできたのが、Giving Tuesdayギビング・チューズデーである。これは「寄付の火曜日」で、2012年にニューヨークの慈善団体92nd Street Yと国連基金が始めた。
Wikiによると、ハッシュタグ効果(#GivingTuesday)を狙った国際的な社会的運動で、マイクロソフトやソニーなどのパートナー組織もあり、消費者文化に対する防御手段として、また人々がお返しをする方法として称賛を受けて徐々に拡大しつつある。このトレンドは、好意を持って人々に受け入られ、ソニーが協賛しているあたり、日本でももっと広がったら、素晴らしいと思う。
何をするのか、と言えば、それは慈善事業団体に寄付をしたり、奉仕をすることである。そうした寄付団体のリンクをSNSに載せて知らしめることもその運動の一つ。日本でも歳末助け合い運動があるし、参加することはたやすい筈である。アメリカでは感謝祭の翌日から、商店の入り口で、赤いケトルを下げ、チリンチリンとベルを鳴らす人が立つ。サルヴェイション・アーミー(救世軍)の募金活動である。
これは、1865年英国の貧しい労働者階級の人々の多い東ロンドンでメソジスト牧師夫妻によって、伝道するために始められた教会組織である。その牧師ウィリアムスが、伝道にあたり、天啓で「義勇軍に非ず、救いの軍なり(Not volunteer army, but Salvation army.)」というメッセージを受け、救世軍は設立された。今では、この組織は世界で131カ国に渡り、存在している。
救世軍の生活困窮者支援等の為の年末の街頭募金運動は、アメリカでは赤いクリスマス・ケトルと呼ばれる鍋に募金を入れてもらう。日本では社会鍋として知られている。この救世軍は、軍組織を模したキリスト教プロテスタントの一派で、伝道の他、社会福祉事業、教育事業、そして医療事業で有名である。日本には1895年に伝来、サルヴェイション・アーミーを救世軍と訳したのは、クリスチャンで政治家だった尾崎行雄である。
これはキリスト教徒であろうが、また新旧のキリスト教会を問わず、つまり宗教や宗派を問わず、万人が、気軽にポケットの小銭をケトルに入れて募金活動に参加できる。たとえ1ペニー(1セント)でも、寄付できるから、幼い子供達も、親に小銭を持たされて寄付している。またこの組織はアメリカの各都市に、Not-New-Shop(古着・古道具などを販売)やTrift Shop(同じくセカンドハンド店)を経営し、そこの収益を奉仕活動に使っている。アメリカではどこの街にもこうした救世軍のセカンドハンド店はあり、古い書物や懐かしい玩具やパイレックスの食器など、マニアな人にとっては、宝庫である。もちろん靴下から靴、ウエデイングガウン、寝具、リネン類も格安で売っている。
断捨離で、まだまだ使えるものを処分するのは、ただ大ゴミとして清掃局に出すよりも、まずこうした団体に寄付することが勧められる。捨てる神あれば拾う神、である。そしてその店で購入すれば代金は福祉や教育、医学にも回されるから、無駄ではない。
私にとってクリスマスシーズンに見かけるあの赤いケトルは、幼かった子どもたちに寄付を教える第一歩でもあった。多くの人が少しずつでも出せあえば、それは人の役に立つことに繋がる。現に救世軍のこうした福祉と伝道によって救済された有名人もいる。
その一人、MyPillow(マイ・ピロー)という枕製造会社の設立者は、クラック・コケイン常習・中毒者で夢も希望もなく、世間からは拒絶され、いつ息絶えて路上で発見されてもおかしくはない人生を20年間送っていた。しかしながら、彼は救世軍によって救済され、救世軍の教育事業(成人向けリハビリテイションセンター)によって、常習を断ち、更生し、会社を設立したのだ。やがてホワイトハウスに招かれる事業者となった。そして「助けられた」ことを忘れず、生活に必要なものを除いた収入を寄付している。
あなたのわずかなポケットの小銭は、非常に有意義なことを行う初めの一歩である。今日、街角で、店先で赤いケトルを目にし、チリンチリンという鈴の音を耳にしたら、ポケットやバッグを探って小銭を手にして、ケトルにお入れになると、思わぬ未来をどなたかにプレゼントすることになるかもしれない。
Photo Credit: Salvation Army