好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

『はじまりの魔女』エピローグ「そして始まりへ」

2017-04-23 | ゲームブック二次創作
思えばあれが、私の魔力が初めて暴走した経験でした。
私の長年押さえつけられていた魔力は、尖塔の最上階のほとんどを破壊し尽くしました。
とうに夜の明けていた、青い空の下で、石畳に倒れた私は、
誰かが覆い被さっているのを、ぼんやりと見ていました。
その人が私を守らなければ、きっと私自身が崩壊していたはずです。

後に知った事ですが、「黒い森」の長たちは、私を言わば爆弾として敵地に送ったわけです。
バルサスを直接倒せずとも構わない。
戦いが激しくなれば、私は必ず枷を無くし、バルサスもろとも爆散するだろうと。

そんな私に、バルサスがどんな行動を取るかも、彼らは知っていたのでしょう。
私が《千里眼》の術で、バルサスから読み取ったのは、とても幼い頃の私の笑顔でした。
今となっては確かめる術もありませんが、バルサスは、
私がいつか会いたいと願っていた身内の者だったかもしれません。
塵となって消えながら、「ミア」と名を呼んでくれたバルサスに、私はそう感じたのです。

サミュエルが、森の彼らと距離を取っていた理由にも気づきました。
勇者としても名高い彼には、彼らの考えを受け入れる事は出来なかったのです。
バルサスの要塞を去った私もまた、「黒い森」には戻りませんでした。
私は旅をしながら魔法の研究を独自に進め、やがて小さな町の管理者として、
戦で家族を失った子供たちと共に暮らし始めました。
その内の一人に、私をもしのぐ魔力を持つ子供がいました。
私は自らの魔法大系を、その子に伝えようと決めました。
いつか来るだろう時のために構築した、48の呪文を。

ありがとう。頑張って修業に付いて来てくれた、私の愛しいお弟子さん。
あなたが私とは違う魔法使いになる事を、私は祈っています。

「はじまりの魔女」完

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