最初に気づいたのは、アジュアだった。
「何ですか、アレは?」
「……真っ暗だな」
行く手が、闇だ。光が一切見えない。
エリュテイアは俺に「羅針盤」を見せた。
水の流れは、どう見ても闇の方を指している。
「こっちに来るぞ!」
俺たちが迷う暇なく、闇の方が迫ってきた。
目を閉じているのと変わらないような暗さ。
そこに、ぼっと橙色の光が浮かび上がった。
エリュテイアの持っていた松明が点ったのだ。
おかげで、「羅針盤」の向きを確かめられる。
歩いている内に、小石か何かを蹴飛ばした。ぽちゃんと音が鳴った。
松明を掲げると、泉の水面が揺らいでいるのが分かった。
皆で覗き込んでいると、赤い眼を光らせた大きな獣が、獲物を襲っている様子が映った。
長いヒゲが触手のように動き、獲物を絡め取る。
鉤爪で押さえつけ、牙で引き裂き、弄んでいた。
その獲物は、セーブルだった。
水面の幻が消えた。
『――闇の雫で一人を潤す――』
泉の底から、声が聞こえた。
「泉の精霊の好意ですわ。受け入れた方が良いですわね」
「なら、ここはセーブル、お前が」
「……いや、力を得るなら、ヴァイスの方がいい」
セーブルに押し切られる形で、俺は跪いて泉の水に口を付けた。
「何ですか、アレは?」
「……真っ暗だな」
行く手が、闇だ。光が一切見えない。
エリュテイアは俺に「羅針盤」を見せた。
水の流れは、どう見ても闇の方を指している。
「こっちに来るぞ!」
俺たちが迷う暇なく、闇の方が迫ってきた。
目を閉じているのと変わらないような暗さ。
そこに、ぼっと橙色の光が浮かび上がった。
エリュテイアの持っていた松明が点ったのだ。
おかげで、「羅針盤」の向きを確かめられる。
歩いている内に、小石か何かを蹴飛ばした。ぽちゃんと音が鳴った。
松明を掲げると、泉の水面が揺らいでいるのが分かった。
皆で覗き込んでいると、赤い眼を光らせた大きな獣が、獲物を襲っている様子が映った。
長いヒゲが触手のように動き、獲物を絡め取る。
鉤爪で押さえつけ、牙で引き裂き、弄んでいた。
その獲物は、セーブルだった。
水面の幻が消えた。
『――闇の雫で一人を潤す――』
泉の底から、声が聞こえた。
「泉の精霊の好意ですわ。受け入れた方が良いですわね」
「なら、ここはセーブル、お前が」
「……いや、力を得るなら、ヴァイスの方がいい」
セーブルに押し切られる形で、俺は跪いて泉の水に口を付けた。