『冬の蝶』
新潮文庫、番号18、『ボッコちゃん』収録。
他作品の話で恐縮だが、ゲーム『クロノトリガー』での「未来」の町では、
食べ物を「作る」という発想が消滅していた。
食べ物は機械が「出してくれる」物であり、自分たちには何も出来ないと思い込んでいた。
この『冬の蝶』を読んだ時、上記のエピソードを連想した。
室内は常に快適な温度に保たれ、我慢する必要は一切ない。
物はどんどん供給されるから、保管せず全て消費する。
どの家屋にも完全カンペキなインフラが整備されている、理想的な世界。
故に、もしもそんなインフラが一度止まったら、その瞬間に世界は崩壊する。
文明の終わりである。
そして、翻って考えれば、今の私たちも、前述した生活に片足突っ込んだりしてないか。
停電したり流通が止まったりした時のパニックは、少しばかり経験した身でも辛すぎる。
何かがあって、やわな私たちが去った後の時代、本作と同じような形で誰かが次の文明を興したりするんだろうか。
なお、余談ながら、ここまで文明が発達している未来なのに、
タバコを吸うシーンが出てくる事に時代を感じる。
構えただけで自動的に熱線が発射される部屋って凄いな。
それでは。また次回。