オレは、震える体を奮い起こして、最後の一撃を放った。
クリスナイフを胸に刺された悪魔は、吠えるように叫びを上げた。
蹄の足がたたらを踏んで、振り回した腕が天井のシャンデリアをぶっ壊した。
床に散らばったロウソクは、あっと言う間にカーペットに燃え広がっていった。
悪魔はテーブルの上に倒れこみ、もがきながら、その姿を消していく。
「ああっ! 我が主よ!」
後ろから悲鳴が聞こえた。
伯爵が、テーブルに倒れた悪魔に駆け寄って行く。
薄れゆく悪魔にしがみ付き、おいおいと泣き出した。
まるで、親と別れてしまった子供のようだった。
……ふと、頬に当たる熱。
カーペットに広がった炎がカーテンにまで燃え移ってきている。
オレは出口に向かって走った。
伯爵は、悪魔を抱きしめていた。最期まで。ずっと。
オレが外へ出た頃には、館のあちこちから炎が吹き上がっていた。
もう雨も止んでいる。
全てが消えていく。全てが無くなっていく。
はじめから、そう決められていたかのように。
オレは願った。
どうか次の夜こそ、夢も見ないほど眠れますように――と。
「悪夢からの脱出」完
クリスナイフを胸に刺された悪魔は、吠えるように叫びを上げた。
蹄の足がたたらを踏んで、振り回した腕が天井のシャンデリアをぶっ壊した。
床に散らばったロウソクは、あっと言う間にカーペットに燃え広がっていった。
悪魔はテーブルの上に倒れこみ、もがきながら、その姿を消していく。
「ああっ! 我が主よ!」
後ろから悲鳴が聞こえた。
伯爵が、テーブルに倒れた悪魔に駆け寄って行く。
薄れゆく悪魔にしがみ付き、おいおいと泣き出した。
まるで、親と別れてしまった子供のようだった。
……ふと、頬に当たる熱。
カーペットに広がった炎がカーテンにまで燃え移ってきている。
オレは出口に向かって走った。
伯爵は、悪魔を抱きしめていた。最期まで。ずっと。
オレが外へ出た頃には、館のあちこちから炎が吹き上がっていた。
もう雨も止んでいる。
全てが消えていく。全てが無くなっていく。
はじめから、そう決められていたかのように。
オレは願った。
どうか次の夜こそ、夢も見ないほど眠れますように――と。
「悪夢からの脱出」完