飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」「万里一空」「雲外蒼天」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

児童会役員選挙 その3

2024年09月19日 05時00分00秒 | 学級経営
立候補者に言った。
「明日までに演説を考えてきなさい。
 内容は問いません。
 とにかく長く書いていらっしゃい。
 もし、書けなかった場合は、立候補を取り消します。
 やる気が本気であることをクラス全員に事実で示しなさい。
 そうすれば友達は本気になって応援してくれます。」

次の日、立候補者によるクラス内演説が始まった。
どの子も真剣に聞いていた。
私は感動した。
これまで、何回も児童会役員選挙の演説を聞いてきたがこれほどまでに心に響いた演説はなかった。
演説の内容が、鮮明な方針をもっていたことが原因だが、もうひとつ大切なことはひとりひとりの必死さ、ひたむきさが伝わってきたということだ。
もちろん子どもたちができることには限界がある。
学校の方針の方や上位概念であるいじょう、その方針に反した活動はできない。
各種法律や法令、政令が上位法である日本国憲法に反するような条文をつくれないことと同じだ。

全員の演説が終わった時、大きな拍手が教室に鳴り響いた。
「私は感動しました。
 君たちなら、必ず児童会へ行って、何かをしてくれる、そういう気がします。
 しかし、選挙があります。
 だから、その日までベストを尽くしなさい。
 400名の前で演説ができるなんて経験はもうないかもしれません。
 自分は立候補してよかったと、自分の口で言えるようなそんな演説をしなさい。」
多くの子供達がその日の日記に次のように書いてきた。
「この人たちなら、児童会を変えてくれる。
 必ず何かしてくれる。
 そういう気持ちになった。」

立候補者による演説会が体育館で行われた。
当日、3人は輝いていた。
堂々と自分の考えを子供達の前で述べた。
一切原稿見ずに、すべて暗記して。
人真似ではない、自分の主張がそこにはあった。
すべての立候補者の演説が終わったあとも、1組の子どもたちだけは壇上の子どもたちが舞台の袖に見えなくなるまで拍手をおくっていた。

選挙活動に関して、少し書き加えたいと思う。
私は、実際にグループについていったわけではないので、詳細はよくわかない。
運動期間中も、小さなトラブルはあったようである。
積極的に参加しない友達、運動の仕方自体にも多少も問題もあったろう。
私もあえて口を出さずに、子どもたちに今回はまかせた。
しかし、クラス全員が取り組んだ活動には違いなかった。
「3人を絶対に当選させる。」
これを合言葉にしてきた。
立会演説会の前に、2回目のクラス内演説を行った。
どうせやるなら体育館でやろうということになり、移動した。
3人は壇上に上り、一人ずつ演説した。
私は、次のように言った。
「ベストを尽くすように。
 演説というのは、どう話すかではなく、何を話すかが重要だ。
 君たちの演説は今まで私が聞いた中で一番素晴らしい。
 だから、上手に言おうとする必要はまったくない。」
最後に、3人に学級でエールを贈った。
丸くなって、みんなで声を出した。
「フレ!フレ!◯◯…」
体育館に子どもたちの声援がこだました。

演説会当日を迎えた。
6年生は、順番が最後の方になっていた。
聞いている子どもたちもだんだん集中力が落ちてくる。
当然、会場はざわついてくる。
司会の子が、静かにするようにうながしても、なかなか静かにならなかった。

そんな中で、1組の最初の候補者の番になった。
その子は、演台の前に立つと全体を見回して礼をしたあと、唐突に次のように目の前に子どもたちに語りかけた。
「あの、みなさん、今から私の言うことを聞いてください。
 このステージに上に立つ勇気のある人は、ちゃんと私の話を聞いてください。
 このステージの上に立つ勇気のない人は、私の話を聞かなくてもいいです。」
そう言い終わったあと、自分の演説を始めた。
彼の言葉で、それまでのざわつきはなくなり、静寂の中で彼の声だけが体育館に響いた。
彼が何を言いたかったのか。
おそらく会場にいた子どもたちの多くは彼の言葉の意味は理解できなったと思う。
しかし、彼の真剣な問いかけには、全体を静かにさせる力があったことは間違いない。
私は、ここまでこの子は成長したのかと感慨深かった。

開票の結果は、1組の候補者全員が当選した。
これは快挙である。
しかし、嬉しさと同時に「おそろしさ」を感じた。
これから、彼らと、そして、クラスの子供達と進む道を考えると喜んでばかりはいられなかった。
本当の活動はこれから始まるのだ。
児童会が良くなるのも悪くなるのも、この3人にかかっている。

なぜ3名の子どもたちが全員当選できたのか。
あらく考えて、次の3つのことがあげられると思う。
1 鮮明な方針をもったこと。
2 学級全員で候補者を応援して活動したこと。
3 この児童会選挙の目的は自分の成長であることを自覚していたこと。

saitani





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