日刊ゲンダイデジタル様のホームページより下記の記事をお借りして紹介します。(コピー)です。
女優の中村メイコさん(87)の著書「大事なものから捨てなさい」(講談社)が話題だ。老いの常識にとらわれず、軽やかに生きるヒントが満載で同世代の高齢者はもちろん、断捨離を進めて欲しいと願う子供世代からも支持されている。そんな中村の固定概念にとらわれない生き方のヒントを聞いた。
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断捨離は大事なものからがメイコ流だ。
「子供の頃、エノケン(榎本健一)さんに頂いたお人形を処分したあたりが断捨離のきっかけでしょうか。2歳でオムツをしながら芸能界で仕事していた私を可愛がってくださったのがエノケンさんで、毎日頂いたお人形を抱いて仕事に行っていたほど大切にしていました。でも、子供たちには思い出の価値はわからないし、ましてや私が残していったら処分に困る。そこで人形は思い切って処分しました。処分してみて気づくのは、大切なものから処分すると、その先の断捨離が進むということ。逆を言うと、それができないといつまでも片付かないんです」
スターばかりのお宝写真も処分した。
「いちばん切なかったのは江利チエミさんと高倉健さんの結婚式の写真でしたね。『来世で一緒になりなさいね。あなたたちお似合いだったわよ』って話しかけながら、ハサミで細かく切って処分しました。家族が一番困るのは思い出と思い出の品。心の中に記憶されていると思う、割り切りが必要です」
自宅も断捨離
近著「大事なものから捨てなさい」(講談社刊)/(C)日刊ゲンダイ
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家も一軒家からマンションに。
「子供たちも巣立ち、客間も不要、何より年金暮らしには維持費がかかりすぎるので、思い切って家もコンパクトにしました。女優は環境に合わせて演じるので、自宅もセットと考え“家に合わせ”て断捨離しました。ついつい、大きくなった家、増えた荷物を維持することに頭が凝り固まってしまいがちですが『家(のサイズ)に合わせる』という逆転の発想でコンパクトにするのも一案です」
クローゼットからあふれるほどの服も処分した。
「服は似合いそうな人に差し上げたりして、相当処分しました。おかげで把握できていない服はなくなり、洋服もクローゼットの中でのびのびしているように見えます。身辺整理をして本当に良かったと思います」
加齢とともにオシャレも進化。選ぶ服にパステルカラーが増えたそう。
「昔は紺やグレーが好きでしたが、加齢で肌がくすんだ上にベージュを着ると表情も肌もより沈むので、赤やピンクなどのパステルカラーや明るい色を着るようになりました。白髪は明るい色と相性がいいし、おばあさんだとすぐ分かるから若作りにもならない。神様ってどこか気を使ってくださるのね(笑い)」
親友の黒柳徹子とは断捨離の概念も異なる。
「私の場合は残された子供たちに迷惑にならないように処分するのがエチケット。でも独身の徹子さんは『捨てないわ、全部倉庫にとってあるの』とおっしゃる。老後も一くくりではないし、世間のあるべき姿に合わせる必要はないと思います」
「私は病院で死にたい」
中村メイコさん(C)日刊ゲンダイ
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美空ひばりをはじめ、同世代のスターを見送ってきた。
「みなさんあっちの世界に行っちゃって、飲みたいと思える人がいなくなりました。でも、毎日お酒は欠かさない。楽しくお酒を飲めることが一番のサプリです」
介護は夫婦内で完結するのが基本、という意見には否定的だ。
「夫はもともと“妻には俺のパンツを洗って欲しくない”タイプで、今でも私が夫の前を裸で歩くこともないし、夫もパンツ一枚で歩き回ることもありません。私に豊かな胸があったら違うのかもしれませんが、そういう越えてはいけない“夫婦の38度線”が死ぬまであってもいい。ウチは将来どちらかが介護状態になったら、夫(妻)にシモの世話はしてもらいたくない。糖尿病の姑と同居し、介護する側も経験しましたが、そこはプロの手をお借りする。費用もかさむけれど、別でやりくりすればいい。お金をかけるべき優先順位は夫婦で決めてもいいと思うんです」
一昨年、転倒して関節を骨折。今も歩行はスムーズとは言えないが、意外なギフトもあったとか。
「私が不自由になって初めて夫がご飯を作ってくれるようになりました。『君はこんな楽しいことやってたのか』って言うから“そうでもないのよ”と思いながらも『そうね』って持ち上げた。そしたら、結婚して60年以上自分が台所に立つなんて思わなかった人が変わるんだから。ホント、ケガの功名ね(笑い)」
■「両親の墓と神津家と分骨してもらうつもり」
死も選択できる時代になり、在宅死を望む人も増えている。
「家をセットとして考えた時、住み慣れた家に病人が横たわって、酸素吸入器が運ばれ、白衣の看護師が通ったら違和感がある。死を迎えるシーンだったら、やっぱり病院の方がしっくりくる。だから私は病院で死にたいと思うんです」
世の妻たちには「夫の家の墓は嫌、死んでまで親戚づきあいはしたくない」という意見も多い。
「結婚を許してくれた義父に対する敬意と感謝を込めて、夫が父に『メイコが亡くなったらお義父さんの元にお返しします』と約束しているので、両親の墓と神津家と分骨してもらうつもりです。家にこだわる必要もないし、分骨も悪くない。亡くなったらより軽やかでいいんじゃないかしら」
女優歴85年、今後の展望は?
「私は体験から演技に生かすのがいいとは思っていないんです。若い人があえて老け役を演じるから見られるのであって、本当におばあさんが舞台に出てきたら気の毒で観客は拍手できません。人生って生きてゆくことと夢の差がいっぱいあるんですよ(笑い)。幸い、私は声のお仕事を頂くことが多いので、声のお仕事をやりたいですね。昔、上等なフランス製のレースのカーテンっていう役を頂いたことがあって、どんな声で、どんなエレガントな言葉で表現しようかしらと考えてワクワクしました。これからもそんなすてきな役を演じてみたいですね」
(聞き手=岩渕景子/日刊ゲンダイ)
▽中村メイコ 1934年、東京都生まれ。作家の中村正常と元新劇女優の母のもとに生まれ、2歳で芸能界デビュー。1957年に作曲家の神津善行氏と結婚し、神津ファミリーとして親しまれている。