ヨミドクター様のホームページより下記の記事をお借りして紹介します。(コピー)です。
昌子さん(82)と絹江さん(84)は同じ団地に住む仲良しコンビ。子育て時代から半世紀にわたるお付き合いです。子供も独立して毎日のようにお互いの部屋を行き来して過ごしています。今日は、昌子さんが絹江さんの部屋に立ち寄りました。
「絹ちゃん、今日、ご主人は?」
「今日はデイサービス。助かるわ。いないとホッとするわ」
「最近、ご主人、痩せたんじゃない?」
「そう? まあ、年だからね。あんなもんじゃない」
「この間、町会の勉強会に栄養士さんが来て話してたけど、急激に痩せる時こそ栄養取らないといけないんだって」
「でも、全然動かないし食べないんだもん。そりゃあ、痩せるでしょ。テレビを見るために生きてるような感じだし」
「そういう時ってケアマネジャーさんに相談すればいいんだって。聞いてみれば?」
「そんなこと聞いていいのかしら?」
異常に気づいたら、専門職につなごう
高齢者の食事や栄養の問題を考えるとき、いかに早く異常を見つけるかということが重要です。例えば、「運動をしなくなって食欲もなく、体重が減ってきている」という変化があれば、異常なので何かの処置やアドバイスが必要です。しかし、その状態の方を医療職だけで見つけるのは難しいことです。
家族や知人、行きつけのお店の店員など地域で暮らす人たちが少し気にかけておくことで変化に気づくかもしれません。そして、問題は気づいた後にどうするかです。「体調悪そうですね。お大事に」では何も変わりません。異常に気づいたら、対応ができる医療職などにつなぐことが大切です。
地域には医療、介護の専門職がたくさんいますが、地域住民としっかり連携しているかどうかは別の問題です。何か異常に気づいた時、主治医の先生や栄養士の方に相談できればいいのですが、直接連絡できないこともあります。また、誰に相談していいのかわからないかもしれません。このような時、地域で頼りになるのがケアマネジャーやソーシャルワーカーなど相談援助職の方です。
最期まで口から食べられる地域づくり
地域の中で栄養や食べることの異常を早期に見つける人、それを適切な人につなぐ人、そして実際に対応する人の輪がつながると、「最期まで口から食べられる地域」ができると考えています。しかも、見つける人、つなぐ人、対応する人の誰が欠けてもダメなのです。早期に異常を発見しても次につなぐ人がいなければ結果が出せません。早期に見つけて、つなぐ人に相談できても、その地域に対応する人がいなければ結果が出ません。そもそも、異常を見つける人がいなければ改善しません。専門職、一般住民の枠を超えて地域の中に見つける人、つなぐ人、実際に対応する人がいなければ「最期まで口から食べられる地域」はできないのです。
さて、冒頭の絹江さん。昌子さんのアドバイスでケアマネジャーさんに相談しました。その話をケアマネジャーが在宅主治医に伝えたところ、主治医からの指示で管理栄養士が絹江さんのご主人の元を訪問しました。その栄養アドバイスの結果、体重が増加傾向に変化しました。昌子さんが見つけ、ケアマネジャー、主治医がつなぎ、管理栄養士が結果を出しました。
このような地域の輪を作っていきたいと思っています。(五島朋幸 歯科医)