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「『家政婦』扱いするあなたに愛情はない」。妻に切り捨てられた定年夫の悲哀

2021-12-16 15:30:00 | 日記

下記の記事は婦人公論.jp様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

自分の人生を生きるため、“主婦業” を前向きに卒業していく女性に対し、定年を前にした夫たちは立ちすくんでしまうケースが少なくない。人生の節目で、夫婦の明暗が分かれてしまうのはなぜなのか──(取材・文=奥田祥子)

2人で温泉巡りでも……と思っていたのは夫だけ

リタイアして初めて、家庭に自分の居場所がないことに気づくという男性は多い。私は新聞記者時代から20年にわたり、「夫婦関係」について、さまざまな人に継続的にインタビューを行ってきた。佐藤良一さん(62歳・仮名=以下同)もその一人だ。誠実な人柄で、真面目に仕事に取り組んできたことは疑いようがない。だが一方で、夫、父親としてはどうだったのだろうか。

「長い間、家族のことを思って懸命に働き続けてきたんです。定年後はかみさんとゆっくり温泉巡りでも、と思って、継続雇用も希望しなかったんですが、まさかこんなことになるとは……」

2018年初春、兵庫県内の高級住宅地にある自宅近くのカフェで、佐藤さんは時にを紅潮させ、また時に唇を小刻みに震わせながら、思いの丈をぶつけた。

 

佐藤さんと知り合ったのは1999年。大手メーカーで課長職に就いていた彼に、成果主義人事制度の根幹をなす人事考課の考課者としての悩みを聞いたのが始まりだった。

「賃金に影響する評価を相対的に5段階に振り分けねばならず、低い評価の者のことを考えるとつらい。彼らにも家族はいるわけで……。でもそれは自分も同じ。妻子のためにもこの仕事は避けて通れないんです」

考課制度の矛盾を批判しながら、自他問わず、家族を思いやる気持ちが伝わってきたのが印象的だった。

不況時にはリストラ対象者を選ぶ役目を命じられ、うつ状態が続いたこともあった。苦境を乗り越えられた要因を尋ねると、彼の口から出た言葉はまたしても「家族」だった。

しかし、当時すでに妻と長男、長女の子ども2人との心の隔たりは着々と進行していたのだ。

52歳の時に部長に昇進するまでの間、2回転勤を経験したが、いずれも子どもたちの中学、高校受験を理由に妻子は赴任地に同行しなかった。仕事に力を注ぐあまり、いつしか自宅への帰省回数も減っていく。

大阪本社に戻った時には、高校生の子どもたちは父親の話しかけにもろくに応じない状態になってしまっていた。「大事な時にそばにいてくれなかったくせに、偉そうなこと言わないで」と長女が放った言葉が、胸の奥深くに突き刺さったという。

そうして2017年、自身の定年退職の日、妻から「これからは自分のために生きてみたい。あなたのお世話をする余裕はもうありませんから」と告げられた。理由を尋ねると、「これまで自分を犠牲にしてきた。それはあなたが家庭に気を配ろうとしなかったから」と淡々と答えたという。

専業主婦だった同い年の妻は、長男が大学を卒業すると中堅商社で派遣スタッフとして、結婚前に職務経験のあった貿易事務の仕事に就いていた。実績が認められて転勤のない「限定正社員」に登用されたのだという。

「かみさんが長年不満を募らせていたことを定年の日、初めて知ったんです。彼女は直接、私に怒りをぶつけることはありませんが、あの日を境に夜遅く帰宅したり、週末に出かけたりすることが増えました」

18年初春の取材で、佐藤さんはそう寂しげに語った。

定年から2年近く過ぎた今年の春、佐藤さんはかつて勤めていた会社の子会社に嘱託社員として再就職する。この7月、1年半ぶりに再会した際、心なしか表情が明るくなったように感じた。

そして、「今の会社を退職する時までに、再び家庭に居場所を取り戻したい。そのために料理をしたりして自分なりに努力しているんですが、かみさんがそれをどう思っているかはわかりません」と語った。

 

佐藤さんのように、仕事ひと筋で家庭を顧みてこなかった理由として、「妻子のためを思って、仕事を頑張ってきた」と主張する男性は非常に多い。しかし現実は、その苦労をねぎらってもらうどころか、居場所を失ってしまう。

問題はその思いを言葉で伝えてきたのかということ。家族は自分たちへの無関心と受け取ってしまうだろうが、知らぬは父ばかり……なのである。

 

出世していく妻に敗北感が募って

現在61歳と51歳の山田幸太郎さん、美津子さん夫妻には、15年前から取材に協力してもらってきた。

もとは2004年、当時36歳の美津子さんに、女性の仕事と家庭の両立をテーマにインタビューしたのが最初だった。大阪に本社のある専門商社に総合職として勤務し、33歳の時、仕事で知り合った10歳年上の男性と結婚。取材時は、長男出産後1年近く育児休業を取得し、職場復帰して半年過ぎた頃だった。

夫婦ともに地方出身で、近くに親、きょうだいはいない。子育てと仕事を両立するうえで重要な点を尋ねると、間髪容れずに夫の協力を挙げた。

「夫は私が子育てをしながら、仕事を続けて力を発揮していくことを応援してくれています。保育園の送り迎えを手伝ってくれたりして、とても助かっているんですよ」

両立の疲れを微塵も見せず、そう明るい表情で語ったことが取材ノートにも克明に記されている。今ほど企業の両立支援策が整備されていなかった時期に、珍しいケースだった。

その後、美津子さんの紹介で夫の幸太郎さんに同席してもらい、インタビューを重ねることになる。幸太郎さんは当時46歳で、部次長職に就いていた。重責を担い、仕事量も多いことが想像に易かったが、育児を担っていることについて、「子育ては楽しい。世の中のお父さんたちがどうして奥さん任せにしているのか、疑問ですね」と言ってのけた。「イクメン」という言葉が登場する何年も前のことである。育児に積極的に関わる男性の先駆けだったのだ。

ところがある時期を境に、事態は一変する。まず異変の兆しは、幸太郎さんが取材に応じてくれなくなったこと。リーマン・ショックの翌年、09年のことだった。

それから数年は、美津子さんだけに話を聞くことになるが、子どもが小学校に上がる少し前から夫婦の会話が少なくなり、幸太郎さんは育児に関わらなくなっていったという。

「子会社に出向したのが何らかのきっかけになっているんでしょうが、息子ともあまり口を利かなくなったのが全然、理解できません。お父さんとキャッチボールをしたりして遊んでもらいたいみたいなんですけれど、かわいそうで……」

58歳になった幸太郎さんへの取材が実現した16年。彼は出向先の会社に転籍していた。

 

「あの頃は部長になれず、左遷されたことが大きなショックでした。子育てを分担していて、仕事に集中できなかったのが影響したのではと考えてしまって……。それに妻が順調に出世しているのに、自分が情けなくて……」

一人息子は、まったく口を利いてくれないという。「息子との溝をなかなか埋められない」と背中を丸めて漏らす姿が、痛々しかった。

幸太郎さんは1年ほど前に定年を迎え、現在は継続雇用制度を利用して週に3回、同じ会社に勤務している。パート勤務を選んだのは、今春高校に進学した息子と、部長昇進間近という現在51歳の妻との関係を改善させたかったから。

だがつい先日、あらためて心境を問うと、「この10年あまり祝っていなかった結婚記念日や妻の誕生日に食事に誘ったら、『予定があるから』と断られ、息子の進路相談に乗ろうとすると『放っておいて』と拒絶され……。必死になればなるほど、妻と息子には避けられているようです」と、苦しい胸の内を明かした。

美津子さんにも取材をお願いしたのだが、現時点では応じてもらえなかった。ただメールで返事をくれた。承諾を得て一部を紹介する。

〈今さら良い父、夫になろうとされても、どう接していいのかわからないのです。ただ、彼が頑張っている姿を見て、夫婦の「定年」が終わりではなく、何かの始まりになればいいな、とは思い始めています〉

仕事で能力を発揮し、管理職に昇進して活躍する妻と、そんな妻を応援して積極的に育児に携わるイクメン夫は今、社会が求める理想の夫婦像のようである。しかし、夫婦が十分にコミュニケーションをとって相互理解に努めなければ、思わぬ亀裂を生じさせてしまう。

子育てに関わることが大切であると理解しながらも、本音の部分ではいまだ、固定的な性別役割分担意識に支配されている男性は少なくない。出世の先を行く妻に対して、敗北感を抱くこともありうるのだ。そして自分から家族と心理的に離れていく──。自分自身のなかにある“伝統的な規範意識”はなかなか変えられない。定年も近づいた50代、60代になって、そのことに気づく人もいる。

 

 

「家政婦」扱いをし続ける夫にもはや愛情はない

東京都在住の佐々木由美さんには2008年、「婚外恋愛」をテーマにした取材で出会った。それが、結婚している女性が行う不貞行為、つまり不倫であることは紛れもない事実なのだが、当の女性たちは「恋愛」と主張するケースが増えていた。

当時44歳の佐々木さんもそんな女性の一人だったのだが、夫以外の男性と「恋愛」に走った理由が独特で軽い衝撃を受けた。「夫の日常」のせい──。取材対象者の多くが夫の浮気などを理由に挙げたの対し、彼女はそう答えたからだ。

短大卒業後、事務職の仕事を10年近く務め、30歳で本人が「夢だった」という専業主婦の座を射止めた。翌年に長女を出産、その3年後には義母から望まれていた念願の長男を授かった。だが、「長男の嫁の役目を果たした」達成感もつかの間、夫とはセックスレスとなり、自身の気持ちに変化が芽生え始めたのだという。

「夫が『お茶』『飯まだ?』と私をこき使うのが、無性に腹立たしくなってきたんです。妻は家庭のことをこなして当たり前と思い込み、感謝の気持ちなんてこれっぽっちもないんですから……」

気丈に振る舞っていた佐々木さんが、目に涙を浮かべて話す姿を今でもはっきりと覚えている。

婚外恋愛に走った佐々木さんだが、1年あまりでその関係に終止符を打つ。ちょうど、長男が私立中学受験を控えて塾通いなどで忙しくなり始めていたからだ。そしてしばらくすると、今度は公立中学校に通う娘が、いじめが原因とみられる不登校になる。わが子を巡る問題は夫との関係をさらに悪化させる要因となった。

「夫は私に対してだけでなく、子どものことにも無関心で、すべて私任せ。『仕事が忙しい』の一点張りで、キレるとすぐ口にするのが『誰のおかげで生活できると思っているんだ』です」

40代半ばを過ぎた頃、そうつらい心境を語った佐々木さんは、当時すでに旧態依然とした男らしさに囚われている夫に見切りをつけていたのかもしれない。

長女は高校生になると学校に通えるようになり、長男も大学までエスカレーター式で進学できる第一志望の私立中学に合格した。子どもたちの成長を見届け、通信講座で簿記の資格を取り、契約社員として食品卸売会社で働き始めた。48歳の時だ。

19年春、面会での取材は約1年ぶりとなる佐々木さんは胸元にレースをあしらったピンクベージュ色のワンピースをまとい、55歳という年齢より若く見えた。3年前に役職定年となった夫は、在宅時間が増え、細かなゴミを見つけては掃除を指示したり、食事の味付けにうるさく文句をつけたりするなど、以前にもまして妻を「家政婦」扱いするという。

「もう限界です。夫が定年退職したら離婚するつもり。実は、働きに出てから知り合った男性とお付き合いしているんです。昔のとは違って、今回は真剣なので……。夫と違い私のことを気遣ってくれる優しい人で、信頼できて、経済力もあるし、時が来たら再婚したいと思っています」

 

長年の怒りが積もった夫に見切りをつけたからだろうか。佐々木さんは11年に及ぶ取材で、最も穏やかで、すがすがしい表情を見せた。

***

かつて結婚は安心、安定をもたらすものとされたが、今では不安やリスクを増大させるものへと変容してしまっている。にもかかわらず、人は自分を必要とし、認めてくれる親密な存在としてパートナーを求め続ける。承認欲求は生きていくうえで欠かせないが、それを満たす関係を何十年も続けていくのもまた難しい。

今回紹介した事例の夫たちも、家族のために懸命に働いてきたことに偽りはないだろう。しかし夫たちは結局、妻の家事や子育てをする力に甘えていたのだ。

長年、家庭を妻任せにしてきた夫たちは、自分に妻がうんざりしていることを知らぬまま、「なぜ汗水たらして働いている俺に感謝しないんだ」「妻が変わってしまった」と嘆く。また、今さらながら「良き夫」になろうとするが、どうにも妻の意向とかみ合わず、うっとうしがられる。そのうえ、性懲りもなく「妻の気持ちがわからない」と訴える。

妻たちの不満の根底に共通するのは、夫たちが己のしてきたこと、してこなかったことを妻がどう受け止め、感じているかについて、まったく「気づいていない」ことなのに。

出典=『婦人公論』2019年8月27日号

奥田祥子

近畿大学教授・ジャーナリスト

博士(政策・メディア)。専門は労働・福祉政策、メディア論、ジェンダー。新聞社在籍時より20年にわたり、一人ひとりに継続的なインタビューを行う。


デマが事実として炎上ネタに…池袋暴走事故の加害者家族が伝えられなかった本当のこと

2021-12-16 13:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

殺人事件などの凶悪犯罪では、被害者家族には公的なサポートが広がりつつある。一方、加害者家族の場合はどうか。長年にわたり加害者家族を支援し、『家族間殺人』(幻冬舎新書)を書いた阿部恭子さんに聞いた――。
「重大事件の容疑者家族は保護できない」

――阿部さんは、犯罪加害者の家族支援のひとつに報道対応をあげていましたが、具体的にはどんなサポートを行うのですか?

私たちが報道対応を本格的に実践したのが、「野田市小学4年女児虐待事件」からです。

2019年1月下旬、千葉県野田市のアパートで、父親から凄惨せいさんな虐待を受けた小学4年生の女児が亡くなりました。前年にも東京都目黒区で、少女の虐待死事件が起きていたために、社会的な注目を集めて報道が過熱しました。そして世間は、被害者に同情し、加害者、そして加害者家族を激しく糾弾しました。

事件の報道後、私は、父親の妹、つまり女児の叔母から連絡をもらいました。警察に相談しても「重大事件の容疑者家族は保護できない」と言われ、連日、自宅に詰めかける報道陣への対処に苦慮しているというのです。

しかも家族は、逮捕された女児の父親との面会も認められず、事態を把握できないまま報道陣から身を隠すような生活を余儀なくされていました。

私たちが千葉県柏市で会見をセッティングしたのは、事件から1年ほどが過ぎた2020年2月のことです。裁判員裁判に向け、加害者家族に対して報道陣が再び殺到すると予想されました。そこで、私がメディアの窓口になって情報を提供する代わりに、加害者家族への取材を控えてもらうようお願いしたのです。

メディアスクラムを組まれ日常生活が送れなくなる
事件後、家族は住み慣れた町を離れました。相談者や彼女の幼い子どもたちも、ようやく新たな環境に慣れはじめた時期です。報道陣による執拗しつような取材で、再び転居を強いられることがないようにサポートを必要としていたのです。

事件後に加害者家族が転居するケースは少なくありません。メディアスクラムのなかでは、高齢の家族が通院することも、子どもが通学することも、買い物に出かけることもできなくなります。

隣近所の人から面と向かって非難されなくても、申し訳なさから肩身の狭い思いをする人もいます。事件を境に、当たり前だった日常を送れなくなってしまうのです。
玄関に張り紙を貼りメディア対応の窓口になる
――記者会見以外には、どんな報道対応がありますか?

逮捕直後から支援が行えるのなら加害者家族には、あらかじめ私の名刺を多めにわたしておきます。報道陣から取材を受けたら、窓口は私だと名刺をわたして伝えてもらうようにしています。加害者の家族が自宅から身を隠している場合は、玄関に私の連絡先を書いた張り紙を貼ってもらいます。

とくに重要なのは誤報の訂正です。SNSの普及で間違った情報でもどんどん拡散されてしまう。野田の事件でも、殺された女児の父親が、妹(相談者)をいじめていたというデマが広まっていました。それなのに、犯罪加害者の家族には訂正するすべがない。

私たちはSNSで間違った情報が広まるたび「SNSでこういう話が出ていますが、これは誤報です」と記者会見やメディアなどを通じて、間違いを指摘しています。

加害者家族の多くは生活を建て直すために転居を強いられます。しかしSNSで拡散されれば、何度転居しても、かつての犯罪が掘り起こされ、逃げ場すら奪われて、社会復帰すらままなりません。

――SNSへの書き込みについては、「加害者に対する社会的制裁だ」と容認する風潮があります。

それも大きな問題ですね。ネット上に残った誤報は、デジタル・タトゥーとして何世代にもわたり、家族の名誉を傷つけてしまいます。誤報はSNSだけの問題ではありません。捜査段階で間違った情報が流れることもある。メディアは警察発表をそのまま使うから、間違った情報が“事実”として定着してしまう。

「高級フレンチ」ではなく「普通の洋食屋」だった
最近では、2人が死亡し、9人が負傷した「池袋暴走事故」がそうです。

事故後、車を運転していた飯塚幸三氏が逮捕されなかったのは、旧通産省工業技術院の元院長という「上級国民」だからとされ、世間から激しいバッシングを受けました。たとえば飯塚氏は事故発生直後、「救急車が到着する前に息子に携帯電話をかけていた」と報道されました。でも、事実は違うんです。

――どういうことですか?

息子さんが飯塚氏から電話を受けたのは事故の55分後です。警察発表をもとにメディアが「事故直後に息子に電話した」と報じた結果、飯塚氏が息子に揉み消しを依頼したというデマに変わってしまいました。

さらに、「フレンチレストランを予約していて、遅れないように急いでいた」とも報じられました。メディアは「上級国民」を強調したかったのでしょう。でも、そのお店は「フレンチ」というイメージにはそぐわないような普通の洋食屋で、飯塚氏は懇意にしていたので遅れてもかまわない状況でした。

事故当時は、飯塚氏の家族が何を語ったとしてもバッシングが加熱するだけ。沈黙するしかありませんでした。飯塚氏と家族は、世間からの激しいバッシングにさらされました。でも、彼一人を極悪人として攻撃しても、決して社会はよくなりません。
デマを訂正することで加害者家族の未来を守る
重大事件の家族をサポートする過程で、私は間違った情報を訂正していく意味に改めて気づきました。この活動は、飯塚氏の家族を支えるだけでなく、犯罪加害者の子どもたちの将来のためにもなるんだ、と。

――どういうことでしょう。

阿部恭子『家族間殺人』(幻冬舎新書)阿部恭子『家族間殺人』(幻冬舎新書)
犯罪加害者となった人物に、幼い子どもがいるとします。いつかその子が成長したとき、自分の親について、親の事件について調べると思うんです。そのとき目に入ってくるのが、事実を無視した記事や、感情的なコメントばかりだったらどう受け止めるでしょうか。きっと大きなショックを受けるはずです。

でも、そのなかに少数だとしても、事実に基づいた記事や、家族の思いなどが残されていれば、少しは救われるのではないか。私は、そんな子に、世の中は間違った情報を垂れ流す人ばかりではないと知ってほしい。いい意味でのデジタル・タトゥーもあるんじゃないか、と思うんです。

「加害者側の言い分や主張なんて信じるな」「罪を犯したのだから制裁を受けるのが当たり前だ」……。

私たちの活動や姿勢に対して、そうした批判もあります。実は、私はそうした意見もあるべきだと思っているんです。情報を取捨選択して判断していくのは、一人一人の市民です。だからこそ、知りえた事実を残していく。それも加害者遺族の支援として必要だと考えています。(第3回に続く)

(聞き手・構成=山川徹)

阿部 恭子(あべ・きょうこ)
NPO法人World Open Heart理事長
東北大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。2008年大学院在籍中に、社会的差別と自殺の調査・研究を目的とした任意団体World Open Heartを設立。宮城県仙台市を拠点として、全国で初めて犯罪加害者家族を対象とした各種相談業務や同行支援などの直接的支援と啓発活動を開始、全国の加害者家族からの相談に対応している。


日本人は急速な人口減の深刻さをわかっていない

2021-12-16 12:00:00 | 日記

下記の記事は東洋経済様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

TBS日曜劇場『日本沈没』を観ているとつくづく政府の重大情報開示には駆け引きがあることが思い出されます。

今回の記事のテーマはドラマの話ではなく、現実世界の少々違った意味の日本沈没(?)の話です。

「5年前から94万人減」に隠れた178万人減の真実

11月30日に総務省が2020年国勢調査の確定値を公表しました。NHKの報道のタイトルは『日本の総人口減少続く 5年前より94万人余減少』です。全国紙の報道もすべて「5年で94万人減」で統一されています。

「思っていたよりも小幅だな」

というのが経済評論家としての私の直感でした。2008年に日本の人口が減少に転じた後、それにしても5年で94万人とは減少ペースが遅く感じられる。それで総務省の発表を読んでみると実情がわかりました。数字のからくりはこういうことです。

①日本人の人口は5年間で実は倍近い178万人も減少している

②外国人人口がこの5年間で84万人増えている

③その差し引きで日本の総人口が94万人減少と報道されている

この説明なら私もピンときます。経済の世界では『2030年問題』というキーワードがあって、2030年には日本の人口が大幅に減少し、そのことで経済が回らなくなるのではないかという危機感があります。

ちょうど10年前、2011年に総務省が発表した資料を引用しますと、その時点で未来予測された2030年の日本の総人口は1億1520万人。2020年の人口と比較すればこれからの10年間で1100万人も減少する予測でした。

これからの10年間で1100万人の人口が減少する予測があるならば、最初から「これまでの5年間で日本人は178万人減少している」という事実を報道してくれれば、事の重大さがもっと伝わったはずです。

日本の人口は減少に転じてからは放物線を描くように人口減少が始まると予測されています。最初のうちは減少率が小さいのですが、徐々に加速がついて減少幅が大きくなる。とりあえずここまでの5年間が178万人減で、ここからの10年は1100万人減少というペースで減っていくわけで、やがて人口は半減し遠い将来には「日本人は消滅する」とまでまことしやかに言われているぐらいです。

それではどうすればいいのか?という話ですが、ここから日本にとっては2つの解決の方向性があります。まずは第1の解決の方向性を検討するために、2020年の浜松市の人口グラフをご覧いただければと思います。

(外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

浜松市は男女別、年齢階層別の日本人と外国人の住民台帳データを公表してくれているのでこういったグラフを作ることができます。ただこのグラフは少々トリッキーなところがありまして、グラフの横軸が日本人と外国人で10倍違います。あくまで形を見ていただきたいと思い、そう作ってあります。

この左のグラフの形は日本の人口ピラミッドグラフと大差ありません。日本人の人口ピラミッドは頭でっかちな釣り鐘型になっていて、年々、高齢者部分の形が大きくなっていっています。一方で右側のグラフをみるとわかるとおり日本に流入する外国人人口は20代・30代の若年人口が多く、この層がコンビニ、宅配から工場まで日本経済の現業を支える若い力となっています。

在日外国人は過去5年で4割以上増えている

そして先に1つめの結論を言えば、今は10倍の縮尺の違いがあるこのグラフですが、将来的に日本が発展に転じたいのであればこれから30年ぐらいかけて2つのグラフの縮尺を同じぐらいにしたほうがいいかもしれないわけです。

これが1つめのオプションである移民による国家再生論です。論理的にはありうる選択肢でありながら、日本の移民国家化は国民の間で反対論がとても多い。だから政府は公式には移民という言葉をいっさい使わず、外国人労働者のビザ条件の緩和というような別の言葉で政策を進めています。

その成果が先の国勢調査で出た外国人の人口約275万人という結果です。過去5年間で84万人、実に4割以上も増加していて、コロナ禍で停滞しているとはいえペースとしては2030年には500万人を超える勢いで在日外国人の人数は膨らんでいるわけです。

経済で考えれば外国人増加の方向に向かうのがいいと思う反面、日本文化という観点では移民を認めたくない日本人が多い。この問題は本当は社会全体でもっと議論されるべきです。その議論をしないとどうなるかというのが現在の状況で、国民がそう認識しないうちに日本の実質移民国家化が進んでいる。まさにドラマ『日本沈没』で描かれたような情報開示のせめぎ合いが、隠れ移民国家化を引き起こしているのです。

さて日本の人口減少による社会沈没からの回避策として2つめに検討すべきはDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

私は先日もDXに関係してJA(農業協同組合)の方と議論をする機会があったのですが、とくに農村部において人口問題を回避していくためには移民では間に合わずDXを主な解決策として想定する必要があると私は強く思います。

日本が移民国家に向けて今以上に大きく門戸を広げるのであれば話は別ですが、少しずつ外国人を増やすという今の政策が現実策である以上、その増加人口の大半は都市部に集中します。外国人の若者だって日本人同様、都市部で働きたいのです。

農村部の人口減少問題はより早く深刻化

その結果、農村部では都市部よりも早く人口減少問題が深刻化します。若い労働力が日本全体で足りなくなることで今はそれほど過疎化していない農村部でも、孤立した高齢者世帯をどうするかなど限界集落化問題が表面化します。

一方でDX活用による農村部の限界集落化阻止のビジョンを先にイメージすれば、向かうべき方向は見えてくるでしょう。2040年ごろを想定した日本の農村部はこれから示す文章のようにありたいものです。

舞台となるのは市町村の人口5万人程度、集落としての世帯数は数十戸の農家が主体の集落です。コンビニやJRの駅までは車なら15分ですが歩けば1時間はかかります。中心部のスーパーマーケットやホームセンターは車で30分といった立地で、2021年の前提条件であれば車とそれを運転する家族がいなければ生活が難しい場所でした。

それが2040年では5Gと自動運転の電気自動車とドローンやクリーンエネルギーの普及などで様変わりします。

2040年の集落には休耕地に太陽光パネルが設置され、農作業用の軽トラックや乗用車はすべて電気自動車となっていて発電と一体化した集落のエネルギーグリッドを形成しています。これら農村の電気自動車はロボタクシー網も形成しており、集落の住民はみなスマホでこれらの乗り物を共有し、運転手不在でも買い出しに出られるようになっています。

無人駅の近くに一軒だけある小さな病院は5Gネットワークで大都市の大病院とつながっていて、住民は地元の病院からネットワークを通じて遠隔医療を受けることができます。ドローンによる配達も普通に行われており、農村に住んでいても市町村の中心部からコンビニ弁当やウーバーイーツによる出前をドローンで取り寄せることが可能です。

農作業もDX化が進んでいて、日ごろの見回りはセンサーや監視カメラ、パトロール用のドローンが高齢化で不足する人手を代行してくれます。集落にはかつてはぽつぽつと空き家があったのですが、最近では大都市の企業でリモートワークをする社員と、遠隔授業を受けるその家族がそれらの家屋を借りて住むようになり、集落の人口減少には一定の歯止めがかかるようになっています。

こういったビジョンはこれから20年後という時間軸であれば腹落ちする内容だと思います。だとすればこれから20年かけて徐々にそちらに向けて進むことで来るべき人口減少時代を明るいものに変えることができるはずです。

具体的にはJA主導でこういった社会変革を行うのが望ましいと思いますが、農村部のエネルギーグリッド化、5Gによる農業のDX化はすぐにでも始められますし、ロボタクシー出現までの間のつなぎ政策として、今でもできるカーシェアの全面解禁など手をつけられる政策はたくさんあると思います。

これから20年で2000万人規模の日本人がいなくなる

いずれにしても1つだけ確実に当たる未来予測があります。それは2030年、2040年の日本人人口が1000万人、そして2000万人規模で減少していくということです。

指をくわえてそれを見ていれば日本社会も沈没していく。働き手が不足して高齢者が孤立する人口ピラミッド崩壊社会が出現するのです。それに歯止めをかける有効な手段は、外国人労働者を増やすことと、農村部から先にデジタル未来都市化と進めていくこと。

その危機感を共有するには、冒頭の「日本の総人口が5年前より94万人余減少」という情報開示のあり方は、問題を矮小化するという意味でよくないやり方だったのではないかと私は思うわけです。テレビドラマに引っ張られての感想かもしれませんが皆さんはどう思われますか。

鈴木 貴博 : 経済評論家、百年コンサルティング代表


愛子さま 歯列矯正で劇的ご変貌…乗り越えた5年前の“激ヤセ”事件

2021-12-16 11:00:00 | 日記

下記の記事を女性自身様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

《成年という一つの節目を無事に迎えることができましたことを嬉しく思います》

 

天皇皇后両陛下の長女・愛子さまは12月1日、20歳の誕生日を迎えられ、ご感想を公表された。その中で愛子さまは《成長を見守り、温かい声をお寄せいただいている国民の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます》と、国民への感謝の言葉を綴られた。

 

皇室担当記者は感慨深げに語る。

 

「愛子さまのお言葉は皇族としての自覚を強く感じさせるものでした。育ててくださった両陛下、見守ってくださった上皇ご夫妻、さらには学校の先生や友人に丁寧に感謝を伝え、コロナ禍の国民生活を案じるお気持ちをしっかりと記されています」

 

さらに注目を集めたのは、誕生日に公開されたお写真だった。ツイッター上では愛子さまの“変貌ぶり”に《綺麗になられてうっとりしてしまった》《ますます気品高いお顔立ちに》と、驚嘆の声が続出したのだ。

 

ブラウンのワンピースに、グレンチェックのジャケットを羽織られた愛子さま。フォーマルな装いに合わせて、メークもバッチリされていた。

 

「外部からヘアメークの専門家を呼んでいるはずですが、愛子さまご自身、あるいは雅子さまのご要望にそってスタイリングがされていると思われます」(宮内庁関係者)

 

すっかり大人びた印象になられた愛子さま。その変化をもたらした秘密は“口元”にあった。

 

《愛子さま歯列矯正されてる!》

《歯が綺麗になって笑顔が素敵になられてる》

 

昨年のお写真では八重歯がちょっぴり目立っていた愛子さまだが、1年の間にすっかり歯並びが整っており、ツイッター上でも驚きの声が上がったのだ。

 

歯科矯正を専門にする麻布十番矯正歯科室院長の菊池香織さんによれば「昨今のマスク生活中に歯並びを直そうという人は増えている」という。

 

「歯を抜く場合は2~3年かかりますが、抜かない場合は数カ月で治療が終わることもあります。矯正器具もいまは選択肢が増えていて、一般的なワイヤを使ったブラケットだけでなく、歯の裏側につける目立たない装置や、取り外しができる透明なマウスピースもあります。歯科矯正は、虫歯や歯周病予防、滑舌の改善にもつながります。

 

また、歯並びに心理的なコンプレックスを抱えていた方からは、自然に歯を見せて笑えるようになり、矯正で気持ちが前向きになったという話も聞きます。海外ではよい歯並びが身だしなみのひとつと考えられていますが、日本でも歯並びに対する意識が変わってきているように感じます」

 

 

乗り越えた“激ヤセ”のトラウマ

 

愛子さまも今後、海外からの賓客をもてなしたり、海外訪問をされる機会が増えてくるだろう。

 

「実は、八重歯がチャームポイントの雅子さまも、ご婚約当初、アメリカの雑誌から歯並びについてあれこれと論評を受けたことがおありです。そういった経験もあって、雅子さまが歯列矯正を勧められたのかもしれません」(前出・皇室担当記者)

 

この1年で急激に愛子さまが女子力を向上されたのはなぜなのか。前出の宮内庁関係者は、5年ほど前の“激ヤセ事件”が思い出されると語る。

 

「愛子さまが中学3年生のころ、一気に15kgほどお痩せになったことがありました。思春期の愛子さまはこのころダイエットに取り組まれていたようですが、摂食障害に近い状態にまでエスカレートしてしまったといわれています。雅子さまもたいへん心配され、それ以来愛子さまがダイエットを試みることはなかったそうです。

 

しかし、コロナ禍でご家族や職員以外と顔を合わせる機会がなくなり、他人の視線がプレッシャーにならない状況になりました。そこで雅子さまのサポートを受けつつ、愛子さまは“自分磨き”にチャレンジされたのでしょう。いま、若い女性の間では“自己肯定感”がキーワードになっています。かつてのトラウマを乗り越えてダイエットを成功され、歯列矯正もされたことで、愛子さまはこれまで以上に自信を持ってさまざまな活動に取り組むことができるようになられるはずです」

 

立教大学教授で精神科医の香山リカさんは「ご自分の役割を自然に自覚されているのでは」と語る。

 

「若い女性がオシャレになりたい、綺麗になりたいと思うのは自然なことですが、愛子さまの場合はそれだけではないと思います。成年皇族として人とお会いしたときに、より受け入れられる、いい印象を持ってもらえるにはどうすればいいかとお考えになっているのではないでしょうか。ファッションやメークにも愛子さまの“利他的”なご姿勢が垣間見えました。

 

いまはコロナ禍ということもあり、さまざまなことを遠慮されていると思いますが、いずれはもっと自分らしさを発揮されてもいいのではないかと思います」

 

雅子さまと二人三脚の“美活”で、さらに自信を深められた愛子さま。その笑顔はきっと、日本中を明るくするはず――。


「マスク世代の子ども」に知能低下リスク?専門家が考える対策とは

2021-12-16 08:30:00 | 日記

下記の記事はダイアモンドオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

コロナ禍の新しい生活様式としてすっかり定着したマスク。だが、長引くマスク生活は、子どもたちの脳の発達に影響を及ぼす可能性があるという。実際、保育、教育現場からは「子どものことばの発達が遅いようだ」「反応がおとなしくなった」などの声も上がっているのだ。マスクをし続ける日々が日常化すると、子どもたちの成長にどう影響するのか。京都大学大学院教育学研究科の明和政子教授に聞いた。(清談社 田中 慧)

顔が見えないことによる

赤ちゃんの学びの危機

「コロナ禍で、今までと異なる生活環境で日々成長していく子どもたちの脳には、今後さまざまな変化が起きてくる可能性は否定できません」

そう警鐘を鳴らすのは、京都大学大学院で人間の脳と心の発達について研究している明和政子教授だ。

今年8月、ブラウン大学の研究チームが米東部ロードアイランド州で行った調査によると、新型コロナ拡大後に生まれた幼児は、それ以前に生まれた幼児よりも、知能指数(IQ)が顕著に低下しているという。

明和教授は、さらなる検証が必要だと慎重に結果を受け止めつつも、「子どもたちが喜怒哀楽といった感情を学ぶ機会が急激に減っているのは確かだ」と危機感をあらわにする。

私たちは、相手の多様な表情やしぐさを見て、また、自分でもそれをやってみることによって感情を理解するようになる。特に乳児期は、喜怒哀楽といったさまざまな表情から感情を理解する能力を身につける重要な時期にあたる。

「何も考えずに、口角を上げて笑顔をつくってみてください。不思議なことに、楽しいから笑ったわけではないのに、いつのまにか自然と楽しい感情がわきたちます。体の反応がまず起こって、それから感情があとで意味づけされるのです。赤ちゃんが感情表現を学ぶのも同じです。まずは周りの大人の“笑う”という行為をまねする。そのタイミングで、大人から抱っこしてもらったり、声をかけてもらったりと“気持ちいい”経験を積み重ねていくことで、“笑顔”=“楽しい”という結びつきが起こり、感情が理解されるのです」

赤ちゃんが表情を学ぶこの時期に、たとえばネグレクトや身体的苦痛を受けるなど大人から適切に応答してもらえない環境で育つと、“笑顔”が“楽しい”感情と結びつかなくなる可能性もある。赤ちゃんにとっては、周りの人の表情をまねながら感情を相手と共有していく経験が何より重要なのだ。

「誰もがマスクをしている今、子どもたちは“まねる”対象としての“顔”を経験する機会が減っています。マスク生活が今後いっそう日常化すると、パンデミック以前に育った世代が当たり前のように身につけてきた喜怒哀楽を理解すること、相手と感情を共有することが難しくなる可能性は否定できません」

他者を思いやる力の未熟な

就学期や思春期における影響

マスクで表情が見えないことは就学期の児童にも影響している。脳の“前頭前野”がいまだ未発達な段階にあるこの時期の子どもたちは、マスクをした相手の気持ちを察することに難しさを感じているようだ。

「マスクで相手の表情が見えないことが、コミュニケーションの障壁となっています。いざこざが起こったとき、相手に『ごめんね』と謝っても、マスクをしているので相手にその思いが十分伝わらず、トラブルが悪化してしまう場面も増えているようです。その背景には、脳の未成熟さがあります。文脈に応じて、今何をすべきかをイメージ・推論したり、感情を意識的に抑えたりする役割を果たす“前頭前野”とよばれる脳部位があります。前頭前野の成熟までには25年かかる。つまり、就学期や思春期のお子さんは前頭前野がいまだ成熟していないのです」

たとえば、目の前に悲しんでいる人がいたら、自分にとってうれしくてたまらないことがあったとしても、相手を気遣って笑顔を隠そうとするだろう。これは、前頭前野の働きによって、自分とは異なる相手の心を推測し、自分の感情を抑制して行動をコントロールしているのだ。

しかし、前頭前野の発達がいまだ未熟な段階にある子どもたちにとって、相手の気持ちを考えて自分の欲望を我慢するのは、もともと容易なことではない。

「今の子どもたちは、SNSなどサイバー空間でコミュニケーションする機会が多くなっています。コロナ禍は、それをさらに後押ししました。サイバー空間でのコミュニケーションが主流になると、相手の痛みなどに共感する力が低下していくかもしれません。なぜなら、体を使って相手と行動を共有する経験は、サイバー空間ではたいへん限られてしまうからです。友達が指を切って血を流しているのを見たとき、私たちは、思わず自分の手も痛いように感じます。これは、自分も過去に同じ経験をしたことがあるからです。痛かった経験が目の前の相手の行動と鏡のように重なる脳の反応が起こり、無意識に自分のことのように感じてしまうのです。フィジカル(物理)空間では、子どもたちは相手と体を介して直接コミュニケーションする経験が豊かに得られます。しかし、サイバー空間でのやりとりではそうした経験を得ることは難しくなります」

コロナが流行する以前であれば、子どもたちは友人と体をくっつけ合いながら思いっきり遊んでいたはずだ。

「そうした“楽しい”感覚や経験が記憶として脳内に残っています。しかし、この1年で、『給食は黙って食べよう』『友達と密にならない』といったルールが求められるようになった。密や接触に楽しい記憶もつ子どもたちにとって、それを我慢しなければならないストレスはかなり大きいはずです」

長引くマスク生活で

子どもたちにしてあげられること

では、長引くマスク生活で、これまでとは異なる環境で育っていく子どもたちに対して、周囲の大人はどのようなことを意識すればいいのだろうか。

「ご家庭でお子さんと対面して豊かな表情を共有する、体を触れ合わせる時間をなにより大切にしてください。家族内では、マスクをはずしておられる、密をさけずにいることが多いと思います。家族全員で協力して、たくさんの表情を見せて、体を使ったコミュニケーションを子どもたちに提供していきましょう。家庭内で、お子さんの学びの機会を増やし、脳の発達を支える試みです。5分でも10分でも長く、子どもたちとフィジカル空間で触れ合ってください」

スマホやテレビなどでもさまざまな人の顔を見せることはできるが、幼い赤ちゃんにとっては、画面越しに表情を見るだけでは学習の効果はあまり期待できないという。顔を見るという体験に、“楽しい・うれしい”という感覚が体を通して結びつかない限り、相手の感情を理解することにはつながらない。

「『マスクをしていても目でコミュニケーションはできる』と主張する人もいますが、それは既に完成された脳を持っている大人にとっての話です。これから多くの感情や人との付き合い方を体の反応、経験を通して学んでいく子どもたちにとっては、目だけでコミュニケーションすることはきわめて難しいのです。保育、教育現場など、感染対策との両立を図りながら学びの機会を提供していくことが求められる場合は、たとえば表情が見えやすい透明なマスクを使うことなども有効かもしれません。ただし、家庭内で対面でのコミュニケーションがしっかりできていれば、過度に不安に思われる必要はないと考えています」

現代の子どもたちは、激変する環境のなかでどのように脳を発達させ、育っていくのだろうか。マスク生活は、子どもにとっては大人以上に感情を理解・表現したり、コミュニケーションしたりすることが難しいという事実をしっかりと認識したうえで、「子どもにとって必要な」新たな生活様式を考えていくべきである。

明和政子

京都大学大学院教育学研究科教授。文部科学省科学技術・学術審議会委員、日本学術会議連携会員。専門は「比較認知発達科学」。公益社団法人全国私立保育連盟の理事も務める。