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瀬戸内寂聴さん。寝たきり生活、がん手術を経験して/追悼

2021-12-27 15:30:00 | 日記

ハルメクWeb様のホームページより下記の記事をお借りして紹介します。(コピー)です。

 

88歳から病気がちになり、90代になってがん手術を乗り越えた瀬戸内寂聴さん。2017年(※取材当時)に95歳を迎えた寂聴さんは「病を経験した日々は、老いや死、そして幸福とは何かを考えることの連続だった」と語りました。その死生観とは?

瀬戸内寂聴さん。寝たきり生活、がん手術を経験して

目次

  1. 88歳で圧迫骨折、93歳でがんが見つかりました
  2. 女性の人生には、2度、体の危機がある
  3. 死後のことより、今をしっかり生きることが大切
  4. 書斎の机の上に、うつ伏して息絶えたい
  5. 人として最高の行い「陰徳」を積んだ円地文子さんの言葉

88歳で圧迫骨折、93歳でがんが見つかりました

私が住む京都・嵯峨野の冬はとても寒く、ときどき雪が降ります。でも、そんな寒さを感じないくらい、毎日忙しく過ごしています。

月に1度、寂庵(じゃくあん)で行われる法話では、150人ほどの前でお話をします。立ちっぱなしで1時間から2時間、語り続けています。

こうして元気な私ですが、ここ数年、いくつかの病気を経験しました。88歳のとき、背骨の圧迫骨折で半年間、寝たきりの生活を送りました。その4年後には、突然また背中と腰に痛みが走り、腰椎圧迫骨折で入院しました。体の中をいろいろ調べましたら、胆のうがんも見つかりました。

そのとき私は93歳。普通、こんな年になったおばあさんは、手術はしないみたいです。放っておいても死は間近ですから。

でも私は、がんと一緒にいるのはまっぴらでした。ですから「すぐ取ってください!」とお医者様にお願いしたんです。すると「わかりました」と手術をしてくださることになって、胆のうごとすぐ取ってくださったんです。

結局がんを意識したのは、1日だけ(笑)。今振り返ると、あまりにもあっけない「がん告知」と短過ぎる「がん体験」でした。順調に回復し、今もなんともありません。

 

女性の人生には、2度、体の危機がある

95歳になって実感していることは、女性の長い人生には2度、体の危機があるということです。1回目は、いわゆる更年期の50歳前後です。その頃合いの女性は、ほとんどといっていいほど、心身を病むんですね。私が出家したのは51歳でしたから、今考えると、更年期の影響だったのかもしれません。

作家の有吉佐和子さんも、あんな明るくて売れっ子ですごく華やかだったんですけれど、ちょうどこの頃、病気がだんだん重くなって、亡くなったでしょう。ただ、50代の頃はお医者さんに行って、注射をしてもらったりすれば、たいていはよくなるものです。

そして2回目が、88歳。この年から「本当の老後」がやってきました。よく後期高齢者になる75歳からが老後とかいう話を聞きますね。でも、私の実感からして87歳までは、多少の不摂生をしても、まだまだ体が丈夫です。でも88歳からは、何が起きるかはわかりません。

死もいずれ確実にやってきます。でもお迎えのときは、自分でいつかはわかりません。お釈迦様は、こうして死を身近に感じながら生きていくことを、人間が抱える根源的な「苦」であると説かれました。このような根源的な哲学を突きつけられるのが、88歳以降だといえるのだと思います。

 

死後のことより、今をしっかり生きることが大切

みなさんは、死が気掛かりですか? 法話をしていますと、たびたび「死んだらどうなりますか?」という質問をされます。一番気になることなのかもしれません。

でも、私はいつも「まだ死んだことがないから、わからない」と、答えています。お釈迦様は、死後の世界について、何もおっしゃらなかったからです。大切なのは、今この世で悩み苦しんでいる人を救うことだからと。死後のことを答えてもしょうがないと思われていたようです。

死後の世界について、作家の里見弴(さとみ・とん)先生と対談をしたことがあります。里見先生は当時93歳で、今の私と同じくらいで、親しい友人たちも、次々に亡くなっていっていた頃のことでした。「人間、死んだらどうなるんですか?」という私の質問に、里見先生が即座に「無だ」とおっしゃいました。

三途(さんず)の川があるって、よく言われるでしょう? あれだって、あるのかどうかもわからないんです。川のこっちはこの世、あっちはあの世。あの世には、いいことがあるのよ、なんて言ったりしますけど、わからないです。

だから私、法話では三途の川をこんな笑い話にしているんです。「今はね、高齢者人口が増えて、渡し船じゃ入りきらないからフェリーよ」って。向こう岸には、前に死んだ人が並んでいて、「あら、遅かったわねー」なんて言ってくれて、その夜は歓迎パーティーを開いてくれる(笑)。そんなこと、あり得ないとは思いますけどね。

でもその通りかもしれないし、行ってみないとわからない。なんとでも想像できるでしょう。結局、誰も知らない死後のことより、今という貴い瞬間をしっかり生きることが大切ということです。

 

書斎の机の上に、うつ伏して息絶えたい

私の場合、書いているときが、やっぱり生きていることを実感します。背骨が丸くなり、目も片目しか見えなくなり、ペンを持つ指の骨も曲がってしまいました。でも、最期の瞬間まで書いて、命を燃やしたい。もしかしたら、ペンを握ったまま、乱雑極める書斎の机の上にうつ伏して息絶えている。そんな憧れの死に様も、夢ではないかもしれません。

先だって、最後になるかもしれない小説を書き上げました。『いのち』という題名は、書く前から決めていました。今自分が考えていることと、仲が良かった河野多惠子さん、大庭みな子さんとの交流も書きました。

小説『いのち』には、河野多惠子、大庭みな子という2人の芥川賞作家の知られざる最期の姿も記されています。「2人はまた厳しいライバルでした。それも書きました。私だから書けたことかもしれません」

2人とも才能あふれる作家で、私より若いのに先に逝ってしまいました。もうこの世にいない。そう考えること自体、つらいとか、悲しいとか、そういう次元ではないんです。早くあちらへ行き、3人で一晩中しゃべり明かしたい。それくらい大好きな2人でした。

河野さんとは64年ものお付き合いがありました。まだ駆け出しの頃、ご両親から「仕送りを止める」と言われてしまった河野さんの大阪のご実家へ行き、「彼女は芥川賞を必ず取りますよ。続けてやってください」とご両親を説得したこともありました。その後、河野さんは本当に『蟹』で芥川賞を取りました。私たちは感性に加え笑いのツボが一緒で、よく長電話で笑い合っていました。

大庭さんは、私が40代半ばの頃に、『三匹の蟹』で芥川賞を受賞し、「天才現る」と評された作家です。その作品は詩情にあふれ、読後にはいつもおいしいごちそうを食べた後のような満足感がくる。私はそんな大庭作品のファンでした。作品は詩的なのに茶目っ気がある大庭さん。最期はベッドの上でご主人の口述筆記に頼り執筆を続けていました。2人とも波瀾万丈の人生でしたが、好きなことをやりきって、幸せだったと思います。

 

人として最高の行い「陰徳」を積んだ円地文子さんの言葉

私にとっての幸福はもちろん書くことではありますが、もう一つ、いろんな人とのつながりもあると思っています。普段は体力の許す限り、年齢や考え方の違う人たちと積極的にお話をするようにしています。誰だって自分と同じタイプの友人と一緒にいるのが心地よいものです。でも、自分と違うタイプの人との交わりを通して、人生という難題を乗り越えるための新たな視点が養われます。

思い出すのは、円地文子(えんち・ふみこ)さんです。円地さんは、源氏物語の現代語訳を私より前に完成させた大ベテラン作家です。私とは全然タイプが違い、周囲の方のために黙って良行を重ねる「陰徳(いんとく)」も積まれる方でした。

あるとき、円地さんは私を呼んで「河野さんの手術費に使うよう計らってください」と、相当の金額を包んだものを私に手渡しました。「ただし、このことは決して人にしゃべらないこと」と、付け加えられたのです。当時、河野さんは自身の病気の手術代がなく困っていました。今振り返ると、円地さんの計らいは、私と河野さんしか知りません。河野さんはどれほど救われたことでしょう。

人間にとって、「陰徳」ほどハードルが高いものはありません。おしゃべりな私にはなかなかできないことです。でも、年を重ねたからでしょうか。私とはまるでタイプが違う円地さんの言葉が今、なぜか軽やかに心に響いてくるのです。

 

瀬戸内寂聴

せとうち・じゃくちょう 1922(大正11)年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞受賞。73年に平泉中尊寺で得度、法名寂聴となる(旧名晴美)。92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、2011年『風景』で泉鏡花文学賞受賞。98年『源氏物語』現代語訳を完訳。


「魚の脂肪」で生活習慣病のリスクを減らそう! 養殖技術の進化で味も多彩に

2021-12-27 13:30:00 | 日記

下記の記事は日経グッディ様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

「脂肪」には、どんなイメージがあるだろうか?「うまみ」たっぷりな半面、過剰摂取による生活習慣病リスクのイメージを持つ向きも少なくないだろう。ただし、健康を促進する「脂肪」もある。生活習慣病のリスクを下げることができる「魚の脂肪」だ。最近では養殖技術が進化し、魚の大きさやうまみはもちろん、「栄養たっぷりの脂肪コントロール」までできるようになったようだ。生活習慣病リスク軽減にも関わる魚肉の魅力アップの動向について、健康ジャーナリスト結城未来が愛媛大学南予水産研究センターの後藤理恵准教授に聞いた。

魚の脂肪は体にいいことで知られている。写真は小型マグロ類「スマ」の養殖の様子(愛媛大学南予水産研究センター提供)

「魚の脂肪」がさまざまな疾病リスクを下げることをご存じだろうか。

小・中型魚や脂の多い魚をとることで、日本人男性の糖尿病発症リスクが低下

 

魚介類由来の脂肪酸が多いほど、循環器疾患の死亡リスクが低い

 

n-3系多価不飽和脂肪酸の多い魚をたくさんとっていると、膵臓がんや肝臓がんの発生リスクが低い

などが研究データで明らかになっている(過去記事「コロナボケ解消には『魚』がいい? 脳を活性化させる食事のツボ」参照)。

そのためか、近年、世界では注目度が上昇。年々消費量が上がっている。その一方で、魚大国であるはずの日本では「魚離れ」と言われるようになったのは残念なところだ。

――後藤准教授「私も健康のことを考えて、なるべくお魚の脂を意識して食べるように心がけています。ただ、調理が面倒くさいとか臭いが気になるなどの理由で、お魚を敬遠される方はいらっしゃるのでしょうね。食べやすく工夫されて売られているものも多くありますので、毛嫌いせずに注目していただきたいものです」

確かに、切り身はもちろん新鮮な魚をその場でさばいてくれるところも増えてきた。でも、味が苦手な人もいるだろう。

餌のコントロールで「みかん風味」の魚も!

――後藤准教授「最近では養殖の技術が上がっていて、餌のコントロールで栄養や味を変えられるようになっています。例えば、みかんの果皮やオイルを添加した餌を与えれば、みかん風味の魚を作ることもできるようになりました」

魚にかんきつ類の汁をかけてさっぱりと楽しむこともあるが、身そのものがみかん風味なら、よりおいしく食べやすそうな感じもする。

――後藤准教授「実際、愛媛県の『みかんブリ』や『みかん鯛』は回転寿司のメニューにも入っていて、魚が苦手な女性やお子さんたちを中心に人気のようですよ」

そういえば、家畜でも同様の取り組みが行われている。例えば飲食店などで見かけることもあるブランド豚の「イベリコ豚」。ドングリなどを食べさせることで脂身にオレイン酸を多く含む独特のうまみの肉質を実現している。餌によって“味”をよりおいしくできるのは家畜同様、「養殖魚」の魅力のようだ。

――後藤准教授「栄養たっぷりの魚肉も実現できます。必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)などをたくさん含んでいる餌を使えば、それらをより多く含んだ養殖魚に育ちます。高知大学が企業と一緒に開発した『プレミアムDHAブリ』などがそうですね」

DHAは、脳などの神経組織に多く含まれる「脳に必須の栄養素」として知られている。青魚に多く含まれているが、養殖では注目の栄養素を増やすこともできるようだ。

アニサキスのない魚、毒のないフグも可能?

――後藤准教授「養殖なら餌を冷凍餌や人工飼料にすることで、寄生虫アニサキスのない『サバの刺し身』も味わえますよ。唐津市と九州大学の共同研究により誕生した『唐津Qサバ』など、最近では各地でサバの養殖が始まっています。養殖では、餌の管理で猛毒テトロドトキシンのないフグも実現できるのです」

寄生虫「アニサキス」で苦しんだ経験のある人もいるだろう。サバを筆頭にサケ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどに寄生するアニサキス。加熱や冷凍により死滅させることができるが、生や不十分な冷凍・加熱で食べた時に食中毒を引き起こすことで知られている。生きたまま人間の体内に入り込むと、胃壁や腸壁にかみつき、激痛を起こすのだ。どうやら養殖技術の向上で、おいしい刺し身を安全に食べることができるようになったらしい。

ただ、「養殖」というと「あまり大きく育たないのではないか」と思う人もいるかもしれない。

――後藤准教授「そういう印象があるなら、大きな誤解です。養殖では管理しながら育てられるので、逆に好みの大きさにすることができるのです。実際、私たちの愛媛大学ではスマ(愛媛県南予が北限の亜熱帯に生息する小型のマグロ類)の養殖を行っていますが、産卵時期を変えることで、出荷サイズをコントロールできる技術を作り上げています」

スマはマグロの近縁種で、養殖は通年きめ細かな脂がのっているという。

大きさによって変わる魚の魅力とは何だろうか?

――後藤准教授「魚は大きさによって味も変わります。例えば、スマを若い頃に刺し身にすれば、淡紅色で爽やかな味。月齢が増えて大きくなると、深紅色に変化し味わいも深くなります。餌の工夫で、体に良いとされる脂たっぷりの大きさの魚も育てられるのです」

スマの刺し身。

養殖魚の餌に心配な添加物を入れて無理やり太らせるようなことはないのだろうか。

――後藤准教授「養殖魚の餌は国で定められている基準がありますので、なんでもかんでも餌に入れられるわけではありません。畜産や家禽(かきん)と同じですよ」

「養殖魚」は限られた環境の中で育っているので、運動不足で筋肉の締まりがよくないのではないかというイメージもある。

――後藤准教授「魚にはエラを動かして呼吸する魚と、マグロやスマ、サンマのように泳ぎながらエラに水を送って呼吸をする魚に分けられます。そのため、養殖でもその魚に合わせて健康維持のための運動環境を整えていると考えて良いです。イメージとしては、放牧されている牛や豚。決められたスペースで過ごしているだけで、ストレスを与える環境ではないと考えてください」

「魚」というと天然魚のイメージが強いが、養殖技術の向上で養殖魚も魚のうまみを楽しむための大きな選択肢になってきたようだ。

――後藤准教授「そもそも、魚本来のうまみを楽しめないと栄養豊富な魚が苦手になってしまうかもしれませんね。天然魚は、季節によっては脂がのらず味が落ちる時期があります。でも養殖魚の場合、産卵期などの痩せてしまうような時期には販売制限をして、基本的には良い状態の魚しか販売しませんし、餌飼料の配合によって脂がのるようにもできますので、季節を問わず安定したおいしさを楽しむことができます

考えてみれば、ウナギのほとんどが川でとれた天然の稚魚を人間の手で育てた「養殖魚」だ。ウナギは一般に受け入れられているのに、なぜ他の魚だとなじみが薄いのだろうか?

――後藤准教授「魚の養殖は畜産に比べて歴史が浅いため、まだまだ知られていないことが多いのかもしれませんね。気になるようでしたら、養殖企業のホームページを見てください。企業ごとに凝らしている工夫や環境に配慮した取り組み、安心安全な生産状況や最新情報をチェックすることができますので、安心できると思いますよ」

魚のうまみを楽しむための取り組みは年々向上しているようだ。「天然」「養殖」両輪で魚の脂肪を楽しみながら、生活習慣病のリスクを下げたいものだ。

後藤理恵(ごとう りえ)さん

愛媛大学南予水産研究センター准教授

生命科学研究部門 魚類繁殖生理学。北海道大学大学院水産科学研究科博士課程修了。メリーランド工科大学生物工学研究所 リサーチアソシエイト。北海道大学人材育成本部女性研究者支援室 特任准教授。現在、生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)の「イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受けて、小型マグロ類スマの品質に関する研究開発を進めている。

結城未来(ゆうき みく)

エッセイスト・フリーアナウンサー

テレビ番組の司会やリポーターとして活躍。一方でインテリアコーディネーター、照明コンサルタント、色彩コーディネーターなどの資格を生かし、灯りナビゲーター、健康ジャーナリストとして講演会や執筆活動を実施している。農林水産省水産政策審議会特別委員でもある。


「ワクチン3回目の効果は?」「子どもへの接種、どうすべき?」 医師が解説

2021-12-27 12:00:00 | 日記

下記の記事は日経グッディ様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

12月22日発売の電子書籍『新型コロナワクチン・治療薬 最新Q&A50』(コロワくんサポーターズ著)から主要なQ&Aの内容をお届けするシリーズの後編では、ワクチンのブースター接種(3回目接種)や、新型コロナの治療薬、近々登場するといわれている自宅で服用できる飲み薬などについて解説する。

 12月から医療従事者向けに3回目のワクチン接種(ブースター接種)が始まり、高齢者や64歳未満への接種も順次始まる。ワクチンについて正しい知識を入手して、自身や子どもの接種に向けた判断に役立てていただきたい。(※この記事は2021年12月1日時点の情報です)

(写真はイメージ=123RF)

Q.9

ブースター接種とはなんですか。

 

A. 1、2回目の新型コロナワクチンの接種が完了して一定の時間がたった人を対象に、ワクチンの効果をより高めるために3回目の接種を行うことを「ブースター接種」と呼んでいます。「ブースター」という言葉には「増強する」といった意味があります。イスラエル、欧州、米国などが先行してブースター接種を開始しています。

(イラスト:串子)

ブースター接種が検討されるようになった理由は、ファイザーのワクチンでもモデルナのワクチンでも、1、2回目のワクチン接種の効果が時間とともに低下することがわかってきたためです。

ブースター接種をすると、ファイザーのワクチンについては、感染予防効果がブースター接種を受けていない人の11.3倍、重症化予防効果は19.5倍高くなることが臨床試験で示されています(イスラエルの報告)。こうしたデータを背景としてイスラエルでは2021年8月から12歳以上の人を対象に、英国では9月から50歳以上の人、医療従事者、高齢者施設入居者などを対象に、米国では9月から65歳以上の人と18歳以上で基礎疾患のある人や医療従事者などの感染リスクの高い人を対象にブースター接種が開始されました。

日本では2021年11月に、ファイザーのワクチンのブースター接種が承認されました。1、2回目の新型コロナワクチンを完了して原則8カ月たった18歳以上の人を対象に、12月からブースター接種が開始されます。接種の順番は1、2回目の接種と同様に、感染リスクが高い医療従事者、重症化リスクが高い高齢者、基礎疾患を持つ人の順です。モデルナのワクチンのブースター接種は現在、承認申請中です(2021年12月1日現在*1)。

*1 編集部注:モデルナのワクチンのブースター接種は12月16日に承認されました。

Q.10

1、2回目とは違うメーカーの新型コロナワクチンをブースター接種で打っても大丈夫ですか。

 

A. 日本では、1、2回目に接種した新型コロナワクチンとは異なるワクチンをブースター接種で打つこと(交互接種)も認められています。つまり、1、2回目の接種でモデルナのワクチンを打った人が、ブースター接種でファイザーのワクチンを選ぶこともできます。

交互接種の安全性については、1、2回目と同じワクチンを打つ場合と差はないと考えられています。効果についてはむしろ1、2回目と違うワクチンを打つ方が、同じワクチンを打つよりも、体内にできる抗体(中和抗体)の量がやや多くなるとの海外の研究報告もあります(図参照)。

米国では、mRNAワクチン(ファイザー、モデルナのどちらか)を初回接種した人については、3種(ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソン)のうちのどれかを選んでブースター接種を受けることが認められています。

米国以外の国では、ブースター接種としてmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)を使用するよう推奨している国が多いです。英国、ドイツ、カナダでは1、2回目に接種したワクチンの種類にかかわらず、ブースター接種にはmRNAワクチンを使用することを推奨しています。フランスはファイザーのワクチンのみをブースター接種で使用可能としています。

Q.11

病院で使われている新型コロナの治療薬にはどんなものがありますか。

 

A. 日本の病院で使われている新型コロナウイルス感染症の主な治療薬としては、レムデシビル、抗体カクテル療法薬「カシリビマブ+イムデビマブ」、ソトロビマブ、デキサメタゾン、バリシチニブがあります。レムデシビル、カシリビマブ、イムデビマブ、ソトロビマブは点滴薬、デキサメタゾンは経口薬と点滴薬、バリシチニブは経口薬です。

レムデシビルは肺炎が起きている重症の患者さんが対象の薬です。新型コロナウイルスが自分の複製を作って増えるときに必要な酵素「RNAポリメラーゼ」の働きを阻害して増殖を抑制します。

カシリビマブ+イムデビマブおよびソトロビマブは、まだ酸素投与は必要ないものの、重症化のリスクがある患者さんが対象の薬です。カシリビマブ+イムデビマブは濃厚接触者の発症予防、無症状の感染者の発症予防を目的とした予防投与も認められています。いずれも抗体薬で、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクたんぱく質に結合して、病原性を抑える効果があります。

デキサメタゾンとバリシチニブには、新型コロナウイルスを攻撃したり増殖を抑制したりする効果はありません。新型コロナウイルスに感染した患者さん自身の免疫細胞が、ウイルスを攻撃しようとして暴走し、自分自身の臓器(肺など)を壊してしまう「行き過ぎた炎症」を抑える薬です。どちらも重症度の高い患者さん向けの薬です。

 

Q.12

近々登場するといわれている自宅で飲める新型コロナの薬について教えてください。

 

A. 現在、病院で使われている薬は軽症患者さん向けも含めてほとんどが点滴薬です。そのことが治療の選択肢を狭め、入院患者増加による病床不足の一因にもなってきました。患者さんが自宅で服用して重症化を予防できる飲み薬が登場すれば、状況が改善すると考えられます。特に期待されるのは、オミクロン株のようなワクチンの効果の減少が示唆される新型コロナ変異株が登場した場合でも、治療薬は効果がある可能性が高いことです。

そのために多くの製薬会社が軽症者向けの経口薬の開発を進めています。現在、有望とみられている新薬候補は、米国メルク(MSD)の「モルヌピラビル(molnupiravir)」、米国ファイザーの「パクスロビド(Paxlovid)」、塩野義製薬の「S-217622」などです。最も先行しているのはメルクのモルヌピラビルで、英国がすでに承認し、米国食品医薬品局(FDA)が審査を終え米国でも承認間近です。日本でも近く承認されるとみられます。

モルヌピラビルは、新型コロナウイルスがヒトの体内で増えるときに必要な酵素「RNAポリメラーゼ」を阻害する作用によって重症化を防ぐとされています。第3相臨床試験(最終段階の臨床試験)の解析によると、5日間、1日2回モルヌピラビルを投与した新型コロナ感染者のグループでは、有効成分の含まれない偽物の薬(プラセボ)を投与したグループに比べて、入院または死亡が30%抑えられました。

ファイザーと塩野義製薬が開発中の新薬候補はいずれも「プロテアーゼ阻害薬」です。プロテアーゼもRNAポリメラーゼと同様、新型コロナウイルスがヒトの体内で増えるときに必要な酵素です。これの働きを抑制することでウイルスの増殖に歯止めをかけ、重症化を防ぐ狙いです。ファイザーは2021年11月に、重症化リスクのある新型コロナ感染症患者を対象とした第2/3相臨床試験の中間解析を発表しました。それによると発症から3日以内にパクスロビドの投与を受けた患者さんのグループは、プラセボの投与を受けた患者さんのグループと比較して、新型コロナ関連の入院または死亡が89%減少したとのことです。塩野義製薬の候補は第2/3相臨床試験中です。

なお、米国のベンチャー企業アテア・ファーマシューティカルズとスイスの製薬会社ロシュが共同で開発中の新薬候補「AT-527」については、有望な新薬候補の1つとされていましたが、第2相臨床試験で軽・中等症の患者に対する有効性が確認できなかったと発表されています。

Q.13

自宅で飲める新型コロナの治療薬が出てきたら、ワクチンはもう打たなくてもいいのではないですか。

 

A. 飲み薬タイプの治療薬候補、米メルクの「モルヌピラビル」の重症化予防効果は30%程度です。米ファイザー「パクスロビド」の重症化予防効果は89%程度と発表されています。新型コロナウイルスは容態が急変する場合も多いので、タイミングよく経口治療薬が服用できるとは限りません。また、他の人に感染させてしまうリスクは依然として存在します。妊娠中の人、妊娠の可能性がある人、および授乳中の人は、2021年12月1日現在、これらの経口薬は服用できない可能性が高いです。

一方、新型コロナワクチンの有効率は、mRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)は94~95%、ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ)は約70%です。接種後一定期間が経過すると感染予防効果は低下しますが、重症化予防効果は高く保たれることがわかっています。実際に、ワクチン接種が進んだ国では感染者数が再び増えてきても重症化率や死亡率は抑えられています。また、新型コロナワクチンは妊娠中、授乳中でも接種を受けることができます。

したがって今後も、新型コロナワクチンの重要性は変わりません。まずは新型コロナワクチンの接種で感染リスクを減らし、感染してしまった場合にもワクチンの効果と治療薬で重症化防止を目指すことになるでしょう。どちらか一方のみでなく、ワクチンと治療薬の両輪で、新型コロナウイルスに立ち向かうことが必要です。

 

Q.14

うちの子どもは小学生です。新型コロナワクチンを接種させるべきですか。

 

A. 日本では、新型コロナワクチンの接種対象年齢は満12歳以上です(2021年12月1日現在)。小学生のお子さんが満12歳に達していれば接種を受けることができます。米国では2021年11月にファイザーのワクチンの接種対象年齢が5歳以上に引き下げられました。日本でも厚生労働省が、早ければ2022年2月頃から接種を開始する可能性を示しています。

新型コロナワクチンの接種が世界中で進む中で、ワクチンを接種していない(接種できない)子どもの感染リスクに注目が集まっています。子どもの新型コロナウイルス感染症は比較的軽症で、多くの場合は治療を必要としません。しかし基礎疾患がある場合には重篤化する可能性が高くなります。また、小児多系統炎症性症候群(multisystem inflammatory syndrome in children;MIS-C)という、心臓など多臓器に炎症を起こす重篤な症状の報告が、日本でも見られるようになってきました。基礎疾患を持つ子どもにワクチン接種をすることで、感染による重症化防止効果が期待できます。

健康な子どもへのワクチン接種にも一定の意義があると考えられます。新型コロナ対策は子どもたちの心身の健康に大きな影響を与え続けており、ワクチン接種がそれを緩和する可能性があります。また、まれではあるものの、健康な子どもが新型コロナに感染して重症化することもあります。さらに、子どもが高齢者や基礎疾患を持つ人と同居している場合には、家庭内で感染を広げにくくする効果も期待できるでしょう。

その一方でデメリット面としては、子どもに新型コロナワクチンを接種した際に、発熱や接種部位の疼痛などの副反応が比較的出やすいことが報告されています。メリットとデメリットを子どもと養育者が十分に理解し、納得して接種を受けることが大切です。

子どもに接種を受けさせるかどうかを判断するにあたっては、成人の新型コロナワクチンの接種状況(ワクチン接種率)や流行状況も考慮するとよいでしょう。疑問を解決してから接種に臨むことが大切なので、できればかかりつけ医で個別接種を受けるのが望ましいと考えられます。

なお、子どもたちを新型コロナウイルス感染から守るためにまず重要なことは、周囲の大人が新型コロナワクチンの接種を受け、感染リスクをできるだけ減らすことともいえるでしょう。

Q.15

子どもへの新型コロナワクチン接種は安全なのですか。

 

A. ファイザーのワクチンについては、12~15歳の子どもの主な副反応は注射を打った部位の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、寒気、発熱などだったと報告されています。持続期間は成人と同様で、通常1~3日程度でした。日本の接種者を対象とした調査では、接種部位の痛み(頻度は約90%)、発熱、全身のだるさ、頭痛の頻度などが若い成人に多く報告されています。ですから接種後2~3日、できれば1週間程度は、発熱などの症状に気をつけて激しい運動を控えて過ごすのが望ましいでしょう。

また、発症はまれですが重大な副反応として、mRNAワクチン接種後、心筋炎や心膜炎が発生したとの報告があります。心臓の筋肉である心筋に炎症が起こる病気が心筋炎で、心臓を包む表面の膜に炎症が起こる病気が心膜炎です。心筋炎は重症化すると、心不全や不整脈などの原因になることがありますが、新型コロナワクチン接種後に起こる心筋炎や心膜炎は多くの場合軽症で、短期間で改善したとされています。

10代、20代の男性については、ファイザーのワクチンに比べて、モデルナのワクチンを接種した後の方が、心筋炎や心膜炎が疑われる報告頻度が高い可能性が指摘されています。希望する場合には、モデルナのワクチンをすでに予約していたり、1回目にすでにモデルナのワクチンを接種した場合でも、ファイザーのワクチン接種に変更する事が可能です。

まれであっても重大な副反応が起こるなら、子どもにワクチン接種を受けさせたくないと思われるかもしれません。しかし心筋炎や心膜炎は、新型コロナウイルスに感染したときにも発症することがあります。しかもワクチン接種後よりもはるかに高い割合で起こることが報告されています。そのため米国でも日本でも、メリットがデメリットを上回るとして、新型コロナワクチンの接種が推奨されています

 

Q.16

新型コロナワクチンを打つと不妊になりませんか。

 

A. 日本で使用されているいずれの新型コロナワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)にも、不妊の原因になるという科学的な根拠はありません。排卵と妊娠は、脳や卵巣で作られるホルモンによってコントロールされています。これら3種の新型コロナワクチンには、排卵や妊娠に直接作用する成分や、卵巣や子宮に影響を与える成分は含まれていません。また、臨床試験で新型コロナワクチンの接種を受けたグループと偽ワクチン(プラセボ)の接種を受けたグループの比較から、どちらのグループでも同程度の割合の女性が妊娠していたことが確認されています。

SNSなどで「新型コロナワクチンを接種すると不妊になる」という説が唱えられていた理由の1つは、受精卵が着床する際に重要な役割を担う「syncytin-1(シンシチン-ワン)」というたんぱく質と、新型コロナウイルスの表面にある「スパイクたんぱく質」が似ているから、ということだったようです。新型コロナワクチンを接種すると、体内でウイルスのスパイクたんぱく質に結合する抗体が作られます。その抗体がウイルスと間違えてsyncytin-1に結合し、その結果、着床不全が起こって不妊になるのではないか、というわけです。

しかしこの説はすでに否定されています。新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質とsyncytin-1の化学的な類似性は高くなく、新型コロナワクチン接種後に体内で作られた抗体はsyncytin-1に結合しなかったと報告されているのです。

なお、新型コロナワクチンには男性の生殖機能に影響を与える成分も含まれていません。ワクチン接種が男性の不妊の原因になるという科学的な根拠もないということです。


「これでは愛子さまのご結婚はますます困難に」皇位の安定継承の問題から"逃げた"有識者会議の罪

2021-12-27 11:00:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

秋篠宮家の長女、眞子さんが今年10月に結婚して皇籍を離れ、現在40歳以下の皇室メンバーは6人になった。うち男性は秋篠宮家長男の悠仁さまだけだ。12月に入り、安定的な皇位継承のあり方を検討する政府の有識者会議が最終報告書の骨子をまとめたが、神道学者で皇室研究者の高森明勅さんは「肝心のテーマについて検討せず、議論をすり替えている」と指摘する――。

写真=時事通信フォト

立皇嗣の礼のため、宮邸を出発される秋篠宮ご夫妻と見送られる悠仁さま=2020年11月8日、東京都港区[代表撮影]

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肝心な皇位の安定継承への検討は棚上げ

今年12月6日、政府は皇室制度のあり方を議論する有識者会議(清家篤座長)を開き、報告書の骨子案を了承した。7月以来しばらく中断していたが、11月30日から再開した。秋篠宮家のご長女、眞子さまのご結婚と渡米を待っていたかのようなタイミングだった。3月から12回にわたって会合を重ねてきた同会議も、いよいよ大詰めを迎える。

しかし残念ながら、同会議が本来果たすべきだった課題には、一切手を付けないまま幕を閉じることになりそうだ。

報告書の骨子に示された、軸となる皇室の危機打開への「具体的方策」は、以下の2案。

①内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能にすること。

②皇族には認められていない養子縁組を可能とし、(国民の中の)皇統に属する男系の男子を皇族とすること。

他に、③(国民の中の)皇統に属する男系の男子を法律により直接、皇族とする案があるものの、あくまで上記2案がうまくいかなかった時の予備的な位置付けだ。

しかし、これらはどれも、目先の「皇族数確保」を取り繕うことを狙った方策にすぎない。

 

国会決議を無視してテーマをすり替え

そもそも、同会議が設置されたのはなぜか。上皇陛下のご退位を可能にした皇室典範特例法の附帯決議において、政府が「安定的な皇位継承を可能にするための諸課題」「女性宮家の創設等」について、「速やかに」検討すべきことを要請されたのに応えるためだった。だから、同会議の正式名称は「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法に対する附帯決議』に関する有識者会議」となっている。

にもかかわらず、国会から求められた肝心な皇位の安定継承のための検討を棚上げにし、附帯決議には全く言及されていない「皇族数確保」という別のテーマにすり替えて、問題解決の“先延ばし”を図ろうとしている。とても誠実な態度とは言えないだろう。

法令に基づかない政府の私的諮問機関にすぎない同会議が、国民の代表機関である国会の決議をないがしろにすることは、民主主義の原則に照らして首をかしげざるをえない。同会議の設置目的と存在意義を、自ら否定する振る舞いではあるまいか。

しかも、同会議が示した上記2案はどちらも、目先だけの「皇族数確保」策としてさえ無理筋で現実味が乏しい。この点について、少し立ち入って吟味しよう。

皇族と国民が1つの世帯を営むという“無理”

まず①について。

先の附帯決議では「女性宮家の創設」を検討課題として名指ししていた。ここで想定されている“女性宮家”とは、内親王・女王がご結婚後も皇族の身分を保持されるのはもちろん、男性宮家と同じくご本人が当主となり、配偶者やお子様も皇族の身分を取得できるというプランだ。

ところが、①はそうではない。配偶者やお子様は国民の身分とされている。皇族と国民が1つの世帯を営み、内親王・女王は皇族として皇統譜に登録され、配偶者やお子様は国民として戸籍に登録されるという、前代未聞の世帯が登場することになる。あまりにも奇妙なプランではあるまいか。

その場合、ご結婚に当たって皇室会議の同意を必要とするのか、どうか。

憲法上、結婚は「両性の合意のみ」に基づく(24条1項)。だが、天皇及び男性皇族のご結婚に際しては、配偶者もお子様も皇族の身分になるため、例外的に皇室会議の同意を必要とする(皇室典範10条)。

よって、配偶者やお子様が皇族の身分にならない場合は、憲法の例外とするのは無理がある。しかし、引き続き皇族の身分を保持される内親王・女王のご結婚について、皇室会議が全く関与できないという制度は、不安が伴うのを否定できない。

つまり、皇族と国民が1つの世帯を営むというプラン自体に、無理があるということだ。

 

 

不自然な制度で、女性皇族の結婚は困難に

しかも、配偶者やお子様が国民であれば、憲法が国民に保障する政治・経済・宗教などについての活動の自由は当然、保持することになる。

しかし、そのことと、憲法で「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」(1条)「国政に関する権能を有しない」(4条1項)とされている天皇及び皇室のお立場との整合性は、保てるだろうか。

皇族の身分にとどまられる内親王・女王の配偶者やお子様の政治・経済・宗教上の活動などが、皇室と全く無縁なものと受け取られることは、およそ想定しにくい。そうすると、天皇・皇室の憲法上のお立場を損なうおそれが生じる。

だが一方、そのことを理由に、国民である配偶者やお子様の自由を妨げ、権利を制約することは、憲法違反になってしまう。

さらに、このような不自然な制度の下では、申し訳ない話ながら、愛子殿下をはじめとする内親王・女王方のご結婚それ自体が、極めて困難になると予想される。

以上のように考えると、①は制度としてとても採用できないだろう。

「門地による差別」で憲法違反に

では②はどうか。

こちらはより一層、無理筋だろう。何しろ、戸籍に登録される国民の中から、特定の血筋の者(皇統に属する男系の男子)だけが、養子縁組によって皇族の身分を取得できるという、特別待遇を与えられることになるからだ。憲法の国民平等の原則に反すると言わねばならない。

憲法14条1項に以下のような規定がある。

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

この条文に照らすと、②は国民の中の「皇統に属する男系の男子」のみに養子縁組を認め、それ以外の国民には認めないという、「門地(家柄・家格)による差別」に該当するだろう。

このことは、同会議のヒアリングに応じた憲法学者で東大大学院教授の宍戸常寿氏が、既に指摘しておられた(令和3年5月10日)。

「法律(皇室典範や特例法)等で、養子たりうる資格を皇統に属する(皇族でない)男系男子に限定するならば……一般国民の中で門地による差別に該当するおそれがある」と。

 

 

養子縁組は現実的なのか

同会議でも、この問題は自覚されているようだ。役人らしい婉曲的な表現ながら、事務局の「調査・研究」には次のような記述が見られる。

「法律の明文で規定する以上は、養子となり得る者として規定される国民と他の国民との間の平等感の問題はあるのではないか」

それを回避するために、恒久措置はあえて執らず、「個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能とする立法を行う」という苦肉の策も、選択肢の1つに挙げている。「あくまで養子縁組を行う意思の合致した特定の当事者のみが対象となることから、国民の間における平等感の問題は生じないのではないか」というのだ。

しかし、仮に「特定の当事者」の間で「養子縁組を行う意思が合致した」としても、養子にする相手が「皇統に属する男系の男子」でない場合はどうするか。あらかじめ「皇統……」という限定を設けるなら、やはり(「平等感」という主観の問題ではなく)客観的に「門地による差別」に該当すると言う他ない。

しかし、逆にその限定を設けなければ、「皇統」に属さない任意の人物(「男子」に限定すれば“国民”の間での扱いである以上、それも「性別による差別」に当たる)が養子縁組によって皇族の身分を取得できる制度になってしまう。

さらに、法律に欠かせない「一般性」(不特定多数の人に対して、不特定多数の事案に適用される)の観点からも、個別の養子縁組のためだけの立法措置は認めがたいだろう。

そもそも、養子縁組に応じる宮家や国民男性を期待できるか、という問題もある。

会議が袋小路に入り込んだワケ

①②はどちらも妥当性を欠き、実現可能性の点でも疑問がある。

さらに、それらの方策では、秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下のご結婚相手が必ず男子を生まなければ、これまでの皇統による皇位の継承が行き詰まってしまう事態は、何ら改善されない。ご結婚相手にとって想像を絶するような重圧を放置したままでは、ご結婚のハードルが絶望的に高くなってしまいかねない。

同会議は、どうしてこのような袋小路に入り込んでしまったのか。理由ははっきりしている。冒頭に述べたように、自らに与えられた皇位の安定継承への方策を探るという、本来の課題から逃げ出してしまったからに他ならない。

長く「男系」による継承を支えてきた側室制度がなくなり、天皇・皇族の正妻以外の女性から生まれた子(非嫡出子・非嫡系)には継承資格が認められなくなった。にもかかわらず、明治以来の「男系男子」という窮屈な継承資格の縛りだけは、相変わらず維持している。それこそが皇位継承の将来を危ういものにしている。

つまり、現在の皇室典範のルールのあり方そのものが問題の根源なのだ。

 

「女性天皇」「女系天皇」なしに安定継承は望めない

それなのに、同会議は見直されるべきルールを前提にした現在の継承順序を「ゆるがせにしてはならない」(7月の中間整理)などと決めつけて、自縄自縛に陥ってしまった。

しかし、皇位継承順位第1位の秋篠宮殿下は天皇陛下よりわずか5歳お若いだけで、ご高齢での即位を辞退される可能性について自ら言及されたことも報じられており、宮内庁もそれを否定していない。法的にもそれは可能なので(皇室典範3条。園部逸夫氏『皇室法概論』)、継承順序が変更される可能性は、制度改正とは関係なく、現にあるのだ。

皇位の安定継承を目指すならば、女性天皇・女系天皇を可能にする皇室典範の改正に踏み出す以外に、進むべき道はないはずだ。小泉純一郎内閣に設けられた「皇室典範に関する有識者会議」の報告書の結論は以下の通りだった。

「皇位継承資格を女子や女系の皇族に拡大することが必要であるとの判断に達した」

「我が国の将来を考えると、皇位の安定的な継承を維持するためには、女性天皇・女系天皇への途を開くことが不可欠」と。

今回了承された骨子を基に正式な報告書が政府に提出されると、やがて舞台は国会へと移っていく。そこでどこまで本筋の議論に立ち戻ることができるか。国会の真価が問われる。

 

  • 高森 明勅(たかもり・あきのり)
  • 神道学者、皇室研究者
  • 1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。

 


「副反応の重さとワクチンの効果は関係がない」コロナワクチンが"効く人"と"効かない人"がいる理由

2021-12-27 10:00:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

新型コロナウイルスのワクチンの副反応には大きな個人差がある。これにはどんな意味があるのか。国立国際医療研究センター(NCGM)の満屋裕明研究所長は「接種後の発熱や痛みとワクチンの効果には関係がないことが分かっている。ワクチンを接種しても1000人に5人は効果がでないが、これは人類の歴史と関係している」という――。(第2回)

※本稿は、国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Ridofranz

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感染後に抗体ができる人とできない人がいる

人間や動物がウイルスに感染すると、中和抗体が作られます。どんなウイルス感染症でもそれは同じです。しかし、中和抗体の働きはウイルス感染症の種類によって異なります。

たとえばエイズにかかったときにも中和抗体は作られますが、その活性は弱く、エイズウイルスは中和抗体をかいくぐる形で増殖を続けます。だからいったん感染すると、今では治療が進んで非常に高い効果が得られるようになっていますが、治療を受けないと自然に癒

なお

ることはありませんし、ほぼすべての感染者がエイズを発症して生命が奪われます。

では新型コロナはどうでしょうか。

一度かかって回復した人は、高い中和活性を得られるのかどうか。結論から言えば、高い活性を得られる人もいます。そうした人たちの中和抗体を使って、感染症の治療を行なうこともできます。これは回復者血漿療法という治療法で、NCGMでは新型コロナの治療法としてその研究を進めています。

新型コロナの回復者血漿療法については、すでに動物実験で高い効果が示されました。中和活性が高い回復者の血漿を新型コロナに感染させたハムスターに投与しますと、ウイルスによる肺の破壊(重症肺炎)を阻止できることがわかっています。同じくマウスを使った実験では、回復者血漿によって肺のウイルス量が1300分の1に減少しました。100万個のウイルスが約770個まで減ったわけです。

このように、新型コロナにかかって回復した人の中には、ウイルスの増殖を抑え込むのに十分な中和活性を得ている人たちがいます。しかし一方で、中和活性がほとんど得られない人もいて、そうした人たちは新型コロナからせっかく回復しても、再び感染してしまう恐れがあると考えられます。この問題の解決策の一つは、ワクチンの接種です。

ワクチン接種後の抗体値は感染回復後よりも高い

ファイザー社のワクチンの場合、接種した人たちの平均中和抗体値は、新型コロナから回復した人たちのそれより約3.8倍高いことが明らかになっています。同じくモデルナ社のワクチンは、回復者の約3.4倍高い中和抗体が得られることがわかっています。

同様の結果は、私たちが行なった調査からも確認できました。NCGMでは熊本総合病院の島田信也先生と共同で、ファイザー社のワクチンを2回接種した225人を対象とした調査を行なっています。この225人の平均中和抗体値は、新型コロナから回復した40人の平均中和抗体値の約1.6倍でした。

ワクチン接種者のうち最も中和活性が高かった人と、回復者のうち最も中和活性が高かった人を比べると、前者が後者の約1.8倍です。こうした事実から、すでに新型コロナにかかって回復した人もワクチンを接種するメリットは十分にあると考えられます。ただし、ワクチンの効果を最大限に得るためには、接種まで一定の間隔を空けるべきケースがあります。

たとえば抗体カクテル療法を受けて回復した人の場合、接種まで90日以上の期間をおくことを、アメリカCDC(疾病予防管理センター)は推奨しています。すでに新型コロナに感染し、これからワクチンを打とうと考えているみなさんには、医師とよく相談したうえで接種の時期、回数を決めていただきたいと思います。

 

 

ワクチン接種後の発熱や痛みと“効き目”は関係あるのか

先ほど紹介した共同研究では、ファイザー社のワクチンについて他にもさまざまなことを調べていますので、以下、明らかになったことを紹介していきたいと思います。

まず「接種後の発熱」と中和活性との関係ですが、結論から言えば、相関はほとんどありません。たとえば40度の熱が出た人と、いわゆる平熱(36.8度前後)のままだった人を比べてみたとき、有意の差は認められなかったのです。男性と女性を比べてみても、やはり有意の差はありませんでした。

ワクチンを打ったあとに熱が出たからといって高い中和活性が得られるわけではないし、熱が出なかったからといって中和活性を得られないわけでもないのです。すでに述べたとおり、発熱は接種後1日目から3日目くらいに起きる副反応です。中和抗体が産生されるのは接種後10日前後です。両者にほぼ関係がないことは、このタイムラグからも容易におわかりいただけるのではないかと思います。

写真=iStock.com/recep-bg

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次に、接種後の「痛み」についての調査結果です。痛みが激しかった人と、ほとんど痛みが出なかった人では、ワクチンの効果に違いはあるのか。これも結論から言えば、相関はほとんどありません。

この共同研究では痛みの種類を15種類に分け、「どれくらい痛かったか」という程度を点数化して中和活性との関係を調べたのですが、有意の差は見られなかったのです。接種後に激しい痛みが出たからといって高い中和活性が得られるわけではないし、まったく痛みが出なかったからといって「ワクチンが効いていない」ということでもないわけです。

60歳以上でも抗体は十分に得られる

年齢による違いはどうでしょうか。この共同研究に協力してくださったのはすべて病院のスタッフで、年齢分布は20歳から39歳が97人、40歳から59歳が110人、60歳以上が18人でした。

結論としては、「60歳以上の人たちで得られる中和活性はやや低い傾向があるが、著明ではない」ということになります。

60歳以上の参加者は全体のわずか8%ですから、年齢と中和活性との関係について、この調査だけで結論を下すことはできません。しかし少なくとも、この調査においては著明な差は出なかったわけです。

この共同研究では、ワクチン接種後の中和活性の減衰についても調べています。これも結論から言えば、時間の経過とともに減っていきます。平均値で見ると、2回目の接種を終えた30日後では約42%減衰しました。その後の傾向については現在(2021年9月)調査中ですが、時間が経てば経つほど減っていくのはまず間違いありません。接種後1年では相当な低下が見られるでしょう。この問題に対して、私たちはどう対処すればいいのか。

まず一つ言えるのは「人体には免疫記憶という仕組みがある」ということです。ワクチンを接種するとB細胞が中和抗体を産生するようになります。その後、B細胞は減っていきます。しかし、新型コロナウイルスを異物として認識したという「記憶」は残って、新型コロナウイルスが体内に入ってきたときにはB細胞は急速に増加し、B細胞が産生する中和抗体も急増するのです。

出所=『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日

 

 

ワクチンが効かない人がいるのはなぜか

免疫記憶が十分に作用すれば――たとえワクチンで得られた中和活性が減衰していたとしても――感染は防げるわけです。しかし、2021年9月現在では「免疫記憶は新型コロナウイルスに対してどのように働くのか」というデータの蓄積はまだ不十分です。

そこで各国では「3回目のワクチン接種が今後必要になるだろう」と想定し、その研究を進めています。たとえばファイザー社のワクチンを2回接種した人は、3回目もファイザー社のワクチンを接種したほうがいいのか。そうではなく、3回目はアストラゼネカ社などの別タイプのワクチン(ウイルスベクターワクチン)を打つべきなのか。そうした研究が世界中で行なわれているのです。結論はまだ出ていません。

今後、臨床データの蓄積と解析が進んでいけば確かなことがわかってくるでしょう。

ワクチンについてはもう一つ、「接種しても中和活性を十分に得られない人がいる」という問題もあります。たとえば私たちの共同研究では、ファイザー社のワクチンを接種した225人のうち、1人の方は少なくとも私たちの検定方法ではまったく中和活性が見られませんでした。

すでに述べたとおり、ファイザー社のワクチンには95%の予防効果があります。この95%の予防効果というのは「100人のうち5人はワクチンが効かない」ということではありません。ワクチンを打たなかった人が1000人いたとき、100人が感染して発症する。ワクチンを打った人が1000人いたとき、5人だけが感染する。これが95%の予防効果です。

言い方を少し変えると、1000人中5人(全体の0.5%)はワクチンを打っても感染・発症してしまうわけです。なぜそうしたことが起きるのかと言えば、私たちのいろいろな病原体に対する免疫学的な力、すなわち免疫応答能には多様性があるからです。

免疫に多様性があることで人類は生き延びることができた

私個人の話をすると、新型コロナワクチンを接種して得られた中和活性は、全体から見て「中の中の下」といったレベルでした。先に示した共同研究において最も高い中和活性を得た人と比べると、私の中和活性は約7分の1しかありません。しかし、私のB型肝炎に対する中和活性は平均よりずっと高いことが、過去に受けた検査でわかっています。

写真=iStock.com/wildpixel

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つまり私は、新型コロナに対しては人並みの免疫しか持っていないけれども、B型肝炎に対しては並外れて強い免疫を持っているようです。これは私という人間が先祖から受け継いだ特性です。

人類はその長い歴史の中で、幾度も生命を脅かす感染症の脅威に晒さらされてきました。しかし、たとえばペストや天然痘のような恐ろしい感染症の大流行が起きても、絶滅はしていません。なぜかといえば、多様性があるからです。

ある人はペストでは死なないけれど、天然痘では死んでしまう。またある人は天然痘では死なないけれども、ペストでは死んでしまう。そうした多様性があるからこそ、私たち人間は今日まで命をつなぐことができたのです。

 

 

新型コロナを最終的に解決するには抗ウイルス治療薬が必要

新型コロナに対しても、やはり同じことが言えます。感染しても症状が出ない人、ごく軽い症状が出るだけですむ人たちが多数いる一方で、重症化して苦しむ人、命を失ってしまう人がいます。幸いにもきわめて効果の高いワクチンが開発されましたが、一部の人はワクチンの恩恵を得られないと推定できます。

変異株の問題もあります。いくつかの変異株には、ワクチンの効果が十分に及びません。新型コロナに対する現在唯一の認可抗ウイルス治療薬であるレムデシビルに対して、耐性を有する変異株の存在も報告されています。ワクチンや治療薬が効きにくい変異株が今後も出現し続けると覚悟しなければなりません。

そこで必要になるのが、新しい抗ウイルス治療薬です。変異株に対しても等しく強力な効果のある抗ウイルス薬を開発しなければ、新型コロナに関わる問題は最終的な解決に至らないと思われます。

経口投与の新薬を開発中

ご承知のとおり、治療薬の研究は現在世界中で進められています。NCGMでも新薬の開発に取り組んでいて、新型コロナウイルスに対して強力な活性を発揮する化合物をすでに開発しています。私たちとしては、新薬は経口投与できるものにしたいと考えています。一日の服用回数は1回から3回、服用期間は1週間から10日を想定しています。

国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)

PCR検査で陽性だと判定された人がその薬を飲んだとき、高い中和活性を持っている人と同等のレベルでウイルスがブロックされる。なおかつ、体内にウイルスが入ったことによって免疫システムが作用し、中和抗体が生まれる。そうした薬の開発を目指しているのです。

今しがた述べたとおり、私たちが開発した化合物は、新型コロナウイルスに対して強力な活性を発揮します。しかし、これを薬として世に送り出すまでには、まださまざまなことを検討・確認しなければなりません。飲み薬にするためにはどうすればいいのか。1日に最大3回、最長10日の服用で十分な効果を得るためには、どうすればいいのか。有効成分は飲んでからどれくらいで血中に現われ、どれくらいで半減するのか。

そうした検討や確認を一つ一つしていかなければならないわけです。何より重要なのは副作用の有無です。人体に悪い影響が出るのか、出ないのか。そこは特に綿密な検討をしなければなりません。いずれもなかなか大変な仕事ではありますが、日々少しでも前進していけるよう、これからも全力で取り組んでいきたいと思っています。

 

 

  • 満屋 裕明(みつや・ひろあき)さん
  • 国立国際医療研究センター研究所長
  • 1950年生まれ。1975年熊本大学医学部卒業。1980年同大学医学部助手。1982年米国国立癌研究所客員研究員。1991年米国国立癌研究所、レトロウイルス感染部部長(現職)。1997年熊本大学医学部教授。2012年国立国際医療研究センター理事・臨床研究センター長(兼任)。2016年より現職。