皆さんのお役に立てば幸いです

色々の無料ホームページからお役に立て様な記事を探して掲載します。主に健康・くらしです。

安楽死の現実に向き合った看護師が到達した結論

2021-12-26 15:30:00 | 日記

下記の記事は東洋経済様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

医師や看護師たちが「自分の人生を変えたひとりの患者」について語ったインタビューをまとめたオランダの日刊紙『デ・フォルクスラント』のコラム「ある特別な患者」。

書籍化されオランダのベストセラーとなるとともに、アメリカをはじめ世界中で続々と翻訳出版されている。「コロナで死に瀕した女医を見守った看護師の回顧」(12月3日配信)「嘘を通した母に殺された少女が残した悲しい教訓」(12月10日配信)に続いて、日本でも刊行された本書『ある特別な患者』の中から安楽死に関するコラムをお届けする。

 

人生の最盛期に迎えた悲しい宣告

●母親/パウラ・フルーネンダイク(看護師) 彼女は、活発で魅力的な20代後半の女性だった。夜遊びが好きで、流行に敏感で、休暇になると旅行に出かけて……まさに人生の最盛期にいた。

しかし、そうした日々はとつぜん終わりを迎える。ある日、彼女は末期の子宮頸がんだと宣告された。もはや治す手立てはなく、痛みを多少やわらげる以上のことはできなかった。

私の働く病院に入院していた彼女は、ある夜、私に向かってこんなことを言ってきた。

「ねえ、パウラ。こんなのもう耐えられない」

彼女の腹部と両足は薬の影響で腫れ上がり、表情には苦痛と憔悴の色がはっきりと見てとれた。

彼女はこう続けた。「人生でいちばんすてきな時期のはずなのに、こうして弱っていくことしかできないなんて」

私は夜間のシフトに入ることが多い。昼間に比べ、夜は患者の本音を聞くことが増える。見舞い客が家に帰り、医師が病室を出ていき、静寂と暗闇が訪れると、患者は内省的になるものなのだ。

本人からの安楽死の希望

ある夜、女性は私に「安楽死させてほしい」と言ってきた。その日は真剣にはとりあわなかったのだが、翌日の夜も同じことを言われたので、私は彼女の主治医にそのことを伝えた。

でもその医師は、安楽死について彼女に説明したあと、まだその判断を下すつもりはないと言った。痛みを緩和する方法はまだ残っているし、あと数カ月は容体も安定しているはずだ、と。

そう伝えると、彼女は憤慨した。

正直、彼女の気持ちもわからなくはなかった。私もかつては「患者は誰しも安楽死を遂げる権利をもつ」と考えていたからだ。

たとえ患者がまだ若かったとしても、例外にはならないと思っていた。看護師になって間もない20代前半のころ、私は医師とともに自殺幇助を行ったことがある。患者は末期症状に苦しむ若い女性だった。あのとき、同僚は誰ひとりとして手伝おうとはしてくれなかった。

その後も私は、安楽死はすべての患者に与えられた正当な権利だと思っていたし、医師が安楽死を拒んだときは少なからず腹を立てていた。

ところが最近になって、私の考えを大きく揺るがすできごとが起こった。

実はその2カ月前、私の息子が心臓発作を起こし、この病院で治療を受けていた。入院中、私は言葉にならないほどの不安にさいなまれながら、ベッドサイドに腰を下ろして息子を見守った。

あの若い女性のベッドサイドには、2カ月前の私と同じような顔をした母親の姿があった。私の息子とその母親の娘は同い年だった。

私の息子は無事に回復したが、その母親は娘にお別れを言わなければならない。

納得できない母親

とはいえ、その女性の娘が「人生を終わらせたい」と望む気持ちは、私にも理解できた。結局のところ、それは彼女の人生であり、決定権は彼女自身にあるのだ。

でも、そのことを彼女の母親に伝えたとき、私はいろいろな意味で居心地が悪くなった。

安楽死を決断するのが早すぎる、とその母親は声を荒らげた。そして、私の目を見据えてこう言ってきた。

「あなた……自分の子どもが同じ立場になったとして、同じことが言えるの?」

その言葉は、私の胸に深く突き刺さった。その母親の気持ちは痛いほどよくわかった。

最終的に、彼女の両親は娘を家に連れて帰った。そして数カ月後、彼女は亡くなった。

あれ以来、私の若い患者への接し方はすっかり変わったように思う。

それまでずっと、患者の家族が患者に苦しい闘いを続けさせようとするのを見るたびに、私はなんともいえない苛立ちを覚えていた。

でも、いまは違う。自分の息子が病院に運びこまれたことで、患者の両親が感じる恐怖と、わが子の安楽死を認めたくない気持ちがよくわかったのだ。

安楽死は、強制的に最後のお別れをもたらすものだ。

私はいま、末期症状に苦しむ若い患者のケアをするときは、彼らが少しでも長く快適な時間を過ごせるよう力を注いでいる。ときどき病院の外に連れ出したり、栄養のある食事をとらせたり、できるかぎり痛みをやわらげたりして、患者が「早く死にたい」などと考えないようにするのだ。

医師にもそれを拒む権利がある

わが子に別れを告げる覚悟ができていない親の気持ちも、若い患者の人生を終わらせたくないと思う医師の気持ちも、いまならよくわかる。

『ある特別な患者』(サンマーク出版)。

医師はみな、治療者(ヒーラー)としての信念をもっている。彼らにとって、自分の子どもと同じ、あるいはそれより若い患者に安楽死を施すことは、自らの信念に反する行為でもあるのだ。

安楽死は患者に与えられた正当な権利だが、患者の人生を終わらせたくないとき、医師にもそれを拒む権利があると私は思っている。

[安楽死に関する注記 ]

本エピソードの舞台であるオランダでは日本と違い、安楽死が合法である。オランダの医師たちは、患者から要望があると、その患者の人生を終わらせるための手伝いをする権限が与えられる。ただし、その行為には「デューディリジェンス[当然に実施すべき注意義務および努力]」がなければならない。

基準のひとつは、患者の苦痛の程度だ。患者が耐えがたい苦痛を感じていると判断され、かつ回復の見込みがないことが条件となる。判断にあたっては、主治医だけでなく、その患者の治療にかかわっていない第三者の医師による承認が必要になる。そうしたすべての基準を満たす場合のみ、医師は安楽死を施しても刑事責任を問われない。オランダでは、安楽死が死因全体に占める割合は4%で、その大半は末期がん患者のケースである。


医師・内藤いづみ 「人は必ず死にその命は紡がれる」

2021-12-26 13:30:00 | 日記

下記の記事はハルメクWeb様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

前回は、限られた時間を過ごす人、それを見送る人へのメッセージをくださった内藤いづみさん。3回連続の2回目は、在宅ホスピス医としての内藤さんの原点について。

目次

  1. 看取りの瞬間は、お産と似ている
  2. 自分で余生を決めた若き女性患者との出会い
  3. 「ホスピスでベイビーの声が聞けるなんて!」
  4. 人は必ず死ぬ。でもそのいのちは紡がれる

看取りの瞬間は、お産と似ている

 

 

私は3人の子どもの母です。去年、末娘が大学生になり、家を出ました。この頃ようやく、子どものいない、夫とふたりきりの静かすぎる生活に慣れてきたところです。

 

ちょっと変に聞こえるかもしれませんが、子育てとホスピスケアは似ているなあと思うのです。何人育てても、何人を看取っても「慣れる」ということは決してない。その都度真剣勝負で、「こうすればいい」というマニュアルは一切ありません。

 

そして、産声をあげるときと息を引き取るときの状況も実はよく似ています。長野県松本市で開かれた講演会でのことでした。このとき一本のDVDを会場のみなさんにお見せしました。ひとりのおばあちゃんが息を引き取る瞬間の映像です。

 

おばあちゃんは呼吸の間隔が3秒、4秒と長くなり、口は大きく開いたまま。意識はもうありません。いびきのような、ガラガラと響く音を立てています。家族や親戚がおばあちゃんのベッドをぐるりと囲み「おばあちゃん、がんばれー」「ありがとう、ありがとう」と声をかけながら、涙をいっぱい浮かべておばあちゃんの顔や頭、体をさすっています。

 

上映後、会場にいた妊婦さんが私のところへ来て、「先生、看取りの瞬間って、お産のときと似ていますね」と言いました。「みんなで体をさすって、『もうちょっとだ』『がんばれ』って声をかける。あれは出産のときと同じですよ」と。

たしかにそのとおり。おもしろいなあと思います。生と死は、コインの表裏のようなもの。以前、作家の遠藤周作先生からいただいた『チベット死者の書』を思い出しました。これは、死の瞬間から次の生を得て誕生するまでに魂がたどる四十九日の旅を描写した経典で、臨終を迎えた人の枕元で僧が読む習慣がチベットにはあるのだそうです。

 

経典には、「私たちが泣きながら生まれてくるとき、周囲の人々は歓喜の声をあげる。私たちが死んでいくとき、周囲の人々は泣き、私たちは歓喜に満ちて笑う」と書かれていました。私の患者さんの多くは、亡くなって30分くらい経つと、穏やかないい笑顔になります。その顔を見ていると、「あぁ、いいところに行ったんだなあ」と、こちらもほっとした気持ちになる。“あっちの世界”は怖いところではなさそうだ、と思わせていただいています。

 

自分で余生を決めた若き女性患者との出会い

私は、大学病院に勤務した後、29歳で“ホスピス発祥の地”イギリスへ渡り、ホスピスケアの基礎を学びました。大学時代に福島県で知り合って結婚したイギリス人の夫の、本社への異動が大きなタイミングとなり、いのちの主人公である患者本位のケアは何かを、本場で学ぶことになったのです。

 

大学病院勤務時代に感じていたのは、苦しみや痛みを訴えるがん患者さんに、信頼関係をもとにした満足な治療ができていない自分へのふがいなさでした。主治医でも、教授の許可がないと患者を退院させられない。告知もできない。そこから生じる患者さんとの、本音ではないぎこちないやりとり。このままでいいのかと、いつも自分に問いかけていました。

 

そんなときに出会ったのが、23歳の女性でした。大学院生で、がんが肺に転移し、余命は4か月。私は彼女の主治医ではなかったけれど、同年代だったこともあり、毎日病室に足を運んで映画の話、恋の話などあれこれ語り合いました。賢い彼女は、告知されずとも自分ががんだとわかっていました。私は助かる見込みのない彼女に何かしてあげたいと思うようになりました。そしてついに「家へ帰りたい?」と尋ねてしまったのです。

 

「帰りたい」。彼女ははっきりそう言いました。

 

「整理しておきたいものもあるんです」

 

彼女の望みは、チューブでつながれた、スパゲティ状態の延命措置ではなかった。自分の人生の締めくくりとして自分で余生を決めたいという強い思いでした。

 

「私が責任をもつ」と宣言し、私はご両親と病院の許可を得て、彼女を退院させました。まだ日本では在宅ケアがほとんどされていなかった時代。でも、ただ彼女が残された時間を穏やかに過ごせるように、それだけを願い、大学病院には内緒で往診を続けました。

 

彼女は自宅で家族とともに、普通の日常を送りました。「子どもを産んでみたいな」と夢を語ることもありました。「お父さんが毎晩顔をのぞきに来るの。息をしていないとでも思ったのかしら」。こちらに気を使わせまいと気丈にそんな冗談を言うこともありましたが、あとから聞いた話では、これまでつけてきた日記の始末をひそかにしていたのだそうです。

 

そして4か月後、彼女は大好きなお母さんに背中をさすられながら、その腕の中で息を引き取りました。ご両親は、私に彼女の遺影を選ばせてくださいました。私は家に帰ってから泣いて泣いて、ひとりで抱えるにはあまりにも重い仕事を選んだのだと、心から思い知りました。

 

彼女は生前、「大学病院の先生が100人いなくてもいい。内藤先生がいてくれるから。家で私を診てくれるから」と言ってくれました。その言葉が、どれだけ今の私の支えとなり、力となっていることか。彼女との日々が、私の在宅ホスピスケアの学びの旅の始まりとなりました。

 

「ホスピスでベイビーの声が聞けるなんて!」

学びの旅の舞台はイギリス・グラスゴーのホスピスへと移りました。

 

私が学んだところは、入院・通院・在宅の3タイプの中から、自分が望む方法を選べるというシステム。私はここで頭をガツンと殴られたようなカルチャーショックを受けました。末期がんで死期が迫った患者さんが、みんなニコニコと、とにかく明るく過ごしていたのですから。

 

全身にがんが転移し、食事をとることが困難になった通院患者の60代の女性に点滴をするよう勧めると「3時間もベッドにつながれているより、たとえひと口しか食べられなくても家族と食卓を囲み、みんなの笑顔を見ていたいの」とはっきりと断わられました。そして笑顔で食卓について、わずかひとさじのビーフシチューを口に運び、ゆっくりと味わった。「死は敗北だ」という空気が充満していた当時の日本の医療現場では、まったく考えられない世界でした。

さらに驚いたのは、私の子どもと患者さんたちとのことです。私はイギリスで二人の子どもを助産師さんに取り上げてもらいました。だから、イギリスでのいのちの始まりと最期のケアの手厚さがよくわかります。

 

一人目の長男を出産し、1か月半ほどたった頃、ホスピスの女性院長が「ホスピスにベイビーを連れて来てよ」とおっしゃるのです。恐る恐る行ってみると患者さんがあっという間に「おぎゃー」と泣く長男のところへ集まってきました。そして、「ホスピスでベイビーの声が聞けるなんて!」と細くなった腕を伸ばし、みなさん長男をいとおしそうになでてくれたのです。

 

「ベイビーがいるから来た」と言い、ホスピスに通っていた70代の腎臓がんの男性。衰弱して歩行も難しくなった時点で在宅ケアを選択されましたが、私が長男と往診に行くと、目を輝かせて体を起こし、「おおベイビー、よく来たねぇ」と、とても元気になるのです。枕元の自分の息子の写真の隣には、最期まで私の長男とのツーショットを飾ってくださっていました。

 

人は必ず死ぬ。でもそのいのちは紡がれる

死生学を専門とする上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン氏は、以前私に「お年寄りは泣いている子どもを見て、自分の消えゆくいのちを悲観するのではなく、連綿と続くいのちのエネルギーを予感して、子どもからエネルギーを受け取る。子どもは老いの姿に日常的に接することがデス・エデュケーションになる」とおっしゃいました。デス・エデュケーションとは、死への心の準備をする教育のこと。イギリスのホスピスで私が見たのは、まさにお年寄りが赤ん坊からエネルギーを受け取る瞬間だったのです。

 

帰国後、私が看取った患者さんの中に、小学生のお孫さんと同居する60代の乳がんの女性がいたのを思い出します。この女性が亡くなってから数年後、ふと朝刊をめくっていると、高校2年になったあのお孫さんの作文が入選し、紹介されていました。作文は、おばあちゃんとの最期の日々を綴ったもので、「祖母は弱っていく自分を受け入れ、死に向かっていくことを理解し、最期までたくましく生きていた」とありました。

 

戦前はほとんど自宅だった出産も看取りも、今は病院という隔離された場所で扱われることが一般的になり、いのちのリアリティーが、遠い存在になったように思います。

 

人は必ず死ぬ。でもそのいのちは紡がれる。

 

いのちに向き合うことは、豊かに生き、豊かな社会にするために大事なことなのだと、あの作文は改めて思い知らせてくれたのです。

 

撮影=中西裕人

内藤いづみ(ないとう・いづみ)さん

1956(昭和31)年、山梨県生まれ。福島県立医大卒業。東京女子医大勤務などを経て、86年、英国のプリンス・オブ・ウェールズ・ホスピスで研修を受ける。95年、甲府市で「ふじ内科クリニック」を開設。主な著書に『あなたを家で看取りたい』(ビジネス社刊)など。


「オミクロン株にはどう対応すべきか」忽那賢志教授が考える"変異株対策"の重要ポイント

2021-12-26 12:00:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に、私たちはどう対応すべきなのか。大阪大学大学院医学系研究科(前・国立国際医療研究センター)の忽那賢志教授は「私たち一人ひとりがやるべきことは、どのような変異株に対しても同じ。外出を控え、外出先の屋内ではマスクを着用する。三密を避け、こまめに手洗いをする。こうした対策が『変異株対策』にもなる」という――。(第1回)

※本稿は、国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

写真=AFP/時事通信フォト

新型コロナウイルスの変異株オミクロン

全ての画像を見る(5枚)

後遺症が完治するのかもまだ分かっていない

新型コロナの流行が始まってから一年半が過ぎた今、標準的な治療によって一定の成果が出ています。新たな治療法・治療薬の開発は世界中で進められていて、さらにワクチンもどんどん普及しています。しかし、収束の目途はまだ立っていません。

日本では現在も、80代・90代の感染者の約10%が亡くなっています。世界全体の致死率は約1~2%で、この数字だけを見ても、感染症の死亡率としてはかなりの高さです。それだけ病原性の強い感染症が世界中に広がっているわけですから、今回の感染拡大はスペイン風邪以来の100年に一度の危機です。そして、その危機はまだ去っていません。

広告

 

もう一つ、後遺症の問題もあります。「体がだるい」「息苦しい」「胸が痛い」といった症状の他、脱毛、嗅覚や味覚の障害、咳、頭痛などの症状が回復後に出た人は、感染者全体の約20%もいます。これまでの報告から、後遺症は時間の経過とともに消えていく傾向が示されています。

感染から2カ月の時点で症状が残っている人、4カ月の時点で症状が残っている人、という形で見ていくと、後遺症がある人は減っていくのです。しかし、全員が完全によくなるかというと、それはまだわかりません。

 

 

「若者にとってコロナはただの風邪」は本当か

たとえば、嗅覚障害がずっと続いている人も中にはいます。後遺症についてはもう少し長期的に見ていかないと実態を掴

つか

めませんが、確かなのは、若い人たちにも後遺症のリスクがあるということです。

「若者にとってはコロナはただの風邪だ」などと言う人もいますが、新型コロナは誰にとっても「かかってはいけない病気」です。その意味でも、やはり従来どおりの感染対策をおろそかにできません。

外出をなるべく控える。外出先の屋内ではマスクをつける。三密(密閉空間・密接・密着)を避ける。人との距離をとる。こまめに手洗いや手指消毒をする。こうした話にはもうウンザリしている人も多いでしょうが、日々油断せずに対策を続けていけば、確実にリスクを減らせます。

感染比率は飛沫感染が9割で接触感染が1割

私たち医療従事者の感染対策も、実は流行初期から大きく変わっていません。当初、新型コロナウイルスはまったく未知の存在でした。しかし、それが呼吸器感染症を起こす病原体であることは間違いないわけで、そうである以上、やるべき対策はおのずと決まってきます。

2020年1月、NCGMと国立感染症研究所は共同で感染対策の指針を出していますが、この指針は今もほとんど変わっていません。新型コロナの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。比率で見ると飛沫感染が全体の約90%。接触感染が約10%です。いわゆる狭義の空気感染は起こりません。

ただし、換気の悪い密閉された空間では、飛沫が本来飛ぶ距離(最大2メートル程度)を超えて「空気感染のように広がる」ケースがあります。これは日本では「マイクロ飛沫」と呼ばれていて、マイクロ飛沫による感染も起こり得ると考えられていますが、それも含めて飛沫感染は全体の約90%です。

接触感染が全体の10%というのは、あくまでも頻度の問題です。リスクが低いわけではないし、「飛沫だけ気をつければいい」とか「手洗いはあまり気にしなくていい」ということではありません。接触感染は今も起きていますから、今後も引き続きこまめな手洗いや手指消毒を心がけることが必要です。

写真=iStock.com/fpm

※写真はイメージです

 

「うつす人」と「うつさない人」はなにが違うのか

感染症には「20/80ルール」というものがあります。

感染者全体を調べると、人にうつしているのは約2割で、残りの約8割は誰にもうつしていないケースが多く、この現象が「20/80ルール」と呼ばれているのです。新型コロナにもこのルールはあてはまります。

これについてはいくつか報告があって、たとえば2020年3月に発表された厚生労働省対策本部クラスター対策班の調査報告も、「20/80ルール」を裏づけるものでした。全体の2割しか人にうつしていないのに感染が世界中に広がったのは、一人でたくさんの人にうつす人がいるからです。

厚労省クラスター対策班の調査報告では、最大で1人が12人にうつしていた事例がありました。1人でたくさんの人に感染を広げる人を「スーパー・スプレッダー」と言います。ASESやMERSでもスーパー・スプレッダーによる感染拡大は起きていて、韓国でMERSが流行したときは1人で86人に感染を広げた事例があります。

まわりにうつす人、うつさない人がいるのはなぜなのか。これはおそらく、個人の特性ではなく、環境に左右される問題だと思います。「たくさんうつす」という個人的特性を持っている人がいるわけではなく、換気の悪い三密の環境にいた人が多くの人たちに感染を広げた、ということだと私は考えています。

人にうつす人、うつさない人がいる理由はまだ完全には解明されていません。たとえば「女性と男性と比べると、女性のほうが人にうつしやすいのではないか」という報告もあるのですが、私は環境要因のほうが大きいと考えます。

感染した子どもの75%が親からうつされている

いずれにしても、自分が「うつさない8割」なのか「うつす2割」なのかということは、感染前にはまったくわかりません。自分自身がスーパー・スプレッダーにならないためにも、やはり従来どおりの感染対策は大切です。

広告

 

ちなみに、新型コロナに感染した子どもの約75%は、親からうつされています(日本小児科学会の小児レジストリ)。この逆に、子どもが親にうつすケースはあまりありません。家庭内感染を防ぐためには「大人が感染しないこと」が肝要であるわけで、その意味からも感染対策には十分に気を配っていただきたいと思います。

 

 

変異株とはなにか

2021年1月頃から、日本でも変異株という新たな問題が表面化しました。あらゆるウイルスは、環境に適応して生き残っていくために、増殖を続けながら遺伝子情報を変化させていきます。これが変異です。

写真=iStock.com/koto_feja

※写真はイメージです

新型コロナウイルスもまた常に変異を起こしていて、だいたい1カ月に2回のペースで大きな変異が起こると考えられています。ですから、流行初期の新型コロナウイルス(いわゆる武漢株)は、もう世界中のどこにもいないと思われます。

今いるウイルスはすべて変異株であるわけですが、その中で特に懸念すべき特徴を持っているものを、私たち専門家は「VOC(Variant of Concern)=懸念すべき変異株」と呼んでいます。メディアでよく言われる「変異ウイルス」はこのVOCを指すことが多いです。

2021年6月現在、日本でVOCに指定されているのはイギリス由来、インド由来、ブラジル由来、南アフリカ由来の変異株です。いずれもすでに日本に上陸していて、「従来株よりも感染性が高いのではないか」とか「ワクチンの有効性が低下するのではないか」といったことが懸念されています。

これら4つの変異株は、まったく突然日本に現われたわけではなく、どれも海外から入ってきたものです。たとえばインドとまったく接点のない人がインド株(デルタ株)に感染したケースがありましたが、これは「誰かが日本に持ち込んだインド株が市中に広がっている」ということです。

もちろん検疫所ではPCR検査をしています。しかし、100%正確な検査方法というのは、実はこの世に存在しません。

変異株の感染力が増すのは「スパイク蛋白」の変容が原因

新型コロナのPCR検査の場合、感染者が陽性と判定される確率はおおむね70%とされています。つまり、100人の感染者がいたときは30人が陰性と判定されてしまうのです。

国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)

こうした見逃しの他に、入国したときにはまだ発症していない人がPCR検査を受けたケースで、ウイルスが検出されないことがあります。結果として海外から変異株が持ち込まれてしまい、さらに市中感染が広がっているわけです。

変異株の感染力が増すのは、ウイルスの「スパイク蛋白」が変容するためです。スパイク蛋白というのはウイルスの周囲にある突起のことで、この突起がヒトの細胞とくっつくと、ウイルスは細胞内に侵入します。問題となっている4種の変異株は、その「くっつきやすさ」が強化されているため、感染力が増していると考えられているのです。

 

 

いままで通りの感染症予防が変異株対策にもなる

もう一つ懸念されているのは、「ワクチンの効果が低下するのではないか」ということです。ワクチンを接種すると、体内に抗体が作られます。抗体は新型コロナウイルスを攻撃し、無力化します。その具体的なプロセスはミクロの世界の出来事なので、説明がいささか難しいのですが、ざっくり言うとこういうことです。

ウイルスの表面にあるスパイク蛋白と抗体が結合すると、ウイルスは細胞内に侵入できず、感染は起こりません。しかし、変異によってスパイク蛋白の形が変わると、抗体と結合しにくくなります(図表1)。

出所=『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日

つまり、感染のリスクが高くなります。すでにワクチンを打った人、あるいはすでに新型コロナに感染した人は、体内に抗体を持っていますが、その抗体が変異株を抑えてくれるかどうか、今はまだ十分なデータがありません。そのためにワクチンの有効性の低下、再感染のリスクが懸念されているわけです。

とはいえ、私たち一人ひとりがやるべきことは、どのような変異株に対しても同じです。外出を控え、外出先の屋内ではマスクを着用する。三密を避け、こまめに手洗いをする。こうした対策を続けていくことは「変異株対策」でもあるのです。

 

  • 忽那 賢志(くつな・さとし)さん
  • 大阪大学大学院 医学系研究科 教授
  • 感染症専門医。2004年、山口大学医学部卒業。同大学医学部附属病院、市立奈良病院等を経て、12年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。18年より同センター国際感染症対策室医長。2021年より現職。感染症全般を専門とするが、特に新興再興感染症、輸入感染症の診療に従事し、水際対策の最前線で診療にあたっている。

「眞子さん小室圭さん夫妻、帰国は意外と早い」その根拠と預貯金の問題

2021-12-26 11:00:00 | 日記

下記の記事はNEWSポストセブン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

 

NYの街を談笑しながら歩く小室夫妻

写真113枚

秋篠宮家の長女・小室眞子さん(30)と夫の圭さん(30)がアメリカ・ニューヨークへ旅立って1か月が経過した。マンハッタンのヘルズキッチンのマンションに住む2人の散歩デート姿がしばしば目撃されている。

圭さんは現地の法律事務所に勤務しながら、一度不合格となった司法試験に再チャレンジを狙う日々だが、その一方で宮内庁の関係者の間ではこんな想定がされているという。皇室ジャーナリストが語る。

「やはりお金に関する懸念が大きいですね。2月の司法試験に合格するのは当然のこととして、それでも夫妻は、遅かれ早かれお金の面で立ち行かなくなり、結局、帰国するのではないかと見られているようです。今後、お子さんが生まれたら物価の高いNYで、お二人の生活水準を維持しながら、生活を送るのはなかなか難しいだろうとも宮内庁側は見込んでいると言います」

元皇族としてセキュリティが確保された住居に住み、いきなり生活水準を下げないように一定の生活レベルは維持されるのだろう。現に2人は日本円で家賃40万円以上の高級マンションに住んでいるといわれている。だが、何度も報じられた通り、眞子さんは結婚に際しての約1億5000万円の一時金を辞退した。宮内庁側は当然のことながら、「結婚直前の眞子さん本人の預貯金額や持参金」は把握している。

2020年11月、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)となられたことで、秋篠宮家の主な収入である「皇族費(=プライベートなお金)」は、年に9150万円と決められた。従来の3050万円の3倍に相当する額だ。これに加えて紀子さま、佳子さま、悠仁さま、そして結婚前の眞子さんに対してそれぞれ規定の額が支給され、総額では約1億3000万円となっていた。

「紀子さま自身、やりくりの大変さについて不満を漏らされていることが報じられたことがありましたね。増額されるまでの額を見れば一目瞭然ですが、秋篠宮家は昨年まではカツカツの状況だったとみられています」(前出・皇室ジャーナリスト)

要するに、眞子さんの預貯金はそれほどではないというわけだ。

「昨年に増額されたとはいえ、今後も悠仁さまを中心にお金が必要となる場面は少なくありませんから、NYの小室夫妻に手厚いサポートをするのは望み薄かもしれません」(同前)

他方、圭さん側の懐具合ははっきりとはしないが、こんな指摘がある。

NYにいる眞子さんに佳代さんはテレビ電話をかけているという

写真113枚

「かつて圭さんの母・佳代さんは、『(圭に対して)私からお金を出すことはない。自分で何とかするはずだ』と語っていたことがあるそうです。これを裏返すと、小室家にそこまでの蓄えがないということになるでしょう。実際、圭さんはNYへの留学は奨学金で賄っていたし、佳代さんが亡き夫の遺族年金や父親の年金を頼りに生活していることが報じられたり、そして元婚約者との間の金銭トラブルが長らく解決しなかったりしたことを踏まえると、潤沢に蓄えがあると宮内庁側は捉えていないようです」(別のジャーナリスト)

もちろん、眞子さんがNYで就職するという選択肢も想定されている。

「日本なら皇室にゆかりのある職種が割とありますが、外国だとそうもいかないのが悩ましいところですね。NYの博物館で勤務するという話もありますが、そもそも、患っている複雑性PTSDもありますからフルタイムでしっかり働くというのは厳しいと見られています」(同前)

小室夫妻の懐具合を心配する声があがり、いつしかそれが、早めの帰国説となって、宮内庁関係者の間で囁かれているという。

「眞子さん圭さんには、NYに支援者もいると言われています。彼ら“スポンサー筋”のサポートを受けることで生活水準をキープすることも可能でしょう。ただ、異国で初めての結婚生活、今後はそこに育児も加わるかもしれない、そう考えると、ご無理をされないほうがいい、という考えになっているようです」(同前)

周囲の心配をよそに、日に日に2人はNYの街に馴染んでいる。


オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情

2021-12-26 10:00:00 | 日記

下記の記事は東洋経済様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

 

オミクロン株の感染が世界中で拡大している。筆者が考えるオミクロン株の主要な論点について議論したい。

オミクロン株はアジアで流行するか

私の最大の関心事だ。11月に南アフリカでオミクロン株が検出された時、筆者はこの変異株が北半球で流行するか否か懐疑的だった。ベータ株(南アフリカ株)、ガンマ株(ブラジル株)、ラムダ株(ペルー株)など、南半球由来の変異株が北半球で流行しなかったからだ。

一方、日本で大流行したアルファ株(イギリス株)、デルタ株(インド株)などの変異株は、いずれもユーラシア大陸由来だ。その本当の発生地は兎も角、最初の流行がユーラシア大陸で確認されている。

私は、この事実を知ると、1997年にアメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジャレド・ダイアモンド教授が表した名著『銃・病原菌・鉄』を思い出した。この本の中で、ダイアモンド教授は、東西に同緯度の陸地が広がる北半球では疾病は拡散しやすく、南北に細長い南半球では、気候帯が異なるため、感染症は広がりにくいと論じていた。私は、全く同じ事が新型コロナウイルス(以下、コロナ)にも通用するかもしれないと考えていた。

ただ、この考えはほどなく否定された。イギリス、そしてアメリカでオミクロン株の流行が拡大したからだ。12月18日、イギリスでは1日あたりのオミクロン株の新規感染者数が、前日の3倍以上となる1万59人となり、翌19日も1万2133人に増加した。状況はアメリカも同じだ。12月20日、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、12月18日までの1週間で確認されたコロナの73%がオミクロン株だったと発表した。

では、オミクロン株はアジアでも流行するのか? アルファ株がそうだったように、英米で大流行すれば、常識的にはアジアでも流行するだろう。果たして、本当にそうだろうか。私がひっかかるのは、今冬に限っては、アジアと欧米の流行状況が全く違うことだ。

欧米でデルタ株、およびオミクロン株が大流行している中、アジアで感染が拡大しているのは韓国、ベトナム、ラオスくらいだ(図)。この3カ国で流行しているといっても、その規模は欧米と比較して小さい。12月19日の1日あたりの感染者数(人口100万人あたり、1週間平均)は、イギリス1138人、アメリカ392人であるのに対し、ベトナム185人、ラオス179人、韓国132人だ。

(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

コロナは流行当初から、欧米と比べ、アジアでの感染は小規模だった。ただ、今冬ほど、その差が極端だったことはない。今夏、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、そして日本の流行は欧米とほぼ同レベルだった。なぜ、今夏、このような国で大流行したデルタ株が、流行の本番である真冬に抑制されているのか、ワクチン接種(追加接種)や既感染による免疫では説明がつかない。

沖縄米軍基地でクラスターが発生したものの・・・

オミクロン株についても、英米との交流が多いシンガポール、インド、フィリピンなどで感染は拡大していない。また、日本でも沖縄米軍基地の職員の間で150人以上のクラスターが発生しているが(米軍は、このクラスターがオミクロン株によるとは認めていないが、基地に出入りする日本人からオミクロン株が検出されているため、オミクロン株が原因と考えていいだろう)、基地外に感染が拡大したという話は聞かない(12月19日現在)。

オミクロン株は強い感染力を有する。12月17日、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者は、オミクロン株の再感染リスクはデルタ株の5.4倍というモデル研究の結果を発表した。私の知人でイギリス在住の医師も「オミクロン株の感染力は麻疹なみ」という感想を伝えてきた。その理由についても、香港大学の研究者が、デルタ株と比べて、オミクロン株は気管で増殖しやすいために、周囲に広まりやすく、逆に肺で増殖しにくいため、肺炎にならずに重症化しにくいなど、幾つかの仮説を提唱している。欧米で急速にオミクロン株の流行が拡大したのも納得できる。

ただ、欧米の研究でわかったことはアジアでも通用するのか、現時点ではわからないということだ。デルタ株の流行が抑制されているアジアで、オミクロン株が流行するのか、現状では何とも言えない。データに基づいた冷静な議論が必要だ。

水際対策と同時に国内大規模検査を

では、わが国は何を最優先すべきか。もちろん、オミクロン株が日本でも流行しうるという前提にたって対策を講じることだ。優先すべきは、水際対策と国内でのスクリーニングだ。水際対策の重要性は改めて言うまでもない。

問題は国内スクリーニングだ。日本は、水際対策が成功していると主張してきたため、国内でのオミクロン株の大規模検査を実施してこなかった。12月15日現在の国民1000人あたりの検査数は0.36件で、主要先進7カ国(G7)で最も多い英国(18.0件)の50分の1だ。デルタ株の流行が抑制されているという点では日本と変わらないインド(0.84件)の半分以下である。

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で、厳格な船内検疫を実施していたころに、すでに国内感染が拡大していたし、オミクロン株の流行でも、オランダでは、外国との渡航を禁止することを決めた1週間以上前に国内に入っていた。検査数が少ない日本では、オミクロン株が国内に流入していたとしても、検出できていない可能性が否定できない。

日本を含むアジアがオミクロン株に抵抗力があるのでなく、何らかの幸運で、日本国内に流入するのが遅れているだけなら、国内の検査を怠ることで、蔓延を許してしまう。

こうならないためには、国内での検査体制の強化が喫緊の課題であるが、前途は多難だ。それは、厚生労働省が、安倍晋三・元首相の頃から一貫してPCR検査を抑制しているからだ。この状況は現在も変わらない。

岸田文雄首相は自民党総裁選出馬にあたり、9月2日に「岸田4本柱」を発表し、その中に「検査の無料化・拡充」を盛り込んだ。ところが、11月12日、新型コロナ感染症対策本部が発表した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」では、無料検査の対象を「感染拡大の傾向が見られる場合、都道府県の判断により」実施するか、あるいは「健康上の理由等によりワクチン接種を受けられない者」に限定した。「感染拡大の傾向」が確認されてから検査をしても手遅れだ。

この状況について、岸田首相には既視感があるはずだ。今年1月、岸田首相のおひざ元である広島県が、広島市の中心に位置する4区の住民約80万人を対象とした無料PCR検査の実施を計画し、県議会は10億3800万円の予算を可決したが、最終的に8000人規模に縮小された。

これは、「医系技官の意向を反映したもの(厚労省関係者)」だ。広島県が計画を発表後、政府は広島市を「緊急事態宣言に準じた措置」の対象地域に該当しないという見解を示し、休業補償などで広島県を冷遇したからだ。広島県は厚労省の意向に従わざるをえなかった。岸田首相はこのあたりの状況について、地元の支援者から聞いているはずだ。

現在、内閣官房で、コロナ感染症対策推進室長を務める迫井正深氏は、広島大学附属高校から東京大学医学部に進んだ医系技官だ。このまま医系技官たちの抵抗を許すのか、あるいは、彼らを方向転換させるのか、岸田首相の手腕が問われている。

ワクチン追加接種の必要性は?

検査体制の強化と並ぶ、もう1つのオミクロン株対策の肝は、ワクチン追加接種の促進だ。オミクロン株に限らず、コロナ対策での追加接種の重要性については、「善戦で始まった岸田政権のコロナ対策に映る不安」(12月1配信)でも述べた。

日本が迷走する中、世界は追加接種を進めた。12月18日現在の主要先進国の追加接種完了率はイギリス40%、ドイツ30%、フランス24%、イタリア24%、アメリカ18%、カナダ11%だ。冬場の本格的流行が始まる前に、高齢者や医療従事者の接種を終えていることになる。12月1日から、医療従事者向けに追加接種を開始した日本は、先進国では異例の存在だ。

南アフリカの研究者たちは、デルタ株と比べて、オミクロン株の毒性は低いと報告しているが、感染者の多くが若年者である南アフリカの経験を、そのまま日本にあてはめることはできない。12月16日にインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが発表した報告によると、イギリスではオミクロン株の重症度はデルタ株と変わらない。

では、オミクロン株に追加接種は有効なのか。オミクロン株は、コロナワクチンが標的とするスパイク(S)蛋白質に30カ所以上の変異があるため、ワクチンが効きにくい。追加接種しても駄目だろうとお考えの読者も多いだろう。確かに、12月10日にアメリカ疾病管理センターは、オミクロン株感染者43人中、14人は追加接種を終えていたと報告している。

ただ、その後に発表された研究によれば、悲観する必要はなさそうだ。12月9日、アメリカ・ファイザー社は、同社製のワクチンを追加接種することで、オミクロン株の阻止効果は25倍増強されると報告している。さらに、12月13日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターの研究チーム、12月20日にはアメリカ・モデルナ社からも同様の報告がなされている。

12月15日にはアメリカ・バイデン政権の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ医師が、オミクロン株に特化したワクチンの追加接種は不要という見解を表明している。つまり、追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ。このような状況を知れば、日本は一刻も早く追加接種を進めなければならないことがわかる。2回目接種から6カ月とか8カ月とかの議論をしている場合ではない。

エビデンスに基づいた議論を

以上が、私が考えているオミクロン株の論点だ。アメリカ国立医学図書館データベース(PubMed)によると、「オミクロン」という単語をタイトルに含むコロナ関係の論文は、すでに63報が発表されているが、日本からは金沢大学呼吸器内科の研究チームが『呼吸器医学』誌に発表した一報だけだ。

画像をクリックすると、手探りながらもコロナ禍における新しい日常を歩み始めた今を伝える記事一覧ページにジャンプします

ワクチン、治療薬については、「国産」の重要性を声高に主張する政府や有識者たちも、臨床研究による現状把握を求める人は少ない。これが、わが国のコロナ対策が迷走する理由だ。データに基づいた合理的な議論が必要である。

上 昌広 : 医療ガバナンス研究所理事長