「アニキぃ、きょうはあったかいですねぇ」
「おう兄弟、こうゆう陽気だと外に出て行こうって気になるじゃねぇか」
「へえ、でもこの恰好はまだちょっとキツイっす、鳥肌たっちゃって・・・」
「弱っちいこと云うんじゃねぇ、フンドシねじり鉢巻は
男にしかできねぇ気合いの証ってもんだろっ」
「あぁ、アニキは渋さ知らズの追っかけですもんね・・・
あ、アニキぃ、梅に気づいて鶯がやってきやがりましたよ」
「おぅ、おめえも風流なこと云えるようになったな」
「いえね、オイラ甘い物には目がない方で、この時期お菓子屋さんに行くと
梅や鶯をかたどった和菓子なんぞありましてね、
日本の和菓子は季節を取り入れるのが本当にうまいなぁなんて思うワケなんすよ」
「驚いた!おめえはオレと同じで鍛え上げたカラダだけが取り柄かと思いきや、
どこぞの若旦那みてぇな話をしやがる」
「アニキだって最近美術館巡りしてるってききましたよ、ほら今も
誰かの作品集を持ってるし」
「バレたか、へへっ、何だか分かんねぇけどゲージュツってものはいいなぁ、
見とれるもんなぁ、オレにゃあんなもん作れやしねぇ」
「何云ってんすか、アニキの作るロールケーキ、オイラ大好物なんすよ!」
「ほんとか!?」
「ほんともほんと、しっとりフワフワのスポンジに生クリーム、
あれをお三時にお茶とともにいただくともうシアワセ、仕事がんばろーって思いますもん」
「なんだ早く云ってくれよ、明日作ってくるぜ、ロールケーキ」
「ほんとですか!」
「かわいい兄弟のために腕によりをかけてな」
「やったぁー!・・・・・ひひひひひ」
「なんでぇ、変な笑い方しやがって」
「だって、オレたちこんな姿で、人はまさかロールケーキの話をしてるなんて思いませんよね」
「そりゃそうだな・・・あぁっ!いま写真撮られたぞ兄弟、
オレたちニヤけた顔してなかったか!?」