こもれび

悩み多き毎日。ストレス多き人生。でも、前向きに生きていきたい。だから、自然体で・・・

アルジャーノンに花束を

2018年05月19日 | Weblog


「Flowers for Algernon」を読み終えた。最後の数ページは朝の通勤電車の中で読んでいた。涙が溢れてきてバッグを濡らしたが止めることができず、そのまま読み続けた。周りの人はどう思っただろうか。。。いやいや、都会のラッシュアワーで隣の人が泣いていても気に止める人など皆無だ。

最初に発表されたのは1959年だからかなりの古典で、小説の題名だけは聞いたことがあるような気がして読み始めたのだが、素晴らしい物語である。ジャンルとしてはSFモノになるが、宇宙人や近未来を扱ったものと違いヒューマンドラマである。知的障害を持つチャーリーが知能指数を高めるための試験的な手術を受け天才になっていくという設定である。チャーリーは32歳だが知能は幼稚園児並で、周りの友人たちが彼をいじめて大笑いしているのを見ては自分も一緒になって笑い、みんなに受け入れられていると思っていた。ところが手術後は徐々に知能指数があがり本当の姿を理解するようになる。幼い時の経験も蘇り、6歳のチャーリーが両親や妹からどのように扱われていたのかを理解するようになる。このあたりは大変衝撃的で悲しい。知的障害ゆえに母親に愛されなかったチャーリーは「頭が良くなりたい」といつも思っていた。そういう理由でこの科学実験の被験者になったチャーリーだが、知能指数が高いということと「人に愛される幸せ」とはイコールではないことを学んでいく。

作者のダニエル・キースは「いじめ」や「虐待」の原因について考え、知能と愛情との関係についても深く考えていたようである。天才になったチャーリーは障害者施設を訪れた際、かつての自分と同じ虚ろな目で訪問者を眺める入居者たちをみて、自分は決してここには入りたくないと思ってしまう。

物語はチャーリーの「progress report」という日記形式で書かれている。書き出しはこうだ。「progris riport 1 martch 3, Dr Strauss says I shoud rite down .....」 これには困った。知能指数が低い状態から日記を書き始めるので、スペルも文法も滅茶苦茶で始まる。きちんと書かれた英文ですら読むのがおぼつかない私のレベルでこれが読み通せるのか心配になった。でもまあ、なんとかストーリーにはついていけそうなので読み進めると、知能が上がるに従って、文章も使われている単語もグレードアップしていく。とても斬新な手法だと思った。

「アルジャーノンに花束を」と言うセリフは物語の最後のセンテンスに登場する。そして、ここが泣けるのである。この小説は映画化もされ、日本ではドラマ化もされているようなので、ストーリーをすでに知っている人も多いと思う。が、この物語の真髄はやはり読まないと得られないように思う。この作品はヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞している。物語の発想、展開、結末、手法、全てが図抜けている。

たまたま手にした「アルジャーノンに花束を」だが、この作品に巡り会えたことに感謝、感謝である。

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