こもれび

悩み多き毎日。ストレス多き人生。でも、前向きに生きていきたい。だから、自然体で・・・

竹内栖鳳

2018年12月29日 | Weblog


ハスの葉の中の水がなんとイキイキしていることでしょう。ひと目ぼれです。作者は竹内栖鳳。上村松園の師です。熱海にあるMOA美術館で栖鳳の展覧会があると知り行ってきました。栖鳳の絵を改めて見るのは初めてです。でも私は以前から松園の大フアンでしたので、彼女の師の絵とはどのようなものなのか興味を持ったのです。そして一目ぼれ。


栖鳳の絵の「青」はとても魅力的に使われています。なんだか心が洗われるような青色です。


また、栖鳳は小動物や魚などを好んで描き、この絵のタイの目はまるで何かを語っているようでした。雀もよく題材にしていたようで、「チュン」と鳴く声が聞こえるように描かなければいけないと言っていたそうです。展示されていた作品数はさほど多くはありませんでしたがとても満足できました。


熱海にあるMOA美術館に来るのも初めてでした。そしてこちらも心地よい驚きでいっぱい。まず、入口に立つと駿河湾が見下ろせるのです。今日はあいにくの天気でしたが、晴れた日にはいかばかりか爽快な気分になることでしょう。建物そのものにも驚きが沢山詰まっています。上野の博物館や美術館に慣れた者にとっては、また違った美術館の楽しみ方を教えてもらった気分です。


MOA美術館は3点の国宝を所蔵しています。尾形光琳の紅白梅図屏風、野々村仁清の色絵藤花文茶壺、そして、奈良室町時代の手鑑です。今回は色絵藤花文茶壺を見ることができました。しっとりとした色合いがとても素晴らしい壺でした。紅白梅図屏風は年間60日しか展示できないため、梅の季節の時だけ展示するとのことでした。2月にまた来たいと思います。

暮れの慌ただしい中、今年1年の心の垢を落とそうと思い訪ねた美術館でしたが、思いがけず良い出会いがあり至福の時を過ごせました。

岩殿山

2018年12月11日 | Weblog

岩殿山に登りました。山名は知っていましたが、これまで機会がありませんでしたので今回が初めてです。まず、大月駅を降りると北側に大きな大きな絶壁がほぼ直角にそそり立っています。これが岩殿山です。あの山頂から一本の鎖が垂れていて、さあ、登ってくださいと言われたらすぐに帰宅したところですが、幸い山の東側から巻くようにして登るとのことで一安心。山の中腹にある丸山公園を目指して階段を上ります。このあたりから眺める富士の雄姿は素晴らしく、「富士山が一番美しく見える町」という立て看板には説得力がありました。大月市の南側に連なる山々の向こうに顔を出した富士の山は3割ほど真っ白な雪に覆われ、その雪の中に尾根の部分が黒い筋をひいてクッキリと浮かび上がり、静岡側から見る富士山とは趣を異にした「かっこいい」姿でした。

丸山公園の「ふれあいの館」を通り過ぎ、そのまま山道を進むとあっという間に岩殿山山頂に到着。標高634メートル、スカイツリーと同じ高さです。実はこの岩殿山には難攻不落の山城が築かれていたそうです。東西に長い大きな岩山はそのまま天然の要塞になり、実際に歩いてみると「なるほど」とよくわかります。この城は戦国時代小山田茂信が治めていました。織田信長に追われた武田勝頼が親戚筋である茂信を頼ってこの城に助けを求めた際、茂信は勝頼を裏切り入城を断ったことが武田家の滅亡につながります。あの城がここにあったのだと知り感慨深い気持ちになりました。


さて、岩殿山山行はこれからが本番です。「ここ登れるの~?」というような鎖場を数か所よじ登り先に進みます。一番怖そうな兜岩は残念ながら通行止め。右にぐるりと回りこんで進むと結構な下り坂に遭遇。張ってあるロープを頼りに気合を入れて20メートルほど降ります。その後、左手に街を見下ろしながら落ち葉を踏みしめて歩くと天神山のピークに到達。あの有名な稚児落としはまだかな~と言いながら歩くこと数十分。圧巻の「稚児落とし」に到着しました。600メートルに満たない標高にしては、高度感はなかなかです。何しろ200メートルの切り立った断崖絶壁の上から見下ろすのですから。ここで昼食をとり、秋色に化粧したモフモフ、フワフワの山肌の景色を十分楽しみました。


ところでこの「稚児落とし」は、先の小山田茂信につながります。勝頼を裏切った茂信が織田家に出向くと「武田勝頼を裏切るとは何たる不忠義もの」とあっさり処刑されてしまいます。それを知った茂信の側室は茂信の子二人、赤子と幼児を連れて岩殿山城を脱出するのですが、途中赤子が泣き出し、追手に見つかることを恐れた家臣が情け容赦なく断崖から赤子を投げ捨てたそうです。それがこの「稚児落とし」。なんともやるせない歴史を抱えた岩殿山ですが、歩くにはとても面白いコースで晩秋の山歩きを堪能できました。

日日是好日

2018年12月02日 | Weblog

http://www.nichinichimovie.jp/

樹木希林さんの遺作ということで話題になり、鑑賞したいと思いながらそのままになっていました。そして、日常の忙しさに紛れていつしか心のひだに埋もれてしまっていましたが、最近、禅語に興味を持ち始め、「日日是好日」という言葉に再度出会いました。黄檗宗少林山達磨寺の副住職広瀬大輔さんによれば、「好日」の「好」は「好悪」の好ではないとのこと。「『嵐か、よし、嵐なにするものぞ!』、『失ってしまったか、よし、どうにかこれを改善しよう!』と、積極的に生きる決意 "よし" がこの "好" なのです。」とのこと。
http://www.daruma.or.jp/zen/detail.html?zen_id=11
楽しい日でも苦しい日でも、そのままを受け入れ清々しく生きていけばそれが、日日是好日なのだとか。

樹木希林さん、黒木華さんの主演の「日日是好日」は、まさにこの禅の哲学を具現したような映画でした。冬至、小寒、大寒、立春、雨水など、二十四節気をモチーフにして、その季節季節のお茶のしきたりを横糸にし、主人公がひとりの女性として成長していく見事な作品でした。そして、最後に観客も「日日是好日」の深い意味を体得できるような仕掛けになっています。

数ヵ月後に定年退職を控え、今後の生き方を模索している私にとって、「日日是好日」は、座右の銘になりそうです。