こもれび

悩み多き毎日。ストレス多き人生。でも、前向きに生きていきたい。だから、自然体で・・・

可睡ゆりの園と可睡斎

2021年06月21日 | Weblog
静岡県袋井市に「可睡ゆりの園」というところがあると知った。早速、訪ねてみた。色とりどりで様々な種類のユリがワーッと咲いていてそれはそれは見事だった。咲く場所や種類によってはもう花が終わりかけているものもあったが、それでも圧倒された。白、黄色、オレンジ、うす桃色、ピンク、濃いピンク、深紅、えんじ、そして白にピンクが混じったものや、黄色の花びらがピンクで縁取りされているもの、えんじ色が黄色で縁取りされているもの等、各国の原種のユリだけでなく改良を加えた園芸品種も様々に咲き誇っている。コスモスや菜の花の丘は見たことがあるが、ユリの丘は初めてだった。壮観。

その後、ゆりの園のすぐ隣に「可睡斎」という古刹があるというので、せっかく静岡まで来たのだからと寄り道することにした。折しも風鈴祭りが開催中されていた。これがまた風情溢れて、カラフルな風鈴が風に揺られてカラリコロリと涼しげな音を立てていた。

「可睡斎」とはお寺の名前にしては一寸変わったネーミングだと思っていたら、これは徳川家康に関係があるようだ。可睡斎のHPによると、
*****家康の幼少期から長い縁を育んでいた11代目の住職は、立派な殿様になった家康に呼ばれ、城への長い道を駕籠に揺られ、謁見する際に疲れからこっくりこっくりと眠ってしまいました。あろうことか、殿様である家康と面談のその時に…。「無礼である!」といきり立つ勇猛な家臣達に、家康が発した言葉があります。「和尚我を見ること愛児の如し。故に安心して眠る。われその親密の情を喜ぶ、 和尚睡る可し 睡る可し(ねむるべし)」と申されたと言われています。 *****

このお寺の境内には、武田勢に追われた家康が、その身を隠して命拾いをしたという小さな洞窟もある。

さらにここには貴重な文化遺産がある。大東司(お手洗い)である。昭和12年に水洗式トイレとして建設されたもので、現在でも現役である。私もこの文化遺産の中で用を足してきた。なかなか興味深いお寺である。

毎年1月から3月までは、3000体ものお雛様が国登録有形文化財「端龍閣」に飾られるという。来年になったら見に来てみようかと思う。ひょんなことからいろいろ面白いものが発見できた一日だった。



「人間の土地へ」

2021年06月17日 | Weblog

心揺さぶられる本。いかに自分が小さな価値観で狭い世界に住んでいるのかを教えられた本。

日本人女性で初めて世界第二の高峰K2登頂に成功し、内戦下のシリアで暮らした女性のノンフィクション。著者はなんと我が家の次女と同い年。裏表紙の作者の写真を見ると丸顔でかわいらしい女性。この写真からは、本に書かれているような人生を歩んできたとは信じがたい。

山歩きを趣味としている私は、K2登頂という言葉に惹かれてこの本を手にした。しかし、登山の話はほんの入り口、出発点に過ぎない。K2登山の際に知り合った山の麓の人たちに魅せられ、彼女の関心は山の頂から麓の風土に移っていき、今度はカメラを手にして、中国からユーラシア大陸を西に向かって旅を始めた。

その中で、シリアの遊牧民の一家と出会う。砂漠の夕日はあくまで美しく、星々は天にきらめき、あくせく働かずとも豊かで平和な日々を送る人々に魅せられて毎年のようにシリアに通う。その家族の12番目の息子ラドワンに恋をする。ラドワンはラクダをこよなく愛しラクダの放牧を天職としていた。そのラドワンと結婚を考えるようになった時、史上最悪と言われるシリアの内戦が勃発する。

ニュースで知る内戦と彼女の視線で捉えた内戦とはまるで別世界だ。シリアの人々がなぜ政府に反旗を翻しているのか、普通の若者がなぜISに加担するのか、命からがら難民キャンプにたどり着いた人々がなぜまたシリアに戻っていくのか。同じ人間としてその気持ちがとてもよく理解できる。

私にとってイスラムの文化はとても遠いものだった。でもこの本を読むと、家から自由に出られない女性たちの生活が理解できなかったのは自分の価値観でしか物事を考えられなかったからだと良く分かった。

内戦前の静かで穏やかな生活は、砂漠で暮らす人々にとって日本では経験できない至福の時間だった。だが、内戦ですべてが変わった。シリアの徴兵制で政府軍にいたラドワンが市民に銃を向けることができず脱走兵になる。紆余曲折があり、二人は結婚を決意する。

賄賂、裏切り、逃亡、逮捕。二人を取り巻く人々にも様々な困難が襲ってくる。それらの事件を一つずつ丁寧に描くことにより、シリアという国の状況が良くわかってくる。

このストーリーは過去の話でもなく未来の話でもなく、今私たちが生きているこの時代に起こっていることで、語っているのは私の娘と同い年の女性だということに衝撃を感じないではいられない。

心揺さぶられる本。いかに自分が小さな価値観で狭い世界に住んでいるのかを教えられた本。