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ゆずり葉 河井酔茗(かわいすいめい)

2021-05-22 10:06:14 | 国語的随想
朝霧の悠久山
緑が濃くなりました



昨日、ゆずり葉のことを書いたので、そうだ、と詩の紹介です。
「中原中也 全詩アーカイブ」様よりお借りしてきました。(ありがとうございます)

子供たちよ
これは譲り葉の木です
この譲り葉は
新しい葉が出来ると
入り代わってふるい葉が落ちてしまうのです
 
こんなに厚い葉
こんなに大きい葉でも
新しい葉が出来ると無造作(むぞうさ)に落ちる
新しい葉にいのちを譲って――
 
子供たちよ
お前たちは何を欲しがらないでも
凡(すべ)てのものがお前達に譲られるのです
太陽の廻(まわ)るかぎり
譲られるものは絶えません
 
輝ける大都会も
そっくりお前たちが譲り受けるのです
読みきれないほどの書物も
みんなお前たちの手に受取るのです
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど――
 
世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持ってゆかない
みんなお前たちに譲ってゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを
一生懸命に造っています
 
今、お前たちは気が附かないけれど
ひとりでにいのちは延びる
鳥のようにうたい、花のように笑っている間に気が附いてきます
 
そしたら子供たちよ
もう一度、譲り葉の木の下に立って
譲り葉を見るときが来るでしょう


いいですよね・・・ジワンときます。
こんなふうに考えられない(思いつかない)のが現代、だとしたら、ホントに末世だと思います。



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