ヴェルディのオペラ「マクベス」を久々にレーザーディスクで見て、改めて不思議に思ったことその1。マクベスは魔女から「女から生まれた者からは殺されない」という予言を受けたが、マクダフは「私は生まれていない、母の胎内から無理やり出されたのだ」と言ってマクベスを殺す。「胎内から無理やり出す」は帝王切開のことを言っているのだろうが、自然分娩だろうが帝王切開だろうが「女から生まれた」には変わりはないのではないか?それとも、イタリア語の歌詞に特別の意味があるのか?例えば「産道を通って来た者からは殺されない」とか?と思って歌詞を見ると「nato di donna」。普通に「born from woman」(女から生まれた)である。この謎は迷宮入りである。
その2。マクベスの綴りは「Macbeth」。イタリア語では「マクベトゥ」でオペラではそう発音されている。なのになぜ日本では「マクベス」で通っているのだ?え?原作のシェークスピアが「マクベス」だから?じゃあ、なぜ「Falstaff」を「フォールスタッフ」と呼ばないで「ファルスタッフ」と呼ぶのだ。ダブルスタンダードではないか。え?政治の世界ではダブルスタンダードは普通?オペラと政治は違う(どこが、と言われたら困るが)。この謎も迷宮入りである。
その3。マクベスは、超恐妻のマクベス夫人にそそのかされて王を殺して王位を簒奪した。マクベス夫人がオペラの最初の方で歌うアリアなど、恐ろくて縮み上がるほどである。なのに、途中から弱々しくなって、最後は心労で死んでしまう。なぜこれほどに性格が変わったのだろうか。ただ、これについては説明がつかないこともない。すなわち、ホントはさして気丈夫ではなかったのだが無理をしていた、その無理がきかなくなって弱気が出たという説明である。
次は疑問ではなく、私の無知をさらけだすものである。「侍女」という言葉がある。私はそれを表す英語が「lady-in-waiting」であることを初めて知り、おお!「待つ」と「wait」、同じじゃん、そうか、奥方様の命令を控え室で待っているから「待つ」「wait」なのだな、と勝手にガテンがいったのである。
レーザーディスクのプレーヤーの中古を購入してから押入の肥やしになっていたディスクを随分聴いた。ヴェルディのオペラでは「マクベス」以外に「ナブッコ」「第一十字軍のロンバルディア」「エルナーニ」「二人のフォスカリ」「ジョヴァンナ・ダルコ」「ルイザ・ミラー」と言った初期作品の数々。若い頃のヴェルディは活気に満ちていて、聞いてて元気になる。それにしても、レーザーディスクのソフトを売る会社はよくこんなマイナーな作品群のディスクを商品化してくれたものである。感謝感激雨あられである。