ヴェルディのオペラの「ナブッコ」とはユダヤ人を捕囚とした新バビロニア王国のネブカドネザル2世のイタリア語読みであるが、このオペラに偶像崇拝の「ベル神」という言葉が出てくる。そう言えば、メンデルスゾーンのオラトリオでは古代ユダヤの予言者エリヤが偶像崇拝の「バール神」を徹底的に敵視していたが、「ベル神」と「バール神」ってもしかして……当たり、同じだった(さらに別の呼び方もあるそうだ)。
それにしても、ユダヤ人は少数民族だしユダヤの国家は小国である。にもかかわらず、イスラエルの名はニュースでしょっちゅう聞くし、その物語はオペラ等々の題材となるし、唯一神を信じるその宗教は世界中の多神教を圧倒した。なぜだろう、ユダヤの歴史を勉強してみたいな、と思ってたら「ユダヤ人の歴史」というおあつらえ向きの本を見つけたのでキンドルでダウンロード。早速読み始めた。すると、はしがきに「どうして彼ら(ユダヤ人)は他国の人々にそこまで嫌われ」という記述があった。
それで思い出した。私がユダヤ人の名を最初に目にしたのは、多分、最初に買ってもらったクリスマス・プレゼント(母は、「サンタクロースなどいない。プレゼントは親が買ってやるものだ」と最初から言っていた)である「紅はこべの冒険」という小説であり、その中に「フランス人は、ユダヤ人が、だいきらいです」というくだりがあった(今見ると、子供向けなのに随分と刺激的な文章である)。
その後は、テレビで見た映画かなんかで、あるアメリカの著名人が自分がユダヤ人であることを公表した後、しばらく経って「私は、この○週間(だったかなんだかとにかく一定期間)ユダヤ人だった」という原稿を書いて、それを見てびっくりした秘書に対して「なぜ驚くんだ、私は何も変わってないのに」と問い詰めるシーンがあって、ユダヤ人のアメリカにおける立場の微妙なことに思いがいったのである。
それでも、財力はあるんだなー、だからアメリカの政治家はユダヤ人に配慮せざるを得ないんだなー、と感じたのは、映画「愛と哀しみのボレロ」を見たとき。カラヤンをモデルにしたとされる元ナチスのドイツ人指揮者がアメリカ公演に赴き、本番のステージに上がると、客席にいるのは二人のユダヤ人の富豪だけ。公演を妨害するために全客席のチケットを買い占めたのである。そのユダヤ人がぱち、ぱちと拍手をする様子が皮肉であった。
「ユダヤ人の歴史」は、そうしたユダヤ人の歴史を勉強する格好の教材となりそうである。これまで、やまほど旧約聖書からとった歌詞を持つ合唱曲を歌ってきながら、その歴史の探索をおろそかにしていた。ここで取り返そうと思う。
因みに、私は宗教合唱曲を歌ってきたがクリスチャンではない。そんなものである。例えば、バッハの愛好家から聖地のように崇め奉られているライプチヒのトーマス教会の聖歌隊のメンバーの半数はクリスチャンではないそうだ。
因みの因みに、その昔、イザヤ・ベンダサンって人が書いた「日本人とユダヤ人」という本を読んだ。両民族の似てるところと違うところを書いた本だった。面白かった。私にこの本を薦めた父は、死ぬまでイザヤ・ベンダサンをユダヤ人と信じていたようである(実は日本人である)。
山本七平さんですね。若い頃に読んだ時難しかったですが、今も難しい。私は旧約聖書は字が小さくて辛いのでkindle に入れてピンチして大きくして読んでいます。