How many rivers must I cross? I don't know...

幸せになりたくて川を渡る・・・

2015/07/04 益田川~最高の水況とは何だろう

2015-07-10 00:20:28 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)
2015年7月4日。
この日の僕は夕刻から所用があった。
歯医者に行って、その後中学時代の同級生たちと会う予定があった。
益田川での釣りは昼過ぎまでしか出来ない。
限られた時間の中で思う存分釣りをしたい。
そのためには朝一番、夜明けと同時に釣りを開始したい。
ならば当然夜明け前から川に入らねばならぬ。


その週の半ばの降雨によって益田川の水は高めだった。
しかし先週ほどではない。
渡渉は可能だった。
僕は頭に投光器を付けて、いつもより少し深くて押しの強い益田川を渡った。
今シーズンの僕は情けないことに尺以上の個体は未だニジマスしか釣っていない。
水況だとか天候だとか、自身ではどうしようもない要因で良い釣りが出来ていないのは間違いないのだが、いい加減この辺りで尺アマゴを獲らないと単なる言い訳になる。
目を付けたポイントで狙った筋の狙い通りの就餌点で尺上のアマゴを掛ける。
そして思い描いていた通りの遣り取りで獲る。
筆舌に尽くしがたい満足感と達成感に満ちた、最高に幸せな瞬間だ。
そのために僕は通い慣れた益田の流れを渡る。
いくら慣れているとは言え、暗いうちの渡渉は非常に危険だということは承知している。
投光器の明かりが川底を照らす。
大丈夫だ、急な深みはない。
一歩一歩、脚を踏み出す前方を確認しながら、僕は益田川で拾った堅い木を杖代わりにして渡渉した。



本当に最高の水だった。
水位も水量も流れの筋もとても狙いやすい。
平水より少し高いくらいの水位は10.5mのエアマスターなら充分に届く範囲に狙うべき筋があった。
そして諸悪の根源である風もない。
午後からの予報も風は非常に弱い。
今日は絶対に大物が獲れると確信していた。


夜明けと同時に僕は竿を振り始めた。
平水時とは異なる流れのため、立ち位置も変わるし流す筋やその順序も異なる。
勿論中には平水時と変わらず着き場になっていると思われる筋もある。
僕はそれらの流れの筋をひとつずつ丁寧に丁寧に、餌や流し方、立ち位置を変えながら流していった。
しかし、益田川からの返答はない。
ウグイの幼魚が釣れただけでアタリはない。
「いや、そんなはずはない。この水で食い気がないわけがない。アタリがないなら魚が居ないということだ」。
そんなことを考えながら尚も流し続ける。
しかし結果は変わらない。

「おかしい・・・何故アタリがないのだろう」。
一旦岸に上がって腰を降ろして必死に考えた。
しかし、答えは見つからない。
だからと言ってこのまま呆けているわけにはいかない。
僕はもう一度手前の緩流帯から順に流し始めた。

数回目の流しの際、アマゴらしき明確なアタリがあった。
「よっしゃ!」と期待に胸を膨らませてアワセを入れると確実に鈎に乗っている。
しかし、その引きは尺上のアマゴではなかった。
九寸程度かなと予測して難なく玉網に導いた。

なんと、先週獲ったアマゴと同じ個体だった。
尾鰭が再生しかかっており、右側の胸鰭は欠損、左側の上顎の唇も欠損している特徴は全く同じだった。
恐らく、釣られてしまう魚というのはこのようにして何度も釣り師の餌に食い付き、そして獲られるのだろう。
そのようにして釣られやすい魚から順に抜かれていく。
このように考えると、残った大型の本流魚は確かに釣りにくいだろうと想像できる。


今日はこのポイントでは出ないだろう。
僕は諦めて川から上がった。
次はどのポイントに入ろうか決めあぐねていたときに、一人の鮎師がやってきた。
「こんにちは」とあいさつを交わすと、自然な流れで釣り談義になった。

会話の中で僕はその鮎師の方から大変有益な情報を頂いた。
僕がまだ竿を出していない区間で、友釣りの囮を襲う大型のアマゴがここ数日多いというものだった。
仮に話が大袈裟だったとしても、まだ竿を出したことがない区間だったため、僕は非常に興味深く感じた。
川への降り方も丁寧に教えて頂いたので、僕は迷うことなくそのポイントに到着した。

身支度を整える前に川面を眺めてみた。
非常に魅力的な流れだった。
大物が着いていることは間違いないと思われるポイントだった。
段差の後の淵、淵からの払い出しから開きはゆったりとしたトロ場を形成し、その後は瀬となる。
川底には石がごろごろしているし、餌が集まるであろう地点も分かりやすい。
恐らくその辺りの川底はかけ上がりになっているだろう。

最初の立ち位置を決めて身支度を整えて岸辺に降りた。
すると、先ほどまで姿の無かったルアーマンが目当ての立ち位置に陣取っていた。
一体何処から来たのだろう。
周囲を見回すと周囲の葦に紛れたそれらしきクルマのルーフだけが、僕の視界に飛び込んできた。

僕は釣りも好きだがクルマも好きだ。
街ですれ違うクルマの中で、その車種を見かけると必ずと言ってよいほど各部の仕様を確認しようと試みる。
だから、僕が川へ降りてくるときに既にその位置に駐車していたなら確実に記憶にとどまるはずなのだが、今の僕にはそのクルマの記憶はない。
しかも、こちらから見えにくいような駐車の仕方にも些か悪意を感じた。
やって来たはいいが僕の姿を認め、クルマを目立たないところに停めて、岸辺の葦に身を隠しながら、あの餌師に先んじて川に入ろう・・・そう思ったのだろうなという意地悪な想像をしたくなるような状況だった。


仕方ない。
あのルアーマンが川から上がったら暫く休ませてその後に流してみよう。
そう考えて少し下流で川面を眺めていたときに、ルアーロッドが大きく曲がった。
かなりの大物が掛かったようだった。
一帯の筋で本命だと僕が踏んだ正しくその筋だった。
結構苦労してキャッチしていたその魚は、遠目には40cm近いアマゴのように見えた。
僕は自分の運の悪さを呪いながらその場を去ろうとした。
去り際にルアーマンが乗り付けたクルマをもう一度見た。
岐阜県内のナンバーではなかった。
遠方からの釣り客か。
旅の恥はかき棄てか。
益田に来るならマナーを身に着けてからにしろと怒鳴りつけてやりたい気分だった。



その日はもう釣りをする気分になれなかった。
家路へと向かうことも兼ねて、下流の中山七里方面へとクルマを走らせた。
中山の中でも入りやすいポイントで軽く竿を出したが、20cm~25cm程度のアマゴが数匹釣れただけだった。
こんなに気分の悪いまま旧友に会うのは避けたかったが仕方ない。
次回こそはよい釣りが出来るように願った。




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