何を考えていますか?
わたしは
あなたのことばかり考えてました。
こころの平穏を保ちたかった
グルグル気持ちが かき回されて
チビ黒サンボの ホットケーキ
になっちゃうのは
ゴメンだと思った。
だから いろんなことをした
サクサクと
やらなきゃいけない 日常的な
ことを
サクサクとやった
心にすき間風が ふいてるの
かんじないように
英語の先生が教えてくれたこと。
Loveとlikeの違い。
数学の先生が教えてくれたこと。
解がない人生の問題。
国語の先生が教えてくれたこと。
絵文字による感情の伝え方。
理科の先生が教えてくれたこと。
どこよりもきれいに星が見える場所。
社会の先生が教えてくれたこと。
戦争が終わって平和が生まれたこと。
美術の先生が教えてくれたこと。わたしの才能。
人けのない秋の海に行ったのでも、
さびれた喫茶店に入ったのでもな
い。およそ別れの予感にふさわし
くない舞台、春に房総。たぶんそ
の一日は、穏やかな陽射しに包ま
れて、楽しく過ごしたのだ。
もし彼女が、もう少し疑い深く、
もう少し用心深かったら、なんら
かのサインはキャッチできたかも
しれない。が、一緒に行った彼の
ほうも、「これが最後」という思
いがあればあるほど、仲のいい
カップルを演じてしまう。
いずれにせよ、別れは、彼女に
とっては突然だった。
「つきとばされるやうに」という
悲しい比喩が、唐突さ、思いがけ
なさ、をあますところなく伝えて
いる。
この歌に出会った女(ひと)は、
ボーイフレンドに「房総、房総!」
と無邪気に言えない春を、迎える
ことになったかも知れない。
背広やジャケットをハンガーに
掛けようとして、「わ、意外と大き
いんだな」と思ったり、「あ、イッ
セイの服だったんだ」とブランド
を知ったり、「くんくん、この香り
は何だろう」と匂いをかいだりし
たことがあなたにはありませんか。
脱いだ洋服というのは、その人の
分身のようでもあるし、さらにそ
の裏側というのは、限られた場面
でしか見られないもの、どきどき
するのではないだろうか。
ただ歌は、匂いをかいだりせ
ず、そーっとそーっと彼の世界に
触れようとしている繊細さであり、
彼は、まだまだ未知の人なのだ。
「宇宙」という言葉が、その人の
未知なる部分の深さや大きさであ
り、それと同時に、男性という存
在そのものに対して、不可思議な
ものという思いを抱いている。
二人のあいだには、かなり距離が
あって、それほど親しくなって
いない。まさに手さぐりで、相手
のことを知りはじめたというと
ころだ。が、いっぽうで、歌の
場面は、「密室」だ。
レストランや図書館や公園では、
背広を脱ぐことはあっても、脱ぎ
「捨てる」ことはない。他人の
目のない、プライベートな空間
になってはじめて、
脱ぎ「捨てる」ことはできる。
そして彼は今、くつろいだワイシ
ャツ姿になっているのだ。「何
か相手のテリトリーに一歩踏み
込んだ、という気持ちが、背広
の裏へと指を運ばせた。
恋愛のドラマとしてごくごく初期
の段階のきらめきを・・・・、
その肩にわが影法師触るるまで
歩み寄りふとためらひ止みぬ
何を言ふつもりもなけれど見て
をればワイシャツの背を風は
出入りす
相手の肩に直接触れるのではなく、
自分の影が触れるかどうかという
緊張感。そこで止まってしまう。
嵐のような大恋愛の歌もいいけれ
ど、ワイシャツの背を揺らすそ
よ風ほどの恋の歌もたまには
いいのだ。