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広開土太王 第14話 天軍の戦法
一体 何という光景を イ・リョン王に見せる羽目になったのか…
タムドクは 言葉を失い 目の前の争そいに息を飲む
『直ちに争いをやめよ! やめるのだーーーっ!!!』
タムドクの一喝に 天(チョン)軍の者たちが動きを止めた
王様が見ていると気づき 中央軍の者たちも凍りつく
呆れ果て 言葉もなく去って行くイ・リョン王
大将軍コ・ムも 忌々し気に兵士らを睨みつけ 行ってしまった
事の重大さに気づき 神妙な表情のファンフェ
しかし トルピスとヨソッケは 自分たちの何が悪い!と居直った
悪いのは中央軍の奴らなのに…! と 悪びれることなく主張する
タムドクは 真剣を持ち出し 両者の間に放り投げた
争そいたければ 真剣で戦えばいい! 思う存分殺しあえと…!!!
この異常な事態に ヨンサルタが進み出て タムドク王子の前にひざまずく
それに倣い 中央軍の 他の兵士たちも揃ってひざまずき不忠を詫びた
なぜ戦わないのかという問いに 我らは戦友であると答えたヨンサルタ
その答えに納得するかどうかは別として とにかく謝罪する中央軍
その光景を眺めながら 天(チョン)軍の者たちには 違和感しかなかった
ただひとり ファンフェだけが その違いに気づいていた
天(チョン)軍の者たちは ただただ相手が悪いと言い訳を繰り返したが
中央軍の兵士らは 王子に忠誠を誓い不忠を詫び 自らの過ちを認めたのだ
『とにかく あの場では我々が負けたのだ』
『何だと?! 戦ってもいないのになぜ負けるんだ!』
『次こそ徹底的に叩きのめしてやる!!!』
こうなることを承知で 天(チョン)軍に招き入れたのだが
トルピスとヨソッケには 中央軍のような教養など微塵もない
ただ血気盛んなだけであり 今回のことを納得させることは難しい
ファンフェは あまりに情けなく 涙ぐんで諭し始めた
『お前たちは 王様の前で 王子様に恥をかかせたのだぞ
中央軍の者たちは 先に戦友だと認め 潔く謝罪した
それなのにお前たちは まだ戦う気だと喚いている…!
我々を直に見たいと 足を運んでくださった王様の前で
王子様の顔に泥を塗ったのだと なぜ分からないのか!!!』
宮廷内で 敵ばかりの王子なのに 今回の事態はまさしく
王子を糾弾するきっかけを作ってしまったのだと…!
ファンフェの怒りの言葉に ようやく理解し うなだれる2人
“戦友”とは 戦場で後方を任せられる仲間という意味を持つ
天(チョン)軍と中央軍は 互いにそうあらねばというタムドク
2人を許し 今回のことは 学ぶためのいい機会だったと励ますが
その瞳の奥には 深刻な翳りがあった
朝廷では さっそく天(チョン)軍を弾劾する声が上がる
しかし 彼らが自らの命を懸け 国の存亡を救ったことも事実である
イ・リョン王は 彼らに“軍職”を与えていないことも一因だと考え
軍職に就くことで 責任ある行動をするだろうという
これを受け 元は匪賊やだった者に 軍職など言語道断!
高句麗(コグリョ)は笑い者になると 反対の声が上がる
ここでタムドクが 契丹(コラン)族や靺鞨(マルガル)族といった
荒くれ者と戦う際には 彼らのような存在が必要だと進言する
厳しい軍律や 過酷な訓練は受けていないが 実践の中で生き抜いてきた
その奔放な戦い方は 訓練では身につかない独特なものであると
大将軍コ・ムもまた 大臣たちの反対の声にも理解を示しつつ
別動隊で縦横無尽に動ける特殊軍として 彼らの機動力が必要だと進言した
そして軍職については 両軍に“腕比べ”をさせ 決めるのが妥当であると
この決定を さっそくファンフェたちに知らせるタムドク
軍職に就くということは 手柄により 家や土地をもらえることでもある
妻を娶り 家族を持つことも夢ではなくなるのだ
これまでの人生を思えば それこそ夢のような話だが
ファンフェは 単に両軍の競い合いでは済まされないと危惧する
勝てば幸いだが もし負けてしまえば 軍職を逃がすだけでなく
またしてもタムドク王子の足を引っ張りかねないと…
後燕の首都 中山(ちゅうざん)では
タムドクの友人コ・ウンが 部下の知らせでタムドクの生存を知る
というのも 父ケ・ヨンスから 後燕の内情を調べろとの命令が届いたのだ
部下は 国相(ククサン)からの命令書と共にタムドクの手紙も持参していた
※国相(ククサン):現在の国務総理
ウンにとっては 父の命令書より友の手紙の方が重要だった
その手紙には 後燕の企みが詳しく記されていた…!
皇太子 慕容宝(モ・ヨンポ)と 弟の慕容煕が戻り
また 靺鞨(マルガル)族長ソルドアンの報告の裏付け調査が進み
柵城(チェクソン)の戦で タムドクが采配を揮ったことが事実と分かった
慕容煕の怒りは プンパルへと向けられる
プンパルは馬小屋の掃除を命じられ かつての部下にも蔑視されていた
この男さえ タムドクの暗殺に成功していれば…!
この男が 襲った現場に号牌(ホペ)を落とさなければ…!!
※号牌(ホペ):朝鮮時代の身分証
柵城(チェクソン)は今頃 後燕のものになっていたし
兄弟で このような屈辱を味わうこともなかったのだと…!!!
その夜 国内(クンネ)城では
競い合いに備え 訓練場で必死に訓練する天(チョン)軍
しかし ファンフェのやり方に音を上げ たちまちやる気をなくす兵士たち
そもそも 木刀での訓練に何の意味があるのかと
トルピスが不満を言い出し ヨソッケも やってられない!と座り込む
実戦しかしたことのない彼らには “訓練”という概念がない
どんなに剣の腕前があろうと それだけで敵を倒せるわけではないと!
自分より強い相手でも また大きい相手でも
そして 多勢に無勢であったとしても 勝てる方法ならいくらでもあるという
トルピスの話を聞き なるほどと感心するファンフェ
天(チョン)軍には 天(チョン)軍にしか出来ない戦術があると気づき
考えを改めるとともに 初めて勝機を見い出すファンフェだった
競い合いの当日
ヨソイの号令により いよいよ両軍の戦いが始まる
たった1人でも 最後に残った軍の勝利となる
中央軍は ヨンサルタの号令により“方陣”を組む…!
※方陣:兵を一定の形態に配置した陣
それに対抗する天(チョン)軍は ファンフェの掛け声で身構える…!
華麗に方陣を組む中央軍の守りは固く 全く歯が立たない
天(チョン)軍は 攻撃を仕掛けられないばかりか 徐々に追い詰められていく
訓練により 徹底的に方陣が叩きこまれている中央軍は
状況に応じて法人の形を変化させ 守りと攻撃を使い分けていた
しかし天(チョン)軍には ひとつの作戦もなく 闇雲に戦うだけであった
無駄な攻撃で体力を消耗し 苛立ち 焦っていく天(チョン)軍
中央軍の兵士たちには 余裕の笑みさえこぼれている
やがて 睨み合いの状態になり 戦い方を見失う天(チョン)軍
するとファンフェが前に出て 中央軍に向かい木刀を投げつけた…!
『おいお前たち! 靺鞨(マルガル)との戦いを思い出せ!
これまで命を惜しんで戦ったことがあるか? 木刀で戦ったことが?
俺たちに こんな戦いは似合わない! 木刀なんか必要ない!』
ファンフェの叫びに やっと本来の自分を思い出し
天(チョン)軍の兵士たちは 使い慣れない木刀と盾を放り投げた!
威勢のいい飛び蹴りの応酬に 中央軍の方陣が破れていく…!
卑怯だ!無礼だ!と喚き散らすヨソイ
それを叱りつけるイ・リョン王は すっかり競い合いを楽しんでいる
ヨンサルタは 3人ひと組の方陣を組ませ 地道に倒していく作戦に出る
負けじとファンフェが 対抗策を命じていく
トルピスの 虎退治の時には風を読むという話や
暴れる馬をおとなしくさせるには 目隠しをするという話から
中央軍の陣を崩すための秘策を考え付く…!
『上着を脱いで風上に立て! 上着で地面を叩き埃を舞い上がらせろ!』
いかに緻密な方陣を組み 攻守を整えたとしても
埃が舞った目隠しの状態では どうすることも出来ない
この兵法など無視した戦い方に なす術もなく全滅させられる中央軍
こんな卑怯な戦い方を 認めることは出来ないと叫ぶ中央軍の兵士
ヨンサルタも まだ戦えるし まだ負けてはいないと叫ぶ
『あなたたちは この国の名誉ある武将ではないのですか!
事態を受け入れずに 意地で戦を続ければ
あなたたちに従う 多くの兵士たちが無駄死にする!
負けを認めるべきだ! 兵士の命ではなく自尊心の方が大事なのですか!』
ファンフェの言葉に 負けを認めるしかないヨンサルタ
イ・リョン王は 両軍の戦いは勝敗に関わらず素晴らしかったと絶賛し
天(チョン)軍の兵士たちに 酒と食事を振る舞うという
そして明日 約束の軍職を授けると明言した…!
ご馳走と酒を振る舞われ 大いに酔いしれるヨソッケたち
ファンフェは これからが始まりなのに… とため息をつくが
先を憂いて不安がっていても始まらないと考え直す
兎にも角にも あの中央軍に勝ったのだ 今はこの勝利を祝おうと…!
悔しさと怒りに打ち震え 夜の訓練場で独り稽古するヨンサルタ
そこへ タムドクが現れ ヨンサルタが投げた木刀を拾う
『その怒りと悔しさが 己の弱さのためなら 今の怒りを楽しむことだ
しかし つまらない自尊心のための怒りならば 今すぐ鎮めよ
戦友になる彼らを 身分で見下してはならない
国を守るということは いかなる差別も許されないのだ
心の壁を取り払わずして 彼らと戦友にはなれない 共に汗を流すことだ』
翌日 天(チョン)軍の兵士たちに 軍職が授けられることとなった
コ・ム大将軍が 今まさに王命を読み上げようとしたその時…!
国相(ククサン)ケ・ヨンスが 軍職は授けられない!と叫ぶ
『天(チョン)軍を率いるファンフェは 大罪を犯した罪人です!
しかも 国法に背く逆賊なのです…!!!』