“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
史実とは異なる創作の部分があります
第51話(最終話) 大国の斜陽
皇帝タファンは 自らの体の異変に気づき始めていた
体調が悪くなって薬湯を飲む
飲むと眠くなり記憶をなくす
いつものようにコルタを呼ぶと 珍しくコルタは不在だという
同じ時
コルタは メバクの頭として奇皇后と対峙していた
奇皇后がこの場に現れたということは 正体を知られたということだ
手下に向かって『皇后を殺せ!』と叫ぶ!
一夜明け
メバクの手下らを捕獲し入城する奇皇后を 丞相タルタルが出迎えた
頭は取り逃がしてしまったが 手下を尋問すればすぐにも正体が分かると
逃げ延びたコルタは城内に戻り 侍従の顔に戻っていた
とはいえ 奇皇后が頭の正体に気づき始めているとすれば油断は出来ない
後宮では
側室たちの間で高麗(コリョ)風の衣装が流行っていた
料理さえも 高麗(コリョ)の味付けがもてはやされている
皇太后は 高麗(コリョ)の文化が根付くことに憤慨し 側室たちを罰しようとする!
なぜ文化の融合が悪いことなのか… と言い返し 皇太后にも衣装をと勧める奇皇后
これに憤慨した皇太后は 何としても新たな皇帝の擁立を急がねば!と
一方 捕えたメバクの手下から “頭は宮中に出入りしている”との情報を得る
奇皇后は これを直ちに皇帝に伝えるが その横で張本人のコルタが聞いている…!
その時 またしても頭痛に襲われ苦しみだすタファン
コルタも 皇太后同様 新たな皇帝の擁立を急がねば!と
薬湯を飲み 意識が薄れていく皇帝タファン
しかし 懸命に意識を保とうとする
何度も薄れそうになる意識の中 耳元でコルタの声がする
(まだ死んでは困ります 陛下 苦しみながらも生きていただかねば…
新たな皇帝を迎える準備が出来た時 楽に死なせてあげましょう)
目を閉じたまま 涙が溢れてくるタファン
そこへ コルタの部下が来たようだ
『お頭! 今夜皇太后が 新たな皇帝を支持する者を集め 秘密の会合を開くと』
コルタの部下が コルタを“お頭”と呼んでいた…!
この衝撃に タファンは完全に覚醒し起き上がる
その夜
皇太后が メバク側のパルラチョプ支持者を集め会合を開いた
チャン・スニョンの情報によれば すでに皇帝は危篤状態にあるという
あとは 奇皇后派の勢力を朝廷から排除すれば事が成せる
ヨム・ビョンスは “メバクの力”で 玉璽は思いのままに押せると豪語した
意識を失ったままの皇帝
トクマンが 様子を見に訪れ脈をとる
すると 意識を失っているはずの皇帝が 微かな声でトクマンを呼んだ
見張りの者に気づかれぬよう トクマンに密命を出すタファン
トクマンは 耳元で命令を聞きながら ハラハラと涙を流すのであった…!
その後 皇帝タファンの食事に毒が盛られた
コルタの部下は パク・ブルファの指示によるものだと報告する
『何を言う! そなた皇后の差し金だとでも言いたいのか!』
コルタの一喝に 部下は真実だと告げた
まさか… コルタは皇后を排除したいのか
タファンは コルタが誰を新たな皇帝にしようとしているのか見当もつかない
体調を案じ駆けつけた奇皇后を 冷たく追い返すタファン
間違いなく皇后を疑い始めた皇帝に コルタは微かにほくそ笑む
やがてトクマンにより タファンに盛られた毒は 鴆毒(ちんどく)の一種と判明
すでに喀血しているタファンは かなり重篤な状態であると…!
この毒に解毒の方法はなく もはや死を覚悟せねばならないタファン
しかしそれでも コルタに疑いを抱かせぬよう 薬湯を飲み続けるという
そして 記憶をなくさずに済む薬を処方するよう トクマンに命じていく!
『私が死んでしまう前に 皇后とアユを守る手立てを探したい
皇后に敵対する勢力を一掃したいのだ!』
その後もタファンは薬湯を飲み続け 皇后を疑う言葉を口にした
コルタの前では意識を失う振りを続け 決して悟られぬよう細心の注意を払う
『陛下は なぜこうも容易く皇后様をお疑いに?』
『それはヨム・ビョンスの手柄だ 5年間も偽の密書を送り溝を深めたのだ』
薬湯の効果を信じ 今では皇帝の枕元で堂々と悪事を語るコルタ
そしていよいよ 皇太后の前に正体をさらけ出した
さすがに衝撃を隠せない皇太后だったが これ以上の味方はないと歓喜する!
『皇帝は皇后を疑っています まもなく皇帝は崩御するでしょう
新たな皇帝を冊立するまでは 皇太后様が摂政をなさってください』
『陛下が私を指名したのか?』
『いいえ 陛下ではなく このコルタが決めました!』
コルタが率いるメバク商団は 長い年月 丞相ヨンチョルと結託していた
さらに野望を果たそうと 宮中に入り込むため 迷わず宦官になったのだ…!
ヨンチョルからペガン そして今度は皇太后と結託するつもりのコルタであった
タファンは コルタの野望を実によく理解していた
体調の悪化に伴い 皇后様を摂政にと進言するコルタ
しかしタファンは承認せず 摂政には皇太后様をと命じた
コルタの顔に 思わず笑みが浮かびそうになる
間違いなく事は順調に運んでいると 確信を得た瞬間であった
コルタの憂いを除くため 丞相タルタルと三公らを次々に罷免していくタファン
他にも 片っ端から罷免しているようでありながら 対象はすべて皇后派であった
奇皇后には口出しを禁じ 皇太后を摂政にとの詔書を読み上げさせた
いたたまれず退席する奇皇后
その非礼を叱責し引き留める皇帝
その直後 タファンは激しい頭痛に喘ぎながら寝所へ運ばれていく!
しかしタファンは 体調不良を押して執務室に戻る
そして駆けつけた皇太后を前に いよいよ“譲位”の言葉を口にするのだった!
『譲位するとして誰にすればよいか… 皇太后様に誰か心当たりは?』
『……それならば… パルラチョプではどうでしょう』
ほんの一瞬 タファンは凍りついた
又従兄弟のパルラチョプを新たな皇帝にして 皆で操るつもりなのかと…!
しかし 寛容に意見を聞き入れ すぐにも譲位の詔書を書くというタファン
そして直ちに 大明殿に臣下を招集するようにと命じていく
この事態を重く見て トクマンは すべての経緯を奇皇后に報告した
そこへ タルタルが駆けつけ 皇帝より密命が下されたと知らせる…!
ヨム・ビョンスは パルラチョプを“陛下”と呼び
即位後も 存分に引き立ててもらおうと取り入る
パルラチョプもまた すでに即位したかのように振舞い越に入る
大明殿にて
皇帝タファンは 両脇を抱えられながらようやくその玉座に座る
死の恐怖と向き合いながら キ・ヤンとアユを守るため闘っていると
すべては2人のためなのだと知り
奇皇后は その痛々しい姿に涙が溢れ出す
奇皇后とタルタル そしてトクマンの他は コルタと皇太后の一派が召集された
早く詔書を!と急かす皇太后
それに応じるように 詔書を自ら読み上げるタファン
『逆賊共よ よく聞くのだ』
タファンが読み始めたと同時に 皇太后とコルタの表情が変わる
それを 固唾を飲んで見守る奇皇后 タルタル トクマン…!
『そなたらは皇帝と皇后の暗殺を企て 謀反をせんと画策した!
その罪をこの場で厳しく断罪する!』
『陛下!これは何事ですか!!!』
『丞相タルタル!』
タファンの呼びかけに応じ “丞相”タルタルが兵士を率い現れた!
『陛下 お呼びですか』
『ここにいる謀反人共を… 皆殺しにせよ!!!』
命令に応え タルタルが真っ先に剣を揮ったのは パルラチョプであった
タルタルの『全員殺せ!』の命令に 部下たちの剣が一斉に抜かれた!
皇太后派の大臣や武将が 次々に斬り殺されていく
チャン・スニョンもまた例外ではない
皇太后の目の前で あっけなく斬り殺され息絶えた…!
すべての粛清が終わり 皇太后とコルタだけが残った
このような事態になってもまだ 自らの正当性を訴える皇太后!
『何と聞き苦しい! もうお黙りに!』
奇皇后の一喝に凍りつく皇太后
続いてタファンが コルタに なぜ裏切ったのかと問う
元々自分の主ではないので 裏切った覚えはないと言い切るコルタ
『私にはお金がすべてです お金が私の主と言っても過言ではない
人と違って お金は裏切らないですから!
馬が老いれば乗り換えるでしょう 乗り換えて何が悪いと?』
コルタは さらに悪態をつき続ける
『皇后とて同じことでしょう 皇帝だからと容易く心を与えられますか?』
『黙れ!!!』
『愚かな皇帝め!!!その無知で…』
みなを言わせずして タファンは短剣でコルタを刺す!!!
それと同時に コルタの側近をタルタルが斬り捨てた!
ヨンチョルに迫害されている時代から コルタは常に寄り添い傍にいてくれた
スンニャンとの出会いから 次第に近づいていくその時も コルタは常に傍にいたのだ
そのコルタが メバクの頭だったことは あまりに惨い あまりに酷な現実であった
タファンは そんなコルタを 自らの手で成敗しなければならなかった…!
その嘆きと悲しみは すべて皇太后にぶつけられた
憤怒のあまり 喀血するタファン
すぐに駆け寄り支える奇皇后
皇太后は もはや抗う気力もなく その光景を見つめている
いくらトクマンからすべてを聞いたと話しても
皇帝タファンは 奇皇后に対し すぐ治るのだと話し平静を装い続けた
コルタが粛清され 次は皇太后の断罪であった
本来であれば死罪のところ 寺送りになることで決着したが
皇太后は これを激しく拒否し 最後まで奇皇后を“高麗(コリョ)の女”と罵る
『皇太后 立場をわきまえるのだ 情けにも限界というものがある』
奇皇后が言い終わるか終わらないかのうち 皇太后は血を吐いて倒れた
決して負けを認めようとしない皇太后は 自決の道を選んだのである
やがてヨム・ビョンスとチョチャムも捕えられた
悪事の限りを尽くした2人に 民衆から怒号が浴びせられ石が投げられる
奇皇后は 同胞を踏みにじり生き延びてきた2人の前に立つ
『他の者を踏み台にしてのし上がったのはお前も同じだろ?
たまたまお前は皇后におさまり この俺はしくじった! それだけの話だろ?』
『自分の罪が何か分かっていない!』
『俺の罪とは何だ? 罪があるとすれば… 運がなかったということだろ?
高麗(コリョ)みたいな国に生まれたことが! それが罪なんだろうよ!!!』
見物人から 容赦なく石が投げつけられる
血だらけになりながら ヨム・ビョンスは 群衆に向かって喚き散らす!
『お前らは何をした? どれだけ立派だというんだ? この愚か者めらが!!!』
怒り狂った群衆が 警備の制止を突破しヨム・ビョンスを取り囲む
結局ビョンスとチョチャムは 怒りに満ちた群衆により撲殺され命を奪われた
法に則って裁かれるより さらに残酷な形で その生涯を閉じたのであった
奇皇后は 2人の哀れな最期に涙せずにはいられなかった
高麗(コリョ)という弱小な国に生まれたがゆえ ねじ曲がったビョンスの心は
独自の信念のもとに 歪んだままの姿でその生涯を閉じる結末となった
清廉な精神を保とうとする者は やがて邪悪な輩によって命を奪われ
生きようともがき したたかに闘う者らも こうして死んでいく…
あまりに悲しい 人の世の姿であった
『もしも強大な国に生まれたら… たとえヨム・ビョンスのような者でも
幸せな家庭を築き 優しき父親として生きたのかもしれない
この者もまた 国が守れなかった哀れな民の1人と言えるでしょう』
元の国へ 今も変わらず貢女(コンニョ)が送られてくる
すでに 皇室から高麗(コリョ)へは禁じてあるのに… と訝しむ奇皇后
パク・ブルファによれば 高官らが貢女(コンニョ)を妾にしているのだという
大明殿で 摂政となった奇皇后が 高官らに厳しく罪を問う
『今後このようなことがまた発覚すれば 決して見逃しはしません
“貢女(コンニョ)出身”の私が 容赦なく裁きます!
また 高麗(コリョ)を属国にしようとする考えも 二度と口にせぬよう!』
高麗(コリョ)の王位には 江陵(カンヌン)大君が擁立された
※江陵(カンヌン)大君:後の恭愍(コンミン)王
母は高麗(コリョ)人の明徳太后ホン氏 幼少時代を元の宮廷で過ごす
幼君が続く高麗(コリョ)を按じた元の支援を受け 1351年に即位
やがて元が衰退すると 親明政策を取り 高麗(コリョ)に根付く親元派を排除
その後 権勢を揮う奇皇后を討伐する
1368年 反乱軍が黄河を越え これを迎え撃つべく丞相タルタルが出陣
しかし… 奇皇后のもとに 丞相タルタルの戦士が伝えられる
もはや反乱軍を抑えることは難しく 逃げるべきだと進言するパク・ブルファ!
丞相タルタルが出陣する前 もしもの時には北へ逃げるようにと言い遺していた
広大なモンゴルの地で再起を図るようにと…
皇帝タファンは 反乱軍の動向を按じながら病床についていた
奇皇后は 丞相の死を伏せ やがて勝利も近いと話し安心させる
『陛下 また陛下と一緒に… 広大な草原を馬で駆けてみたくなりました
この元の礎である北方に 陛下と行きたいのです』
『そうだな… そなたが望む所なら… 何処へでも』
『もう…準備が整っています』
『そうか… ヤン… 耳が痒い』
『それでは私の膝に』
膝枕で耳掃除をしながら 奇皇后は 雑用係だった昔を思い出していた
あの時もこうして 耳が痒いと甘えるタファンに膝枕をしたと…
『ヤン… 愛しい… 愛しい… ヤン…』
『陛下 私も陛下を想っています 心から… お慕いしています』
止め処なく涙が溢れながらも 奇皇后は 最期まで『愛している』とは言えなかった
皇帝タファンは 心から愛するキ・ヤンの膝枕で その波乱の生涯を閉じた
まだ温もりが残るタファンの亡骸を抱き締め 共に馬を駆った頃を想う奇皇后
タファンとの間に授かった我が子 アユルシリダラが無邪気に問う
『母上は高麗(コリョ)の人ですか? それとも…元の人ですか?』
『なぜそんなことを?』
『高麗(コリョ)の民は 母上を“元の人”と言うし
元の民は 母上を“高麗(コリョ)の人”だと』
『どちらの人でもよいのだ
私はただひたすらに “民”を守るために闘ってきたのだから』
1368年
朱元璋が 大都に攻め入り征服する
北方に逃れた奇皇后は 我が子アユルシリダラを皇帝の座に就けた 〈完〉