“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています
1話~11話はこちらで公開しています
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
第33話 ゆがめられた事実
皇帝タファンは ヤンの心がここにないことを知っていた
抵抗もせず ただ皇帝の命じるままにしているヤン
ただ欲望だけで ヤンを自分のものにしても それは真実の愛ではない
タファンは 静かにヤンから離れた
『そなたの方から 手を差し伸べてくれる日まで 待つとしよう』
『陛下は今 ただ権力を手に入れることだけに 集中してください』
ヤンは 乱れる心をタファンに気づかれぬよう 自分の天幕へ戻る
宦官ブルファは ヤンを護衛しながら 初めて気弱な姿に触れる
こんな狩場に来てまで 皇帝はタナシルリを無視し 側室と過ごす
怒りが収まらないタナシルリは 兄たちの天幕へ…!
そんな悔しさも 今宵限りだと慰めるタンギセ
『キ・ヤンを… 殺すのですか?』
『あの者だけではありません 両者を始末します』
『え?まさか… 皇帝も殺す?! そんな…』
『父上の命令には従わないと』
ヨム・ビョンスは 親衛隊を率い 夜中のうちに陣営を出発した
それをパン・シヌたちが尾行し 怪しげな行動を探っている
どうやらビョンスは 兵士たちに穴を掘らせ「落とし穴」の罠を…!
そればかりか いくつもの罠を 入念に仕掛けている
たかが狩場の獣に ここまで?と疑問を抱くシヌたち
(あいつらがいなくなったら 罠を壊そう!)
(もうすぐ夜明けだ 全部は壊せないだろ?)
(だからって あんな不正を許していいのか!)
ビョンスが仕掛けた罠は 30にも及ぶ
タンギセは 妹に 明日は狩場に出ない方がいいと言うが
タナシルリは 憎いキ・ヤンの死にざまを見なければ!というのである
そして一夜明け
ヤンとタファンは 今日こそ獲物の大きさで勝負しようと張り切っていた
侍従コルタと宦官ブルファは 2人を見失わないよう必死に走る…!
タンギセとタプジャヘは 窪地に隠れ 罠の方を見張っていた
しかし ことごとく失敗する罠に 苛立っていく!!!
シヌたちの報告により ワン・ユは 罠を見張る親衛隊を偵察し
獣を捕獲するための罠にしては 手が込み過ぎているという
それに 獣を狙うのに 見張りがいるのはさらにおかしいと…
丞相ヨンチョルは 驚くような獲物を仕留めて見せると豪語していた
それはひょっとしたら… 人間なのかもしれない
不吉な予感がよぎるワン・ユ
『この先の罠の場所は 皇帝とスンニャンの狩場になる』
『え? どういうことです? …まさか!』
『すぐにペガン将軍を呼べ! 私はスンニャンのもとへ行く!』
タファンとはぐれたヤンは 森の中で方向を見失う
ただならぬ気配を感じ 弓を構えて辺りを見回す…!
その背後に タナシルリの一団が潜み 狙いを定めている!!!
次第に近づいてくるヤンを確認し 罠の縄を引くが何も起こらない
このままでは 潜んでいるところを発見されてしまう!
タナシルリは自ら姿をあらわし 至近距離から矢を放つ!!!
矢は 僅かに的を外れ ヤンの頬をかすめた!
タナシルリは ヨン尚宮に 援軍の兵士を呼んで来いと命じた
何が何でも ここでしくじるわけにはいかない
いかに皇后とて 側室を殺そうとしたことが知れれば問題になる
ヤンは 追っ手の親衛隊をひとりずつ仕留めながら逃げていた
その様子を 他の側室たちが目撃し 皇帝に知らせねば!と走り出す!
キ・ヤンの危険を察知し 助けようとして狩場を駆け抜けるワン・ユ
皇帝タファンもまた ヤンのもとへ急ぐ
キ・ヤンは 親衛隊を始末し ひとりになったタナシルリと対峙する…!
『本当に私を 殺せるのですか?』
『ここならば誰も見ていない 誰の仕業か分かるものか!』
『どうぞ 殺したいのなら殺してください』
『お前…死にたいのか? そう楽には死なせぬ!』
『ここで死んだとしても本望です
陛下が 夜ごと私を抱きながら こう仰いました
“お前こそ この国の皇后に相応しい
タナシルリのことなど 女と思ったこともない あれはただの飾りだ”と』
弓に関しては 後宮でいちばんだと自慢していたタナシルリ
その腕前で毒矢を放たれては 完全にこちらの不利となる
すでにヤンの矢は無くなり 小刀だけで応戦しなければならないのだ…!
(動揺させればそれだけ 命中率が下がるはず…)
『皇帝から完全に無視されるなんて 皇后様はあまりに惨め過ぎます』
『黙れ黙れ黙るのだ!!!』
『私を殺しても 皇帝の心は戻りません
いいえ はじめから皇后様のものだったわけでもありません
ただの一度も愛されず 寂しさと屈辱を枕に死ぬだけですね』
タナシルリの 最後の矢は 大きく的を外した
互いに小刀で斬り合うとなれば タナシルリに勝ち目はなかった
『皇后に向かって…! こ… 皇后を殺したら大罪に問われるぞ!』
『“ここならば誰も見ていない 誰の仕業か分かるものか”
そう仰ったのは 皇后様ですよね』
情けなく命乞いするタナシルリに 怒りを抑えられなくなるヤン
無残にも たくさんの者を殺しておきながら…!
『このままここで殺すなんて… お前には軽すぎる!!!
死んで終わりになどさせない 死より過酷な苦しみで復讐してやる…!』
狩場の野営地に 丞相ヨンチョルがやって来た
皇帝と才人キ・ヤンを 確実に仕留めるため 指揮を執るという
事を起こすからには 決して失敗することは出来ないのだ!
放心して座り込んでいるタナシルリのもとへ 援軍が駆けつける
タナシルリは ひとり山を下りていったヤンを 何としても殺せと命じる
ヤンもまた放心し 来た道を引き返していた
ヨム・ビョンスとチョチャムが 罠の方へ歩いてくるヤンに気づく…!
シヌたちは すべての罠を壊せてはいない
今にも罠の領域に差し掛かるその時…!
ヤンの名を叫びながら 皇帝タファンが走って来る!
ビョンスは 息を飲んでその瞬間を待つ!!!
タファンのもとへ駆け寄ろうと ヤンが足を踏み出したその位置こそ
頭上から網が落ち 毒矢が一斉に飛び出す罠の場所であった!!!
まずは網が落ち ヤンを体ごと覆ってしまう
それを外そうとして 駆け寄ったタファンが網を引っ張る
カチッと怪しい音がした次の瞬間! 毒矢がタファンの腕に突き刺さった!
『陛下ーーーっ!!!』
侍従コルタが 部下の兵と共に親衛隊と斬り合う!
その隙にヤンは 負傷したタファンを連れ 安全な場所を求めて走り出す!
遅れて現れたワン・ユが 親衛隊の前に…!!!
親衛隊が 皇帝と側室を襲うとは…!
いかに丞相の命令だとしても ワン・ユには受け入れられない光景だった
ヨンチョルの身内となったワン・ユが 親衛隊に斬りかかる
この場にいる親衛隊を 全滅させなければ 裏切りが露呈してしまう…!
一方 ヤンと共に逃げるタファンは 次第に毒が回り目が翳み始める
悪寒がし 体が震えはじめ 歩くのもままならない
毒を吸い出そうとするヤンを 必死に止めるタファン
そんなことをすれば ヤンまでが毒に冒されてしまう…!
しかし構わず ヤンは タファンの腕の傷口を吸い続けた
『陛下 負けてはなりません! 負けないでください…!!!』
ヤンを逃がそうと 必死に戦うワン・ユは 腹部を刺されてしまう
そこへ現れたタナシルリが 血まみれになって戦うワン・ユに気づく
裏切りを知り 怒りが込み上げたタナシルリは ワン・ユに狙いを定める
しかし 射程距離でありながら どうしても矢を射ることが出来ない…!!!
タナシルリに気づき ワン・ユが じっとこちらを見つめている
そのまなざしに 弓を持つ手が震えてしまうタナシルリだった
(なぜ… なぜ射ることが出来ないのか!)
ワン・ユに対する 熱い想いは まだ消えてはいなかった
チョンバギと チェ・ムソンが やはり血まみれになり戦っている!
3人はたちまち取り囲まれ 絶体絶命となった
たとえここで死のうと 誰ひとりとしてヤンを追わせてはならない!
この王命に 死を覚悟する2人であった
そこへ パン・シヌが ヨンビスとチョクホを連れて現れた…!
形勢が逆転し 絶体絶命だったワン・ユは シヌに守られる
今度こそ ワン・ユに狙いを定めるタナシルリだが
見つかれば 間違いなくこの場で殺されてしまうだろう
ヨン尚宮が 早く逃げようと急かし 一目散に逃げていく…!
その後姿を見つめるワン・ユ
タナシルリは おそらく父親にすべて報告するだろう
皇帝の側についたことは もはや隠せない事実であった
動けなくなったタファンのもとへ 侍従コルタが駆けつける
毒矢と知ったコルタは 宦官ブルファと共に タファンを支える…!
一方 ワン・ユの傷も深く このままでは出血多量となってしまう
しかしワン・ユは 自らの命よりも スンニャンが無事かと按ずる
ヨンビスは ワン・ユの想いを 痛いほど感じるのであった
やがて日が暮れた
ようやく 夜の野営地に辿り着くタファンの一行
そこで待ち伏せていたのは 丞相ヨンチョルの一団であった
毒矢のせいで もうろうとしているタファン
すぐに楽にして差し上げましょう と ほくそ笑むヨンチョル
そこへ 将軍ペガンとタルタルが 兵を率いて現れる…!!!
皇帝を連れて下山するというヨンチョルに 断固反対するペガン
いかに丞相の命令でも もはや言いなりになるペガンではない
この“謀反”を企てたのは丞相か? 才人キ・ヤンが厳しく問う
ヨム・ビョンスが 陛下は獲物の罠でケガをしたと叫ぶ
それが 獲物ではなく人間用に仕掛けられたとしても 表向きには事実だ
『丞相が陛下をお連れになり もしも陛下が命を落とされたら
行省の長官たちは 間違いなく丞相の仕業と思うでしょう』
キ・ヤンの言葉に 一瞬 黙り込むヨンチョル
狩場での計画が失敗した以上 皇帝の“死に方”は重要である
この状況では 譲るしかないと判断するヨンチョル
『なぜ行かせるのですか! ここで殺しましょう!!!』
思慮の欠片もない息子を 激怒して殴るヨンチョル
ペガン率いる軍勢と 侍従コルタの兵を この場で皆殺しにせねば
ここで皇帝を始末するという凶行には 踏み込めないということだ
愚かな息子は 優先すべきは証拠隠滅であることを 自ら悟ることが出来ない
『親衛隊の死体をすべて片付けろ! 罠も残らず撤去するのだぞ!』
『はい… 承知しました父上!』
ヤンが毒を吸ったものの タファンの容態は深刻であった
もし助からねば 皇位はマハ皇子に引き継がれ ヨンチョルの天下となる
自身も毒に苦しみながら ヤンは タファンのもとへ行こうとする
その途中 ワン・ユの一行とすれ違う
丞相に呼ばれ ケガを隠して向かう途中である
『丞相は 謀反を疑われています 王様まで巻き込まれぬよう…』
『互いに別の道を行くと決めました
私の立場に関心を持つことも また私を按ずることも おやめください』
あんなにもスンニャンを按じていたのに そのせいで命を落としかけたのに
パン・シヌは ワン・ユの心中を思い 泣き出しそうになる
ヤンの前を通り過ぎ 痛みに顔を歪めるワン・ユ
止血したはずの腹部からは また血が流れ出している
しかし おそらく後姿を見送っているであろうスンニャンのため
ワン・ユは 気取られないよう必死に歩き続けるのであった
タファンの傷口から毒を吸ったとはいえ ヤンは大事に至らずに済んだ
しかしタファンは 意識を失ったまま 解毒剤を飲めずにいる
もとはといえば ヤンを庇って毒矢に撃たれたのだ
何とか解毒剤を飲ませ 救わねばならない
皇太后は 皇帝の看護を才人キ・ヤンに託し 丞相糾弾の準備を進める
すでに各所の長官らを召集し 話し合いの場を設ける手筈だ
丞相が武力行使することも想定し 大明殿を護衛兵で固めねばならない
ヤンは トクマンとコルタにも下がるよう命じ タファンと2人になる
意識のないタファンに 解毒剤を飲ませる方法は これしかない
『陛下 どうか生きてください どうか目を覚まして…』
口移しに解毒剤を含ませるヤン
この行為が “愛”と呼べるのかどうか… まだヤンには分からない
しかし 生きてほしいと願うヤンの目には あとからあとから涙がこぼれた
一方 丞相に呼ばれたワン・ユは この一件の目撃者になれと命じられる
この窮地を脱するためには 真実を語る目撃者が必要だと
思わず『ダメです!』と叫んでしまうタナシルリ
命を狙われた才人キ・ヤンは 高麗(コリョ)の出身
同じく高麗(コリョ)の者であるワン・ユでは 目撃者に相応しくないと…!
第2の解決策として 身代わりの犯人を仕立て上げるか
そして第3の解決策は 武力行使で突き進むことだというヨンチョル
すべての長官らが手を組めば 武力行使は無理だと答えるワン・ユ
協力するかどうか すぐに返答をせず 退室するワン・ユを追いかけ
タナシルリは 父に協力してくれと頼む
才人キ・ヤンを助けるという裏切りを ここで暴露するより
今は 父の窮地を救わねば 皇后としての立場さえ危ういのだ
タンギセは ヨム・ビョンスに 今回の件は 親衛隊の独断行動だと宣告する
皇帝暗殺の実行犯になれという命令に どれだけ驚いたか分からない
しかしビョンスは 新たな皇帝のもとで大臣になる夢を描き これに従った
それが今度は 実行犯どころではない すべての罪を被れというのだ
ビョンスと共に行動したチョチャムは どっちにしても死罪だ!と嘆く
執行前に逃がしてやるというタンギセの言葉が どれほど信じられないか
これまでのことを思えば 簡単に分かることだ
それでも この命令に従い タンギセが逃がしてくれると 信じるしかない
拒んだところで 今殺されるか 処刑台で殺されるかの違いだけだ
大明殿において 丞相ヨンチョルの罪を問う皇太后
すべての長官が召集され 丞相への尋問を見守っている
『一体 誰に襲われたというのか 当の本人に聞くがよい!』
『親衛隊です 親衛隊に襲われました』
才人キ・ヤンの答えに 目を見張るヨンチョル
それだけではない 見たはずのない他の側室たちまでが同じことを言う
ヨンチョルは動揺を隠し その親衛隊を捕えたという
自分も息子たちも 親衛隊の凶行には一切関わっておらず
息子たちこそが 首謀者を捕えたのだと…!
皇太后は 黒幕に丞相がいることを証明したかった
一介の親衛隊長に 謀反の企てなど出来るはずがないと…!
ところが ビョンスは 標的は皇帝ではなく 側室だったと白状する
標的が皇帝なら “謀反”であり大逆罪だが 側室が標的なら話は違ってくる
ヤンを庇い 皇帝が毒矢に倒れたことも事実なのだ
そもそも キ・ヤンを高麗(コリョ)から連行したのはヨム・ビョンス
それを逆恨みしたキ・ヤンが 側室となって自分に復讐するかもしれない
それを恐れて 殺そうと考えただけのことだと…!
あまりにバカげた告白に 声を荒げて遮るヤン
タンギセは さらに2人の過去を指摘し かつての主君に聞くがいいと言う
すべては ビョンスの言葉通りであると証言するワン・ユ
ここまでの 丞相側の出方は パン・シヌから伝え聞いていた
敢えて丞相側が考えた通りに証言し 意表を突く作戦だった
なのになぜ? ヤンは 驚きの表情でワン・ユを見つめる
敢えて情報をくれたのは ここで真実を証言し 全て覆すのではないのか!
長官たちの前で 丞相への謀反の疑いを追及するどころか
いつの間にか 才人キ・ヤンの復讐話にすり替わっている
一件落着だとして 解散を促すヨンチョル
しかしここで 皇后タナシルリが前へ進み出る
そして 父親への謀反の疑いは晴れたが これで終わりではないと叫ぶ
陛下を守れず 毒矢に撃たれてしまった罪を キ・ヤンと側近に問うと…!
『直ちに才人キ・ヤンを連行せよ!!!』
兵士に両腕を掴まれ 大明殿から引き摺り出されるヤン
ワン・ユの横を通り過ぎたその時 憤慨して立ち止まり ギロリと睨みつける
なぜ嘘の証言で丞相に味方するのか…!
なぜそのような冷たい視線で自分を見るのか…!!
激しくワン・ユを睨むヤンの目からは 今にも涙がこぼれそうになる…!!!
にほんブログ村