“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています
1話~11話はこちらで公開しています
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
第30話 それぞれの道
メバク商団のフクスが捕えられ 大都に護送される
捕えられたのは フクスだけではない
ワン・ユは ヨンビスも一緒に 大都へ連行するつもりだった
遼陽を発って最初の野営地
タルタルは 口封じにフクスを殺してしまう
丞相に会わせれば フクスが献上品を贈った事実が嘘と知られ
毒入りのナツメを仕掛けた犯人が 別にいると分かってしまうのだ
続いてヨンビスをも殺そうとするタルタルを ワン・ユが止める
構わず殺そうとするタルタルに チェ・ムソンが剣を向け
パン・シヌも 我らの主がやめよと仰せだ!と息巻く
廃王とはいえ 今は丞相の身内に当たるワン・ユに 逆らうことは出来ない
タルタルは 問題が起きたら責任を問うと言い捨て剣を置く
大都では
皇后タナシルリが 冷宮へ送られようとしていた
王妃の衣を脱ぎ その身を飾るすべての宝飾品が外される
傍らには ソ尚宮がマハ皇子を抱き 涙ながらに見守っている
※冷宮:罪を犯した王族を幽閉する場所
そこへ 皇太后と才人キ・ヤンが現れ 皇子は連れて行けないと言い渡す
罪を償うべき者が 皇子の世話は出来ないと…!
息子を奪われそうになり 逆上して泣き叫ぶタナシルリ
皇太后は その頬を力いっぱいに殴りつけた!!!
『しっかりするのです!』
『寺に追いやられたことを恨み このような仕打ちを?!!!』
『愚かな母親から 皇子を守るだけのこと!
冷宮で自らの罪を自覚し 心から償うことだ!!!』
トクマンが マハ皇子を抱き 退室していく
才人キ・ヤンは 我が子の名を呼び 泣き叫ぶタナシルリを見つめる
(ただ 冷宮で過ごす間だけの別れではないか… 我が子は永遠に戻らぬ
二度と声を聞くことも この手に抱くことも出来ないのだ…!)
目の前の皇子こそが 奪われた我が子とは 夢にも気づかないヤンだった
冷宮へ向かう途中 タナシルリの前に 兄タンギセが現れる
この事件の真犯人は 才人キ・ヤンだと訴えるタナシルリ
たとえ証拠がなくとも ヤンのあの目を見れば分かると…!
タンギセは キ・ヤンに会い 人払いをという
そして 側室パク・オジンは自分が殺したと言い放った
『身の程も知らず 陛下のお子を身ごもったから殺されたのだ
お前も… 貢女の分際で側室になるとは 殺されても仕方ないだろう!
とはいえ ここまで我ら一族を追い詰めた者は お前の他にない
しかしここまでだ! お前の復讐ごときで倒れる一族ではない!!!』
※貢女:高麗(コリョ)が元への貢物とした女性
『勘違いしている』
『何?』
『私はまだ 始めてさえいない』
『…何だと?』
『冷宮に送っただけで復讐だなどと… 私は仲間の亡骸を抱き泣いたのだ
お前も… 父と妹の亡骸を抱き 血の涙を流すことになるだろう
そうしてこそ! それが私の復讐だ!』
ギロリと睨まれ 何も言い返せないタンギセ
身も凍るようなキ・ヤンの目つきは それほどまでに迫力があった…!
冷宮に着いたタナシルリは 茫然とする
皇后が使うからと 掃除されているわけでもなく 埃と蜘蛛の巣だらけである
冷え冷えとしていて暖房の設備さえなく 寝具すら用意されてはいなかった
これまで 大事に育てられてきたタナシルリにとっては 最大の屈辱だが
必ずここでの暮らしに耐えて戻り 皇太后とキ・ヤンに復讐すると誓う…!
恐ろしい皇后がいなくなり 後宮は風通しが良くなった
側室たちは皆 安堵の笑顔で談笑している
密かに協力し合ったヤンとソルファは 視線を合わせ笑みを浮かべた
※後宮:后妃や女官が住む宮中の奥御殿
そこへ 皇后の印章を受け取った皇太后が現れる…!
乱れ切った後宮の規律を正し 豊かに過ごせるようにしたいという皇太后
側室同士が睦まじく過ごしてこそ 子孫繁栄につながるのだと…
才人キ・ヤンは 皇帝が字を習っていることも もう声が出ることも
そのすべてを 皇太后に明かした
毎晩のようにヤンを寝殿に呼ぶことも その色香に狂っているのではなく
ひたすらに字を覚えようと努力していたのだと…
そして 丞相が譲位を考えていることを伝え
今回の件で 早まる可能性があると話す
一方 タンギセは 父ヨンチョルに会い
皇后が冷宮送りにされたのは すべて才人キ・ヤンのせいだと報告する
ヤンを側室として送ったペガンも いずれ裏切るかもしれないと…!
そこへ タルタルの一行が到着したと ヨム・ビョンスが伝えに来た
タルタルは フクスが護送の途中で自害したと報告する
丞相ヨンチョルは そのままタルタルを下がらせた
ペガンが裏切るかどうかは 譲位を発表した時に判明すると
タルタルもまた 丞相の視線に疑いの色があったと気づく
今後の行動は 慎重に慎重を期さなければと…!
一方 ワン・ユは
この宮殿に スンニャンがいると思うと落ち着かなかった
ムソンとチョンバギは スンニャンに会うべきだというが…
自分から会いに行き スンニャンを苦しめたくないと答える
『王様だって 十分に苦しまれたではないですか!』
『今 パン内官が会いに行ってます』
『何?! 勝手なことを…』
今は“才人キ・ヤン”と呼ばれるスンニャン
パン内官を取り次ぐのは 宦官になったパク・ブルファだった
※宦官:去勢を施された官吏
パン・シヌは 昔の仲間のよしみで 王様との仲を取り持とうとした
しかし “才人キ・ヤン”は 皇帝の側室という立場で厳しく諫める
宦官の分際で 皇帝の側室に他の男と会えとはどういうことかと!!!
『私に会いたくば 大明殿において皇帝陛下に謁見せよ!
密会などということは 決してあり得ないとお伝えください』
※大明殿:元の皇居の主殿
顔面蒼白で ヤンの居室を出るパン・シヌ
その目には涙が滲んでいる
慌ててブルファが後を追い ヤン様のお立場を考えてほしいと取り成す
シヌは 自分の浅はかな行動を反省した
今の態度が スンニャンの本心ではないと 痛いほど分かっている
どんなにか辛い思いで突き放したかと 涙が止まらぬシヌだった
シヌは ヤンの言葉をそのまま報告する
まるで人が変わってしまったと 激怒するチョンバギ!
しかしワン・ユには ヤンの想いが伝わっていた
そして ヤンの言う通り 正式な形で皇帝に謁見するという
こうしてワン・ユは 皇帝タファンに謁見する
タファンの横には “才人キ・ヤン”が寄り添っている
声が出ない皇帝に代わり ヤンが代弁するのだ
ヤンは ワン・ユと2人きりで話したいと願い出た
2人の関係を知るタファンは 不安の表情でヤンを見つめる
『陛下が望まないのであれば 無理にとは申しません
私を信じていただけるのでしたら どうかお許しを』
密会という形ではなく 堂々と会う道を選んだヤン
今はもう“王様”ではなく “ワン・ユ殿”と呼び 立場の違いを示す
ワン・ユもまた 自分の中のスンニャンは死んだと明言するのであった
互いに訣別の言葉を言い合う2人
立ち去ろうとするワン・ユの背に 思わず『お許しを』というヤン
しかしワン・ユは 謝罪の言葉を受け入れず
今度は 堂々と我が道を… と答えるのだった
『私も 我が道を行くことにします
苦しむことなく 恨むことなく もう二度と過去を振り返らず…!』
これが スンニャンの選んだ道なのだ
自らの想いだけを優先し ワン・ユと幸せになることは
無念に死んでいった仲間を思えば 到底選べる道ではなかった
また その想いを受け止めることこそが ワン・ユの愛であった
タファンは 落ち着かぬ思いでヤンを待っていた
するとそこへ 丞相ヨンチョルが 息子たちを従え現れる
寝殿の卓上には 字を習うための道具が広げられたままである…!
侍従コルタが 大声で丞相の来訪を告げ危険を知らせた!
慌てて道具を片づけたタファンは 酒席の卓上で酔ったふりをする
相変わらずの情ない姿に 呆れて舌打ちをするヨンチョル
そして タファンをどこかへ連れて行こうとする…!
たとえ丞相であれ 行き先も告げずに皇帝を連行するとは許せない行為!
コルタは 命懸けで制止するが…
『そんなに心配ならば そなたもついて来るがよい!』
『え?』
丞相ヨンチョルは タファンを書庫に連れて行く
コルタが同行を許されたのは その門前までであった
タファンを前に 文書を書き始めるヨンチョル
それは マハ皇子に譲位するという内容であり
幼いマハが成長するまで 皇后が“垂簾聴政”するというものであった
※垂簾聴政:幼い皇帝に代わり 皇太后や皇后が摂政政治をすること
以前は 何が書かれているのか分からず また関心もなかったタファン
しかし今は文字を理解し その内容が分かり 次第に蒼ざめていく…!
いつものように 玉璽を押せと命じられても すぐには応じられなかった
ヨンチョルをはじめ タンギセが タプジャヘが
そしてヨム・ビョンスが兵を従え監視している
やむなく玉璽を押すしかないタファン
そしてさらにヨンチョルは 行省の長官らに会ってはいけないと釘を刺す
最近 反発し始めている長官たちと タファンを結託させないためであった
※行省:
モンゴル王朝である元が 中国地方統治の最高単位として設置した行政機関
密かに文字を習ったのも 皇帝としての真の力を得るため
そして 譲位を宣言する丞相の前で 声が出ることを明かすつもりであった
しかし今となっては すべての努力が無になったと落胆する皇太后
才人キ・ヤンは ペガン長官が これを阻止する策をご存知だという
ペガンによれば 丞相の譲位宣言に 皇帝がこれを否定し
すべての長官が皇帝に賛同すれば 譲位詔書を覆せるのだという
だからこそ ヨンチョルは 長官らの謁見を拒めと命じたのだ
丞相の権力を恐れる長官たちを抱き込み 全員を納得させるのは難しい
しかしそれしか この事態を収拾する道はないのだ
詔書を手に狂喜するヨンチョル
その宴席の場に ワン・ユの姿があった
丞相の姪の婿となり 今は丞相一族となったのである
宴が終わり タンギセは スンニャンの件を知ってるか?と切り出す
側室気取りで すっかり人が変わったと 冷たく答えるワン・ユ
貢女上りが権力を得たらそうなると 吐き捨てるように言うタンギセだった
殺されたフクスと共に 大都まで連行されたヨンビスは
チョクホに監視され 暗号で書かれた帳簿の読み方を白状しろと迫られる
ヨンビスは 暗号の解読に条件を出す
どうせ解放されても メバクに として売り飛ばされる運命
だから この場で殺してほしいと…!
しかしワン・ユは それを受け入れなかった
殺しはしないし にもさせないという
ヨンビスは観念し 帳簿の暗号を解いてみせる
暗号は 秦の国で用いられた数字なのだという
「千字文」を10個ずつ100行にして書く
※「千字文」:四言古詩250句の千文字からなる手習い書
数字の暗号は2つでひとつの文字を示すのだという
つまり 行と列から文字を特定する暗号なのだと
冷宮では
寒さに震え 空腹で倒れそうになっても
その性根が直らないタナシルリの姿があった
唯一手に入った食事さえ 気に入らぬと投げ捨ててしまう
そうしていながら 夜になると泣きじゃくるタナシルリ
寒さや空腹は我慢出来ても 我が子に会えぬ寂しさがつらいという
マハ皇子は実の子ではないのに… と言おうとして 口をつぐむソ尚宮
今やタナシルリの中では マハは実の子になっているようだ
得体の知れぬ捨て子を拾い それを知る尼僧たちを皆殺しにした
そういう事実を無かったことにして ただ母性だけが心を占めていた
才人キ・ヤンは すべての長官たちを抱き込む策を練っていた
側室の父である4人の長官は それぞれの長官たちと懇意にしており
皇太后が 晩餐会を催して長官たちを招いては?と提案するタファン
密会という手段で会うよりは 最も危険がない方法と言える
この情報を察知したヨンチョルは 同じ夜に宴席を設けるという
長官らが 皇太后と丞相のどちらを選ぶのか… 実に見ものであると…!
宴の夜 長官たちが選んだ行き先は 大明殿ではなく丞相の屋敷であった
娘を側室として差し出している4人の長官たちさえ… である
長官たちは皆 丞相に借金があった
譲位の際 この借金をすべて帳消しにするという条件に目が眩んだのだ
ペガンの他には誰ひとり参加しない宴席で 皇帝タファンは絶望する
そんなタファンを見つめ こんなことは小敗でしかないというヤン
『私たちが挑む敵は こんなにも強大です
それでも挑み続ける私の思いが 分かりますか?
陛下を信じているからです 小敗に絶望などしないでください
ここに 陛下を信じる臣下がいるではありませんか
どうか私のためにも 諦めないでください』
そうであったと… 心からそうであったと思うタファン
ヤンがそばにいれば ただそれだけでと 落ち着きを取り戻すのだった
ワン・ユは あらためて丞相の財力の凄さを思い知っていた
メバクさえ潰せば… というシヌ
そこへ チョクホが 解読された帳簿を持ち飛び込んでくる!!!
帳簿を開いてみると それは いわゆる商売上の“帳簿”ではなく
各行省に派遣された メバクの間者の名前であった…!
ワン・ユは この名簿を タルタルに託す
譲位を覆せる唯一の証拠として 皇帝側に渡したのである
深夜の大明殿に長官らを呼び これを説得するのは皇帝の役目であった…!