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武士ペク・ドンス 第10話
沙彌尼ユ・ジソンの背中に彫られた「北伐の計」は
絵師キム・ホンドによって 3枚の絵に描き分けられた
1枚目の絵には平安道(ピョンアンド)から北京へ最短で行ける行路図
人・荷車・馬車の配置で道の広さを表現し 大軍が通れる道かを示している
2枚目の絵には 戦闘するうえで重要な 脱出路・監視路などの基点を示し
さらに3枚目の絵では 辺境7城及び12関門の秘密行路が示されていた…!
熢燧台では
二度と宮廷に戻れないようだと知り 落ち込むドンス
あの恋しい沙彌尼に 二度と会えなくなるのかと…
ソ・ユデは そんなドンスに 恋情が幼過ぎるから苦しいのだという
『武人になることも理屈は同じだ
剣を振り回し ただ斬り殺すことだけを考える者は 真の武人になれない
人を救う剣を持つ者こそが 真の武人になれる』
初めてまともなことを口走るユデを チョリプがからかう
それでもユデは 目に涙を浮かべて話を続けた
その心に 熱き思いを抱く者でなければ 真の武人にはなれないと…
チャンミの酒幕(チュマク)に
何かに理由をつけ 何度もジンジュが顔を出していた
今夜は 身寄りのない子らを泊めてくれと チャンミに泣きつく
ファン・ジンギは 何度来たところで ここにドンスは来ないという
ドンスが 熢燧台に配属されたと聞かされ 戸惑いを隠せないジンジュだった
そんなジンジュを見つめ 地(カオク)に似ているというグァンテク
もう20年も過去のことなのに まだ忘れられないのかと聞くジンギ
『まったく兄貴は… 女心が分かってない!
こうして戻ってるのに 一度も会いに来ない女だぞ』
一方 天(チョン)に斬られ一命を取り留めた人(イン)テウンは
兵曹判書(ピョンジョパンソ)ホン・デジュの屋敷に身を寄せていた
※兵曹判書(ピョンジョパンソ):軍事を司る官庁の長官
デジュが なぜテウンを助けようと思ったのか…
いずれにしても まだ人(テウン)の命運は尽きなかった
キム・グァンテクは 黒紗蝋論(フクサチョロン)の砦に単身乗り込み
地(カオク)に会いたいと 談判する
※黒紗蝋論(フクサチョロン):清の殺人集団
全てを捨て 一緒に旅立とうと 再び共に生きようというグァンテク
拒絶する地(カオク)に 即答はしなくていいと告げる
剣仙(コムソン)と呼ばれたほどの男が 地位や名声より
栄華を極めるよりも ひとりの女と生きる道を選んだのだ
※剣仙(コムソン):朝鮮一の武士の称号
叶わぬと知りながらも 愛する女を選ぶ盟友に 天(チョン)は言葉もない
ただ酒を酌み交わし そんな盟友を背中で見送るのだった
チャンミの酒幕(チュマク)では
早朝から大量の料理を作り せっせと荷造りするチャンミ
ミソを叩き起こして手伝わせ ジンジュに 早く宿代を払ってと催促する
子供たちと泊まったジンジュが目覚めると お金と子供たちが消えていた
親切で引き取ろうとしたのに 全財産を持って行かれたのだ…!
チャンミは 宿代が払えないジンジュにも手伝わせ 熢燧台へ向かう
思いがけなくご馳走にありついた3人は 夢中で食べ始めた
ジンジュは 荷物運びばかりか 食後の皿洗いまでさせられる
そんなジンジュに 何ともそっけないドンス
いつまで経っても昔を思い出さないドンスに ジンジュは苛立つ!
東宮殿に クヒャンという芸妓が呼ばれた
清国で医術を学んだというクヒャンに 入れ墨を消せるかと問う世子
クヒャンは ジソンの入れ墨を確認し3回の施術で消えると答えた
しかしそれには 耐え難い苦痛が伴うと…!
夕方が迫る熢燧台では
ご馳走に満足した3人が チャンミたちを見送っている
空になった荷物を持ち 仏頂面で帰りを急ぐジンジュ
すると…
『おーい ファン・ジンジュ! 久しぶり!!!』
ドンスは 言わないだけで ちゃんとジンジュに気づいていた
気づいているからこそ 昔のように遠慮なく 乱暴に接していたのだ
途端に元気を取り戻し 夢中で手を振るジンジュは 嬉しくて笑いが止まらない
女3人を見送った後 急に膝が痛いと言い出すユデ
快晴の空なのに 雨が近いと言われ とても信じられないドンス
しかしその夜 雨は降った…
一番に起きたチョリプは 辺りを見回し顔面蒼白になる…!
ホン・デジュの屋敷では
息子サヘが 直起人の3人について報告している
イム・スウンが連れて来た3人は 後から来て物凄く生意気だったと!
※直起人:初試を免罪された士大夫の子女
デジュは スウンが連れて来たなら おそらく世子が関与していると考える
そして 3人が配属された熢燧台は何処かが気になる
第一炉熢燧台と聞き そういうことか…! と高笑いするデジュ
そしてイム・スウンの執務室に行き 今すぐ第一炉熢燧台を試験しろという
“試験”とは 架空の非常事態を設定して合図し
熢燧台が的確に狼煙を上げられるか その機能を試すのだ
ホン・デジュは 3人の直起人のうち “ペク・ドンス”という名が気にかかる
そして 部下から20歳と聞き ますます気になり考え込む…!
ハッとして 宮中の世子を捜すデジュ!
思悼(サド)世子は 修練場で弓を射ている
将軍ソ・ユデが 突然歩兵に降格され 第一炉熢燧台へ配属された
そこへ 直起人の若者が3人配属された
この事実をご存知かと デジュは 思悼(サド)世子に問う
その熢燧台に対し 試験を実行するが 万が一任務を果たせぬ時は
ユデと直起人の若者3人は 即刻斬首となることをご存知かと…
『宮廷には いつまで熢火が届けばよいのだ?』
『開城(ケソン)からですので… 半日程度はかかるかと』
熢燧台のドンスは チョリプに急かされて薪を探していた
毎日何もすることがない日々で 試験の重大さも分かっていないドンスは
まるで遠足気分に浸りながら 楽しそうに薪を探す
台風一過の山の木は使い物にならず 麓の村で薪を分けてもらった
そして帰り道 狼煙が上がったのを目撃し 青ざめるドンス!
いくらドンスでも どんな事態かは理解できる
慌てて戻る途中に雨が降り出し またしても薪が濡れてしまった!
もう絶望的だと 頭を抱えて半ベソになるチョリプ…!
するとソ・ユデが 狼煙が上げられないなら走ればいいだけのことだと言う
開城(ケソン)で上がった試験の狼煙は 各熢燧台を中継し宮廷に届く
普段は暇でも この狼煙を中継出来なければ 大逆罪で斬首になるのだ
しかし 次の熢燧台までは30里以上!
狼煙を確認してから すでに時が過ぎ ただでさえ遅れている
ならば宮廷熢燧台に行くまで!というドンスに チョリプが激怒する!
都まで 山道を80里走るなんてもっと無理だと!!!
『だったら何もせずに死ぬのか?!』
絶望して文句ばかり言うチョリプに 今度はドンスが怒り出す!
要するに 日没まで宮廷に到着すればいいいんだと
ドンスの言葉に ウンが苦笑する
楽天的というべきか… その真っ直ぐな考えは昔から変わらない
話し合っている時間なんてない!
思いついたら即行動のドンスが 行くぞ!!!と立ち上がった…!
ウンは チョリプに ここにいろと言い 面白そうに後を追う
ドンスはひたすら山道を走り ウンも黙って後をついて行く
すると目の前に突然崖が…!!!
ドンスは チラっとウンを振り返り あっという間に視界から消えた!
回り道をするとか 険しい崖を下り谷に降りて…などとは考えず
勢いよく谷に向かって飛び込んだのだ!
水面から突き出た岩の すぐ横に落下したドンス
命を懸けたという意識もなく 先に行ってるぞ!と叫び泳ぎ出す
「狼煙を上げ損ねたら死ぬ… 死ぬんだ!」
ユデの言葉が頭をよぎる
ドンスも まったく不安がないわけではない
でも今は走るしかないのだ
この世に不可能はないと 自分に言い聞かせ ひたすら走るドンスだった!
ようやく山を下り 町中に入ったドンスは とうとう力尽きて倒れ込む
すると目の前に ウンが1頭の馬を連れて立っている…!
考えなしに谷底へ飛び込み 突き進んだドンス
しかしウンは 地形を読んで先回りし 早馬兵から馬を奪ったのだ!
『馬を盗んだって死罪じゃない でも狼煙が遅れたら斬首だ』
『お前… だんだん俺に似てきてないか?』
『だからって お前よりは優秀だ 行こう!』
チャンミの酒幕(チュマク)では
グァンテクとフクサモが ファン・ジンギを待っていた
3人はここで待ち合わせていたが 約束の時間に遅れて現れたジンギ
ジンギは 山越えの途中で狼煙が上がるのを見た
そして ウンが早馬兵から馬を奪うところに遭遇したのだ
矢を構える兵士を止めなければ ウンは間違いなく射殺されていただろう
あれはきっと 試験の狼煙だというジンギに 2人は黙り込む
まさかとは思うが台風の後だ ドンスたちは任務を果たせたのか…
ウンが早馬を奪ったのなら 間違いなく何かが起きたのだ…!
夕陽が迫る頃になり ドンスとウンは ようやく宮廷熢燧台に到着した
しかし 門番に冷たく追い返されてしまう…!
同じ時 東宮殿の一室では
沙彌尼ユ・ジソンが 芸妓クヒャンの前で衣を脱いでいた
世子から 消してほしいと頼まれた入れ墨は 目を見張るほど背中一面に…
両班(ヤンバン)の家に生まれながら 少女の頃に彫られたこの入れ墨により
まるでが烙印されるような 惨めさを味わってきたジソンであった
※両班(ヤンバン):朝鮮時代の上流階級
見知らぬ者たちが この背中の入れ墨を捜し 追いかけて来るのだと…
なぜ自分にそんな話をするのか… クヒャンは 隠し持つ短剣を懐へ戻す
一方 ドンスとウンは 門番に 馬をやるからと 必死に交渉していた
門番は “武科初試生が来ても絶対に門を開けるな”と命じられている
しかし 賄賂の馬に目が眩む門番
2人はとうとう見張り台の上へ…!
この見張り台から 4つの熢燧台に火矢を撃つ
4本の狼煙が上がれば 試験は合格となるのだ
最初の火矢が命中し まずは一つ目の狼煙が上がった
修練場から狼煙を確認した思悼(サド)世子は 安堵の表情になる
『1つ目が上がっただけです まだ分かりません!』
『兵判は 不合格を願っているのか?』
『いえ まさかそんな…』
3つ目の狼煙が上がったところで また雨が降り出した
残りの矢も少なく 次第に強くなる雨脚に 失敗するほど望みは薄れていく
最後の矢を射ることが出来ず ドンスは ウンに弓を渡す
ドンスと見つめ合い 覚悟を決め 渾身の矢を放つウン…!
一瞬は失敗したように思われたものの 4つ目の狼煙が上がる!!!
第一炉熢燧台では ユデとチョリプが 放心して見ていた
そして修練場の思悼(サド)世子は デジュを一瞥して去って行く
東宮殿では
クヒャンが 苦痛のあまり意識を失っている沙彌尼を見つめていた
その体ごと生きたまま… それが無理なら 殺して皮を剥いででも
沙彌尼を連れ帰れと ホン・デジュから命じられている
の烙印のようだと この沙彌尼は言った
遠い昔 自分の背中に烙印された“奴”の入れ墨を消してくれたのは
黒紗蝋論(フクサチョロン)の天(チョン)である
クヒャンは もとから妓女だったわけではない
謀反の罪を着せられた両班(ヤンバン)の娘であった
しかし の烙印を消せば 手伝った者も斬首される
『謀反に原則などはない 捉え方次第で謀反だ』
なぜ?と問うクヒャンに 悔しくないのか?と…
天(チョン)の言葉を思い出し クヒャンは 短剣を鞘に納めた
無事 入れ墨を消したジソンは しばらく東宮殿で静養することになった
不自由はないかと世子に気遣われ 外の空気が吸いたいというジソン
東宮殿から出ないと約束し 月夜の庭を歩く
同じ時 ドンスとウンは
イム・スウンの執務室で これまでの経緯を緊張しながら報告する
何の理由であれ どんな方法であれ 任務を遂行するのが軍人だと
スウンは よくやったと褒めてくれた
そして 任務を遂行できず 馬まで奪われた早馬の兵士は叱責を受ける
どんな理由で ウンの前に早馬が現れたのか… 任務とは何だったのか
スウンは その兵士をそれ以上は咎めず ただ 口外するなとだけ命じた
二度と戻れないと思っていた宮廷に こんな形で戻って来るとは…
ドンスは 緊張感から解放され 宮廷内を散策する
すると向こうから 恋焦がれた沙彌尼が…!
ホン・デジュの屋敷
クヒャンは 沙彌尼自身ではなく 3つの絵を持ち帰った
デジュはそれに満足し 今夜にも“大会合”を開くと言い放つ…!
『ここで断言してもいい 世子の命は… もうこの手の中にある!』
“世子に王位を譲位せよ”
清国皇帝よりの勅書は ホン・デジュにより処分された
しかし 勅書の存在が事実である限り 世子を排除するしかない
もし世子が王位を継いだら この老論(ノロン)派で生き残れる者はいないのだ
老論(ノロン)派の崩壊は 朝鮮の崩壊だというデジュ
『王妃様 いよいよこの時が参りました』
『天命には逆らえぬ 肝に命じよ 失敗は決して許さない…!』