史実とは異なる創作の部分があります
史実とは異なる創作の部分があります
“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています
1話~11話はこちらで公開しています
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
第39話 秘密資金
『私に協力を求めるなら…
キ・ヤン様も 高麗(コリョ)のためになることをなさらねば』
ワン・ユの求めに応えるように キ・ヤンは高麗(コリョ)王への返書を渡す
そして 必ずやヨンチョルの秘密資金を探し出し 高みに昇り詰めると誓う
過去の想いが再燃したのではない
今の状況で我が子を守るには ワン・ユと手を組むしか道はないのだ
一方 皇帝タファンは 何としてもヤンを皇后の座に… と気を揉んでいた
丞相ペガンの姪を娶るつもりなど さらさら無いのだと訴えるタファン
キ・ヤンはそれをたしなめ 今はペガン丞相と対立してはならないと諭す
『あの者の働きがあってこそ ヨンチョルを倒せたのは事実』
『では ペガンの姪を娶れと?!』
『正攻法で勝たねばなりません』
『しかし… ペガンは皇太后と組んだのだぞ』
『一日も早く私を貴妃に そして興徳殿に住まわせてください
アユを守るためには 皇后にも負けない地位に就かねば』
同じ時
キ・ヤンに協力するというワン・ユの報告に ヨンビスが猛反対していた
皇帝の子を産んだヤンが 我が子を守るために何をするか分からないと…!
『どうしてもあの女と組むなら こっちは手を切らせてもらう!!!』
激怒して出ていくヨンビスに 側近たちが何とか取り成そうとするが
元と交易を続けるためにも 皇室との繋がりは必要だというワン・ユ
パン・シヌは それならば丞相ペガンの姪が皇后の座に… と呟く
『アユルシリダラ皇子が皇太子になるのだ 皇后に媚びる必要もない』
『それじゃあ マハ皇子はどうなるので?』
チョンバギの失言に シヌがギロリと睨みつける
マハ皇子が ヤンと自分との子であることを ワン・ユは知る由もない
庭園を歩くワン・ユの前に マハ皇子が現れる
大はしゃぎの皇子を 軽々と抱き上げるワン・ユ
皇子様を抱くなんて… と眉をひそめるシヌ
その様子を見た皇太后が マハの懐きように驚く
(それはそうだ…)と心の中で頷くシヌだった
紛れもなく マハ皇子はワン・ユの息子なのだから… と
一方 雑用係に格下げされたソ尚宮とヨン尚宮は
イ・ホンダンから厳しい扱いを受け 屈辱に耐えていた
(キ・ヤンが貴妃になれば ホンダンもイ尚宮に?!)
(それでも耐えるのだ 何としても生き延びねば…!
こうしてじっと耐えていれば 必ずや好機が巡ってくる)
たとえキ・ヤンが皇后になれなくとも 皇帝からの寵愛を受け
息子アユルシリダラもまた 一心に愛情を受け育っている
そのアユ皇子の食事に 何者かが毒を盛った…!
粥を作った女官らは 鞭で打たれ尋問された
駆けつけたタファンは怒りをあらわにし 生ぬるい!と叫ぶ
地下牢で拷問せよとの皇命に キ・ヤンが待ったをかける
どう考えても 女官ごときが企てられる悪事ではない
ヤンは ソ尚宮とヨン尚宮を捕えさせた
『そういえば… タナシルリもよく毒を操っていたな』
怯える2人を容赦なく鞭打つキ・ヤン!
そこへ皇太后が現れ 2人を解放し傷の手当てをと命じた
『陛下の婚礼も近いというのに 騒ぎを起こすでない!』
『息子に毒を盛られたのです 黙ってはいられません!』
『騒ぎを起こさなくては解決出来ない?まずは皇室の平和を考えよ』
丞相ペガンの姪 バヤンフトの皇后教育は順調だった
周囲の思惑や争いごとを除けば バヤンフトは実に皇后に相応しかった
もちろん 皇后候補はバヤンフトだけではない
しかし皇太后は 何としてもペガンの姪を皇后にと推すのだった
『皇后が決まれば キ・ヤンを貴妃にし 興徳殿に住まわせます』
『興徳殿に住むのは 第2皇后ですよ 貴妃になど…』
『キ・ヤンは貴妃になりますが 待遇は皇后と同等に!』
皇太后は キ・ヤンをギロリと睨みつけた
ヤンは視線を外し 無表情のまま
『そなた 皇帝を焚きつけたな? 興徳殿をくれと?』
『私にはその資格がありますし 権利もあります』
皇太后が激高する前に タファンが口を挟む
『この者は多くの犠牲を払って尽くしてくれた
何もせぬ者が皇后になるのに この者に資格がないとは言わせません
そもそも皇太后様の許しは必要ない 私は皇帝なのですから!』
キ・ヤンは 宦官ブルファに命じ興徳殿の警備を強化させる
また イ・ホンダンを昇格させイ尚宮に
また女官は すべて高麗(コリョ)出身者にと命じていく
『それと… 興徳殿を改修し“隠し部屋”を作ってほしい』
『“隠し部屋”を どうなさるので?』
『ヨンチョルの秘密資金を隠さねばならない』
アユ皇子に毒を盛った犯人は まだ見つかっていなかった
しかしキ・ヤンは 犯人捜しよりもまず 息子を守る対策を急がせた
一方皇太后は ソ尚宮とヨン尚宮を 新たな皇后のお付きにと命じた
ペガンと結託したとはいえ 常に動向を探る必要があった
いよいよソ尚宮の言う“好機”が訪れたのである!
『皇太后様のためでしたら どんなことでも致します!ご命令を!!』
『まずは… 新たな皇后の信頼を得なさい』
『信頼… ですか?』
『私の手先だなどと 断じて知られぬように!』
タナシルリに仕えてきた2人である その言葉の意味は百も承知
悪事にかけては 最高の手足となることを 皇太后は熟知していた
さらに皇太后は チャン・スニョンに命じていく
“生母はキ・ヤンに殺された”
そうマハ皇子に教え込めと…!
タファンが皇帝として何の力もなく 丞相ヨンチョルに支配されていた頃
皇太后は キ・ヤンを救世主のように頼り崇めていた
しかし現実に 高麗(コリョ)出身のキ・ヤンが皇后になるとなれば話は違う
丞相ペガンもまた同じであった
養女にしてまでキ・ヤンを側室にし 自らも丞相となったが
高麗(コリョ)の血を受け入れることは どうしても出来なかった
『アユ皇子 母君は あのキ・ヤンに殺されました!
高麗(コリョ)出身のあの者が 無残に母君を殺したのですよ』
チャン・スニョンは 皇太后の言葉に違和感を覚える
死の直前まで悔い改めることなく 恨み言を遺して死んだタナシルリ
期せずしてその恨みを 皇太后が受け継ぐことになるとは…!
バヤンフトが 皇后として皆の前に現れた時 イ尚宮が蒼褪める
皇后付きの尚宮として ソ尚宮とヨン尚宮が後に続いていたのだった!
タファンは 皇后の手を取り玉座へ導く
真っ直ぐに前を見つめるキ・ヤンの視界にも その光景が映る
バヤンフトが 皇后の座に就いたその日
キ・ヤンもまた 貴妃として興徳殿の主となった
入殿した貴妃キ・ヤンは 真っ先に“隠し部屋”を確認する
宦官ブルファは ワン・ユからの密書を渡す
密書には 錫の鉱山へ向かうとある
ヨンチョルの秘密資金を狙っていることが露見すれば 互いに破滅だと…!
丞相ペガンが 秘密資金の目録を手にしたと知り
貴妃キ・ヤンは その在りかを探せとブルファに命ずる
その夜
バヤンフトは タファンとの初夜を前に緊張していた
婚礼衣装を脱ごうとせず 姿勢を正したまま待ち続ける
皇帝タファンは 寝所で大酒を飲み酔いつぶれる寸前であった
そして 貴妃キ・ヤンのもとへ行くと言い出す
侍従コルタは 皇后との初夜の場に行くべきだと強く進言する…!
なぜこの国の皇帝が 好きな女のもとへ行けぬのかと喚き散らすタファン
『それが皇帝というものです陛下!!!』
ふいに現れた皇太后の一喝で タファンは我に返る
何でも思い通りに出来るのが皇帝ではないと叱りつける皇太后
大義名分を優先し 時には私心を曲げて耐え忍ぶのが皇帝であると…!
『皇太后様は 皇帝である私のことを少しも考えてはおらぬ!』
『そうお考えなら 貴妃キ・ヤンを追い出さねば…』
『皇太后様!!!』
『玄宗皇帝が国を傾けたのは 楊貴妃を愛するあまりのこと
陛下こそが キ・ヤンの立場を危うくしているのです!
あの者を思うのであれば 皇帝としての務めを果たすのです
皇后のもとへ! 今夜は皇后と初夜を過ごすのです!!!』
イ尚宮が 陛下は皇后のもとへ向かったと知らせる
貴妃キ・ヤンは アユ皇子を抱きながら 孤独に夜を過ごし
皇后バヤンフトは 酔いつぶれたタファンの寝顔を見つめ夜を明かした
やがて目覚めたタファンは バヤンフトに請われ髪飾りを外してやった
あのタナシルリを迎えた時と同じように 冷たく接するタファン
しかしバヤンフトは 寛容さを崩さず冷静さを失わない
『タナシルリは 実に激しい性格だった そなたは逆に優し過ぎる』
『どのような者なら お気に召しますか』
その問いには答えず タファンは侍従コルタを呼びつけ
朝食は 興徳殿で貴妃と一緒に摂ると告げた
『私なら大丈夫です 陛下が貴妃を大事になさるのでしたら
私も 貴妃を大事にいたしましょう 夫婦は一心同体ですもの』
どんな言葉も タファンの心を揺らすことは出来ない
しかし 興徳殿へ向かう途中 タファンは貴妃キ・ヤンとすれ違う
昨夜は酔いつぶれて… と言い訳するタファン
キ・ヤンは その手を冷たく振り払う!
自分だって一睡もしていない!と言い放ち 立ち去った
あまりの冷たい態度に その場の空気が凍りつく
侍従コルタは いくら貴妃とはいえ不遜過ぎると進言するが…
『聞いていなかったのか? ヤンは一睡もしておらぬのだ!』
貴妃キ・ヤンは 将軍タルタルの執務室に向かっていた
ヨンチョルの財産目録を調べているところだと 正直に話すタルタル
『叔父のことを… 恨んでおいででしょう』
『見捨てられた気分です 恨んでいないと言えば嘘になります』
キ・ヤンに 側室になるための教育をしたのはタルタルである
その意味では師弟関係にある2人 一定の距離を保ちつつ互いに正直だった
昨夜は 皇后が寂しく夜を過ごしたと話すキ・ヤン
タナシルリの時も そのせいで逆恨みされた経緯がある
『将軍から うまく取り成していただけませんか?
もう こういった争いごとに巻き込まれたくないのです』
それだけを伝えると キ・ヤンは去っていった
タルタルは アユ皇子が殺されかけたと その時初めて側近から聞き
まさか… と表情を曇らせた
皇后殿では
ソ尚宮が『あのキ・ヤンのせいで…』 と皇后を焚き付けている
しかし バヤンフトは タナシルリのようにうまく操れない
あまりに心が優し過ぎるせいで 邪悪な心を拒絶してしまうのか…
そこへ 将軍タルタルがやって来る
バヤンフトは 少女のような甘え声で『お兄様!』と駆け寄った
幼い時をペガンの屋敷で過ごした2人は 兄妹のように仲がいい
人払いし 皇后としてでなく しばし親しげに話したいと請うタルタル
バヤンフトは 『もちろんです!』と笑い瞳を輝かせた
『兄妹のように暮らしたから お前のことはよく知っている』
『ええお兄様 あの頃は本当に楽しくて…』
『二度と… あんな真似はするな』
バヤンフトの表情が凍りつく
兄と慕うタルタルを見上げる視線は鋭く 笑顔は一瞬で消え去った
『乳飲み子を毒殺だと? お前に人の心はあるのか?』
『……』
『お前は 幼い頃から誰より嫉妬深く 残忍な心を持っていた
飼っていた鳥さえ 鳴き声がうるさいと切り刻んでいた』
『今後は敬語を使うように!
皇后となった今 そんなお説教は聞きたくない!
ええ あの件は私の命令です ですが殺すつもりなら失敗などしない
ただ思い知らせただけ それだけですよ お兄様
皇后の私が 側室ごときに皇帝を奪われるなど有り得ない!』
『どうぞご自由になさればよい
しかし皇后様のせいで 我が一族に害が及べば ただでは済みません!』
(何を偉そうに…!)
バヤンフトは タルタルの背中をギロリと睨みつけた
邪悪さをあらわにしていたタナシルリは まだ素直だったのかもしれない
このバヤンフトという新たな皇后に比べれば…
同じ時
貴妃キ・ヤンは ヨンチョルの財産目録を手に入れていた
今夜のうちにすべて書き写し 元の場所へ戻すようにと命じていく
するとイ尚宮が 財産目録の1冊に挟まれていた紙切れを発見した
それは ヨンチョルの屋敷の見取り図と思われる
しかし今 その屋敷に住んでいるのは丞相ペガンであった
ペガンは 秘密資金についての情報を何一つ掴むことが出来ないでいた
もしもタンギセが先に見つけてしまったら… と焦るペガン
そこでタルタルが 1つの方法を提案する
『ヨンチョルと関係が深かった メバク商団に探りを入れるのです
頭に会えば 何かしらの情報を得られるでしょう』
しかし 商団の者でも頭に会った者はおらず その顔さえ知らない
2人は メバクの大都支部を率いる男に接触を試みるが…
その男に いち早く会っていたのは タンギセであった
ヨンビスは 会談を手引きする下っ端に扮し同席している
まさか事実上商団を率いる者が このヨンビスとも知らず
支部の長と会談するタンギセ
『回りくどい話はしない 私は父上の秘密資金が欲しいのだ』
『昔お父上は 鉱山の村人を皆殺しにしました』
つまりは そこに秘密資金を隠したから口封じをしたということか…
長は否定も肯定もせず その事実だけを伝えた
タンギセの一行が退室した後 ヨンビスは長と話し合う
ヨム・ビョンスが立ち聞きしていることを承知の上で
あくまでも手下として 今後の動きについて指示を仰ぐ…!
ビョンスは タンギセの駒になって従う気はさらさら無かった
機を見て秘密資金を横取りするという企みに チョチャムは仰天する!
『タンギセは 秘密資金で傭兵を育て 謀反を起こす気だろう
奴に従えば いずれ反乱軍として捕らえられるだけだ
俺はそんな愚か者じゃないぞ 金塊でこの世の望みをすべて叶える!』
一方 ワン・ユは
鉱山に到着しマクセンから報告を受ける
タンギセとヨム・ビョンスが 突然に姿を消したのだという
しかし 金塊を発見したのではないと言い切るマクセン
金塊を運ぶとなれば 数人で事を進められるはずがないと…!
同じ時 貴妃キ・ヤンは
興徳殿の隠し部屋に引きこもり 秘密資金の情報を探っていた
皇后バヤンフトと 一夜を過ごしたタファンの行動に傷つき
今は独りになりたいと告げ 皇帝の呼び出しにも応じず距離を置いている
なぜ皇帝に 秘密資金のことを話さないのか… と聞く宦官ブルファ
『陛下は 秘密資金を国庫に組み入れようとするはず
そうなれば 私は自分を守るべき力を得られない』
そこへ ワン・ユから 連覚寺で会いたいとの連絡が入る
将軍タルタルは 秘密資金の行方について 必死に考えを巡らせる
ヨンチョルであれば どこへどう隠すのか… その心理を探っていく
容易に出し入れが可能な場所
誰にも怪しまれず隠せる場所…
その時タルタルは 財産目録の並びが違っていることに気づく
この宮中で 秘密資金を狙う者がいるようだと
その夜
貴妃キ・ヤンは 宦官ブルファを伴い 宮外へ出向く
その知らせを受けたタンギセが 私兵を出動させる…!
亡き父ヨンチョル そして弟タプジャヘ 妹タナシルリ!
一族を殺された恨みを晴らすべく キ・ヤンを包囲する!!
キ・ヤンもまた タンギセに対し激しい憎悪をあらわにする
あの日 我が母を無残に殺された恨みを 今こそ晴らそうと!!!