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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第43話 廃位の上奏

2020-08-24 09:00:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ
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1話~11話はこちらで公開しています
 
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
 
 第42話 刻まれた溝 

皇帝タファンは 3,000の兵で2万の敵と戦った将軍を斬り殺した
その刃は他の者たちにも向けられ 誰もがその狂気に身震いする
『ど…どうか助けてください!』
嘆願の声が タファンの耳には違って聞こえた
(ヨンチョルの操り人形だった者め!)
(お飾りの皇帝!)
(能無し!)

丞相ペガンは さらなる凶行を防ごうと タファンの前に立ちはだかる
たとえその首に剣を突きつけられようとも 決して動こうとしない
今にも剣が振り下ろされようとしたその時!
間に割って入ったのはキ・ヤンであった!!

ヤンに抱き締められ ようやく正気を取り戻すタファン
ワン・ユからの密書は定期的に届き 常にそれを黙認してきたタファンである
狂おしいまでのヤンへの愛情と憎しみ
それでもなお タファンが正気を保てているのもまた ヤンの存在があればこそなのだ

『陛下 どうか戦をおやめください 撤兵するのです』
『そうなれば私は敗者となってしまう 笑い者になりたくはない…!』
『ならばお酒を断ってください』
『……約束しよう』

この様子を 息を殺して侍従コルタが見守っている

『陛下の 私を見る目が変わりました』
『……』
『何かあったのなら 私にお話しください』
『いや いいのだ …私は… そなたさえいてくれたら』

タンギセとヨム・ビョンスは

もう5年間も偽の密書を送り付けているのに 何の変化もないと焦っている
なぜキ・ヤンは側室の座におさまり続けているのか…!
なぜ裏切られてもなお タファンはヤンを寵愛するのか…!!

タンギセは イル・ハン国の間者から届いた報告書に目を通す
高麗(コリョ)が イル・ハン国に硫黄と硝石を横流ししているというのだ

※イル・ハン国:1260年に成立したイラン高原のモンゴル系国家  現在のイラン周辺

ビョンスは ヨン尚宮と連絡を取り合っているが
次に会う時は ソ尚宮も同行させよとタンギセの命を受ける

『この報告書を皇太后に渡す』
『皇太后が動きますか?』
『マハを育ててくれているのだ これくらいの協力はせねば
あれは野心の強い女だ 今でも実権を握りたいだろうさ』
『メバクの頭には?』
『知らせろ』

マハ皇子には 一切の教育を禁じるとの皇命が下っている
しかし皇太后は 密かに文字を教え皇帝になるべく教育してきた
一日も早く武芸も習いたいというマハ皇子だが 表立っては皇帝に気づかれてしまう
皇太后と 同席する皇后バヤンフトは いつか必ず…とマハを励ますのだった

一方 キ・ヤンの息子アユルシリダラは

付きっ切りでヤンが教育しているが 遊びたい盛りの腕白さで勉強に身が入らない
ヤンもまた そんなアユ皇子を可愛がり 根気強く見守っている
皇帝に疎まれて育ったマハに比べ たっぷりの愛情を受けて育ったアユ皇子
その性格にひねくれたところはなく いかにも愛らしい幼子であった

イ尚宮が 陛下の元へ挨拶に行く時間だと アユ皇子を迎えに来た
嬉々として席を立ち イ尚宮と手をつなぐアユ
父である皇帝にも もちろん会いたいが アユのお目当てはマハだというヤン

『マハ皇子を 警戒すべきでは?』

成長するにつれ性格が歪み始めたマハ皇子
宦官ブルファは アユ皇子に災いが降りかからないかと心配でならなかった

2人の皇子が並んで挨拶すると タファンはアユだけを傍に呼ぶ
マハとは目も合わせず そこにいないかのように無視した
習い始めた「千字文」を朗読させると 途中で分からなくなるアユ

『兄上なら全部言えます!』

アユの言葉に みるみる怒りがこみ上げるタファン
マハは 蒼褪めて下を向く
孫の窮地を救うように『私が教えました』と口を挟む皇太后

『なぜですか! なぜ文字も武芸も習ってはいけないのですか!!!』
『理由を聞くのも禁ずる!』
『なぜですか!!!』
『無礼者!!! マハの挨拶は受けぬ! 下がれ!!!』

涙を流し うなだれて退室するマハ皇子
アユ皇子は 後を追いかけるようにタファンの膝から降りた

2人の皇子が退室し 声を荒げる皇太后
その昔 丞相ヨンチョルは 幼いタファンに文字も武芸も禁じた
成長するにつれ 酒と女をあてがい ただ生きることだけを許していた

『陛下は ヨンチョルと同じことをマハになさるのですか!』

『同じこと? それは皇太后様の方でしょう なぜマハを可愛がるのです?
マハを皇帝にして また実権を握りたいのでは?!
タナシルリを処刑しておきながら なぜ今になってマハを?』

『それは陛下の嫡男だからではありませんか!』

『もう結構! たくさんです!
“愚か者として生きよ”と マハに言い聞かせては? そうやって育ててください
それでこそマハは 生き続けられる…!』

退室したマハ皇子は 貴妃キ・ヤンに出くわし いつになく粗暴に振舞う
あまりな態度に ヤンは 貴妃として毅然とした口調でたしなめるが…
この世で最も憎い者を見る目つきで睨み返し 立ち去るマハ!
慌ててマハを追って来た皇太后は キ・ヤンの姿を忌々しく凝視する…!

皇后バヤンフトが 2人の対峙を冷たい視線で見つめていた
次期皇帝の座を争い 皇太后かキ・ヤンのどちらかが消える
自分が出るのはそれからでも遅くはないと ほくそ笑むのであった

ビョンスの案内で タンギセとソ尚宮が再会した
ソ尚宮は 陛下に疎まれながら育つマハ皇子の窮状を 涙ながらに報告する

『この伯父が生きていると 今こそマハに伝えるのだ!』
『承知いたしました!』
『この文書を皇太后に “西域の商団から”と伝えよ!』

なぜこうも戦の敗退が続くのか… イル・ハン国の火薬は尽きることがなく
それが劣勢に繋がっていると 丞相ペガンは考えていた
その火薬を手配している者こそワン・ユであると 皇太后が報告書を渡す
ワン・ユを糾弾し廃位に持ち込めば 民の怒りの矛先は高麗(コリョ)に向くと…!

それが真実でも証拠が無ければ… と躊躇するペガン

『高麗(コリョ)の協力者に偽の帳簿を作らせなさい』
『偽物とは…』
『悪事は事実なのですから 偽物で糾弾出来るならそれでいいのです!』
『分かりました 廃位の上奏と偽の帳簿を揃え 陛下に報告しましょう』

まずはワン・ユを糾弾し 続いてキ・ヤンを捕えるつもりの皇太后
今の皇帝は キ・ヤンを寵愛し過ぎている
動かぬ証拠を突きつけた上で 一気にヤンを倒そうとほくそ笑むのだった

ワン・ユ廃位の上奏は高麗(コリョ)の協力者キム・スンジョによって書かれた
多量の軍事物資をイル・ハン国に売り捌き その利益で傭兵を養っている
いずれは元の支配下にある遼東を奪う気であると…!

実際は この取引で得た利益は 戦で苦しむ民のために使われている
元の各行省らがキ・ヤンの策に協力し実現した 画期的な救済策であった

いつもキ・ヤンを無視するマハ皇子が ヤンの行く手をふさいだ
間もなく高麗(コリョ)の国王が廃位されることを知っているかと問う

『今夜 廃位の上奏が届きます』
『なぜそのことを?』
『母上の敵のことですから 知っていて当然でしょう!』

マハに付き添う皇太后が ほくそ笑みながらヤンの横を通り過ぎる
これでキ・ヤンが動き ワン・ユに連絡するだろうと…!

その夜

親衛隊が上奏と偽の帳簿を奪い 宦官ブルファに渡す
事態は 皇太后が目論んだとおりに動いていた
あとはワン・ユの配下に接触したところで キ・ヤンを捕らえるだけである
その任は ペガンから将軍タルタルに命じられた

しかしヤンは 帳簿が偽物であることをすぐに見抜く
一刻も早くパン内官に連絡せねば…!
そこへ イ尚宮が駆けつけ何やら耳打ちする

一瞬の狼狽を見せるキ・ヤンだが 間もなく外出する
待機していたタルタルは 浮かぬ表情でヤンを尾行するのであった…!

『ヤンが裏切っただと?!』

皇太后とペガンの報告を受け にわかに信じがたいタファン
もちろん ワン・ユからの密書は承知しているが この5年間何事もなかった
自分さえ黙認すれば このまま平穏が続くと信じていたのだ

『絶対にあり得ぬ!』
『しかし 上奏と帳簿を奪ったのですぞ!』
『いつまでヤンを野放しに?』
『ワン・ユと結託するなど… 処刑にすべきです!』
『ならぬ!!!』

そこへ 貴妃キ・ヤンが謁見を求めているとの知らせが入る…!
奪った上奏と帳簿を手にして現れたヤン
皇太后とペガンは この予想外の行動に蒼褪める!

同じ時 宦官ブルファは トクマンに会っていた
イ尚宮を通じ 皇太后とペガンの企みを伝えてくれたのはトクマンだったのだ…!

『勘違いするでない! これは高麗(コリョ)出身者を守るためだ!』

キ・ヤンが処刑されれば 元に住む高麗(コリョ)出身の者たちは皆殺しになる
その者たちを助けたい一心で行動したまでのこと… 今度だけだと言い張るトクマン
もはや高麗(コリョ)の民でもなく 元の民にもなり切れない
そうして生きてきたトクマンの 切実な人生を思うブルファであった

将軍タルタルは 廃位を拒まれれば事態が複雑になると主張し
まずはワン・ユを 元に呼ぶべきだという
またペガンは 高麗(コリョ)に攻め入りたいが 負け戦続きでその余力もないと…!
そこでタファンは チャン・スニョンを使者に立てよと命じるのだった

散会した後 キ・ヤンは 帳簿が偽物である可能性もあるとタファンに告げる
ワン・ユに敵対する勢力は 廃位を心から望んでいると…!

『ワン・ユに会えばすべてが明白になる』
『まずは真偽を確認すべきでは? 一国の王を廃位するとなれば容易ではありません』
『ワン・ユと結託した者は皆殺しにする!たとえ臣下をすべて失うとしてもだ!』

ペガン以外 すべての長官が結託しているのだ
いかにタファンの意思が固くとも その事実はタファンを打ちのめすだろう

『そなたが疑われていることが心外なのだ 必ず結託した者を捜し出す!』

一刻の猶予もなかった
パン内官とヨンビスに事態を伝えねば…!

ヤンは焦り始めていた
もしワン・ユが元に連行されれば 決して廃位されるだけでは済まないだろう
しかし今動くのは危険だと ブルファが必死に止める

一方 マハ皇子は

自分も使者として高麗(コリョ)に行きたいという
まだ子供であるマハだが 母の敵をこの手で連行したいと強く申し出た
このマハの健気な姿に 思わず涙が滲む皇太后
しかし… マハは 密命により動いていたのだ…!
ワン・ユを 国境付近まで連行したところで 伯父タンギセと落ち合う手筈である!

輿に乗り 高麗(コリョ)へ向かうマハの行列
パン・シヌたちは その成長した姿を涙ながらに見守っていた
なぜ突然マハ皇子が高麗(コリョ)へ向かうのか…
感動しながらも シヌは胸騒ぎがしてならなかった
そして この場をマクセンとチョンバギに託し 一目散に行列の後を追うのだった!

一方 タンギセとヨム・ビョンスは メバクの頭に会いこの事態を報告していた
すでに承知しているという頭 その手を見たタンギセは 頭が女ではないかと疑う

『高貴な女といえば… 皇太后か皇后で?』
『なぜ我々に協力するのか探らねば どう利用できるのかも分からぬ』

その夜 キ・ヤンは 将軍タルタルに会う
タルタルはすでに ヤンが 秘密資金で民を救済していることを知っていた
軍部の者と 朝廷の者らを買収するためにも 秘密資金は使われたと

『私の命は タルタル様次第なのですね』
『まだ私の知らない行いを?』
『いいえ』
『今年も飢饉が続きます 救済米を増量すべきです』

足早に立ち去ろうとするタルタル
その背中に もう監視はおやめください と声をかけるヤン

『今後は 私を支援する道を! 助けてほしいのです』
『それが高麗(コリョ)王を救えという意味ならば… 従えません』
『秘密資金はすでに使い果たしました
元の民を救う資金は ワン・ユ殿が調達しています 助けてほしいのです…!』

高麗(コリョ)の都 開京(ケギョン)では

マハ皇子が 初めて元の国以外の都を眺めていた
一行より早く到着したパン・シヌは ワン・ユに謁見しマハ皇子の来訪を告げる
幼いながらも 出迎えようとしない高麗(コリョ)王に対し威厳を見せるマハ
王が出迎えるまでは いつまででも外で待つという

ほほう…? と笑みを浮かべ それではその意志の強さを試すというワン・ユ
そして日が暮れようとする時間になり ようやく出迎えに現れる

チャン・スニョンが 元の皇帝からの書簡を読み上げる
元に関係する臣下を排除し また貢女(コンニョ)や宦官を差し出すことを禁じ
ことごとく元の皇帝に逆らったことについて 弁明の機会を与えるという内容である

儀礼的な出迎えを終え ワン・ユは 親しみを込めたまなざしでマハを見る
しかしマハにとって それは不遜な目つきでしかない

『昔 まだ幼い皇子を よくこの腕に抱いたものです お忘れですか?』
『私は母上の敵を見に来たのだ!』

パン・シヌは あまりに強い口調の皇子に驚きを隠せない
知らないとはいえ 感動的な父と息子の再会なのだ マハはなぜこのような…

『確かに母上は非業な最期であった しかし複雑な事情があったのだ
結果だけに固執し 詳しく事情を調べないのは間違っている』

『元の皇子に説教するのか! 私が皇帝になったらただでは済まぬ!!!』

立ち去ろうとして ワン・ユはさすがに驚き マハを見つめる
これがあの星(ピョル)? シヌもチョンバギも凍りつく

『母上を殺した敵国を このままにはせぬ!』
『自分の感情さえ抑えられぬ者に 復讐などする資格はない
もっと深く学ばねば』

なぜマハはここまで歪んでしまったのか… 哀れでならないワン・ユであった

マハは ワン・ユの言った“複雑な事情”という言葉が気になっていた
母の死には 何か自分が知らされていない事情があるというのか…

一方 ヨンビスとマクセンは

チョンバギの知らせにより ワン・ユが元の皇帝に呼びつけられたと知る
廃位の詔書を突きつけられるとも知らず ワン・ユの一行は国境付近へ…!

マハ皇子は この野営の地で 伯父タンギセと涙の対面をする
今となっては タンギセこそただ1人の身内であり 唯一頼れる存在であった

『皇子様 今宵ようやく亡き母上の恨みを晴らすことが出来ます!』

寝込みを襲われたワン・ユは 抵抗むなしく捕らえられてしまう
ムソンとパン・シヌと共に縛り上げられ マハ皇子の前に引きずり出された
マハの隣には 行方不明となっていたタンギセが…!
そして ヨム・ビョンスとチョチャムの姿も…!

マハの命令で チャン・スニョンが廃位詔書を読み上げた
大逆罪人であるワン・ユは これより高麗(コリョ)の王ではなく罪人として扱う!
知らぬとはいえ マハは 実の父親を“大逆罪人”と呼んだ
シヌは あまりに残酷な運命のいたずらに凍りつく…!

王衣を剥ぎ取られ 鞭で打たれながら大都への道を連行されていくワン・ユ
母を殺した憎い敵なのに マハはなぜか心が痛むのだった
やがて大都に入ると 我が国を敗戦国にした高麗(コリョ)王に対し罵声が飛ぶ
群衆に紛れ 涙ながらに見守るヨンビスたちの姿があった…!

皇帝タファンは ひざまずくワン・ユに対し 万感の思いで剣を抜く!!!

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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第42話 刻まれた溝

2020-08-14 21:20:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ
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※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
 
 第42話 刻まれた溝 

慌てて蓋を閉じ 早く中へ!と目配せするタファン
キ・ヤンはそれを無視し 勢いよく蓋を開けた!
びっしりと詰まった金塊を見た皇太后は思わず息をのむ

宮中へ納品する独占権を得たヨンビスが 陛下へのお礼として運ぶものだとの説明に
誰が信じるか!と声を荒げる皇太后
そして有無を言わせず すべての箱を開けるよう命じていく!

しかし 先頭の箱以外はすべてが装飾品と絹織物 宝飾品などであった
万が一に備え 金塊は一日にひと箱だけ運ばせるという キ・ヤンの指示であった

皇帝タファンは 最近のキ・ヤンに不信感を抱き始めていた
目つきや表情 振舞いのすべてに違和感を感じる
不確かだが 何か自分との間に溝ができたと思えてならぬのだ

『あの者が遠くに感じてならぬ』

侍従コルタが あの方は昔も今も遠くにおられたという
これまで あまりに夢中で 陛下が気づかなかっただけだと…

『だが あの者のおかげで今の私がいる』

『ですが! 陛下を傷つけることも多くありました! あの方を信じ過ぎてはなりません!
ただ言いなりになるだけでは 真の意味でヤン様を得ることは出来ぬのです
強き皇帝として あの方を支配するべきです! たかが側室に侮られ…』

『何と申した! たかがだと?!!!』

『死罪覚悟で諫言いたします!』
『黙れ!! たとえ傷けられようと私はヤンを手放さぬ!
ヤンを侮辱する者は たとえそちでも許さぬ!!!』

貴妃キ・ヤンは 皇帝タファンにすべてを打ち明けようと考えていた
陛下に知られたらすべて征服戦争の資金になってしまうというブルファ

しかし まだ何も知らないタファンは それでも征服戦争をする意志を固める
国中で飢饉が続き疫病まで流行る状況下 戦する余力などないと反対が起こる

『丞相 臣下が皇帝の命令に従おうとしない どうすべきか?』
『それはまさに反逆! この場で逆賊の首を斬るべきでは?』

タファンは 丞相ペガンに命じ 命令書を読み上げさせた
偉大な先祖の栄華を取り戻すべく 自ら剣を取り軍馬を駆る
各行省は2万ずつ兵を出し 総じて20万の大軍を作れと!

雲南 嶺北 四川 陝西の各行省には 硫黄 硝石 鉄 銅 錫の供出を
他の行省らには兵糧を調達するよう 命令が下された

さらには高麗(コリョ)にも 1万の兵と軍馬2,000に加え兵糧の供出が求められた

『後の戦利品は民と皆に分け与える
なお 征服戦争の総指揮官の任は丞相ペガンに!
丞相の命令はすべて私の命令と同じである!』

これに反論する行省は一人もいなかった
反論すれば逆賊とみなされ この場で処刑すると言うのだから無理もない
丞相ヨンチョルのもとで傀儡でしかなかった皇帝は
新たな丞相と手を取り まさに独裁し力を鼓舞しようとしている

ヨンチョルに取って代わったかのようなペガンに タルタルが苦言を呈する
今は内政を整えるべき大事な時
軍事優先の現状を改め 科挙を復活し 文官を登用し…

すべて言い終わらぬうち ペガンの怒号が響く
一切の諫言を聞くつもりはなく かつて口にした志は微塵も感じられない
そこへ貴妃キ・ヤンが現れ タルタルは無言で退室した

『かつてその席は ヨンチョルのものでした 今のあなたはヨンチョルそのもの』

『ヨンチョルは私利私欲の限りを尽くした だが私には夢がある!
帝国に再び威厳を取り戻し 陛下に捧げるのだ!』

『ただ歴史に名を刻みたいのでは? そのために征服戦争を?
陛下を操り 無益な戦を始めるので?
それでも私欲はないと? ならば何をもって“私欲”というのですか?』

戦の過酷さが“高麗(コリョ)の女”ごときに理解できるものかと毒づくペガン
だから皇后になることに反対したのだと…!

『では 戦に賛成すれば私にも皇后の資格が?』
『あなた様は私にとって大事なお方だ しかし国のためなら“些細な感情”など捨てられる!
今後も変わらずあなた様をお守りできるよう “欲”はお捨てに…!』

一方 タンギセとヨム・ビョンスは メバクの頭の命令で蓮覚寺に潜伏していた
命令により動かされながらも メバクの頭の正体は未だ不明だ
タンギセが得た手掛かりによれば メバクの頭は“宮中にいる”というが…

宮中にいるなら 将軍だったタンギセとも面識があるはず
ビョンスとチョチャムは 心強い味方を得たと喜ぶ

厠に行こうとして ヨム・ビョンスは暗闇の向こうに不審な人影を見る
それは パン・シヌらを従えたワン・ユだった…!
物陰に隠れ様子を窺うと しばらくして出てきたのはキ・ヤンだった!

キ・ヤンは 皇帝の征服戦争の意思を止めることが出来ないという
止められないなら利用すべきだと答えるワン・ユ

『私は明朝高麗(コリョ)に戻りますが パン内官とチョンバギは残ります
ヨンビスやマクセンと共に 新たな商団を立ち上げるのです』

2人が密会していると知り いきり立つタンギセ
しかし今は 2人の前に出ることは出来ない
傷を負い追われる身では ただ斬り殺されるだけである
するとヨム・ビョンスが 自分に妙案があるとほくそ笑む…!

貴妃キ・ヤンはタファンに会い 戦を思いとどまるようにと進言する
飢饉と流行り病に苦しみ続けた民が 征服戦争をすると知れば怒り狂う
その恨みのすべては 皇帝に向けられるのだと諭すが…

タファンは “韓非子の逆鱗”を持ち出し反論する
“逆鱗”とは龍の下顎に 一枚だけ逆さに生える鱗のことである
普段は穏やかで背中にも乗れる龍だが 逆鱗に触れた途端怒り狂う

『そなたの復讐のため いくら私を利用しようが構わない
この背に乗り自由に羽ばたくがよい しかし触れてはならぬものもある』

きつく抱きしめたところで もはやキ・ヤンの心はつかめない
タファンはそれを知りつつ抱きしめずにはいられなかった
2人の間に授かった皇子アユルシリダラのためにも…

今の皇帝には何を言っても受け入れてもらえない
キ・ヤンは 各行省たちに会い 皇帝の命令を修正していく
すべてはタファンのためだと いつかは分かってもらえると信じて…

雲南行省は硫黄を 嶺北行省は硝石を それぞれ割り当てられている
いずれも火薬を作るために必要なものである

『各行省は 兵と兵糧以外の物は量を控えるように 不足分はある商団に任せます』

キ・ヤンの合図で ヨンビスとパン・シヌが入室する
この商団が 各行省から鉱物を買い入れ 軍に対し高値で売りさばくという
この差額が各行省の利益になることで 民も潤うことになる
戦を商売にするなど 前代未聞の考えに長官たちは目を丸くする

『事が知れたら 関わった者たちの首が飛びますぞ!』
『戦であれ何であれ 事を成すからには命を懸けねば
これは私欲を満たすためでなく 民を救う策だということを肝に銘じてください』

居室へ戻る途中 尚宮に抱かれたマハ皇子に遭遇する
まるで抱かれたいかのように むずかりながら両手を差し伸べるマハ皇子
キ・ヤンは冷たく一瞥しその場を離れた

居合わせたソ尚宮とヨン尚宮は その態度に憤慨し
マハ皇子を抱き上げて そのまま落としかねなかったと話す
これを聞いた皇后バヤンフトは ヨン尚宮だけを呼び出した

皇太后様にどんなご報告を?
突然切り出され ヨン尚宮は激しく動揺する
その一挙一動を見張り 皇太后様に報告しているのだろう!
たった今煎れたお茶に毒が入っていたことを証明され 観念するヨン尚宮
それは自分の仕業ではないと訴えたところでどうしようもない
もはや 皇后バヤンフトの言いなりになるしか生き残る道はないのだ

茶話会の場で 2人の皇子を愛おしそうに眺める皇后バヤンフト
皇后が 側室の産んだ子を羨むなどあってはならないこと
皇太后は 皇后が懐妊できるよう協力すべきだとキ・ヤンを嗜める

バヤンフトは 皇太后をなだめるように微笑みを浮かべ
今後は2人の皇子を仲良くさせるためにも 一緒にお世話がしたいと申し出る
それを穏やかに受け入れながら ならば自分もマハ皇子を…というキ・ヤン
皇后から密命を受けているヨン尚宮は 不安げに成り行きを見守っている

宦官ブルファが パン・シヌを案内してキ・ヤンの居室に入ると…
ヤンの膝の上には マハ皇子が抱かれている
シヌは 命令の内容にも上の空で 呆然とその光景を見つめている

ソ尚宮が マハ皇子を引き取りに来ると 離れがたいかのように泣き出すマハ
あの憎きタナシルリの産んだ子だというのに ヤンも離れがたく心が痛む
シヌは 涙ぐみながら母と子が引き裂かれる光景を見守っていた
このマハ皇子こそ ワン・ユとヤンとの間に授かった息子
出産して間もなく生き別れになった 星(ピョル)と名付けた我が子なのだ…!
いたたまれない思いで早々に退席するシヌ

宦官ブルファは マハ皇子が陛下の実子ではないことをいつ明かすのかと問う
偽りの懐妊を本当のことにするため タナシルリは捨て子を奪った
その事実を隠すため 寺ごと焼き払うという残忍な所業まで行っていたのだ…!
イ尚宮もまた 皇太子が決まる前に明かさなければ!と詰め寄る
しかしキ・ヤンは 下手に動けばアユ皇子にも害が及ぶと言い 今ではないという
それにしても… と小さくため息をつくヤン
なぜかアユ皇子を見ると 胸が締め付けられるように感じてならないヤンであった

その後 食事を終えたマハ皇子は皇太后の元へ戻るが 火がついたように泣き叫ぶ
トクマンが調べてみると マハ皇子の身体には無数の青アザが…!
皇太后は血相を変えキ・ヤンの元へ!!

ヤンは 皇帝タファンのもとでアユ皇子と共に過ごしていた
来訪も告げず現れた皇太后は 有無を言わさずヤンに殴りかかる!!!
あまりのことに声を荒げるタファン!

『皇太后である私に声を荒げるとは!それが皇帝のなさることですか!』
『皇帝の側室にいきなり殴りかかることが正しいと?!』

これまで 母も同然に可愛がってきたタファンが…と衝撃を受ける皇太后
たとえ実母であろうと 今はヤンの方が大切だと言い放つタファン!

『この女はマハを折檻したのですよ!』
『ヤンは決してそんなことはしません!』

皇子が傷つけられ 真っ先にヤンが疑われたことに タファンは納得しなかった
マハ皇子の世話係はもちろんのこと すれ違った者でさえ捕えよと命じる!
そしてキ・ヤンも黙ってはいない

『マハ皇子をここへお連れください! 必ず疑いを晴らして見せます!』

キ・ヤンは 皆の前でマハ皇子を抱き上げる
マハは いつものようにヤンに甘え 抱かれることを拒む様子はない
折檻した者にこれほど懐いて甘えるだろうかと問うキ・ヤン
そして マハ皇子に接した者に 順に抱かせていくと…
ヨン尚宮の顔を見るなり泣き出すマハ皇子!
ヤンは皇太后の制止を無視し ヨン尚宮を捕え厳しく尋問する!!

『お前とは 雑用係の頃から共にいた
可哀想に 皇后の指図だと白状すれば皇后に殺され
このままでは私に殺される運命だ』

ヨン尚宮は泣き崩れ 恥も外聞もなくキ・ヤンに命乞いを始めた

『タナシルリがマハを出産した時 お前はその場に居合わせたのだな?
いずれ マハ皇子の出自について証言してもらうことになる
それまでは お前を生かしておくこととする』

キ・ヤンはすべてを知っているのだと知り うなだれるヨン尚宮
そこへ 皇后バヤンフトが現れ 真相は分かったのかと聞く
黒幕は皇太后だと答えるキ・ヤン
思いがけない答えに驚きを隠せないバヤンフト

『それでは… 以前アユ皇子に毒を盛ったのも皇太后なのですか?!』

その言葉で それもまたバヤンフトの仕業であったと確信するキ・ヤン
バヤンフトは 皇太后の悪事を暴くため何でも協力すると申し出る

『ところで… この者の処断はどうなさるのですか?』
『いずれ証人となってもらうため 皇后様がお守りください』
『…承知いたしました』

高麗(コリョ)では

ワン・ユが王に復位し すべての臣下が祝いの言葉を口にする
この復位に際し 元へは兵1万 軍馬2,000頭 兵糧が贈られることになっていた
しかしワン・ユは 元への貢ぎ物はしないと明言する!

『この私が王でいる限り貢女(コンニョ)や宦官 そして貢ぎ物は一切出さぬ!』

さらにワン・ユは 元と取引し悪行を重ねてきた臣下の名を挙げ その罪を厳しく問う
官職は剥奪され財産もすべて没収となった

※貢女:高麗(コリョ)が元への貢ぎ物とした女性

これを知った丞相ペガンは怒り狂い ワン・ユを廃位すべきだと進言する!
さらには高麗(コリョ)を滅ぼし 元に編入すべきだと…!
しかし将軍タルタルは 征服戦争を控える状況下 時期尚早であると反対する

『高麗(コリョ)の海上貿易を立てば 交易による利益が途絶えます』

タルタルは すべての状況をキ・ヤンの耳に入れるが…
高麗(コリョ)の状況などに関心はないと答える

『今後もその構えを貫いてください
ヤン様が巻き込まれないか心配なのです』

一方 ワン・ユのもとに ヨンビスとマクセンがやって来た
玉座のワン・ユは威厳に満ち これまでのように接することが出来ない2人

『“パトル”だった頃のことを覚えているか?』

そう問われ ヨンビスの中にワン・ユとの過去が思い浮かぶ
当時ヨンビスは常に仮面をつけ“パトル”と名乗りチュルクを率いていたのだ
あの時 海上の交易路は元によって封鎖されていた
しかし“絹の道”があると ワン・ユが言ったのだ
“絹の道”は 必ずや高麗(コリョ)とチュルクの活路になると…!

『お前との あの時の約束を 今こそ果たす時が来た 絹の道を拓け!
元が海上を封鎖するなら我々は陸路を開拓するまで!
これからは西域と交易する! その独占権をお前に渡そう!』

やがて元は 丞相ペガン率いる大軍を擁し征服戦争へ出陣する
ペガンは イル・ハン国の6つの城を次々と落としていく!

※イル・ハン国:1260年に成立したイラン高原のモンゴル系国家  現在のイラン周辺

ペガンの猛勢を冷静に分析するワン・ユ
遠征が長引くほどに兵は疲弊する 勝利に酔うペガンも賢明とは言えないと…

『ヨンビスの商団の動きは?』
『元の硫黄と硝石を イル・ハン国に運んでいます』

一方 キ・ヤンは

商団から届いた利益金を長官らに渡し 飢饉に喘ぐ民を救うべく使ってほしいという
貴妃キ・ヤンの策に はじめは躊躇した長官らも 満足げに笑みを浮かべている

同じ時 皇帝タファンのもとへ侍従コルタが血相を変え駆けつける
ワン・ユから貴妃キ・ヤンへの密書を入手したというのだ…!
驚いて封を切り密書を読むと たちまちわなわなと震え出す!

『一体どんな内容なのです?』
『この件は… 誰にも言ってはならぬ!!!』
『は!』

コルタを下がらせると タファンは 激しく動揺しながらも迷いなく密書を燃やした
その炎が消えぬうち 何も知らないキ・ヤンが現れる

『まだ起きていたのですか?』
『……』
『何の書簡を燃やしたのです?』

タファンの目からは 今にも涙がこぼれそうだった
言葉を探しながら きつくヤンを抱き締める

『陛下… どうしたのです?』
『そなたがそばにいてくれて… 本当にありがたい 心から幸せだ!』
『どうなさったのです 何か…あったのですか?』
『何でもない… 何でもないのだ! このまま… このままでいてくれ…!』

その頃 蓮覚寺では

“吹毛求疵(すいもうきゅうし)”の策で 見事に皇帝と貴妃キ・ヤンの仲を裂いたと
ヨム・ビョンスの功績を称えるタンギセ

※吹毛求疵:無理に人の欠点を暴こうとし かえって自分の欠点をさらけだすこと 

『偽の密書で2人を仲違いさせるとは』
『あながち偽物とも言い切れませんよ あの2人はもともと危うかったのです』

そこへ メバクの頭が来たと知らせが入る
タンギセは 依然として仮面をつけたままの頭の前で跪き命乞いをする
頭は声を発することなく いつものように筆を執った
渡された文章を読み 動揺するタンギセ!
ヨム・ビョンスとチョチャムも 驚きのあまり声を上げるのだった…!


5年後


成長したマハ皇子の姿が 皇宮の中庭にあった
同じく中庭で遊ぶアユ皇子が 勢いあまって転んでしまう
マハは兄のように振舞い アユの手を取り助け起こした

遅れて現れた貴妃キ・ヤン
『礼を言うぞ』
側室ごときが! 皇室の嫡男に不遜な物言いをするな!』
『私はただ…』

肩に触れようとするキ・ヤンの手を 汚らわしいかのように振り払うマハ!
甘えて手を差し伸べ抱っこをせがんだ あの可愛らしいマハではなかった

そこへ 宦官ブルファが またしても遠征軍が大敗したと報告する
長引けば疲弊するというワン・ユの予測通り 征服戦争は行き詰っていた

皇太后のもとへ戻ったマハ皇子は なぜか浮かない顔をしていた
そんなマハを抱き寄せ キ・ヤンを貶める言葉を繰り返し聞かせる皇太后
あの女は皇子の実母を無残に殺したのだと…!
抱き締められながら マハは戸惑っていた
愛しくてたまらない貴妃キ・ヤンを どうしても憎む気持ちにはなれない
しかし 皇太后の言う通りならば…と思うと あんな態度しかとれないマハであった

大明殿では

大敗した責任を取り 斬首を願い出る将軍と兵士たちの姿があった
我々は精一杯尽力したのだと慰めるペガン
そこへ 泥酔し髪を振り乱した皇帝タファンが現れる
大敗が続いていることで すっかり気落ちし酒におぼれる日々が続いていた
貴妃キ・ヤンは 哀れな皇帝の姿に涙を滲ませる
2人の間には 修復し難い溝があったが それでもヤンの顔を見れば満足なタファン
何があろうとこのままそばに… その思いはずっと変わらずタファンの中にあった

泥酔したタファンは 跪く将軍を無残に斬り殺した
額に 頬に返り血を浴びながら 剣を振りかざして歩き回るタファン!
その狂気に震え上がり 恐れおののく兵士たち!

『この者たちは死んで当然だ! 酒を不味くしやがって!そうであろうヤン!!!』
『陛下ーーーっ…!!!』

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