“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
史実とは異なる創作の部分があります
第42話 刻まれた溝
皇帝タファンは 3,000の兵で2万の敵と戦った将軍を斬り殺した
その刃は他の者たちにも向けられ 誰もがその狂気に身震いする
『ど…どうか助けてください!』
嘆願の声が タファンの耳には違って聞こえた
(ヨンチョルの操り人形だった者め!)
(お飾りの皇帝!)
(能無し!)
丞相ペガンは さらなる凶行を防ごうと タファンの前に立ちはだかる
たとえその首に剣を突きつけられようとも 決して動こうとしない
今にも剣が振り下ろされようとしたその時!
間に割って入ったのはキ・ヤンであった!!
ヤンに抱き締められ ようやく正気を取り戻すタファン
ワン・ユからの密書は定期的に届き 常にそれを黙認してきたタファンである
狂おしいまでのヤンへの愛情と憎しみ
それでもなお タファンが正気を保てているのもまた ヤンの存在があればこそなのだ
『陛下 どうか戦をおやめください 撤兵するのです』
『そうなれば私は敗者となってしまう 笑い者になりたくはない…!』
『ならばお酒を断ってください』
『……約束しよう』
この様子を 息を殺して侍従コルタが見守っている
『陛下の 私を見る目が変わりました』
『……』
『何かあったのなら 私にお話しください』
『いや いいのだ …私は… そなたさえいてくれたら』
タンギセとヨム・ビョンスは
もう5年間も偽の密書を送り付けているのに 何の変化もないと焦っている
なぜキ・ヤンは側室の座におさまり続けているのか…!
なぜ裏切られてもなお タファンはヤンを寵愛するのか…!!
タンギセは イル・ハン国の間者から届いた報告書に目を通す
高麗(コリョ)が イル・ハン国に硫黄と硝石を横流ししているというのだ
※イル・ハン国:1260年に成立したイラン高原のモンゴル系国家 現在のイラン周辺
ビョンスは ヨン尚宮と連絡を取り合っているが
次に会う時は ソ尚宮も同行させよとタンギセの命を受ける
『この報告書を皇太后に渡す』
『皇太后が動きますか?』
『マハを育ててくれているのだ これくらいの協力はせねば
あれは野心の強い女だ 今でも実権を握りたいだろうさ』
『メバクの頭には?』
『知らせろ』
マハ皇子には 一切の教育を禁じるとの皇命が下っている
しかし皇太后は 密かに文字を教え皇帝になるべく教育してきた
一日も早く武芸も習いたいというマハ皇子だが 表立っては皇帝に気づかれてしまう
皇太后と 同席する皇后バヤンフトは いつか必ず…とマハを励ますのだった
一方 キ・ヤンの息子アユルシリダラは
付きっ切りでヤンが教育しているが 遊びたい盛りの腕白さで勉強に身が入らない
ヤンもまた そんなアユ皇子を可愛がり 根気強く見守っている
皇帝に疎まれて育ったマハに比べ たっぷりの愛情を受けて育ったアユ皇子
その性格にひねくれたところはなく いかにも愛らしい幼子であった
イ尚宮が 陛下の元へ挨拶に行く時間だと アユ皇子を迎えに来た
嬉々として席を立ち イ尚宮と手をつなぐアユ
父である皇帝にも もちろん会いたいが アユのお目当てはマハだというヤン
『マハ皇子を 警戒すべきでは?』
成長するにつれ性格が歪み始めたマハ皇子
宦官ブルファは アユ皇子に災いが降りかからないかと心配でならなかった
2人の皇子が並んで挨拶すると タファンはアユだけを傍に呼ぶ
マハとは目も合わせず そこにいないかのように無視した
習い始めた「千字文」を朗読させると 途中で分からなくなるアユ
『兄上なら全部言えます!』
アユの言葉に みるみる怒りがこみ上げるタファン
マハは 蒼褪めて下を向く
孫の窮地を救うように『私が教えました』と口を挟む皇太后
『なぜですか! なぜ文字も武芸も習ってはいけないのですか!!!』
『理由を聞くのも禁ずる!』
『なぜですか!!!』
『無礼者!!! マハの挨拶は受けぬ! 下がれ!!!』
涙を流し うなだれて退室するマハ皇子
アユ皇子は 後を追いかけるようにタファンの膝から降りた
2人の皇子が退室し 声を荒げる皇太后
その昔 丞相ヨンチョルは 幼いタファンに文字も武芸も禁じた
成長するにつれ 酒と女をあてがい ただ生きることだけを許していた
『陛下は ヨンチョルと同じことをマハになさるのですか!』
『同じこと? それは皇太后様の方でしょう なぜマハを可愛がるのです?
マハを皇帝にして また実権を握りたいのでは?!
タナシルリを処刑しておきながら なぜ今になってマハを?』
『それは陛下の嫡男だからではありませんか!』
『もう結構! たくさんです!
“愚か者として生きよ”と マハに言い聞かせては? そうやって育ててください
それでこそマハは 生き続けられる…!』
退室したマハ皇子は 貴妃キ・ヤンに出くわし いつになく粗暴に振舞う
あまりな態度に ヤンは 貴妃として毅然とした口調でたしなめるが…
この世で最も憎い者を見る目つきで睨み返し 立ち去るマハ!
慌ててマハを追って来た皇太后は キ・ヤンの姿を忌々しく凝視する…!
皇后バヤンフトが 2人の対峙を冷たい視線で見つめていた
次期皇帝の座を争い 皇太后かキ・ヤンのどちらかが消える
自分が出るのはそれからでも遅くはないと ほくそ笑むのであった
ビョンスの案内で タンギセとソ尚宮が再会した
ソ尚宮は 陛下に疎まれながら育つマハ皇子の窮状を 涙ながらに報告する
『この伯父が生きていると 今こそマハに伝えるのだ!』
『承知いたしました!』
『この文書を皇太后に “西域の商団から”と伝えよ!』
なぜこうも戦の敗退が続くのか… イル・ハン国の火薬は尽きることがなく
それが劣勢に繋がっていると 丞相ペガンは考えていた
その火薬を手配している者こそワン・ユであると 皇太后が報告書を渡す
ワン・ユを糾弾し廃位に持ち込めば 民の怒りの矛先は高麗(コリョ)に向くと…!
それが真実でも証拠が無ければ… と躊躇するペガン
『高麗(コリョ)の協力者に偽の帳簿を作らせなさい』
『偽物とは…』
『悪事は事実なのですから 偽物で糾弾出来るならそれでいいのです!』
『分かりました 廃位の上奏と偽の帳簿を揃え 陛下に報告しましょう』
まずはワン・ユを糾弾し 続いてキ・ヤンを捕えるつもりの皇太后
今の皇帝は キ・ヤンを寵愛し過ぎている
動かぬ証拠を突きつけた上で 一気にヤンを倒そうとほくそ笑むのだった
ワン・ユ廃位の上奏は高麗(コリョ)の協力者キム・スンジョによって書かれた
多量の軍事物資をイル・ハン国に売り捌き その利益で傭兵を養っている
いずれは元の支配下にある遼東を奪う気であると…!
実際は この取引で得た利益は 戦で苦しむ民のために使われている
元の各行省らがキ・ヤンの策に協力し実現した 画期的な救済策であった
いつもキ・ヤンを無視するマハ皇子が ヤンの行く手をふさいだ
間もなく高麗(コリョ)の国王が廃位されることを知っているかと問う
『今夜 廃位の上奏が届きます』
『なぜそのことを?』
『母上の敵のことですから 知っていて当然でしょう!』
マハに付き添う皇太后が ほくそ笑みながらヤンの横を通り過ぎる
これでキ・ヤンが動き ワン・ユに連絡するだろうと…!
その夜
親衛隊が上奏と偽の帳簿を奪い 宦官ブルファに渡す
事態は 皇太后が目論んだとおりに動いていた
あとはワン・ユの配下に接触したところで キ・ヤンを捕らえるだけである
その任は ペガンから将軍タルタルに命じられた
しかしヤンは 帳簿が偽物であることをすぐに見抜く
一刻も早くパン内官に連絡せねば…!
そこへ イ尚宮が駆けつけ何やら耳打ちする
一瞬の狼狽を見せるキ・ヤンだが 間もなく外出する
待機していたタルタルは 浮かぬ表情でヤンを尾行するのであった…!
『ヤンが裏切っただと?!』
皇太后とペガンの報告を受け にわかに信じがたいタファン
もちろん ワン・ユからの密書は承知しているが この5年間何事もなかった
自分さえ黙認すれば このまま平穏が続くと信じていたのだ
『絶対にあり得ぬ!』
『しかし 上奏と帳簿を奪ったのですぞ!』
『いつまでヤンを野放しに?』
『ワン・ユと結託するなど… 処刑にすべきです!』
『ならぬ!!!』
そこへ 貴妃キ・ヤンが謁見を求めているとの知らせが入る…!
奪った上奏と帳簿を手にして現れたヤン
皇太后とペガンは この予想外の行動に蒼褪める!
同じ時 宦官ブルファは トクマンに会っていた
イ尚宮を通じ 皇太后とペガンの企みを伝えてくれたのはトクマンだったのだ…!
『勘違いするでない! これは高麗(コリョ)出身者を守るためだ!』
キ・ヤンが処刑されれば 元に住む高麗(コリョ)出身の者たちは皆殺しになる
その者たちを助けたい一心で行動したまでのこと… 今度だけだと言い張るトクマン
もはや高麗(コリョ)の民でもなく 元の民にもなり切れない
そうして生きてきたトクマンの 切実な人生を思うブルファであった
将軍タルタルは 廃位を拒まれれば事態が複雑になると主張し
まずはワン・ユを 元に呼ぶべきだという
またペガンは 高麗(コリョ)に攻め入りたいが 負け戦続きでその余力もないと…!
そこでタファンは チャン・スニョンを使者に立てよと命じるのだった
散会した後 キ・ヤンは 帳簿が偽物である可能性もあるとタファンに告げる
ワン・ユに敵対する勢力は 廃位を心から望んでいると…!
『ワン・ユに会えばすべてが明白になる』
『まずは真偽を確認すべきでは? 一国の王を廃位するとなれば容易ではありません』
『ワン・ユと結託した者は皆殺しにする!たとえ臣下をすべて失うとしてもだ!』
ペガン以外 すべての長官が結託しているのだ
いかにタファンの意思が固くとも その事実はタファンを打ちのめすだろう
『そなたが疑われていることが心外なのだ 必ず結託した者を捜し出す!』
一刻の猶予もなかった
パン内官とヨンビスに事態を伝えねば…!
ヤンは焦り始めていた
もしワン・ユが元に連行されれば 決して廃位されるだけでは済まないだろう
しかし今動くのは危険だと ブルファが必死に止める
一方 マハ皇子は
自分も使者として高麗(コリョ)に行きたいという
まだ子供であるマハだが 母の敵をこの手で連行したいと強く申し出た
このマハの健気な姿に 思わず涙が滲む皇太后
しかし… マハは 密命により動いていたのだ…!
ワン・ユを 国境付近まで連行したところで 伯父タンギセと落ち合う手筈である!
輿に乗り 高麗(コリョ)へ向かうマハの行列
パン・シヌたちは その成長した姿を涙ながらに見守っていた
なぜ突然マハ皇子が高麗(コリョ)へ向かうのか…
感動しながらも シヌは胸騒ぎがしてならなかった
そして この場をマクセンとチョンバギに託し 一目散に行列の後を追うのだった!
一方 タンギセとヨム・ビョンスは メバクの頭に会いこの事態を報告していた
すでに承知しているという頭 その手を見たタンギセは 頭が女ではないかと疑う
『高貴な女といえば… 皇太后か皇后で?』
『なぜ我々に協力するのか探らねば どう利用できるのかも分からぬ』
その夜 キ・ヤンは 将軍タルタルに会う
タルタルはすでに ヤンが 秘密資金で民を救済していることを知っていた
軍部の者と 朝廷の者らを買収するためにも 秘密資金は使われたと
『私の命は タルタル様次第なのですね』
『まだ私の知らない行いを?』
『いいえ』
『今年も飢饉が続きます 救済米を増量すべきです』
足早に立ち去ろうとするタルタル
その背中に もう監視はおやめください と声をかけるヤン
『今後は 私を支援する道を! 助けてほしいのです』
『それが高麗(コリョ)王を救えという意味ならば… 従えません』
『秘密資金はすでに使い果たしました
元の民を救う資金は ワン・ユ殿が調達しています 助けてほしいのです…!』
高麗(コリョ)の都 開京(ケギョン)では
マハ皇子が 初めて元の国以外の都を眺めていた
一行より早く到着したパン・シヌは ワン・ユに謁見しマハ皇子の来訪を告げる
幼いながらも 出迎えようとしない高麗(コリョ)王に対し威厳を見せるマハ
王が出迎えるまでは いつまででも外で待つという
ほほう…? と笑みを浮かべ それではその意志の強さを試すというワン・ユ
そして日が暮れようとする時間になり ようやく出迎えに現れる
チャン・スニョンが 元の皇帝からの書簡を読み上げる
元に関係する臣下を排除し また貢女(コンニョ)や宦官を差し出すことを禁じ
ことごとく元の皇帝に逆らったことについて 弁明の機会を与えるという内容である
儀礼的な出迎えを終え ワン・ユは 親しみを込めたまなざしでマハを見る
しかしマハにとって それは不遜な目つきでしかない
『昔 まだ幼い皇子を よくこの腕に抱いたものです お忘れですか?』
『私は母上の敵を見に来たのだ!』
パン・シヌは あまりに強い口調の皇子に驚きを隠せない
知らないとはいえ 感動的な父と息子の再会なのだ マハはなぜこのような…
『確かに母上は非業な最期であった しかし複雑な事情があったのだ
結果だけに固執し 詳しく事情を調べないのは間違っている』
『元の皇子に説教するのか! 私が皇帝になったらただでは済まぬ!!!』
立ち去ろうとして ワン・ユはさすがに驚き マハを見つめる
これがあの星(ピョル)? シヌもチョンバギも凍りつく
『母上を殺した敵国を このままにはせぬ!』
『自分の感情さえ抑えられぬ者に 復讐などする資格はない
もっと深く学ばねば』
なぜマハはここまで歪んでしまったのか… 哀れでならないワン・ユであった
マハは ワン・ユの言った“複雑な事情”という言葉が気になっていた
母の死には 何か自分が知らされていない事情があるというのか…
一方 ヨンビスとマクセンは
チョンバギの知らせにより ワン・ユが元の皇帝に呼びつけられたと知る
廃位の詔書を突きつけられるとも知らず ワン・ユの一行は国境付近へ…!
マハ皇子は この野営の地で 伯父タンギセと涙の対面をする
今となっては タンギセこそただ1人の身内であり 唯一頼れる存在であった
『皇子様 今宵ようやく亡き母上の恨みを晴らすことが出来ます!』
寝込みを襲われたワン・ユは 抵抗むなしく捕らえられてしまう
ムソンとパン・シヌと共に縛り上げられ マハ皇子の前に引きずり出された
マハの隣には 行方不明となっていたタンギセが…!
そして ヨム・ビョンスとチョチャムの姿も…!
マハの命令で チャン・スニョンが廃位詔書を読み上げた
大逆罪人であるワン・ユは これより高麗(コリョ)の王ではなく罪人として扱う!
知らぬとはいえ マハは 実の父親を“大逆罪人”と呼んだ
シヌは あまりに残酷な運命のいたずらに凍りつく…!
王衣を剥ぎ取られ 鞭で打たれながら大都への道を連行されていくワン・ユ
母を殺した憎い敵なのに マハはなぜか心が痛むのだった
やがて大都に入ると 我が国を敗戦国にした高麗(コリョ)王に対し罵声が飛ぶ
群衆に紛れ 涙ながらに見守るヨンビスたちの姿があった…!
皇帝タファンは ひざまずくワン・ユに対し 万感の思いで剣を抜く!!!