画家の「取材」をテーマに絵のおはなしをしてまいりました。今回で4回目となりました。
1回目は、「感動」、2回目は「構想」と「クロッキー」、
3回目は「デッサン」や「エスキース」についてはなしをしてきました。
描かれる前に起こるのは、「感動」であり、感動と描く行為の間には、「構想」があるというはなしをしてきました。
「感動」や「構想」を整理し、作品として形にするために、画家は「取材」を行います。
「取材」で最も多く行われるのは、「クロッキー」。他にも、加筆を行ったり、資料を集めるということをします。
さらに画家は、質感や明暗がどのようになっているのか研究するために「デッサン」を行い、
構図や作品の完成イメージを見定めるために「エスキース」を行います。
さて、このように取材を行っていきますが、では、どのような画材道具でもって、
取材は行われるのでしょうか。
今回は、画材について、特に「鉛筆」に注目して、おはなしをしたいと思います。
クロッキー、デッサン、エスキースで使われる描画材料に多いのは、「鉛筆」。
他には、「木炭」や「パステル」を使うケースもあります。
上記のものを併用したり、水彩絵の具を使用するケースもあります。
よく使われる鉛筆には、実はたくさんの種類があります。
ほとんどの方は、鉛筆ときけば、「HB」のことを思い浮かべるかと思います。
文具屋さんにいくと、それでも他に「2B」や「4B」、「6B」がありますね。
実はBの鉛筆には、あまりみないかもしれませんが、「B」から順番に「10B」まであります。
セレネにも、月光荘の8B鉛筆が置いてあります。画材屋さんにいくとすべての種類がおいてあるかと思います。
また、Bの他にも「H」や「F」の種類があります。Hの鉛筆もまた、「H」から順番に「10H」まであります。
なんだかこうなってくると、愉快な気持ちになりますね。
では、突然ですが、ここでみなさんに問題です。
鉛筆の「B」「H」「F」。
何の略か、みなさんは知っていますか?
画家は、みな、このようなことを知っていて、使い分けているということをご存知ですか?
どうですか、わかりましたでしょうか?それでは、答え合わせといきましょう。
「B」は、「ブラック(黒い)」の略。
「ほんとに?私あたっちゃった」という人は、多いでしょうか。
Bから上の数字に、上がるほど、鉛筆が濃くなりますよね。だから、正解した人は多かったかと思います。
「H」は、「ハード(硬い)」の略。
これは、わからなかった人は多いかと思います。まず、使う経験も少ないかと思います。
使用してみたらわかりますが、HBより硬く、紙に書いた瞬間、「かたっ!」っと、つっこみたくなる硬さです。
硬さとともに感じるのは、色の薄さ。「うすいですよ」とこれも、口に出したくなる、絶妙な薄さです。
Hは数字が上がるほど、硬度と薄さが増します。ちなみに、Bは数字が上がるほど、柔らかくなります。
「F」は、「ファーム(しっかりした)」の略。
正解率は、非常に低いかと思います。専門の方も答えられないかと思います。
「F」は、HとHBの間の硬度と濃さを持つ鉛筆です。
画家は、これらの濃さや硬さをよく知っていて表現します。
Bなどの柔らかい鉛筆は、「描き始め」や、「明暗の暗部」の表現に使います。
Hは、紙を傷つける硬さなので、使用に気をつけながら、「明るい部分」に使用します。
紙の白を生かしながら描くので、必然的に、「仕上げ」段階で使用することが多いです。
また、Bで暗部を描いた後にHを使う場合もあり、独特の色味と、金属質な硬い質感表現を生みます。
Fは、クロッキーなどの線描に使用されることが多いです。
しかしながら、まれに、HBとHの間にわずかに感じる色や質感表現の差をねらって、
デッサンなどで描く場合があります。
田渕俊夫 放水(黒部ダム/下図)
さて、鉛筆の種類と描き分けについてふれましたが、今回はここまで。
次回は、鉛筆の使い方とひっさつ技!についておはなししたいと思います。
こうご期待!
常設展示
「黒部峡谷日本画展 -悠久の大地 黒部より―」
開館時間・休館日
9時~17時半(入館時間は、閉館の30分前までとなります)
火曜休館
入館料
大人 : 610円 高校・大学生 : 510円 中学生以下 : 無料
黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館
富山県黒部市宇奈月温泉6-3
TEL0765-62-2000 セレネHP