私は、輸入車・国産車の試乗会にお邪魔して、その試乗記をWEB媒体さんに載せてもらったりしています。
また、数年前までホンダで新車開発開発の統括をしていた関係で、その時々の「新車」に乗る機会は多かったです。
その中でずっと感じてきたことがあります。
それは、性能のいいクルマばかりになり、つまりどの車も燃費・乗り心地・走り・スタイリング・・・そのクルマづくりの大きなコンセプトはメーカーが変わっても「そんなに変わらない」と思えるのです。
特に、日本は高速道路の制限速度は100km/hですし、街中は40~50km/h、国道でも60km/h、さらに信号が多く、現在の性能のいいクルマを使いきる環境にありません。
ドイツでは、ご存知のように500や600km程離れた移動でも、クルマです。
最近はアウトパーンも制限速度を設ける部分が非常に多くなりましたが、それでも車線は多いし、とにかくクルマの移動に適したインフラがあります。
この日本で、そんなヨーロッパの長距離高速移動に適したクルマはその性能の半分も出していません。
つまり、200km/hでのハンドリングやブレーキングなんて日本では関係なく、また長距離移動に必要なシートに代表される快適性なんて関係ありません。
性能を使わないから、感じない。
国産車も勿論、軽自動車以外は輸出したり、海外の現地で作ったりするクルマがあり、その車の基本性能は日本の中で使うかぎり十分過ぎる性能です。
つまり、言いたいのは、日本ではクルマの性能を目一杯使わないということです。
これは、機能で言えば「過剰品質」ですが、ユーザーの気持ちで言えば「余裕」という事で言われてきたりしています。
「走りや快適性」のポテンシャルが高いので普段の低速使いでも安心、高性能なクルマにのっている私って・・・という価値観だと思うのです。
いわゆるブランド価値?
勿論、このことに関してはユーザーの価値観ですから、それはそれで良いと思います。
私がこだわるのは、高性能なクルマを低速で短距離移動で使うと、どの車も同じで、ツマランと感じるということなのです。
カーメーカーは、それぞれのブランド戦略なるものに基いて作っていて、デザインや内装の質感とか個性をつけていますが、日本では、肝心のクルマの走り性能に関しては、カーメーカーがどんなにブランド特性を意識して作っても、あんまり感じる事が出来ず、ユーザーに伝わらないと言うことです。
(ヨーロッパメーカーは日本の一般ユーザーの事はそんなに意識はしていないと思いますが)
デザインや内装の質感とかの個性はわかりますが、それはクルマの基本性能ではありません。
ここに、日本ではクルマに興味がわかなくなってきた、その要因の1つがあるのではと思うのです。
(勿論、クルマ好きの人はいますが)
私は、2世代前の320iを乗っていますが、今の新車に乗り換えようとディーラーに行っても、ワクワク、新車だ、と感じないのです。
確かに、バックビューモニターや数々のハイテク装備はあれば役にたちますし、シフトレバーの操作は新しい感覚ですが、インパネの景色もシートの質感も(昔のクルマの方がかえっていい)、ドアーライニングも・・・目新しさはあっても、魅力とはうつりません。
これは、お金がない者のヒガミではなく、こう思うのです。(笑)
だから、クルマに興味が無くなり、購入意欲がわかない、という事が私に起こっています。
全く、BMWやメルセデス・ベンツ、AUDI、アルファロメオ、FIATなどディーラーに行って新車を見ても、ドライブするときのことを考えれば、購入意欲はわきません。
どれも、ほぼ同じでしょ。
ただ、私はダメですが、多くのユーザーがコストバリューでいうと高価なのに「ミニ」にいくのは理解できます。
とにかく、形が他と違い過ぎるほどでヘリテージ臭が強いので(よくある燃費やスポーツ性、安楽狙い等のコンセプトとは異なる)、また走りも独特なモノがあるので、それなりの魅力は出てきます。
サイズも実はソコソコ大きいのですが、日本に良いかもと思います。
勿論、国産メーカーはもっとつまらないです。
スポーツカーの86やNSXでさえ、どこかで見たようなデザインの集合体と見えてしまいます。
かと言って、シエンタはないですし。(笑)
ここで、やっとクラシックミニの話になります。
先日、鎌倉にいくことがあり、少し車が混んでいたので抜け道したら、そこに有名なクラシックミニ屋さんがあって、店頭にボディがグレーでルーフは白色のミニがありました。
つい寄って、話を伺うと大幅にレストアしたものでした。
塗装もホワイトボディにして、錆を落としてからされています。
エンジンやトランスミッション、サスも全バラレストアされています。
試乗もさせていただきました。
それは、現在のクルマにはない、何とも言えない「人間味」のあるものでした。
この時、思ったのです。
最近の車は先程来言ってきた、同じようなコンセプトで、ヨーロッパの高速移動を考えて作り、ハイテクも満載で、より豪華にはなって、なんだか、よりロボティックな感じになってきて、コモディティ化して冷たくなっているように思えると。
カーメーカーはユーザーに寄り添おうと思って作っているのに、私からすると寄り添ってくれない。
このミニは、フルレストアしてあるために普通の中古とは異なり高価ですが、何とも横に置いておきたくなるのです。
そんなにクルマに乗らない、使い倒さないカーライフなら、乗る時の今風の安楽さ(燃費・維持費、乗り心地・走り等)より、世話はかかってもペットのようにいたわる存在のクルマがいいかなと思い始めました。
実は、昔は「愛車遍歴」にも書いていますように、ビートルに始まり、縦目ベンツ、この後はまだ書いていませんがその後、MG-Bさらに68ミニクーパーと乗っていました。
この68ミニクーパーは故障しまくった事もありますが、出掛けた長野から帰れなくなるかもというような瀬戸際があったりして、やはりいくら気持ちが通うペットのようなとは言っても、時期がくれば相当のメンテナンス、まぁレストアをしないとダメだと骨身にしみました。
壊れた部分を直していっても、次々と壊れイタチごっこ?のような気持ちになります。
ビートルの時は直ってまた元気に走ってくれると、それは楽しくって、良かったのですが、私が年をとったのでしょうね。
人間味を感じながら乗れる幸せを手に入れたいですが、それには、簡単に言うと、新車を買う以上のお金はかかると。(笑)
でも、やっぱり人間味かな。
クルマ好きの私にとって、クルマは一緒に暮らすペットのような存在でいて欲しいのです。