繁浩太郎の自動車と世の中ブログ(新)

モータージャーナリストとブランドコンサルタントの両方の眼で、自動車と社会をしっかりと見ていきます。

EVは中国の国策? 日本は?

2017-09-27 09:35:31 | 日記

今年のフランクフルトショーは、ドイツが国として「EV宣言」をしたこともあり、EV色の強いものになったそうです。

(残念ながら私は行っていません。ニューヨークに遅い夏休みで行っていました。笑

ニューヨークは国連があり、私の泊まったホテルにも誰かはわかりませんが「要人」が泊まっていたらしく、

ホテルの前は通行止め、ホテルに入るのに宿泊客も空港並のセキュリティチェックを受けるという、

しかもNYPDニューヨーク市警察は自動小銃を構えていますから、日本人からすると厳戒態勢に見えます。

やはりテロ相手に戦争状態なんだと実感しました。

日本は平和で良いですが、ちょっと平和ボケしていないか?とも思えました。)

 

しかし、トヨタはEVを展示しなかったらしい。

 

これは、「トヨタがEVの本質をわかっている」からそうしたのだと私は思います。

 

前回のブログでもリーフのことを書きましたが、一言で言うと「EVは単独商品」としては

「行きていけない」「売れない」のではないでしょうか?

つまり、国のエネルギー政策から、インフラ含めて、はじめてEV事業になると考えます。

もっというと、現在の内燃機関のクルマの商売の延長線上にEVはないと言うことです。

 

FCVは、現在の商売の延長線上にあります。

だから、ホンダもトヨタもFCVを頑張って開発スタートさせたのでしょう。

しかも10年以上前に。

「延長線上」と言うのは、FCVだと自宅に充電設備は不要で「スタンドに行って」水素を充填します。

EVは基本的に自宅で充電します。つまり毎回クルマを車庫に入れたら、充電コンセントをつなぎます。

また、FCVは現EVのような「電欠の心配」はありません。

使用状況によってバッテリーが劣化して走行距離に影響が出ることもほとんどありません。

つまり、ガソリン車と同じようなインフラで、ユーザーの使い方も今までのクルマと同じように出来るのです。

 

勿論、FCVは、技術的/コスト的なハードルは高く、事業化難易度はマックスです。

こういう数年後にものになるということは無いものに、よく補助金を政府は出すなと思います。

ハッキリ言って、この補助金は特定の「メーカー支援」ではないでしょうか?

税金の使いみちを我々は監視しないとね・・・。

 

世間では、EVの世界が直ぐにくるかのように伝えていますが、現実的にはまだまだ遠い先の事になると考えています。

ただ、中国のような新興国は先進国自動車産業を追い越す為、また自国産業育成を考え、国を上げて戦略思考で取り組んでいるから、EVなんです。(原発推進してます)

 

自動車先進国のヨーロッパだって、EVは難しいと思います。

しかし、ドイツは、多分「世界のリーダー国」になるという信念から、原発でなく再生可能エネルギーを開発し、そのエネルギーを基にドイツ社会インフラも開発し、その延長で自動車を走らせるという、壮大なテーマに果敢に取り組んでいるということだと思います。

ドイツは、自動車の排ガス対策は勿論、街の環境なども全て「環境ナンバー1国」をブランドとして目指し、

分別ゴミなどにもいち早く取り組んできました。

また、ドイツには大きな街がいくつもありますが、どの街も「クリーン」で、綺麗です。

(それだけに、VW やメルセデス・ベンツのディーゼル問題は、私にとってもショックでした。)

 

第2次大戦を真摯に反省した結果か詳しくはわかりませんが、世界の国の中で自国ブランディングをしっかりつくって先進国の中核になっています。

 

大切なのは、国が中心になりこういうコトを考えているという事です。

 

EVは、民間企業の収益目的だけでは、世の中に受け入れられないと思います。

国との連携であるべき自分達の社会のビジョンを描き、その結果としてのEVだと思います。

 

日本では、自動車産業は国の基幹産業と言われています。

その割には、自動車産業の未来を、国はその本質を取らまえて戦略思考できていないように私には見えます。

 

 

 

 

 

 

 

 


日産の新型リーフは EVのあるべき姿か?

2017-09-13 10:15:03 | 日記

日産の新型リーフが発表されました。

 

昨日の週刊ダイヤモンドに「日産が新型リーフ販売目標の「数字」を明確にしない事情」という記事がありました。

その中で、発表会時に日産自動車の星野朝子専務執行役員は「これまでリーフ購入を控えていた方の不安は払拭された」と言ったそうです。

 

つまり、今までリーフには3つの大きな課題があってそれを今回の新型では払拭したということらしいです。

3つとは「航続距離」「充電スタンドの数」「価格」です。

 

これは、星野朝子専務執行役員にとっては言わざるを得ないということかもしれませんが、非常に楽観的コメントというか、私には「これまでリーフ購入を控えていた方の不安は払拭された」というのは少し言い過ぎで、また的外れではないかと思いました。

 

つまり、まず現行リーフブランドは、計画販売台数の大幅未達成でもわかるように、一部のユーザーにしか購入されず、リーフブランドとしては、浮かび上がらない水面下の状況にあります。

 

そんな中で、今回の新型は起死回生となり、浮かび上がるには、ガソリン車を鏡におくのでなく、EVとしての新しい異なる発想で余程のコトを行わない限り難しいと思うのです。

 

言い訳としては、「リーフ購入を控えていた方の不安」であって、多くのユーザーを相手に言ったものではないとなるのかもしれませんが、これはこれでコミュニケーションとしては寂しいものです。

 

 

初代のリーフを、多くのユーザーにとってEVを使えるインフラも性能もないまま、発売したことのEVブランドへのネガティブ影響は大きいと思います。

 

つまり、最初のリーフユーザーはいわゆる先行層で、トレンドリーダーとも呼ばれる人たちだったとおもうのです。

その人達は、いざ買って乗ってみると電欠不安に苦しみ、バッテリー劣化する人もいて、また買い替えたいと下取りにだすと安かったり、勿論中にはリーフを満喫した人も多いこととは思いますが・・・、

多くの初代リーフユーザーは多かれ少なかれリーフに不満というか期待はずれなとこがあったと思います。

これが無かったら、もっと販売台数は上がっていたと思うのです。

 

 

環境対策になるという正義の御旗を掲げたEVですが、走行中は確かにCO2をだしませんが、

本当に環境を考えた発電から廃棄まで、地球に有害なものをできるだけ出さない、というコンセプトが貫かれているとは言えません。

日本は、様々な理由はあるにせよ、火力発電のまっただなかです。

それは、政府の問題と他人事にしても、結局はEVの環境にいいという御旗がないということになります。

 

環境対策を正義の御旗とするEVなら、商品開発だけでは不足ということです。

水平的に、インフラから国のエネルギー施策までとりこまないとダメなのです。

 

 

今回の新型リーフですが、航続距離400kmと頑張ったのですが、地に落ちたブランドを復活させるのには「改良レベル」に過ぎず、ユーザー的にはリーフを見直すとまではなかなかいきにくいのではと思います。

 

皆さんも、「航続距離」が1.4倍の400kmになったと聞いて、「それなら安心」と思えるでしょうか?

確かに、造り手側からすると大変な技術やコストを投入しているでしょうから、「ここまで来た」感はあるでしょうが、ユーザーにそれは関係ないと思います。

例えば、最初は400kmでも、一年後に350kmになって、

その後また・・では元も子もないので、どれくらいのバッテリー劣化カーブになったとか、もう少し改良内容を具体的にユーザーに投げかけることができないと、「不安の払拭」には至らないのではないでしょうか。

 

また、価格は安くなって315万円らしく、でも決して廉価ではなく、また国からの補助金で270万円位になるらしいですが、補助金の原資はご存知のように税金ですからね。

 

270万で、数年後ガソリン車と同じような下取り価格がつくなら良いですが、EVの場合はその使用状況などによりクルマの個体差が大きく出る場合がありますが、それをどう見極めるか? これも、「不安の払拭」には大切ではないでしょうか?

 

 

スタンドの数を記事は「充電インフラについても、10年に全国で360基だった急速充電器が、現在は7000基以上に増え、初代発売時より格段に充実している。」と書いていましてそれはその通りと思いますが、対するガソリンスタンドは2013年時点で、25,690箇所というデータがあります。

最近ガソリンスタンドの数は少し減ったようですが、それでも出かけ先でガス欠になりそうになっても、飛び込めるスタンドはあり、5分もあればまた満タンに出来るわけです。

 

「チョット、バッテリーが減ったから充電スタンドに寄るか」

というほどの充電スタンドの数はなく、長距離などの場合は予めどの辺りで充電するか?は、目論んで置く必要がまだあるのではないでしょうか。

 

しかも、80%の充電に40分程度かかることもあり、まだまだガソリンを入れるような簡単な事ではありません。

また、極寒冷地でのバッテリー性能の課題などもあります。

 

このように、まだまだEVはガソリン車並みにはいかないのです。

 

なのに、新型リーフの形も旧型以上にあくまでもガソリン車と同じデザインで、このあたりもユーザーにEV独特の使い方を強いるなら、本来は考えてなくてはいけないことと思います。

 

逆に言うと、ガソリン車並みデザイン、しかもかなり一般的なデザインにしたということは、フォロワー層までをターゲットユーザーにおいているのではないかと思われ、そこには販売台数増を目論んでいると思われます。

 

つまり、日産自動車は今回の新型リーフこそ、EVの不安を払拭できたから、販売台数は伸びると本当に考えているのかもしれません。

(多分、後述の中国市場を中心に考えているものと思いますが)

 

現在、ニュースなどでカーメーカーのEVへの舵取りを伝えるものが多いですが、これは大きなマーケットの中国が自国の将来=エネルギー政策を考える上で、石油は既に輸入にたよる形になっていますから、それを打開したいと原子力発電に切り替えて同時に自動車産業もEV化すれば、携帯のように世界に打ってでられそうだという、自国の発展を考えた結果EV化に舵を切り始めたと言われる方も多いです。

つまり、EV商品ありきでなく国の政策からひもづいたEVということです。

多分バッテリー開発も国を上げてやっているでしょう。

 

勿論、新型リーフはそういう中国市場をメインに考えているものと思います。

中国の中で高級EVブランドになることを目指しているのではと思うのです。

 

中国現地メーカーEVは日本がそうであったように、自動車としての「品質」は少し足りなくても「廉価」であれば、数は相当数でるものと思われます。

本当に、世界を席巻するかもしれません。

 

日産、トヨタ、ホンダなどとの現地との合弁会社では、現地資本のメーカーと較べてどうしてもコスト高になります。

 

EVの世界は、ガソリン車が普及した時の世の中状況とはかなり異なります。

つまり、EVはガソリン車の垂直型産業でユーザーが喜ぶ商品を安くという単純な価値観では成立せず、EVと社会、国の政策などまさに水平型産業とも言える形で、考え方を変えなくてはならないと思うのです。

 

形、デザインも、ひょっとすると使い方も、ガソリン車と異なるEVにあったものに、これからは変化していくのではないかと思っています。

 

ガソリン車並み「品質」を目指して造るのがEVではないと思います。

 

 

 


「新型N-BOX」を考える

2017-09-01 10:15:57 | 日記

前回、「ホンダのブランディングが良くわからない」というようなコトを書きましたが、今回「新型N-BOX」に対しても同じようなことを感じました。

 

昨日発表された「新型N-BOX」は、そのデザインはダイハツやスズキの「軽デザイン」に近づいたものになっていました。

詳細は、「オートプルーブ」の記事で書きました。

ここ数日のうちにアップされると思います。

「オートプルーブ 繁浩太郎」でググってもらえれば、でてくるはずです。

 

初代N-BOXは、ダイハツ・スズキの2強に割り込む上で、

「ホンダの軽って何?」つまり、ブランディングを良く考えてデザインされて、

結果ダイハツ・スズキとは異なる新しい軽ブランドとしてユーザーに認められました。

 

フルモデルチェンジ直前まで販売台数NO.1を誇っている車種はそうそうありません。

 

 

今回の、フルモデルチェンジは、ブランドをキチンと保って、競合のダイハツ・スズキとの距離をキープすることが大切だったはずです。勿論、販売台数アップも。

その上で、「ユーザーファースト」で考えるなら、「売価」です。

タント以降、こういうスーパーハイトと呼ばれる、背の高い軽のミニバン的な商品は、人気があることもあり、売価が高めになっています。

(逆に言うと、この領域くらいしか軽自動車メーカーの収益が出る領域がないのかもしれませんが。)

 

なんだかんだと言っても、軽自動車が200万超え。

はっきり言って、FITクラスより高い。

また、軽自動車の税制を論議したくなります。

 

15年に、軽自動車の税金が上がって販売台数は落ち込みました。

軽自動車メーカーにとっては死活問題です。

しかし、ユーザーがFITクラスより高い200万超えの軽自動車を買う理由は、「税金が安いから」。

だから、税制見直しの論議につながります。

 

このことに対して私は「お国(税金)、メーカー(収益)、ユーザー(安い経費)」の「三方良し」を前提にして「カテゴリー/税金 見直し案」を考えました。

これは、長くなりますので、また今度書きたいと思います。

 

 

いずれにしても、「新型N-BOX」のフルモデルチェンジの方向性は「ユーザーファースト」なら「売価」にならないとおかしいと思います。

 

今、ユーザーは政府のインフレ促進?にこまりはじめています。まわりで、価格の上がっているものが増えてきました。

 

そんな中で、軽自動車は「地方の必需品」で、都会でも「ダウンサイザーの受け皿」になっています。

 

その性能は良いほうが勿論良いのですが、以前ほどモデルチェンジ毎に大きく性能は向上しません。

つまり、買い換えるほどの大きな進化はないということです。

 

燃費も2キロや3キロ上がっても、乗り心地がよくなっても、新しいクルマに買い換えるほどの向上ではないと思います。

そんな中で、自動ブレーキ等の安全システムは今までになかったもので、ユーザーの関心を集めています。

 

 

初代N-BOXのデザインは受け入れられているからNO.1販売が続いたわけで、これからも手直しレベルで(つまりヨーロッパのモデルチェンジ的なもので)十分ユーザーに受け入れられ続けると思います。

またその性能はすでに競合に対してはビハインドなものでも、買い替えてまで良くしたいとユーザーが考える程のことではないかもと、考えます。

 

その為には、新たな投資は抑え、その分売価を下げ、収益は面積でかぎ、ブランドイメージをキープしながら、

 

これが、ダイハツ・スズキの2強を相手にしながらホンダが軽自動車で商売をしていく基本の考え方、やり方ではないでしょうか。

 

 

ホンダには、過去の栄光もいいですが、将来を見た本当にユーザーが喜べる商品造りを目指してほしいです。

その為には、目前のことだけでなく、コトの本質を見極めるチカラが必要になります。


ホンダのブランディング

2017-09-01 09:55:40 | 日記

本日配信のレスポンスの記事の中で、BMWとHONDAのフランクフルトショーに対する発表内容が対照的で面白かったので、引用させてもらって、チョット一言。

 

①BMW

BMWグループは8月29日、『i3』の改良新型モデルの概要を明らかにした。実車は9月12日、ドイツで開幕するフランクフルトモーターショー2017で初公開される。

i3の改良新型モデルは、・・・中略・・・

スポーティEVとして、「i3s」グレードを新設定。モーターのスペックは、標準グレードに対して、最大出力が170hpから184hpに14hp向上。最大トルクも25.5kgmから27.5kgmへ、2kgm引き上げられた。従来通り、モーターはリアアクスルに搭載し、後輪を駆動。0~100km/h加速は6.9秒、最高速160km/h(リミッター作動)の性能を発揮する。
・・・中略・・・
i3sにはスポーツサスペンションを標準装備。車高を10mm引き下げ、トレッドは40mm拡大された。オプションで20インチのタイヤ&ホイールが選択可能。DSC(ダイナミックスタビリティコントロール)やDTC(ダイナミックトラクションコントロール)には、スポーティな設定が施されている。

 

②HONDA

 ホンダは、9月12日に開幕するフランクフルトモーターショーにて、ホンダ『アーバンEV』コンセプトを世界初公開すると発表した。

ホンダは、2025年をめどに欧州四輪商品ラインアップにおける販売数の3分の2を電動化車両に置き換えるという目標達成に向けて、電動化を推進しており、今回初公開するアーバンEVコンセプトは、将来の量産EVモデルの方向性を示すものとなる。
そのほか、ホンダブースでは、欧州初公開となる新型『CR-Vハイブリッド』プロトタイプ(欧州仕様)、『シビック・ハッチバック・ディーゼル』モデルなどを展示する。

 

 

HONDAは「中略」なしで、これだけの情報しか発表していません。

・・・「不言実行」を信条としているのかもしれませんが。

 

モーターショーに対しては、一般的には「ご期待下さい!」と言える内容を、ユーザーにアピールをして来場もしてもらい、また媒体に記事にもしてもらい、最終的にはメーカーのブランド造りにつなげたいというのが一般的だと思います。

 

 

いずれにしても、今回言いたいのは、「BMWの『i3』の改良新型モデル=スポーティEVとして、「i3s」グレードを新設定。」という商品コンセプトはまさに「ホンダらしいものではないだろうか!?」という事です。

 

元々、BMW(駆け抜ける喜び)もホンダもスポーティドライビングをコンセプトの柱としてきました。

 

ここは、EVの世界になってもそれぞれのブランドを貫いて欲しい処です。

それに対する考え方をモーターショーでは示すのが本来ではないでしょうか。

 

BMWは、ブランドのコトを良くわかっていて、こういう風に広報発表もしてきますが、ホンダは「不言実行」?

 

しかし、ここんとこは、その実行も見えずチョットさみしいところです。

 

ホンダは、ブランド造りに関して重要視していないように見えます。

国内では、グレース・ジェイド・・・に引き続いて、シビック、のコンセプトとデザイン、さらに言えばFCVも・・・そこには、ホンダブランドにプラスになると思われる統一性がありませんし、ブランドにたいする意味もありません。

 

元々、ホンダはどういうブランドになりたいのか?

というコトを考えてしまいます。

また、ホンダブランドということを考えずに商品単体だけを作っているようにも感じてしまいます。

 

今のクルマは、基本的にスポーツカーもセダンも性能が変わらないように・・、またカーメーカー間でも目立った性能差が少ない中で・・、コモディティ化とまで言われている中で・・、カーメーカーのブランディングは非常に大切なものになってきているのは言うまでもありません。