繁浩太郎の自動車と世の中ブログ(新)

モータージャーナリストとブランドコンサルタントの両方の眼で、自動車と社会をしっかりと見ていきます。

自動車のシートベルトとエアーバックの理解

2016-12-31 10:25:37 | 日記

今朝の「朝日新聞デジタル」で、「シートベルト、締め付け緩和 国交省基準、圧迫程度2割低減へ」

という見出しの記事があり、内容は「車に乗車中の人が死亡する事故で、致命傷となる部位は近年、「頭部」よりも「胸部」が多くなっている」。

「シートベルトは事故の衝撃がかかると強く締まって体を守る。その締め付けで骨折したり、内臓を損傷したりすることがあるという。」

「エアーバックが普及し、近年の新車には標準装備されているため、頭部の損傷が減少。シートベルトで強く締め付ける必要はなくなってきたため、国交省は性能基準を見直すことにした。具体的には、事故時の締め付けなどによる胸部の圧迫の程度を現行の8割まで低減し、衝撃時にも安全に体を守れるようにする。」


この記事を要約すると、乗員の致命傷となる部位は近年、「頭部」よりも「胸部」が多くなっているということで、エアーバックの普及もあり衝突時のシートベルトの締め付けを強くする必要はなく弱くすると言っている。

確かに、高齢者も増えて骨折したり、内臓を損傷したり、そういうことが起こりやすいかもしれない。

 

しかし、衝突時のシートベルトの締め付けを弱くする対応で、今度は「頭部」の致命傷が増えるかもしれない。

そんなに、エアーバックの衝撃吸収力に「余裕」はあるのか?


今度は頭部に大きな損傷のでないようなエアーバックにしていく必要が出てくるかもしれないし、ボディ構造も見直しが必要になるかもしれない。

つまり、ベルトの拘束力だけの問題ではなく、「波及」があるのではないだろうか。

 

しかし、「高齢者は圧迫に弱くそれを救えば、若い人も含めて多くの人に良いはずだ。」

ということだと思う。

それは良い事だが、事はそう簡単では無いと思う。

 

 

自動車はある衝突基準にそったテストモードでシートベルトやエアーバックなどの拘束装置の設計をしている。勿論できるだけリアルワールドの事も考えているが。

そうやって作られている拘束装置のシートベルトの部分だけを取り上げて、リアルワールドのデータから、拘束力を弱めるというのが今回だ。

そもそも、リアルワールドでの事故状況を詳しく検証し(「スピードの出し過ぎ」などで終わらない事故検証)、そのデータを多く集め、テストモードに反映して、自動車開発技術者はそのテストモードとリアルワールドを勘案しながら、テストモードの改善や新技術開発していく。という順になると思うのです。

 

胸部の圧迫はシートベルトの締め付け力もあるが、基本は衝突による衝撃で乗員の体が慣性の法則で前方に行こうとするのを食い止めるから胸部の圧迫が起こる。

その圧迫を少なくするために、フォースリミッターやロードリミッターというベルトの拘束力を少し緩める機構が付いている。


つまり、乗員にかかる衝突エネルギーは、ボディの潰れ方(エネルギー吸収を考えた潰れ方)、エアーバック、シートベルト等を中心にして乗員に伝わる。

衝突エネルギーは極短い時間で乗員に伝わる。

衝突した時から出来るだけ早く乗員を拘束するために、ベルトは乗員の体にピッタリとくっついている必要があるが、そうすると普段の運転に煩わしさが出る。

よって、普段のベルトはそんなに乗員の体にピッタリとせず、衝突時に瞬時にピッタリとなるように「プリテンショナー」という、シートベルトを巻き取る装置が殆どのクルマについている。

これは、エアーバックと同じように「爆発」させて作動さすために「瞬時」だ。

これで、衝突時にだけシートベルトをシッカリと乗員の体にくっつけ(当然この時点で胸の骨がおれたりすることはない)、衝突の衝撃をうけ、結果乗員の体に大きな負担の掛かかりはじめると、フォースリミッターで今度はベルトの巻取り力を緩める。

また、頭部はエアーバックでなるべく長い時間をかけて衝撃を吸収する。

つまり、今のクルマはシートベルトとエアーバックの合せ技で、なるべく乗員へかかる衝撃を緩和している。

 

 

しかし、衝突速度が想定より高くなってくると、フォースリミッターの限界を超えてしまう。

 

自動車の衝突時のコトを語る時には、あるテストモードでの衝突とリアルワールド(現実の、実際の)での衝突は異なるということを理解しておかないと変なことになっていくと思うのです。

つまり、ボディからエアーバックやシートベルトなどは、リアルワールドでのコトを想定した、あるテストモードでの対応であって、リアルワールド全てに勿論対応できません。

 

リアルワールドでは、正面衝突やオフセット衝突、斜め衝突・・・しかも、一度は斜め左が衝突し、次は右後ろが衝突したりと複数回衝突するかもしれません。

テストモードはできるだけそれらを勘案してつくられています。

 

リアルワールドがこうだから、シートベルトの拘束力の設定をどうする・・と言うのは、一足飛びすぎるのではないでしょうか。

 


クルマの整備の変化

2016-12-13 10:12:02 | 日記

クルマの整備士が3割減!自動車安全に深刻な危機??

 本日の週刊ダイヤモンドのWebニュースで表題の見出しを見つけた。

読んでみると、・・・

「自動車業界が頭を悩ませる問題が浮上している。自動車整備士の人材不足があらわになっているのだ。今後、電動化や自動運転といった先進技術に対応できなくなる零細の整備工場が増えるのは間違いない。行政や業界の無為無策が続けば、自動車の安全性を揺るがす問題につながるだけに事態は深刻だ。

 「10年後には整備不良の車が公道を走りかねない」。ある自動車メーカー社員は、そう危機感をあらわにする。」

とあった。

 

確かに、整備士の数は減少しているようだ。

しかし、これが「10年後には整備不良の車が公道を走りかねない」に直結するだろうか??

 

 

私は、いわゆる「車検」さえそんなに必要だとは思わない。

勿論、ユーザーではわかりかねる機械や電気のことなどを点検整備してもらえるのは、ありがたいし、周りに迷惑をかけるある一定の改造車の抑制にもつながっているので、全面否定をするつもりはない。

 

ただ、クルマの耐久性能は飛躍的に向上し、簡単に言うと、日本で10年10万キロ走ったクルマが、海外(新興国)に輸出され、その先で日本車は壊れにくいからと高値で取引され、クルマとしての第二の人生を生きている。

 

私は、あまりタクシーに乗らないが、乗ったら必ず運転手さんに「このクルマ何万キロ走っていますか?」「今までの故障は?」

この答えは、バラツキは勿論あるが、丸めると都内で2〜3年、20〜万キロ。そのクルマが地方のタクシーに天下りして、50〜60〜万キロ、5年〜8年程度のクルマ人生をおくるようだ。

故障は、一声でほとんどなし。あっても「ステアリングのウレタンがツルツルになって、交換した」などのような故障レベルでなく、「トランスミッション交換」というのもあるが、これも故障レベルとは言いにくく、ほとんど故障はないようだ。

タクシーは毎年車検を実施されているからかも知れないが、とにかく一般のユーザーよりも過酷に使用されていても、数十万キロ、50〜60万キロは大丈夫そうだ。

 

一方、海外(新興国)に出たクルマには車検はないが、日本車が高値で取引されるという事は、その耐久品質が良いということの裏付けになると思う。

 

 

あと、クルマは機械モノだった。

と過去形になるのは、今ではクルマは確かに機械モノには代わりはないが、実際にエンジンなどは、コンピューターがないと回らない。ヘッドライトなどもそうだ。

つまり、今のクルマ機能はほぼコンピューターで制御されている。

これの意味するところは、「クルマはコンピューター無しで動かない」ということだ。

 

そうなると、当然点検整備も変わってきている。

昔のクルマが機械の時代には「クルマの整備も見てわかるもの」が多かったが、いまでは「診断機」なしに点検整備は出来ない。

これは、クルマがコンピューターで制御されているため、故障箇所をみつけるのも、コンピューターが必要になると言うことだ。

つまり、「エンジンがかからない」という故障の時、昔は点火系や燃料系など、たどっていって故障箇所をみつけたが、今は「診断機」をつなぐことにより、そのディスプレイ上に故障箇所が表示されて、さらにその部品自体をバラして修理するのでなく、殆どASSY交換つまり全取っ替えしてしまう。

変な話だが、クルマの整備マンのスキルは昔と変わってきて、勘や経験はあまり要らないのかも知れない。

また、これは整備にかける工数ダウンも意味している。

結果「次の担い手」が減ること自体は当たり前なのだ。

また、クルマも販売台数は下降だし、保有は伸びているが地方の足としてのクルマがEVなどに代わっていくと、いわゆる「自動車整備」ニーズはさがると言う事になる。


スマート・ルームミラー・・???

2016-12-05 18:15:49 | 日記

 日産は、ルームミラーにディスプレイ液晶モニターを搭載し、車体後部のカメラ映像とミラーとを瞬時に切り替えることができる「スマート・ルームミラー」を開発し、セレナなどに搭載している。

今までの、鏡面のルームミラーでは後席の人や荷物で視界が遮られたり、また天候によって後方をクリアに確認できない場合があったが、カメラとディスプレイ液晶モニターで後方の状況をクリアな画像で確認できるようになり、さらに通常のルームミラーに切り替えて後席の様子を確認することもできるものだ。

 

今まで、ルームミラーは法規的に鏡面での直接視ないといけなかったものが、緩和され、というか時代に合わせて、直接視でなくても良くなった。

 

これが進むと、カメラとディスプレイで、やろうと思えば死角ゼロでドライバーに情報を与える事ができるようになる。

 

これで、クルマの形も変わるかもしれない。

 

つまり、外のドアミラーが無くなる日がくるかもしれないのだ。

日本は大昔、ドアミラーはご法度で、今でもタクシーには残っているが、フェンダーミラーだった。

フェンダーミラーからドアミラーに変わっていったときも、クルマの見え方は大きく変わった。

安定感のあるものから、いかにも走りそうなスピード感のあるものになった。

初代シティは、ボンネットが短くさらにスラントしていたために、あるべきフェンダーミラー位置とそれを取り付けるフェンダーの位置が大きく離れて、背の高いステーが必要だった。

 

フェンダーからの長いステーで、角のようだ。

ドアミラーが解禁されて、スッキリとしたデザインになった。

ボンネットが短くて大きくスラントするデザインにはフェンダミラーは辛い。

 

 

この延長で考えると、もしドアミラーが無くなると、それだけでクルマのフォルム全体がツルッとした感じになり、より未来感のあるものになるかもしれない。きっとそういうデザインのクルマはでてくる。

クルマのデザインもより未来感のある形に変貌するはずだ。

 

ただ、視界という機能的には良いのだが、ミラーとディスプレイでの大きな差は、焦点距離だ。

鏡面のルームミラーで後ろをみると数メートル以上の焦点距離となる。これが、ディスプレイを今までのルーフ前方やインパネあたりに設置するとなると、その焦点距離はせいぜい1m以内だ。

 

ドライバーの、前方運転視界は数メートルから数十メートルだ。ルームミラーが鏡面の時は、この感覚で後方も視認できる。つまり、外側の視界はすべて数メートル以上となっていて、人間の視覚感覚と同じだ。

しかし、ディスプレイになるとこの感覚が、前方だけリアルで、後方や後側方は室内の距離感で見ることになり、まさにゲーム感覚となる。

 

この感覚の差は、当然高齢化するほど意識してしまう感覚だ。

高齢化と言っても、認知機能や視力がどうのこうのより、若い頃からのってきた感覚と変わることが違和感になるのではないかと思う。

カメラとディスプレイモニターでクルマの後方から側方まで、つまり死角を無くすという事は、安全運転にとって素晴らしいことだが、何か感覚に違和感を覚えることのネガも研究しつくしてほしいと思う。

 

全部、ITでつながったりAIが判断しての自動運転になれば良いと思うが、それまでの過程では、少々の混乱はあると思う。

言いたいのは、自動運転に向けた過程の技術の技術は、作る方も認可する方も、そのことを慎重に認識してほしいということ。また、ドライバーも自分の責任で、流行りというだけでなく良く考えて選び、安全運転をして欲しい。

 

つまり、完全自動運転までは、ユーザー参加型の半自動運転で、その間は注意して、関係者が協力し責任分担していく過程があるということ。

 

もっというと、完全自動運転までは、自動車の品質の全責任がPL法のような製造者責任というような考え方では、難しいのかもしれないと、ユーザーも「オウンリスク」で考えて欲しいのだ。

環境対策において、ユーザーが行う「分別ゴミ」の様に、ユーザー参加が自動車の進化の過程でも必要になると思う。

 

テレビなどは、ラジオから進化し「白黒テレビ」「カラーテレビ」「ハイビジョン」など、進化の過程でそれぞれ楽しめたが、クルマの自動運転化は異なると思う。