繁浩太郎の自動車と世の中ブログ(新)

モータージャーナリストとブランドコンサルタントの両方の眼で、自動車と社会をしっかりと見ていきます。

ホンダ N-BOX のフルモデルチェンジ

2017-04-17 18:22:35 | 日記

今年、あのいまだに販売台数NO1をほこっているN-BOXがフルモデルチェンジするらしいです。

あんなに売れているのに何で ?

何を良くするの? 燃費?

 

今までの、大ヒット商品の2代目はだいたいキープコンセプトで企画されてますね。

歌謡界でもそうでした。大ヒットがでると2曲目も似たような曲にして2サイクル食えるというのが常識になっているそうです。

 

しかし、2曲目、2代目はブランド的には意外と大切なものだと思うのです。その大ヒット商品の今後の生き様を宣言しなくてはいけないのです。

そうはいっても、今の時代はデフレ。クルマは次々と新しい価値観のものはでない。(e-POWERくらい?)

ユーザーの目線もそんなに変わらない。

ということがあり、勿論大幅に変更などそういう話でなく、確実に「新しく方向を決めてブランド進化」をしなければお客さんにその後も認めてもらえないということです。

 

ただ、ホンダの今までのモデルチェンジをみていると心配してしまいます。

つまり、販売店に言われて、イメージをキープしたFMCでデザインを単に変更したという新鮮さだけで、ホンダが考えているなら、それは間違いと思うのです。

時期がきたからとFMCするのは、愚策です。

 

N-BOXでいうと、ヒットしている最大の要因、つまりUSPは「地方向けの軽自動車」を「都会向け」=「新しい商品」にしたことです。

ダイハツ、スズキの軽自動車はいまだに「軽自動車らしさ」がぬけませんからね。

つまり、ダイハツ、スズキが量販を狙い、地方で売れる軽自動車はこうだと言うコンセプトで作っている中、N-BOXは「都会向けの軽自動車」にチャレンジしたのです。

それが、地方のユーザーにもうけているのです。

 

だから、フルモデルチェンジのN-BOXは「都会向けの軽自動車」を再度よくつきつめて、進化したコンセプトを考えなくてはならないということです。

 

コンセプトと言うと、大げさですが、・・・

簡単に言うともしキープコンセプトで目先を変えるだけのモデルチェンジなら、価格を安くしないとダメだということです。

価格を安くすると、軽自動車の場合計算上の収益が怪しくなります。それをカバーするのは販売台数です。

今のN-BOXもあれだけ売れているから、収益的に問題ないと思いますが、下手なモデルチェンジで台数を落としたらもともこもなくなります。

 

「都会向けの軽自動車」を再度よくつきつめて考え直し、進化したコンセプトを創造できないのなら、モデルチェンジはしないほうが良い。

 

「先代モデルのコンセプトを突き詰めて考え直し進化したコンセプトを創造」なのですが、いい例としては、2代目のFITがあります。

中々、わかりにくい話かとは思いますが、・・・

FITの2代目は良い例と言いましたが、3代目は残念ながら良い例とは言いにくいのです。

一言で言うと、2代目はデザインの質が上がっていますが、3代目はデザインの質が変化しているだけで上がっていないのです。

デザインだけでなく、機能的に考えると、2代目と3代目はユーザーにとってあまり変わりません。

今のクルマの機能はメーカーが進化したと言っても、ユーザーにはわかりにくいのです。

・・・ノートのe-POWER位の進化なら勿論わかりますが。

それどころか、3代目はリコールの嵐でした・・・。

 

今度のN-BOXのフルモデルチェンジはチャントやってくれていることを期待します。


日本の交通事情〜日本の活力、デフレ脱却

2017-04-10 09:49:21 | 日記

交通事故の死者数が減っている。ピークの1/4らしい。

交通事故の死者が減っているのは様々な要因によると思うが、走っているクルマの量も減っていると思う。

感覚的には、東京でカンパチとかの幹線道路の渋滞がリーマン前のガソリン高で減って、少し持ち直した頃またリーマンショックで減って、それ以降そんなに増えていない気がする。

「イヤイヤ渋滞はすごい」とも言う人はいますが、80年代〜90年代と比べると確実に減っています。

 首都高速等が整備されたりして、交通の流れがスムーズになったということもあるとは思いますが、道路上のクルマの数が減ったような感じがするのです。

クルマの販売は減っていますが、保有は必ずしも減っていないので、道路を走れるクルマが減ったということではないようです。

ガレージにいる率が高くなっているのではと思います。つまりクルマの使用時間が減ったと。事実、ユーザーの年間走行距離は減っているはずです。

 

あと、交通違反や事故などに対する厳罰化があります。

クルマを運転するのはリスクが伴うようになりました。ドライブレコーダーが売れるのも、自分を防衛したいからで、またいざ装着すると「いわゆる安全運転」になって、スピードを抑えたり、発進も十分確認してから、勿論追い越しや車線変更もあまりしなくなったり、ブレーキは早めから・・・等など、慎重な運転になりがちです。

 

これは良い事なのですが、一方で意外と気持ちの緊張が減り、ふわぁ~っと運転してしまい、「注意散漫」につながる場合もあるのではと心配します。それで、衝突軽減ブレーキが役に立つのかな・・・と。

これらは全て良い事のようです、・・・。

 

しかし、なんだか引っかかるんですよね。

 

あまりクルマを走らせなくなって、事故も減って、走らないと環境にもよく、・・・と良いことだらけと思うのですが、何か右肩下がりの寂しい状況と、私のような昔の日本が元気な頃を知っている人間は、寂しく感じます。

 

日本は、欧米と比べて「クルマを走らす環境にない」と言うのはかねがねクルマ好きの私が叫んでいることです。

高速道路も100km/h、街中は信号だらけ、地方でもこんなトコに信号あるの?というとこまでついている、さらに狭い一車線・・・とにかく、「日本は狭い」く、その中を過大な量のクルマが保有されていて走る。

やっぱりクルマを気持ちよく使える社会じゃないのです。

そのせいか、教育のせいか、気持ちのせいか、日本人は運転が下手、運転テクニックがない、と思います。日常の運転でそんなもん要らないということかもしれませんが、「いざというとき」が現実おこりその時の対処が良ければ、事故を避けられることもあると思うのです。

しかし、そういう事故分析は日本ではありません。全て、「スピードの出し過ぎ」「前をよく見ていなかった」という、事故の本質とは離れた言葉で終わってしまいます。

 

そこで思うのですが、クルマが売れない、車離れ、などと言われてもう10年以上になりますが、この売れない状態、いやもっと売れなくても、それが日本の自動車環境からいうと、なるべくしてなる本来の姿かもしれません。

 

勿論「安全運転」は、良いのですが「スピードさえ出さなきゃ事故はおこらない」という、(まさにその通りですが、笑)、「クルマは走らない方がいい」くらいの勢いで世の中がその方向に動き、それに連れて、世の中の元気もなくなってきているような気がします。

歩く速度も、スマホを見ながらって人も増えたせいもあって、遅くなりました。

 

ゆっくりなんです、サッサと歩かない、なんだか活力がない。

クルマも歩行も同じように思えます。

 

先進国病?日本国病?と言えるかもしれません。

クルマが増えて、交通事故を減らそうと罰則強化や信号など、クルマをなるべく走らなくして・・・、目的通り走っているクルマは減ったけど、世の中の活力まで減らしてしまったような気がします。

 

かっこ悪かったり、辛い仕事は、やらなくなり人手不足になっています。

確かに、そういう仕事は誰でもやりたくありませんがね、これも日本国病?かもしれません。

 

日本に活力が戻らないと、日本国が生き生きとしないと、デフレからも脱却出来ないのでは?と。

しかし、日本人が向いている方向は、抑えつける方向とおもうのです。


新型ワゴンR の凄さはスズキの凄さ

2017-04-06 19:19:07 | 日記

初代ワゴンRは、93年9月に発売されるとすぐにその革新的なコンセプトで大きな話題になりました。

当時のクルマは価格によって車格というヒエラルキーにはまっていましたが、ワゴンRは「シンプルな道具感スタイル」で、車格に関係のない個性的なクルマとして登場して、

隣にベンツが来ても、軽だからと卑下することは全くなかった記憶があります。

目線も高く、軽自動車で見下される感覚は全く無かった。

 

ワゴンRは初代から大きなコンセプトチェンジなしに、ずっと「ワゴン」を作り続け記録的な販売台数を築き上げました。しかし、流石に時間の経過とともに「飽きてきた」ことは事実でしょう。

ハスラーのような大ヒットをとばしたスズキが、どのような形でワゴンRをモデルチェンジするのか興味がありました。

サイズは、軽自動車ということもあり、また上にも下にも各社の車種がひしめていており、そんなに変わらないと考えていましたが、問題はコンセプトというか、クルマのテイストでした。

 

大きくコンセプトを変えると売れなくなる可能性は大きいです。

また、長寿モデルはユーザーの頭の中でそのイメージが固まってしまっています。変えると、ユーザーは「これはワゴンRじゃない」とそっぽを向く確立が高くなります。(カローラはずっとカローラだ)

そっぽを向かれても、全てに新しい魅力のある商品だとするとこっちを向いてくれるかもしれませんが、それには新しい魅力を見つけなきゃいけないし、だいたいそういうものはコストが大きくかかります。

そんな中、パワートレーン等は先代を流用してリスクオフしながらも内外デザインを大幅に変えて、それなりの投資もして、新しいコンセプトでワゴンRは出てきました。勝負に出てきたのです。

やります、スズキ。

チャレンジのないとこに、進化はありません。

 

軽自動車は、何と言っても台当りの収益が厳しいです。

 

工場で組み付ける部品は、タイヤやドア、シート、足回り等小型車とほぼ同じ数だけあり、各部品は小さくその分が当然安いのですが、意外と製造原価に響かない。

製造原価を下げるには、綿密にコスト削減や部品点数削減は勿論ですが、大量生産・販売が一番効きます。

 

私も、ホンダ在職時代にN-BOXの企画時には、この部分が一番大変でした。

いかに生産・販売台数をあげ工場を目一杯埋めるか?

その時考えたのは、1車種ではダメで、シリーズ化して、一番バッターは必ず塁に出られるN-BOX、2番バッターはバントのN-BOX+、3番バッターはヒットのN-ONE、4番バッターはホームランのN-WGN・・と例え、工場を目一杯埋められる一定以上の大量生産・販売しかないといけないと考えました。

しかし、これは当然、投資金額は大きくなりますし、台数を目一杯で計算した値で企画するのはチャレンジングというか、危険な行為です。売れなかったら、チョンです。

ダイハツ、スズキを追いかける側としては、決死の覚悟でリスクをとるしかないと考えました。

 

そこで、今回のワゴンRのコンセプトチェンジですが、私の捉え方は「ワゴン」から「ミニバン」にコンセプトチェンジしたように思います。

ワゴンR→ミニバンアール(R)です。

機能的にはハイブリッドやHUD、安全装備なども用意されていますが、エンジン等走りの部分は前モデルから大きく変化がない。無理に変えなくてもユーザーが満足できれば問題ないのです。

開発者はどうしても全部良くしたいと言う気持ちから新しく作りたいものですが、それを我慢したのはさすがと思います。

 

しかし、アウトプットのクルマの走りがユーザー的に満足出来るのか?をみたくて試乗しました。

走り味は変わっていないだろうと予想していましたが、驚きました。

これだけの小型車並の走行性能やフィーリングがあればユーザーは満足するはずです。というかユーザーの満足を通り過ぎたとこまでいっています。

しかし、さらに大切なのは、コンセプトチェンジがユーザーに魅力的と映ることです。

内外のデザインはコンセプトに合わせて大きく変わり、つまり外のデザインは、三種類の顔がありますがどれも堂々として大きく立派で、後ろはリヤコンビが横向きになって下にいき全体的に縦長でなく幅広に見え、サイドビューは特徴的なBピラーでエモーショナルになり、ワゴン感ではすっかりなくなりました。

ただ、私の経験からは三種類の顔はリスクを考え同時に出したくなるのはわかりますが、小出しにした方が、お客さんの記憶により強く残るのではと思います。

室内のデザインも、センターメーターになり、ナビディスプレイはセンター手前に、インパネは横一文字のセンス良いいものになり、ワゴンのシンプルさを超えたミニバンの質感を得たものになっています。

ワゴンRの様な長寿機種のコンセプトチェンジを、スズキはリスクオフしながらチャレンジングにやったのです。

このコンセプトチェンジは成功し、販売台数と収益性を両立すると予想します。

 

スズキはアルト-60kg、スイフト-120kgと車両重量を削減していますが、元開発責任者の私からするとこれらはドエライことなんです。

なによりすごいのは、そのドエライことを目標にして開発する体質、みんなが頑張れる体質が有ることです。

スズキはチャレンジと実行の会社です。

また開発者はユーザーと商品に真摯に向き合っています。

 

「小さなクルマ、大きな未来」は本物だと実感しました。