オートプルーブの私の記事の転載です。
■ミラ イースの大幅軽量化の意味
先日、ミラ イースの発表会に行ってきました。今回のフルモデルチェンジで私が注目した点は、車両重量を−80kgしたことです。これだけの軽量化は技術的に大変難しいです。
スズキのアルトやスイフトも同様の大幅な軽量化をしています。
−80kgで今回650kgということはJC08モードの燃費計測では、イナーシャウエイトランクが2つ下がり、−115kgすることになります。つまり、この軽量化だけで、燃費値は良くなることになります。
*イナーシャウエイトについてはコラム第10回を参照。
しかし、新型ミラ イースのカタログ燃費は前モデルと同じです。つまり、軽量化分は多くの軽ユーザーの不満点である発進時と追越時の加速向上に使われたのです。
■ミラ イースのデザイン
もう一つ今回のフルモデルチェンジでの注目点は、そのデザインです。今までのダイハツの軽自動車は、ちょっと丸味をもたせた「軽らしいデザイン」が多かったと思います。
例えば、キャンバス。
そのコンセプトは、フォルクスワーゲン・バスのようなユーティリティとスタイル性で、男女性別を問わないクルマのはずですが、そのデザインは丸く優しく女性的で、ダイハツのカタログの扱いも「女性」です。
また、ダイハツではホンダのN-BOXが売れたので、その大きな理由をデザインと考えたのか、ダイハツ ウエイクのデザインはどこかしらN-BOXに似たものでした。
しかし、今回ミラ イースのデザインは、今までのダイハツデザインと異なり、シッカリとしていて軽というよりスモールカーとして感じました。
つまり、ミラ イースは従来のダイハツデザインの優しく丸っこい形でなく、また他車にない形で、デザインされたといえます。
■スズキ ハスラーとダイハツ キャストからみる軽自動車デザイン
最近は、軽自動車に限らずチャレンジングなデザインが少なくなりユーザーはつまらないのではと思います。
トヨタの新型プリウスやシエンタ、C-HRなどはそこにチャレンジしているようです。
そんな中、ハスラーの成功の理由は、軽自動車という枠を超えた「遊びクルマ」のコンセプトとデザインにあったと思います。
それは、スタイルに愛らしさは持たせつつも女性を意識したものではなく、あくまでも遊び表現に徹底しています。
一方、ハスラーの対抗として造られたと思われるキャストのデザインは、丸く優しく女性的でいかにも軽自動車らしいデザインでした。販売台数としては、キャストは伸び悩みハスラーはキャスト発売後もその販売台数を伸ばしています。
デザイン的な話をもう少ししますと、新しいクルマに見えるか、従来の延長線上に見えるかはこの場合「Aピラーの角度」がキーポイントになっているように思えます。
キャストは一般の軽自動車のAピラー角度です。一方ハスラーは、トヨタの異色の遊びSUVである、FJクルーザーに似たAピラー角度です。つまり、クルマの骨格がこれで異なるのです。
N-BOXシリーズは新鮮に見えるように、いかにも軽自動車らしくない方向を工夫してデザインされていますが、もともと、ホンダは軽自動車を意識しないスモールカーとしてデザインをしてきました。かつて、トゥディのデザインは先進的で、その後ルノー・トゥインゴがトゥディをモチーフにして造られたという話を聞くほどでした。
■ダイハツとスズキの2強から見る今後の軽自動車
いずれにしても、ダイハツとスズキは2強で競い合って、消耗戦もあったかもしれませんが、とにかくお互い良いライバルで良いクルマ造りにつながっていたと思います。ダイハツは「スズキに負けない」という情熱で−80kgという軽量化をやってきたと思うのです。
そこで、ホンダのN-BOXシリーズが成功して、2強に首をつっ込んでいこうとしているホンダの戦略に興味がわきます。
つまり、ダイハツ、スズキの2強はこの軽量化構造を、これからの全ての車種に適用してくるでしょうし、そうなると軽自動車において大幅な軽量化競争が展開されるのではと思われます。
そんな中で、ホンダが次期新型N-BOXで軽量化してくるのか、あるいは異なった新基軸を出すのか? また、日産/三菱連合は?など気になります。
デザイン的にも、以前からダイハツとスズキは女性を意識した軽らしいデザインが多かったのですが、ハスラーや今回のミラ イースを見る限り、スモールカーデザインへとシフトしました。
軽らしくないスモールカーデザインで造られたN-BOXは、いまだにモデル末期なのに販売台数NO1を取っているほど強い商品です。2017年の夏〜秋に新型発売が予測されていますが、時期がきたからとモデルチェンジするのは、リスキーと思います。よっぽどの進化版か、あるいは新しい提案のコンセプトがないと、変更した部分はユーザーイメージのN-BOXではなくなってしまいます。だから大ヒット商品の2代目は難しいのです。
とんだトコに話が及びましたが、軽自動車の中で、軽乗用車の販売台数は2015年の増税以降落ちこんでいます。
軽自動車メーカーはダイハツ、スズキの2強に日産/三菱連合とホンダとが加わり、シェア競争も激しさを増しています。つまり、軽乗用車は全体の販売台数は伸びない中で、4社でパイの喰い合いをしてるわけです。
これまでも何度も繰り返しているように、軽自動車は生産販売台数が落ちるとコストが上がり、価格や収益が厳しくなります。販売を伸ばすためには魅力的な新商品が必要ですが、反面、新しさゆえ、生産販売台数にリスクがともないます。この二律背反をどう解決していくかが競争になります。
しかしその一方で、競争の基本は商品力ですが、中でも軽量化技術とデザイン性だということがハッキリしてきたと思います。